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2026.07.16管理職研修

後継者育成研修の設計|失敗する5つの理由と、期間別プログラム(1日〜6カ月)

なぜ今、後継者育成研修が必要なのか

多くの企業で、定年を控えたベテラン社員が持つ豊富な知識やノウハウの引き継ぎが、十分に進んでいません。対策をしないままでいると、数年のうちに社員の退職とともに、その専門知識やノウハウも一緒に失われてしまいます。しかも、職場の世代交代は想像以上の速さで進んでいます。

次の3つの数字が、後継者育成を「今」のテーマにしています。

約80%
2035年、労働力のうち
1980年以降生まれが占める割合
40%
「自社のリーダーは優れている」と
答えた経営者・人事(20年ほぼ横ばい)
6カ月〜
後継者を本格的に育てる
プロジェクトに要する期間の目安

世代交代は着実に進み、一方で次を担うリーダー層はまだ手薄なままです。そして、後継者を育てるには数カ月単位の時間がかかります。この3つを並べると、後継者育成は「いつか取り組むテーマ」ではなく、「今から設計を始めなければ、引き継ぎに間に合わないテーマ」だとわかります。ベテランが退職する日から逆算すると、準備できる時間は思っているほど残っていないのです。

後継者育成は、広い意味では次世代リーダーの育成の一部です。次世代リーダー全般をどう育てるかは次世代リーダー育成研修の設計法で扱っています。本記事では、その中でも「特定のポジションやベテランの専門性を引き継ぐ後継者」に焦点を当て、研修としてどう設計し分けるかを、多くの企業がつまずく落とし穴と、期間別のプログラム設計から具体的に解説します。

後継者育成研修が失敗する5つの理由と解決策

後継者育成研修は、研修そのものの出来よりも「どう設計するか」で成否が決まります。実際に後継者づくりのプロジェクトを重ねていくと、つまずくポイントはほぼ決まっています。次の5つは、代表的な失敗と、その解決のヒントを対にしたものです。研修を1回組む前に、この5つを設計へ織り込めているかを確認してください。

よくある失敗

解決のヒント(設計にどう織り込むか)

マインドセットが足りない

「自分はまだ現役」「引き継ぎはまだ先」という意識のまま研修に入り、当事者意識が生まれない。

→ なぜ今必要かを腹落ちさせる

変化の必要性、目指す姿、具体的なアイデア、動機づけを最初のステップに置く。

行動が続かない

研修中は意欲が高まっても、職場に戻ると通常業務に流され、育成の動きが止まってしまう。

→ 仕組みと定着フォローで支える

学びを日々の行動に落とす仕組みをつくり、研修と研修の間に定着フォローを挟む。

一人ひとりに合っていない

後継者候補の状況やニーズはさまざまなのに、全員へ同じ内容を流し、当事者に響かない。

→ 全体の枠の中で個別に対応する

共通のフレームは保ちつつ、候補者ごとの課題に合わせて個別対応を重ねる。

成果が見えない

「やった感」はあっても、育成が進んでいるのか、成果に近づいているのかを判断できない。

→ 進捗と成果を定期的に測る

定期的に進捗と成果を確認し、研修効果測定で見える化する。

未達のときの打ち手がない

想定どおり育たなかった場合の備えがなく、プロジェクトがそこで止まってしまう。

→ フォロー施策まで想定しておく

目標に届かない場合に備え、後継者へのフォロー施策もあらかじめ選択肢に入れる。

共通するのは:失敗の多くは研修の中身ではなく、研修の前後の設計にある。

5つを並べると、後継者育成がうまくいかない原因の多くは、研修の中身そのものではなく「研修の前後の設計」にあることがわかります。当事者意識をどう立ち上げ、学びをどう職場に定着させ、成果をどう測り、未達にどう備えるか。ここが抜けていると、どれだけ良い研修コンテンツを用意しても後継者は育ちません。成果の測り方は研修効果測定の方法で詳しく扱っています。逆に言えば、この5つを最初から設計へ組み込んでおけば、失敗の大半は未然に防げます。

本気の後継者育成は「6カ月・6回」の定着重視プロジェクト

後継者育成を本気で進めるなら、1回きりの研修では届きません。ベテランの知識やノウハウを引き継ぎ、後継者が実際に動けるようになるまでには、定着を重視した複数回のプロジェクトが必要です。その設計に入る前に、まず「育てる中身」を押さえておきましょう。

育てる中身は5つ(期間が変わっても不変)

1

教える(ティーチング)

