将来から逆算する次世代リーダー育成の事例|未来の顧客Z世代との合同研修
早期選抜の次世代リーダー研修を実施していたが、優秀な候補者でも発想が現状業務の延長線に留まり、将来の市場や顧客を起点に事業を構想する力が育たないことが課題だった。未来の主役となるZ世代への実感も不足していた。

研修テーマ
2040年から逆算するバックキャスティング型の次世代リーダー研修(3ヶ月)。Z世代の高校生との合同研修、個別コーチング、上位層向け成果発表で構成。
次世代リーダーの育成で多くの企業がつまずくのは、候補者の能力ではなく「発想の起点」です。優秀な候補者ほど現在の業務に習熟しているため、構想がどうしても現状の延長線に留まってしまう。本記事では、この壁を「将来から逆算するバックキャスティング型」の設計で越えた早期選抜・次世代リーダー研修の事例を紹介します。2040年の想定顧客であるZ世代の高校生との合同研修という独自の打ち手を含む、3ヶ月プログラムの中身と再現の勘所をまとめました。
状況:次世代リーダーは「今後のビジネス」をリードする存在
ある企業では、将来の経営を担う人材を早い段階で見極め、育てる「早期選抜の次世代リーダー研修」を実施していました。選ばれた候補者は、いずれも現場で高い成果を出す優秀な社員です。ところが人材育成担当者には、ひとつの手応えのなさがありました。候補者の発想が、どうしても「今の業務の延長線」に留まってしまうのです。数年先、十数年先の市場や顧客を起点に事業を構想する——次世代リーダーに本来求められる思考が、なかなか立ち上がってきませんでした。
これは個々の候補者の能力の問題ではありません。そもそも管理職と次世代リーダーでは、求められるものが根本から違うからです。両者の違いを6つの観点で並べると、その差がはっきり見えてきます。
つまり次世代リーダー候補に必要なのは、今の業務をうまく回す力ではなく、まだ存在しない未来の事業を構想する力です。現役管理職向けの研修をそのまま前倒しで受けさせても、この力は身につきません。
やっかいなのは、次世代リーダーに「今後求められる能力」は、見えにくく、身近な見本もなく、相談できる先輩もいないという点です。だからロールモデルや過去の成功パターンをなぞるだけでは学べません。メガトレンドや業界動向といった「未来の兆し」から先を予測し、そこから逆算して今やるべきことを決める——この思考そのものを鍛える必要があります。
さらに、自社のマネージャー育成調査では、次世代リーダー候補が現場で最も多く挙げる悩みは「Z世代・世代差のコミュニケーション」で、25%と最多でした。皮肉なことに、これからの職場と市場の主役になるZ世代を、当の候補者たちがまだ十分に理解できていないのです。この課題に正面から向き合ったのが、次に紹介する「将来から逆算するバックキャスティング型」の育成プログラムでした。
やったこと①:3ヶ月・未来起点で逆算するプログラムを設計した
この企業が実施したのは、早期選抜者向けの次世代リーダー研修です。ゴールは明確でした。経営者の発想として2040年のビジョンを描き、そこで求められるニーズを想定し、未来から逆算して「今からやるべきこと」を決める力を身につけさせること。現在を起点に将来を積み上げるのではなく、将来を起点に現在を決める——いわゆるバックキャスティングの発想を、3ヶ月のプログラム全体で体験させる設計です。
プログラムの流れは次の通りです。
3ヶ月・バックキャスティング型プログラムの全体像
未来のメガトレンド・業界動向・Z世代の特徴を学び、2040年を考える材料をそろえる。ディスカッション(3時間)で理解を深める
インターナショナルスクールの高校生(Z世代=2040年の想定顧客)と直接交流し、抽象的なトレンドを実感に変える
2040年ビジョンと提案を磨き込む。ディスカッションと個別コーチングで一人ひとりの構想を具体化する
上位層に向けて、未来ビジョンと逆算した具体プロジェクトを発表して締めくくる
この全体像から読み取るべきポイントは、順序の設計です。いきなり「2040年のビジョンを描け」と課すのではなく、まずキックオフでメガトレンドや業界動向という判断材料をインプットし、次に未来の当事者であるZ世代本人と対話し、そのうえで構想を描かせ、最後に経営層への発表で締める。研修期間中は個別コーチングが並走し、一人ひとりの構想の具体化を支えます。未来という「見えないもの」を考えさせるからこそ、材料→実感→構想→発表という段階を踏ませているのです。
なかでもこのプログラムの独自性が最も表れているのが、2ヶ月目の「高校生との合同研修」です。次のセクションで、その中身を詳しく見ていきます。
やったこと②:核心は「未来の顧客」であるZ世代との直接対話
2040年のビジョンを描くうえで最大の壁は、メガトレンドや業界動向がどうしても「抽象的な情報」のままで終わってしまうことです。レポートを読んで頭で理解しても、実感が伴わなければ、そこから生まれる構想も借り物になります。この研修では、その壁を「2040年の想定顧客であるZ世代本人に会う」ことで越えました。相手はインターナショナルスクールの高校生です。彼らが経営の意思決定層や顧客の中心になる2040年に向けて、その考え方・課題感・ニーズを本人たちから直接把握するのです。
