IDEA DEVELOPMENT株式会社 アイディア社
企業向け社員研修会社 全国対応の人材育成企業
公式ブログ
2026.07.01管理職研修

受ける側を育てるフィードバック|Jack Zengerの逆転発想

管理職研修のご相談でいちばん多いのが、「フィードバックが部下に響かない」という悩みです。多くの上司は、まず伝え方を磨こうとします。言葉選び、タイミング、良い点と悪い点を挟むサンドイッチ話法——。ところが、いくら伝え方を工夫しても部下が動かない、あるいは萎縮してしまう。この行き詰まりに対して、Zenger Folkman社のCEO ジャック・ゼンガー氏は、ATD国際会議2024(ATD ICE 2024)のセッション「Feedback-Fueled Leadership」で明快な答えを示しました。

それは、「フィードバックは、伝える側ではなく“受ける側・求める側”を先に育てなさい」という逆転の発想です。伝え方の技術を追いかけていた管理職にとって、これは発想の向きを180度変える提案でした。本記事では、この逆転の発想を、11万人規模の360度評価データとともに読み解き、明日の1on1から始められる形まで落とし込みます。

なぜ「上手な伝え方」を学んでも、フィードバックは機能しないのか

そもそも私たちは、フィードバックにどんなイメージを持っているでしょうか。ゼンガー氏が挙げるのは、「ネガティブなもの」「成長にはつながる」「もっと欲しい」「情緒的になるリスクがある」、そして「(上司でさえ)緊張する」という、相反する感情の束です。つまりフィードバックは、必要だとわかっていても、渡す側にも受け取る側にも心理的な負荷がかかる行為なのです。伝え方の巧拙以前に、この負荷が場を固くしています。

さらに厄介なのが、フィードバックの“中身”に対する根深い誤解です。ゼンガー氏によれば、マネージャーの82%が「フィードバック=改善点の指摘」だと考えています。多くの上司にとって、フィードバックとはまず“ダメ出し”のこと。この前提を抱えたまま伝え方だけを磨いても、部下にとっては「また指摘される時間」でしかありません。響かないのは技術の問題ではなく、前提の問題なのです。

82%
フィードバックを
「改善点の指摘」と誤解する上司
5:1
成果を生む
ポジ:ネガの理想比
78
フィードバックを“求める”上司の
「伝える力」パーセンタイル

この3つの数字が指すのは、同じひとつの結論です。部下にフィードバックが届かないのは、あなたの伝え方が下手だからではありません。「フィードバック=上司が部下にダメ出しするもの」という前提そのものを設計し直す必要がある、ということです。誤解の広さ(82%)を出発点に、成果を生む配分(5:1)と、求める上司が伝える力でも上位に立つ事実(78パーセンタイル)へと、この記事は進んでいきます。ここからがゼンガー氏の逆転の発想の入口です。

Jack Zengerの逆転の発想——「伝える」前に「求める」

逆転の発想の核心は、とてもシンプルです。フィードバックというと、上司から部下へ「伝える」ものだというイメージが強い。ゼンガー氏は、その矢印を反対に向けます。フィードバック文化をつくりたいなら、まず上司が部下から「求める」。「私のマネジメントで、もっとこうしてほしいことはありますか」と、上司の側からフィードバックを取りにいくのです。伝え方の改善は、その後でよい——これがゼンガー氏の主張です。

なぜ「求める」ことが先なのでしょうか。上司が部下からフィードバックを求めると、職場に次の4つの変化が起きるからです。いずれもゼンガー氏のデータにもとづく指摘です。

フィードバックの量が増え、全員が慣れる

フィードバックが特別なイベントではなく日常の会話になり、渡すことへの心理的なハードルが職場全体で下がっていきます。

見本

上司が「受ける見本」になる

上司が率先して受け止める姿を見せることで、部下も安心してフィードバックを渡せるようになっていきます。

強み

強みを活かす方向へ持っていける

対話の焦点が「改善点の指摘」から「その人の強みをどう伸ばすか」へと、自然に広がっていきます。

自律

メンバーの自律につながる

指示を待つのではなく、自分で考えて動き、まわりにも働きかける自律したメンバーが育っていきます。

この4つに共通するのは、フィードバックの主役が「上司の伝える技術」から「職場全体が扱える力」へ移っている点です。あなたが完璧に伝えられるようになる必要はありません。あなたが先に求める姿を見せれば、フィードバックは一人の技術ではなく、チームの習慣に変わっていきます。まず自分から一問、部下に求めてみる。それがフィードバック文化への最初のスイッチです。