引き継ぐ知識を、分かりやすく双方向で伝える。

2

気づかせる(コーチング)

質問と傾聴で相手に考えさせ、理解を深めさせる。

3

定着させる(分かる→できる)

分かったことを、職場で実際にできるようにする。

4

モチベーションを上げる

下がる要因を減らし、上がる要因と本人の強みを引き出す。

5

課題を解決する

知識・スキル不足以外の原因を分析し、対応策を打つ。

とくに「気づかせる(コーチング)」は奥が深く、対話の型(GROWモデル)、耳の痛い指摘の伝え方(DAP)、気づかせる質問など、それぞれに専用の技術があります。本記事では深入りせず、必要に応じて各記事に譲ります。ここで押さえたいのは、この5つは研修が1日でも6カ月でも変わらないという点です。変わるのは「どこまで深く、どこまで定着させるか」だけです。

6カ月・6回の流れ

本格的な後継者育成プロジェクトでは、この5つを6カ月かけて「分かる」から「できる」へ落とし込みます。大きくは、マインドを立ち上げ、スキルを積んで職場に定着させ、成果発表で締める、という3つのフェーズを積み上げます。

後継者育成プロジェクトの流れ(6カ月・全6回)

PHASE 1 / 第1回

マインドを立ち上げる

なぜ後継者が必要かを、受講者自身に腹落ちさせる

PHASE 2 / 第2〜5回

スキルを積んで定着させる

教える・気づかせる・動機づけ・課題解決を職場実践で定着させる

PHASE 3 / 第6回

成果を発表する

6カ月の取り組みと成果を経営層へ発表する

全6回を月1回のペースで進め、各回の集合研修と並行して、個別コーチング・職場実践・定着フォローが全期間を通して走ります。研修当日だけでなく、研修と研修の間に現場で動いてもらうことが、後継者が育つかどうかの分かれ目です。

このプログラムを成功させる勘所は4つあります。第一に、マインドセットから始めること。たとえば「15年後に会社が必要とするリーダーは誰か」を受講者自身に定義させ、後継者をつくる必要性を実感させます。第二に、人事とのコラボです。後継者がまだ明確に決まっていないことも多いため、受講者が研修の中で人事部門と直接話せると、話が早く進みます。第三に、経営者の巻き込みです。経営者からプロジェクトの重要性や進捗への関心を伝えてもらうと、受講者は本気になります。第四に、職場実践のサポートです。研修そのものより、受講者と後継者が現場で実際に動くことが大切なので、定期的に個別フォローして状況を把握し、支援します。

6カ月・6回という長さは「重い」と感じるかもしれません。ですが、後継者育成は知識の受け渡しだけでなく、マインドの醸成から職場での実践、成果発表までを含む取り組みです。ここまで通して初めて「分かる」が「できる」に変わり、後継者が実際に動き始めます。とはいえ、すべての企業がいきなり6カ月かけられるわけではありません。次の章では、この本格版を頂点に、期間で設計をどう分けるかを見ていきます。

【事例】サクセッションプランと連動させると成果が跳ねる(Entergy)

ここまでは設計の話でした。では、本気の後継者育成は実際に成果を生むのでしょうか。世界最大級の人材育成会議ATD ICE 2026で紹介された、米国の電力会社Entergyの事例を見てみます。

CASE STUDY:Entergy(米・電力/従業員 約1.2万名)― サクセッションプランと連動した階層別リーダー育成

BEFORE

部門ごとに求めるリーダー像がばらばらで、複数のベンダーに研修が分散。育成の体系がなく、重要なポジションを担う人材が計画的に育っていなかった。

AFTER

4年かけて再設計。チーム生産性が77%向上し、受講者の86%が「自分のリーダーシップが上がった」と実感。修了者の定着率は全階層で89%以上。

やったこと

サクセッションプラン(誰をどのポジションに就けるか)と育成を1つに束ねました。①引き継ぐべき重要ポジションを特定し ②各ポジションの現状を把握し ③関係者を巻き込み ④求める人材像を定義し ⑤候補者を選抜。その上で、現場リーダー候補・上級管理職・次期役員の3階層に分け、統一したコンピテンシーモデルと使いやすい学習基盤で、コホート型のプログラムを回しました。

ポイント:後継者育成は「研修単体」ではなく「サクセッションプラン×育成」で設計すると、定着と昇進に直結する。

さらに注目すべきは、育てた候補が実際に「上のポジションへ動いた」ことです。

修了後3年以内に昇進・昇格した割合(階層別)