ただし、いきなり高校生と引き合わせたわけではありません。対話が刺激的な学びになるよう、次の4ステップで設計されていました。
社内のノウハウを最初から与える
ゼロから調べさせるのではなく、社内にすでにある未来の知見を出発点にして考えの土台を引き上げる
具体例:社内の未来研究部署による発表を研修の最初に組み込み、自社が持つ未来予測の材料を全員で共有した
Z世代について学んでから会う
予備知識のない状態で会っても雑談で終わる。先に学ぶことで、対話が仮説の検証になり刺激が最大化する
具体例:キックオフでメガトレンド・業界動向とあわせてZ世代の特徴を学習し、そのうえで合同研修に臨む順序にした
高校生と6時間の合同研修で対話する
未来の顧客の考え方・課題感・ニーズを本人から聞く。抽象的だったトレンドが具体的な実感に変わる
具体例:インターナショナルスクールの高校生との交流からは活発で海外展開にも役立つ意見が得られ、学校での開催によって「今後の世界をつくる教育」について自然と考える効果も生まれた
実感をもとに未来ビジョンと提案を描く
聞いて終わりにせず、対話で得た実感を2040年ビジョンと具体的な提案に落とし込む
具体例:プレゼンテーションクリニックと個別コーチングで構想を磨き、アウトプットは具体的なプロジェクトと取り組みとして仕上げた
この4ステップが示しているのは、「誰と会わせるか」だけでなく「どんな状態で会わせるか」まで設計されていたということです。学んでから会うから、対話が仮説の検証になる。会ってから描くから、構想に実感が宿る。第1章で見た「Z世代・世代差」という次世代リーダー候補の最大の悩みに対して、座学でZ世代を解説するのではなく、本人との対話の場を研修の中心に据えたことが、このプログラムの独自性です。
結果:抽象的なトレンドが「自社の具体プロジェクト」に変わった
3ヶ月のプログラムを終えて、候補者のアウトプットは明確に変わりました。研修前は現状の延長線でしか語れなかった候補者たちが、2040年の顧客の実感を起点に、未来ビジョンとそこから逆算した具体的なプロジェクト・取り組みを描き、上位層の前で発表するところまで到達したのです。この事例の全体像を1枚にまとめます。
注目すべきは、成果が「発想が変わった」という内面の変化で終わっていない点です。アウトプットは具体的なプロジェクトと取り組みという形に落とし込まれ、上位層向けの成果発表という経営との接点まで届いています。次世代リーダー育成は成果が出るまでに時間がかかる投資だからこそ、この「経営層が変化を直接目撃する場」があることで、施策の手応えを社内に示すことができます。学校で研修を開催したことで、候補者が今後の世界をつくる教育について自然と考えるようになったという副次的な効果も生まれました。
では、この事例を自社の次世代リーダー育成に取り入れるには、何を押さえればよいのでしょうか。最後に、再現のための勘所を5つに整理します。
自社に活かす:バックキャスティング型育成 5つの勘所
この事例の価値は「高校生と交流した」という珍しさではなく、未来起点の思考を成立させるための設計の積み重ねにあります。自社の次世代リーダー育成に取り入れる際に押さえるべき勘所は、次の5つです。
社内の未来ノウハウを最初から与える
候補者にゼロから未来を調べさせない。未来研究部署の発表のように、社内にすでにある知見を出発点として提供すると、考えの土台が一段上がった状態からスタートできます。
「学んでから会う」の順序を守る
Z世代について学んだうえで本人たちと交流するからこそ、対話は仮説の検証になり、非常に刺激的な学びになります。順序が逆だと、ただの雑談で終わるリスクがあります。
未来の当事者を研修の中に入れる
未来を「資料」ではなく「人」で体験させる。外部のZ世代本人と対話すれば活発で海外展開にも役立つ意見が得られ、学校で開催すれば今後の世界をつくる教育について自然と考える効果も生まれます。
アウトプットは具体的なプロジェクトにする
未来ビジョンを感想文で終わらせず、逆算した具体的なプロジェクトと取り組みまで落とし込むことを必須にします。ここまで求めるから、バックキャスティングが「今やること」につながります。
上位層向けの成果発表で締める
経営層の前で発表する場があると研修が締まり、上位層にも喜ばれます。成果が出るまで時間のかかる次世代リーダー育成だからこそ、経営層が変化を直接目撃する接点をつくることが、施策の継続を支えます。
5つに共通するのは、候補者の意欲や才能に頼らず、仕組みで未来起点の思考を引き出しているという点です。次世代リーダー育成は「見えない能力」を育てる難しい投資ですが、この事例が示すように、設計次第で候補者の発想は確実に変わります。まずは自社にある未来の知見の棚卸しと、「未来の当事者に会わせる場」を誰とつくれるかの検討から始めてみてください。
次世代リーダー育成の設計をお考えの方へ
アイディア社の若手・次世代リーダー研修では、本記事のようなバックキャスティング型の育成をはじめ、貴社の状況に合わせた次世代リーダー育成プログラムを設計しています。早期選抜の進め方や研修の組み立てについて、まずはお気軽にご相談ください。
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