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研修事例

交渉力強化研修の事例|受講者の成長4段階で設計する

長期計画業界(重工・建設・自動車など)で顧客と強い上下関係にある、弱い立場のサプライヤー。研修室のロールプレイはできても、実戦の交渉ではプレッシャーで習ったことを活かせず、すぐに諦めてしまうことが課題だった。

交渉力強化研修の事例|受講者の成長4段階で設計する

研修テーマ

交渉力強化研修(事前インプット+基本・応用・実践・定着の4段階+個別定着フォロー)。受講者の心理成長4段階を起点に設計した。

交渉力の研修を実施しても、「研修のロールプレイはうまくできたのに、いざ本番の交渉になると相手のプレッシャーに飲まれて、習ったことを活かせないままあきらめてしまう」――交渉力強化を検討する人事のご担当者から、こうした声をよく伺います。とくに、長期の計画を前提とする業界(重工・建設・自動車など)で、顧客との上下関係が強く、コストダウンの圧力が大きい場合ほど、この傾向は顕著です。

この記事でご紹介するのは、その「実戦で活かせない」という壁を、受講者の心理が4段階でどう変わるかを設計の起点に置くことで越えていった、交渉力強化研修の設計事例です。基本・応用・実践・定着の4段階で受講者の気持ちがどう動いたのか、そして実戦で諦めさせないために何をしたのかを、自社の研修設計にそのまま応用いただけるよう、設計の意図まで掘り下げてご紹介します。なお、そもそもWin-Winの交渉とは何か、なぜ立場が弱いと合意でつまずくのかは、WIN-WINコミュニケーションとは?立場が弱くても合意を得る方法で解説していますので、本記事は「どう研修に落とし込むか」に絞ってお伝えします。

CASE STUDY:交渉力強化研修(基本・応用・実践・定着の4段階)

BEFORE

長期計画業界の弱い立場のサプライヤー。研修室のロールプレイはできるのに、実戦の交渉ではプレッシャーに飲まれ、習ったことを活かせずにすぐ諦めてしまう

AFTER

受講者の心理が4段階で変化し、「以前と全然違う。ネゴは難しくない、結構できるかも」へ。個別の定着フォローで、実戦でも使えるスキルとして定着した。

やったこと

① 教える順番ではなく「受講者の心理がどう動くか」を起点に、基本→応用→実践→定着の4段階でプログラムを設計した。② 事前インプット(Promote配信)と、講師との1対1の電話トレーニング(@20分)で、グループ演習に頼らず一人ひとりの力を底上げした。③ 実戦のプレッシャーで諦めないよう、研修後に個別の定着フォローを数回入れ、「使えるレベル」まで橋渡しした。

ポイント:交渉研修の成否は「教えた内容」よりも、「受講者の心理を、実戦で使えるところまで動かせたか」で決まります。

状況:交渉ロールプレイはできるのに、なぜ実戦で諦めるのか

この事例のクライアントは、長期の計画を前提とする業界(重工・建設・自動車など)で事業を営む、いわゆる「弱い立場のサプライヤー」です。顧客との上下関係が強く、コストダウンのプレッシャーも大きい。そのシビアな状況で少しでも自社に有利な合意を引き出すには、強い交渉力が欠かせません。そこで交渉力強化研修を導入したものの、当初ぶつかったのが「研修と実戦のギャップ」でした。

交渉研修には特有の落とし穴があります。研修中のロールプレイなら、多くの受講者は難なくこなせます。難しいのはその先です。実際の交渉の場に立つと、相手からの強いプレッシャーとストレスで、研修で習ったことを活かせないまま、すぐに諦めてしまう。同じ受講者・同じスキルでも、置かれた環境で発揮度がまるで変わってしまうのです。

