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2026.06.12管理職研修

管理職になる前に身につけるべきこと──次世代リーダーのチームマネジメント基礎

下期の階層別研修において、次世代リーダー(管理職になる一歩手前の中堅・リーダー候補)の育成は、多くの人材育成担当者にとって重要なテーマです。しかし、その中身をよく見ると、従来の新任管理職研修とほとんど変わっていないケースが少なくありません。現役でマネジメントをしている管理職と、これからマネジメントを学ぶ次世代リーダーとでは、研修で身につけるべきことが大きく異なります。本記事では、管理職になる前に何を準備させておくべきかを、海外の調査データと自社フォーラムの知見から整理します。

なぜ「管理職になってから」では遅いのか

「マネジメントは管理職になってから学べばよい」という考え方は根強く残っています。しかし、海外の調査はその常識に警鐘を鳴らしています。リーダーシップ開発の研究で知られるケン・ブランチャード社がまとめたデータによると、新任管理職の約6割は、能力が十分に整わないまま最初の2年間を過ごし、目標を達成できずにいます。その結果、部下の離職率が上がり、チーム全体の業績にも影響が及びます。さらに見過ごせないのは、多くの新任管理職が、誰の指導も受けないまま最初の1年でマネジメントのスタイルを固めてしまう点です。そして、初めてリーダーシップ研修を受けるのは、平均でマネージャー経験10年目。その頃には、望ましくないクセがすっかり定着しています。

60%
新任管理職が最初の2年で目標未達
1年目
指導なくマネジメントのクセが固まる
10年
初のリーダー研修を受けるまでの平均

ここから人材育成担当者が読み取るべきは、「悪いクセが固まる前に手を打つ」という発想です。管理職になってから矯正しようとすると、すでに定着した習慣と向き合うことになり、本人にも負荷がかかります。そうではなく、なる前の段階で、マネジメントの土台となる考え方とスキルにふれさせておく。それが、管理職としての立ち上がりの2年間を無駄にしないための、最も確実な準備になります。

同じ方向を、マッキンゼーの調査も示しています。自社のリーダーシップ開発を「効果的だ」と考える企業はわずか7%にとどまります。多額の投資をしながら成果につながらない背景には、従来のピラミッド型の育成では「変化のスピードに追いつく速さでリーダーを育てられない」という構造的な問題があります。マッキンゼーが挙げる改善策の一つが、育成をより早いタイミングで始めることです。管理職研修そのものが陥りがちな落とし穴は管理職研修の落とし穴と改善策で整理していますが、本記事ではその一歩手前——管理職になる前に何を準備させるか——に焦点を当てます。

「管理職」と「管理職になる前」は何が違うのか

では、現役の管理職と管理職になる前の次世代リーダーでは、具体的に何が違うのでしょうか。アイディア社のマネージャー育成フォーラムでは、人材育成の観点から両者の違いを6つに整理しています。2021年・2022年と継続して提示してきた、定番の整理です。

管理職(現役マネージャー)

部下がいる

日々部下をマネジメントしており、育成も先輩が主体で進められる

マネジメントのイメージが具体的

実務を通じて、自分なりのマネジメント像を持っている

即戦力が求められる

今すぐマネージャーとして機能することが前提

今のビジネスをリードする

既存の戦略と共有された暗黙知を活かし、現在の事業を回す

部下とメンバーの協力で動く

自分の部下を通じて成果を出す

今すぐ成果が出せる

短期間で結果が見えやすい

管理職になる前(次世代リーダー)

部下がいない

マネジメントを実地で練習する機会が、普段の業務の中にない

マネジメントのイメージがない

経験がなく、漠然とした像しか持てていないことが多い

将来のリーダーシップが求められる

数年先に変化を牽引する力が期待されている

今後のビジネスをリードする

異なる暗黙知を持つメンバーを率い、知的創造やイノベーションで新しい事業を生む

上司とメンバーの協力が必要

部下がいないぶん、上司を巻き込み周囲の協力を得て動く

成果が出るまで時間がかかる

短期の成果が見えにくく、モチベーション維持が課題になる

研修設計への示唆:6つの違いはどれも「まだ部下がいない」ことに由来します。だからこそ、管理職研修の焼き直しでは機能しません。

表を縦に見ると、6つの違いはすべて、次世代リーダーが「まだ部下を持っていない」という一点に行き着きます。現役の管理職は、相談できる先輩や共有された暗黙知に支えられ、部下を通じて短期で成果を出せます。一方、次世代リーダーは、相談する先輩がいない立場で、異なる背景を持つメンバーを率い、知的創造やイノベーションで新しい事業を生むことを期待されます。求められるものが正反対である以上、研修で扱う内容も、成果の測り方も、管理職研修とは別物として設計し直す必要があります。次のセクションでは、この「部下がいない」という前提から生まれる3つの設計課題と、その処方を具体的に見ていきます。

次世代リーダーに固有の3つの設計課題と処方

ここからは、「部下がいない」という前提から生まれる、次世代リーダー育成に固有の3つの設計課題と、それぞれの処方を見ていきます。いずれも、管理職研修のやり方をそのまま持ち込むと空回りするポイントです。

1

実践の場がない(部下がいない)

