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研修事例

海外赴任者の個別ラーニングジャーニー6カ月の事例|赴任前から伴走する

海外赴任者に赴任前研修は実施していたが、着任後に会議進行や現地スタッフへのフィードバックで課題が噴出。赴任者は各国に少人数で分散し時差もあるため、集合研修が構造的に組めない状況にあった。

海外赴任者の個別ラーニングジャーニー6カ月の事例|赴任前から伴走する

研修テーマ

赴任前アセスメントを起点に、6カ月×6テーマの個別ラーニングジャーニーで滞在中を月次サイクルで伴走。

海外赴任者への教育というと、多くの企業では赴任前研修を思い浮かべます。異文化理解や語学、赴任先の基本情報を出発前にインプットする研修で、それ自体は今も有効です。しかし実際に赴任者を送り出してみると、本当に支援が必要になるのは現地に着いてからだと分かります。

本記事では、滞在中の海外赴任者を6カ月間、一人ひとり異なる内容の「個別ラーニングジャーニー」で伴走した研修事例を紹介します。赴任前のアセスメントから着任後の月次サイクルまで、設計の中身と意図を具体的に解説します。

赴任前研修だけでは守り切れない——現地に着いてからが本番だった

この企業では、以前から海外赴任者に赴任前研修を実施していました。内容も充実しており、赴任者からの評価も悪くありません。それでも着任後しばらくすると、現地の赴任者から「会議をうまく仕切れない」「現地スタッフへのフィードバックが伝わらない」といった声が人事に届くようになりました。

原因は研修の質ではなく、タイミングと粒度にあります。赴任前に教えられるのは、どの赴任者にも共通する一般論までです。ところが着任後に赴任者が直面するのは、特定の国、特定の職場、特定の相手との具体的な場面です。赴任前と着任後では、備えられることの性質がそもそも違います。

赴任前研修で備えられること

異文化理解の基礎知識

コンテクストの高低や権力格差など、文化差の一般的なフレームを学ぶ

語学・コミュニケーションの土台

ビジネス英語や基本的な伝え方を、出発までに底上げしておく

赴任先の基本情報

国の商習慣やマナーなど、事前に調べれば分かる知識を押さえる

着任後に実際に起こること

→ 一般論が「自分の相手」に当てはまらない

向き合うのは文化の平均像ではなく、特定の上司・部下・顧客という個人

→ 役割に直結した実践場面が毎週来る

会議の仕切り、交渉、現地スタッフの育成など、待ったなしの場面が続く

→ 課題が出るタイミングが人によって違う

着任1カ月目でつまずく人もいれば、半年後に部下育成で悩む人もいる

変わらない前提:赴任前研修が無駄なのではなく、赴任前には決め打ちできない課題が着任後に出てくる——支援の主戦場は滞在中にあります。

この対比を人事の立場から見ると、支援の空白がどこにあるかがはっきりします。赴任前は手厚く支援しているのに、課題が本当に噴き出す滞在中は現地任せになっている——多くの企業で起きている構図です。

では、滞在中の赴任者に集合研修を用意すればよいかというと、それも現実的ではありません。海外赴任者は各国に1名か2名ずつ分散していて、時差もあり、抱えている課題もバラバラです。同じ日時に同じ内容で集めるという集合研修の前提が、そもそも成立しない対象なのです。そこでこの企業が選んだのが、赴任者一人ひとりに合わせて中身を組む「個別ラーニングジャーニー」でした。

一人ずつ違う前提から始める——赴任前アセスメントで6カ月の中身を決める

個別ラーニングジャーニーの出発点は、研修ではなくアセスメントです。この企業では赴任の内示が出た段階、つまり赴任前から支援を開始しました。本人へのインタビューで現地での仕事内容と今後のミッションを確認し、代表的なビジネス場面のロールプレイで現在の実力を診断し、そのうえで本人と会社のニーズをすり合わせて、6カ月で取り組むテーマを決めていきます。