研修室でのロールプレイ

実戦の交渉

相手役は講師や同僚

落ち着いて考える時間があり、失敗しても気楽に試せる。

相手は決裁権を持つ顧客

上下関係とコスト圧に萎縮し、切り出す前から気持ちで負ける。

手順を思い出せる

キーワード・分析・提案の型を、順を追って落ち着いて再現できる。

手順が飛ぶ

プレッシャーで頭が真っ白になり、習ったはずの型が出てこない。

やり直しがきく

うまくいかなくても、もう一度やればよいという安心感がある。

一度で関係が決まる

やり直せない緊張感から、粘らずに早々と引いてしまう。

ここが分かれ目:問われているのは研修の"質"ではなく、研修室から実戦への"橋渡し"がどこまで設計されているか、です。

つまり、設計で問うべきは「どうすれば良い交渉テクニックを教えられるか」ではなく、「どうすれば受講者が、実戦のプレッシャーの中でもそのテクニックを使えるようになるか」です。この事例が「受講者の心理」を設計の起点に据えたのは、まさにこの橋渡しを正面から解くためでした。次章では、その4段階の設計を具体的に見ていきます。

やったこと:受講者の心理成長4段階で設計する

この交渉力強化研修は、7月から10月にかけて実施しました。特徴は、いきなり研修当日から始めるのではなく、事前と各回のあいだに個別の仕掛けを挟んでいることです。まず全体像を押さえましょう。

プログラム全体の流れ(7月〜10月)

事前

事前インプット

Promoteで課題を配信

基本編(半日)

ネゴの基本

キーワード・分析・提案

応用編(半日)

深める

分析・提案を掘り下げる

実践編(半日)

自社ケース

1対1のロールプレイ

定着編

個別フォロー

数回に分けて反復

全期間を通じて:講師との1対1の電話トレーニング(@20分)を挟み、グループ演習では埋もれがちな一人ひとりの弱点を個別に伸ばした。

単発の集合研修ではなく、事前・各回・事後に個別の接点を挟むことで、一人ひとりの弱点にも手を届かせています。ただ、この事例の本当の設計思想は「順番」そのものではありません。各段階で受講者の"気持ち"をどう動かすか――そこに設計の起点があります。

受講者の心理は4段階でこう動いた

基本編

ネゴの基本を知る

「ネゴって悪くないかも。喧嘩でもつらい話でもない、これならできるかも」

応用編

分析・提案を深める

「まだ難しいが、少しずつやることが分かってきた。もう少し練習すればいける」

実践編

自社ケース+1対1

「なるほど、実際はこう使うのか。自信はないが、自分のベストを尽くそう」

定着編

個別フォローで反復

「何回も繰り返すと自分のものになる。以前と全然違う。結構できるかも」

注目すべきは、スキルの説明ではなく"気持ちの変化"が段階的に前進している点です。最初の「これならできるかも」という小さな安心が、最後には「以前と全然違う」という手応えに変わっていく。設計の起点を「教える順番」ではなく「受講者の心理がどう動くか」に置くと、各回のゴールは"何を教えたか"ではなく"受講者がどんな気持ちになれば次に進めるか"で定義できます。この積み重ねが、実戦のプレッシャーに耐える土台をつくります。

では、その心理を動かすために、各回で具体的に何を演習させたのか。交渉を「勝ち負け」ではなく「お互いが納得できる答えを一緒に見つける」ものへ捉え直す考え方そのものは、研修の土台として最初に共有しています(この考え方の詳細は前掲のWIN-WINコミュニケーション解説をご覧ください)。ここでは、その考え方を体に入れるための"演習の中身"を3つ紹介します。

分析の演習|ヒアリングと情報整理

実際の商談を想定し、相手の要望の裏にある事情をヒアリングで引き出し、情報を整理する練習を反復した。交渉の入り口でつまずかないための土台づくり。

提案の演習|受け入れやすい形にする

自社のケースを題材に、相手が受け入れやすい形で提案する練習を、ペアワークとロールプレイで繰り返した。長期の関係を壊さず、少しでも有利な合意に近づける打ち手。

個別スピードロールプレイ|癖をその場で直す

講師と1対1で、短時間のロールプレイとその場のフィードバックを繰り返した。グループでは拾いきれない一人ひとりの癖を修正し、実戦での再現性を高めた。

これらに共通するのは、"知識を教える"より"手を動かして体に入れる"ことに時間を割いている点です。とくに講師との1対1のスピードロールプレイは、グループ演習では拾いきれない個人の癖をその場で直せるため、実戦での再現性を大きく高めます。

ここまでが「やったこと」です。では、この設計は実際に成果につながったのでしょうか。次章では、同じクライアントの1年後を見ていきます。

結果:1年後も使えている――定着フォローが効いた

この設計が実際に効いたことは、同じクライアントの1年後の姿にはっきり表れました。翌年、交渉する機会の多い社員は、研修で身につけたスキルを現場で活かし続け、日々成果を出していたのです。研修が「分かった」で終わらず「できる」に変わっていた――設計の狙いどおりの結果でした。