データが示す——「求める上司」ほど評価も部下育成もうまくいく

「部下に意見を求めるなんて、なめられそうで怖い」。管理職研修でよく出てくる本音です。しかしゼンガー氏のデータは、その不安を正面から打ち消します。ゼンガー氏は11万人以上のマネージャーの360度評価データベースを分析し、「フィードバックを求める頻度」と「360度評価の結果」が直接つながっていることを突き止めました。部下に求める上司ほど、まわりからの評価も高いのです。

とりわけ意外なのが、次の事実です。部下からフィードバックをよく求める上司は、自分が「フィードバックを伝える力」でも高く評価されます。求める頻度が高い層の「伝える力」は、パーセンタイルで78。つまり、求めることは伝える力の弱さの表れではなく、むしろ伝える力の高さと共存しているのです。

フィードバックを「求める上司」の“伝える力”

よく求める上司 vs 全体の中央値(「伝える力」のパーセンタイル)

フィードバックをよく求める上司
78
全体の中央値
50

求めることは、伝える力の弱さではありません。よく求める上司ほど、自分の「伝える力」でも上位(78パーセンタイル)に立っています。

では、フィードバックを求める上司には、どんな特徴があるのでしょうか。ゼンガー氏が挙げるのは、部下育成を重視していること、聞く力が強いこと、メンバーを動機づけていること、そしてチームのエンゲージメントが高いことです。求めるという一つの行動が、育成・傾聴・動機づけといったマネジメントの土台とセットで現れます。加えて、求める上司には、部下との人間関係が築かれ、心理的な距離が縮まり、メンバーから考えやアイデアを多く引き出せるという実利もあります。

ここまでを整理すると、「求める」は感情論ではなく、評価・育成・関係構築のすべてに効く一手だとわかります。部下に意見をもらうことは、上司の権威を下げる行為ではありません。むしろ、評価される上司が当たり前にやっていることなのです。フィードバックを含め、評価される上司の行動を実証データで体系化したJack Zengerの実証リーダーシップ12項目も、あわせて確認しておくと理解が深まります。

求めるだけでは足りない——ポジティブから始める「5:1」の順序

求めることの効果はわかりました。ただし、「求めさえすれば何でも言い合える」わけではありません。ゼンガー氏はもう一つ、順序の重要性を示します。まず押さえたいのが、フィードバックの中身のバランスです。行動科学で知られるゴットマン教授の研究によれば、ポジティブとネガティブの理想的な割合は「ポジティブ5:ネガティブ1」。ポジティブが5に対してネガティブが1という配分が、成長と成果をもっとも高めるとされています。

では、部下自身は、どんなフィードバックを「有意義」と感じているのでしょうか。ゼンガー氏のデータは、その答えをはっきり示しています。

部下が「有意義」と感じるフィードバックの割合

受け取った内容の型別に「有意義だった」と答えた部下の割合(ゼンガー氏のデータ)

ポジティブのみ
53%
ポジティブとネガティブの両方
52%
ポジティブもネガティブもない
41%
ネガティブのみ
36%

有意義さを分けるのは「ポジティブが入っているか」です。ネガティブだけ(36%)は最下位。ポジティブを含むフィードバックほど、部下は「意味があった」と受け取ります。

差は歴然です。ポジティブが含まれるフィードバック(ポジのみ53%、ポジとネガの両方52%)は有意義だと受け取られ、ネガティブだけ(36%)は最下位に沈みます。これは「ネガティブをやめよ」という話ではありません。ネガティブを、ポジティブとセットで、信頼の土台の上に乗せて渡す——その組み立てが効くということです。