なぜ最初にここまで手をかけるのか。理由は、海外赴任者ほど「標準カリキュラム」が成立しない対象はいないからです。同じ会社の赴任者でも、次の6つの変数がすべて人によって異なります。

赴任先の国

米国と東南アジアでは、商習慣も求められる振る舞いもまったく違います。

現地の文化

権力格差やコンテクストの高低など、同じ地域内でも職場文化は異なります。

現地での立場

拠点長として赴く人と、専門職として合流する人では求められる力が違います。

仕事の内容

営業、製造、管理部門——日々直面するビジネス場面が職種ごとに変わります。

本人のスキル

語学力も、会議や交渉の経験値も、赴任者ごとに出発点が異なります。

向き合う相手

現地の部下、本社の上司、顧客——最終的には文化ではなく個人と向き合います。

人事の立場でこの6つを眺めると、集合研修が機能しない理由が構造として見えてきます。どの変数を基準にクラス分けしても、残り5つの変数がバラバラのままだからです。一方で、6変数の組み合わせは無限でも、そこで必要になるスキルには型があります。この企業が使ったのが、次の3軸のメニューです。

海外赴任者向けテーマメニューの3軸——「分かる」から「動かす」へ

UNDERSTAND|分かる

現地で起きていることを、文化の枠組みで正しく読み解く

COMMUNICATE|伝える

自分の考えを、相手に届く形で発信する

MANAGE|動かす

組織と人を動かして、ビジネスの成果につなげる

▼ アセスメントの結果に合わせて、この中から6カ月分のテーマを選ぶ
1

異文化を読み解くフィルターを持つ

UNDERSTAND

コンテクストの高低、権力格差の大小、個人主義と集団主義、全体重視と詳細重視。現地の「なぜ?」を説明できる枠組みを先に持ちます。

赴任者の典型場面:指示したはずの仕事が進んでいない——怠慢ではなく、文化フィルターの違いが原因のことが多い場面です。

2

伝えるスキルを場面別に鍛える

COMMUNICATE

ロジック、プレゼンテーション、ミーティング、電話会議・ビデオ会議、ストーリーテリング、ライティング。本人が毎週直面する場面から優先順位をつけます。

赴任者の典型場面:日本語なら仕切れる会議が、英語になると発言のタイミングすらつかめない、という悩みに直結します。

3

人と組織を動かす力に仕上げる

MANAGE

影響力、モチベーション、部下育成、エグゼクティブプレゼンス、ファシリテーション、ネゴシエーション、フィードバック。赴任者の役割そのものに直結する領域です。

赴任者の典型場面:現地スタッフへのネガティブフィードバックなど、日本のやり方をそのまま持ち込むと関係を壊しかねない場面です。

この設計で注目したいのは、個別対応でありながら「ゼロからのオーダーメイド」ではない点です。個別化された育成は以前から理想とされてきましたが、運営の手間と一人あたりのコストが壁になり、なかなか実現しませんでした。この事例では、提供可能なテーマをあらかじめメニューとして持ち、アセスメントの結果に合わせて選ぶ方式にすることで、個別性と運営の現実性を両立させています。人事担当者が自社で検討する際も、「何でも対応します」ではなく「このメニューの中から本人に合わせて組む」という発想が出発点になります。

アイディア社のグローバル人材育成プログラムでは、実力診断「グローバル人間ドック」を起点に、赴任者一人ひとりに合わせた育成を設計しています。

▶ グローバル人材育成研修を見る▶ グローバル人間ドックを見る

6カ月×6テーマの伴走——1カ月を4週間に分解した運用サイクル

テーマが決まったら、いよいよ6カ月の伴走が始まります。全体像はシンプルで、事前アセスメントで診断した実力を出発点に、月に1テーマずつ、合計6つのテーマに取り組み、最後に事後アセスメントと成果発表で締めくくります。単発の研修を6回並べるのではなく、6カ月を通した一つのジャーニーとして設計されている点がポイントです。