現場リーダー候補では7割超、上位ポジションでも過半数が昇進している

現場リーダー候補(RISE)
71%
上級管理職(ALP)
69%
次期役員(POWER UP)
53%

定着率はどの階層も89%以上。育てた候補が辞めずに残り、実際に昇進している。

これらのプログラムは、100%サクセッションプランと連動していました。日本企業でも、この「育成と後継者計画を一体で設計する」という発想は再現できます。研修を単体のイベントで終わらせず、「誰を、どのポジションに、いつまでに」という計画とつなげること。それが、育てた人材が残り、実際に上のポジションへ動くかどうかの分かれ目です。

期間で設計を分ける:1日/半日×2/3回/6回

ここまで見てきた本格版(6カ月・6回)は、すべての企業がいきなり始められるわけではありません。予算や期間、緊急度に応じて、後継者育成は段階的に設計できます。育てる中身は共通のまま、期間で「どこまで深く、どこまで定着させるか」を選ぶという考え方です。代表的なのは次の4つです。

1日

まず全体像をつかむ入門版

育てる5つを1日に凝縮。まず着手したい、対象が少人数、時間・予算が限られる場合に。定着度:低(知識中心)。

半日×2

忙しい現場でも回せる実践版

事前学習と演習中心のリモート研修を2回、間に職場実践と個別コーチング。多忙な管理職・リモート中心の職場に。定着度:中。

3回

チームまで巻き込む充実版

3日間と職場実践で、挑戦マインド・部下育成・チームビルディングまで扱い、成果発表で締める。定着度:中〜高。

6回

本格的な後継者育成プロジェクト

6カ月・6回。マインドから成果発表まで、経営層を巻き込んで定着を徹底する。本気で特定ポジションの後継者を育てるなら。定着度:高。

1日から6カ月まで幅はありますが、育てる中身(前章の5要素)は共通です。違うのは「どこまで深く、どこまで定着させるか」だけ。予算や期間が限られるなら1日や半日×2から入り、本気で特定ポジションの後継者を育てるなら6回のプロジェクトへ、という段階設計ができます。到達点は6回=本格的な後継者育成であり、1日版はその入口だと考えると位置づけがはっきりします。

研修そのものの設計を、ニーズ把握から効果測定まで体系的に組み立てたい方へ。

▶ 研修設計の完全ガイドを読む

自社に合う後継者育成研修の選び方

1日から6カ月まで選択肢がある中で、自社はどこから始めるべきか。判断の軸は4つです。①継承の緊急度——ベテランの退職がどれだけ近いか。②後継者の特定——育てる相手がもう決まっているか、これから探すのか。③かけられる予算と期間。④経営層・組織の巻き込み度——どこまで本気で取り組める体制か。この4つを踏まえると、自社がどこから始めるべきかが見えてきます。

自社に合う後継者育成の規模を選ぶ

まず試す
1日/半日×2
チームを強化
3回
本気で育てる
6回

左ほど手軽・小規模、右ほど本格的。育てる中身(5要素)はどこでも共通で、変わるのは深さと定着の度合い。

緊急度が低く、後継者もこれから、まず様子を見たいという段階なら、1日や半日×2から始めます。逆に、退職が迫り、後継者も決まっていて、経営層も本気なら、迷わず6回の本格プロジェクトへ進みます。多くの企業は、まず短期版で手応えをつかみ、そこから段階的に広げていきます。大切なのは、育てる中身は同じという前提で、自社の状況に合う「深さ」を選ぶことです。

管理職・リーダー育成の全体像(目的・内容・設計・効果測定)を体系的に把握したい方へ。

▶ 管理職研修の完全ガイドを読む

まとめ

後継者育成研修は、研修そのものの出来より「どう設計するか」で成否が決まります。本記事の要点は次のとおりです。まず、失敗の多くは研修の前後の設計に原因があり、5つの落とし穴(マインド・定着・個別対応・成果の見える化・未達への備え)を最初から織り込むことが出発点になります。次に、育てる中身は5つの成長支援要素で、期間が変わっても変わりません。本気で取り組むなら、これを6カ月・6回かけて「分かる」から「できる」へ定着させます。

そして、サクセッションプラン(誰をどのポジションに就けるか)と一体で設計すると、Entergyの事例のように定着と昇進に直結します。とはいえ、いきなり6カ月は重いものです。予算・期間・緊急度に応じて、1日から6回まで段階的に設計できます。育てる中身は同じという前提で、自社の状況に合う「深さ」を選んでください。後継者育成は「いつか」ではなく、退職の日から逆算して「今」設計を始めるテーマです。

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