ただし、新たな課題も見えてきました。交渉する機会の少ない社員は、せっかく身につけたスキルを使う場面が乏しく、時間とともに腕が鈍っていきます。同じ研修を受けても、その後の「使う頻度」で差が開いてしまうのです。ここが、定着を本気で考えるときに避けて通れないポイントでした。

交渉機会が多い社員

交渉機会が少ない社員

使う頻度

日常的に交渉の場があり、学びを繰り返し使える。

使う頻度

交渉の場がめったになく、使わないまま時間が過ぎる。

1年後のスキル

使い続けて定着し、成果を出し続けている。

1年後のスキル

使う機会がないうちに、少しずつ腕が鈍っていく。

必要な手当て

追加のフォローは基本的に不要。

必要な手当て

スキルを錆びさせない、維持の仕組みが要る。

だから何:研修の成否は"受けた直後"ではなく"その後どれだけ使うか"で決まります。使う機会の少ない人にこそ、維持の仕組みが要ります。

そこでこのクライアントは、翌年、交渉力を「キープするための軽いフォロー」を追加しました。講師との1対1の個別トレーニング(@20分)を、月1回程度の低頻度で回す。受講者のニーズに合わせたオリジナルケースで演習し、講師が個別にフィードバックする。頻度を上げて負担をかけるのではなく、"細く長く"続けることでスキルを錆びさせない設計です。現場での定着を軽いフォローで支える考え方は、フォローコーチング20分で定着を支えた事例でも詳しくご紹介しています。

数字の派手なBEFORE/AFTERはありません。それでも、「1年後も現場で使えている」という事実こそ、交渉研修にとって最も価値のある成果です。最後に、この事例から自社の交渉研修に持ち帰れるポイントを整理します。

自社で"実戦で使える"交渉研修を設計するには

この事例から自社に持ち帰れる要点は、シンプルです。交渉研修が実戦で使えるかどうかは、「良いテクニックを教えたか」ではなく、「受講者が実戦のプレッシャーの中でも使えるところまで設計したか」で決まります。まず、自社の交渉研修が今どの段階にあるかを確かめてみましょう。

自社の交渉研修は"実戦で使える"設計か

低:教えて終わり
中:演習はあるが個別・定着なし
高:実戦まで設計

多くの交渉研修は「中」で止まります。ロールプレイはあるものの、そこで終わってしまい、実戦への橋渡しがない状態です。「高」との差を生むのは、次の要素です。教える順番ではなく「受講者の心理がどう動くか」を起点に各回のゴールを決める。交渉を勝ち負けにせず、Win-Winで長期の関係を守る(考え方の詳細は前掲のWIN-WINコミュニケーション解説へ)。グループ演習だけに頼らず、1対1の個別演習で一人ひとりの癖を直す。実戦で諦めさせないよう、研修後に"細く長い"定着フォローを入れる。この4つがそろって初めて、研修は「分かった」から「実戦で使える」へと届きます。

よくある質問

交渉力研修は、どのくらいの期間・回数が必要ですか?

この事例では、事前インプットに加え、基本・応用・実践(各半日)と定着フォローを、7月から10月の約4カ月で実施しました。大切なのは回数そのものよりも、各回のあいだに個別の接点(1対1の電話トレーニングや定着フォロー)を挟めるかどうかです。ここが、実戦で使えるかどうかの分かれ目になります。

ロールプレイだけで、本番の交渉に活きますか?

研修室のロールプレイと実戦の交渉では、受けるプレッシャーの強さが大きく異なります。この事例では、講師との1対1のスピードロールプレイで個人の癖をその場で直し、さらに研修後の個別定着フォローで実戦への橋渡しをしました。この二段構えが、本番で諦めない土台になります。

立場が弱くても、交渉できるようになりますか?

なります。出発点は、交渉を「勝つか負けるか」ではなく「お互いが納得できる答えを一緒に見つける」ものへと捉え直すことです。立場が弱い側ほど、この考え方が効きます。考え方の詳しい解説は、WIN-WINコミュニケーションとは?立場が弱くても合意を得る方法をご覧ください。

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