個別ラーニングジャーニー6カ月の全体像

赴任前|事前アセスメント

インタビューとロールプレイで実力を診断し、6カ月分のテーマを本人と合意する

1〜3カ月目|テーマ1〜3

着任直後の課題に直結するテーマから着手。月ごとに1テーマを回す

4〜6カ月目|テーマ4〜6

現地での経験が増えた段階で、より難度の高いマネジメント領域へ進む

修了時|事後アセスメント・成果発表

事前事後を比較し、取り組み・成果・身についたスキルを発表する

この全体像で伝えたいのは、テーマの順番に意味があるということです。着任直後は文化の読み解きや基本的なコミュニケーションから入り、現地での経験が積み上がった後半で、部下育成やネゴシエーションといった難度の高いマネジメント領域に進みます。赴任者がその時々で直面している課題と、取り組むテーマがずれないように順序を組んでいます。

では、1カ月の中では何が起きているのか。ここがこの設計の核心です。月に1回の集合研修とは違い、1カ月を4週間に分解し、学びと実践を往復させる小さなサイクルを回します。

1カ月(1テーマ)の中で回すサイクル

1週目

インプット

10分未満の映像で要点を学ぶ。まとまった時間を取れない赴任者でもすき間時間で完了できる

2〜3週目

定着演習+実践

1対1の演習(45分)で学びを定着させ、現地の実際の業務でそのまま使ってみる

2〜3週目

コーチング

現地で使ってみて出た手応えと壁を、コーチと対話しながら修正していく

4週目

振り返り

1カ月の学びと実践を振り返り、次のテーマにつなげる

このサイクルが効くのは、赴任者が「今まさに現地で直面している課題」をその月のテーマに持ち込めるからです。インプットは最小限に絞り、時間の大半を演習・実践・コーチングという実際に手を動かす部分に割いています。学んだことを翌週には現地の会議や部下との面談で試し、うまくいかなかった点を持ち帰ってコーチと修正する——この往復があるから、知識が現場で使える力に変わっていきます。人事にとっても、赴任者を現地に置いたまま、月次のリズムで確実に伴走できる仕組みになっている点が導入判断の材料になります。

何をどう測ったか——取り組み・成果・スキルの3点共有と事前事後比較

6カ月のジャーニーの終わりには、成果発表の場を設けます。ここで赴任者本人が共有するのは、次の3点です。1つ目は、6カ月間どのテーマにどう取り組んだかという「取り組んだ内容」。2つ目は、その結果として現地の仕事で何が変わったかという「得られた成果」。3つ目は、ジャーニーを通じて何ができるようになったかという「身についたスキル」です。

この3点を本人の言葉で語ってもらうことには意味があります。研修を「受けた」で終わらせず、自分の仕事にどう効いたかを言語化させることで、学びが本人の中に定着します。人事にとっても、赴任者一人ひとりがどんな課題に向き合い、どう乗り越えたのかが具体的に見えるようになります。

ただし、本人の自己申告だけでは主観に偏ります。そこでこの設計では、冒頭の事前アセスメントと同じ形式で事後アセスメントを実施し、開始時と修了時のスコアを比較します。同じ物差しで測るからこそ、6カ月でどれだけ伸びたかを客観的に確認できます。自己申告による振り返り、客観的なアセスメントによる比較、そして職場での実際の変化——この複数の角度から成果を捉えることで、「なんとなく良かった」ではない、説明できる成果になります。

実際にこの測定方法でどれだけの変化が出るのかは、同じ設計思想で製薬会社のグローバルマネージャーを育成した事例で、会議を仕切る力が6カ月で大きく向上するなど、具体的な数値とともに紹介しています。定量的な成果の中身を確認したい方は、あわせてご覧ください。

この個別ラーニングジャーニーの設計は、アイディア社が世界最大の人材育成国際会議ATDで得た知見をもとにしています。設計の背景にある「単発研修からジャーニーへ」という潮流は、ATD報告レポートで詳しく解説しています。