普段の業務にマネジメントを練習する機会がありません。既存業務の中に試せる場面を意図的につくり、上司を巻き込みます。研修後は1週間以内に、プランニングのための個別コーチングを行うのが効果的です。現役管理職なら実践期間を踏まえて3〜6週間後が適切ですが、まだ実践の場がない次世代リーダーは、計画を立てられる早い段階で支援します。社外コーチを、業務調整役ではなくプランニングの相談相手として活用する方法もあります。

2

マネジメントのイメージがない

実際のビジネス場面に近いシミュレーションで疑似体験させます。メール中心のインボックス演習は判断力と優先順位のつけ方を試せ、ヒューマンスキルにはVRやインタラクティブビデオが有効です。鍵は、想像しやすい職場に近い設定と、一人ひとりへの細かい個別フィードバック。擬似体験を通じてマネジメント像が具体化し、本人の強みと弱みも見えてきます。

3

成果が出るまで時間がかかる

短期のビジネス成果ではなく、活動の中身で評価します。DX・イノベーション・グローバル展開など、今後の経営テーマに関わるプロジェクトに参加させ、その中での成長とプロジェクトの進み具合を見ます。成果発表では「このプロジェクトが会社にどう影響するか」「うまくリードする鍵は何か」「自分は何をするか」を語らせます。あわせて、身につけた力を管理職になるまで忘れないための、定期的なフォローを設計します。

3つの課題に共通するのは、いずれも「管理職研修のやり方をそのまま持ち込むと空回りする」という点です。部下を前提にした演習も、短期成果を前提にした評価も、次世代リーダーには合いません。逆に言えば、この3点さえ設計に織り込めば、部下がいない段階でも実りのある育成ができます。これらの設計を、現役管理職研修との違いとあわせてより具体的に知りたい場合は、次世代リーダー育成研修の設計法も参考になります。

何を優先して鍛えるか

では、限られた研修時間の中で、何を優先して鍛えればよいのでしょうか。手がかりになるのは、次世代リーダー自身が「今後の仕事で活用してみたい」と挙げたスキルです。マネージャー育成フォーラム2026の調査では、次のような結果が出ています。

次世代リーダーが「今後活用したい」スキル(マネージャー育成フォーラム2026調査)

質問・傾聴・場づくりが上位を占める(割合)

質問スキル
45%
雰囲気づくり
25%
巻き込み・対話
20%
オンライン対応
10%

読み取れること:上位2つ(質問スキル・雰囲気づくり)で全体の7割。まず「聞いて引き出し、話しやすい場をつくる」力から鍛えるのが、優先順位として理にかなっています。

つまり、次世代リーダーがまず求めているのは、相手から引き出し、話しやすい場をつくる力です。これらは「気づかせる(コーチング)」の中核であり、アイディア社のマネジメントシミュレーションでも、ティーチング・コーチング・モチベーション・プレゼンテーションの4領域のうち、管理職にならなくても使えるスキルとして優先的に扱っています。

ここに、前倒しで鍛えることの利点があります。質問・傾聴・巻き込みといったスキルは、管理職になってからだけでなく、今の後輩指導や会議、1on1でもすぐに役立ちます。だから、本人にとって学んだことが無駄になりません。近年は管理職になりたがらない若手の増加も課題ですが、こうした「すぐ使えて、小さな成功体験につながる」スキルから入ることで、マネジメントへの意欲そのものを育てることもできます。こうした次世代リーダー向けプログラムの具体的な内容は若手・次世代リーダー研修でご紹介しています。

よくある質問

Q. 次世代リーダー研修は、管理職研修と何が違うのですか?

最大の違いは「部下がいるかどうか」です。現役の管理職は部下を通じて短期で成果を出しますが、次世代リーダーは部下を持たない立場で、将来に向けてマネジメントを学びます。そのため、部下を前提にした演習や短期成果での評価はなじみません。研修で扱う内容も成果の測り方も、管理職研修とは別物として設計し直す必要があります。

Q. 部下がいないのに、マネジメント研修を受ける意味はありますか?

あります。むしろ、部下を持つ前の段階で土台をつくっておくことが重要です。新任管理職の約6割は最初の2年で目標を達成できず、多くは指導のないまま最初の1年で望ましくないクセを固めてしまうという調査もあります。クセが固まる前にマネジメントの考え方と基本スキルにふれさせておくことで、管理職としての立ち上がりがスムーズになります。

Q. いつから始めるのが良いですか?

「管理職になる手前」が一つの目安です。海外の調査では、初めてリーダーシップ研修を受けるのは平均で経験10年目とされ、それでは遅すぎます。マッキンゼーも、育成をより早いタイミングで始めることを改善策の一つに挙げています。悪い習慣が固定する前の段階で始めるのが効果的です。

Q. 短期の成果が出にくい次世代リーダーは、どう評価すればよいですか?

短期のビジネス成果ではなく、活動の中身で評価します。DX・イノベーション・グローバル展開など、今後の経営テーマに関わるプロジェクトに参加させ、その中での成長とプロジェクトの進み具合を見ます。成果発表では「このプロジェクトが会社にどう影響するか」「うまくリードする鍵は何か」「自分は何をするか」を語らせると、本人の成長が可視化されます。

次世代リーダーの育成設計について

管理職になる前の準備は、設計次第で立ち上がりの2年間を大きく変えます。貴社の状況に合わせた次世代リーダー育成のプログラム設計について、お気軽にご相談ください。

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