▶ ATD2025報告レポートを無料ダウンロード

自社で個別ラーニングジャーニーを検討する3ステップ

ここまで紹介した事例を、自社の海外赴任者育成にどう持ち込めばよいか。いきなり大がかりな仕組みを作る必要はありません。人事担当者がまず確認すべきことは、次の3ステップに整理できます。

1

対象を棚卸しする——集合研修が組めない対象こそ、個別ジャーニーが効く

自社の海外赴任者を書き出し、「各国に少人数で分散しているか」「時差があるか」「抱えている課題が人によって違うか」を確認します。ここに複数当てはまるなら、集合研修は構造的に組みづらく、個別ジャーニーの適性が高いサインです。逆に同じ拠点にまとまった人数がいるなら、集合研修のほうが効率的な場合もあります。

2

提供できる内容を「メニュー化」する——ゼロからのオーダーメイドにしない

個別対応と聞くと「一人ずつゼロから作る」と身構えがちですが、それではコストも手間も跳ね上がります。事例のように「分かる・伝える・動かす」といった軸で提供可能なテーマをあらかじめ型として持ち、アセスメントの結果に合わせて選ぶ形にすれば、個別性と運営の現実性を両立できます。まずは自社で用意できる育成テーマを洗い出すことから始めます。

3

運用のリズムと伴走体制を決める——月次サイクルと講師の稼働を見積もる

最後に、6カ月をどう回すかを具体化します。事例では1カ月を4週間に分け、インプット・演習・実践・コーチング・振り返りを回していました。この運用を支えるのは、短い映像教材と、1対1の演習・コーチングを担う講師の稼働です。自社の何人を対象に、どのくらいの講師リソースが必要かを見積もることで、現実的な導入計画が描けます。

この3ステップは、外部に委託する場合でも自社で内製する場合でも、検討の出発点になります。特に重要なのは1つ目の棚卸しです。海外赴任者が各国に分散していて集合研修が組みにくいという状況は、多くの企業に共通します。その状況こそが、個別ラーニングジャーニーという選択肢が生きる場面です。

よくある質問

赴任前研修は、この個別ジャーニーに置き換えるべきですか?

置き換えではなく、接続してお考えください。赴任前研修は、どの赴任者にも共通する異文化理解や語学の土台を出発前に整える役割があり、今も有効です。個別ラーニングジャーニーは、その土台の上で、着任後に一人ひとり異なる形で出てくる具体的な課題に伴走するものです。この事例でも、赴任前のアセスメントから支援を始め、赴任前研修と滞在中の伴走を地続きの設計にしています。

赴任者は各国に分散していて時差もあります。どう運用するのですか?

個別ラーニングジャーニーは、そもそも分散・時差の環境を前提に設計されています。インプットは10分未満の映像教材で、赴任者が自分の都合の良い時間に視聴できます。演習やコーチングはオンラインの1対1で行うため、同じ日時に全員を集める必要がありません。集合研修が組みにくい分散環境こそ、この方式が力を発揮する場面です。

6カ月のテーマは、途中で変更できますか?

はい、現地の状況に合わせて調整することを想定した設計です。テーマは赴任前のアセスメントで大枠を合意しますが、着任後に想定と違う課題が浮上することは珍しくありません。毎月の振り返りで進捗と現地の状況を確認するため、その時々で赴任者が最も必要としているテーマに重点を移していくことができます。むしろ、現地で今起きている課題を持ち込めることが、この個別ジャーニーの利点です。

何人くらいから実施できますか?

個別ラーニングジャーニーは一人ひとりに合わせて組むため、少人数、極端には1名からでも実施できます。海外赴任者は各拠点に1〜2名というケースが多く、集合研修では成立しない規模でも取り組める点が特徴です。対象人数や赴任先、育成のねらいをうかがったうえで、無理のない運用計画をご提案します。

海外赴任者の育成を、赴任前から滞在中まで地続きで設計しませんか

各国に分散する赴任者一人ひとりに、集合研修では届かない伴走を。アイディア社は実力診断を起点に、6カ月の個別ラーニングジャーニーを設計・運用します。対象人数や課題に合わせたご提案をいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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