この知見を実践に落とすと、フィードバックには理想的な「流れ」が見えてきます。

成果につながるフィードバックの理想的な流れ

STEP 1

ポジティブを伝える

まず良い点を具体的に

STEP 2

信頼関係をつくる

受け止め合える関係へ

STEP 3

ネガティブも届く

改善の話も入る土台に

STEP 4

成長・成果アップ

行動が変わり成果へ

ポイントは、いきなりネガティブから入らないことです。まずポジティブで信頼をつくり、その土台の上でこそ改善の話も届きます。そして「求める文化」は、この順序を回しやすくします。上司が日ごろから求めていれば、ポジティブも含めた双方向のやりとりが日常になり、ネガティブだけが唐突に飛んでくる場面が減っていくからです。

なお、ステップ3のネガティブフィードバックを実際にどんな言葉で伝えるかは、本記事の範囲を超えます。事実・解釈・期待の3つで組み立てる具体的な型は、部下を壊さないネガティブFB|DAP(事実・解釈・期待)の型にまとめていますので、あわせてご覧ください。

職場に「求める文化」を根づかせる3つの実践

ここまでの知見を、明日から動ける形にまとめます。「求める文化」は、上司のたった一つの行動から始まり、次の3つのステップで少しずつ根づいていきます。順番に見ていきましょう。

1

上司が自分から求め、「受ける見本」になる

文化は号令ではなく、上司が最初に受け手に回ることで動き出します。

具体例:次の1on1で「私のサポートで、もっとこうしてほしいことはありますか」と一問。返ってきた答えに反論せず、「ありがとう、やってみます」でまず受け止めます。

2

ポジティブから始める

いきなり改善点ではなく、まず具体的な良い点から。5:1の配分を意識します。

具体例:「あの資料、要点の整理が的確で判断が速くなりました」と事実ベースで伝えます。ポジティブで信頼をつくってから、必要な改善は一度に一つだけに絞ります。

3

1on1・360度評価に「求める」を組み込む

個人の心がけを、仕組みに変える。日常の対話と定点の評価を両輪にします。

具体例:日常の1on1はGROW型の問いで対話を設計し、年1〜2回の360度評価で定点観測します。「日々求める」ことと「定点で測る」ことをセットで回します。

3つに共通するのは、「上司が先に動く」ことです。求める文化は、部下の姿勢を変える前に、上司が受け手に回るところから始まります。日常の1on1をどう設計するかは1on1が変わるGROWモデルが、部下に気づきを促す問いの立て方は管理職に効くのは気づかせる質問が、それぞれ土台になります。

「求める・受ける」を軸にしたマネジメントを、現場で機能する形まで落とし込みたい場合は、管理職・実践型マネジメント研修が有効です。実際の1on1やフィードバックの場面を演習として設計し、上司が「求める」一歩を安心して踏み出せるように支援します。

よくある質問

部下に「フィードバックをください」と言うと、なめられませんか?

データ上はむしろ逆です。ゼンガー氏の11万人以上の360度評価分析では、フィードバックをよく求める上司ほど、自分の「伝える力」でも上位(パーセンタイルで78)に立ち、360度評価の結果も高い傾向がありました。求めることは権威を下げるどころか、信頼と評価を高める行動です。なめられる不安の多くは、実際の反応ではなく、上司側の思い込みから来ています。

ネガティブフィードバックは、もうしなくていいのですか?

いいえ、必要です。ただし、順序と配分が肝心です。行動科学のゴットマン研究が示す「ポジティブ5:ネガティブ1」を目安に、まずポジティブで信頼をつくってから、必要な改善を渡します。ネガティブを実際にどんな言葉で伝えるかは、事実・解釈・期待で組み立てるDAPの型を参考にしてください。

何から始めればいいですか?

次の1on1で一問だけ、自分へのフィードバックを部下に求めることから始めてみてください。「私のサポートで、もっとこうしてほしいことはありますか」。返ってきた答えに反論せず、「ありがとう、やってみます」と受け止める。この小さな一歩が、職場に「求める文化」を根づかせる出発点になります。

360度評価をやっていれば、日常で求めなくてもよいのでは?

両輪で考えるのがおすすめです。360度評価は年1〜2回の定点観測であり、日常的に求めることは習慣づくりです。定点評価だけでは頻度が足りず、フィードバックへの慣れも生まれにくくなります。日々「求める」ことと、定点で「測る」ことをセットにすると、求める文化が仕組みとして定着していきます。

「求める文化」を、現場で回る仕組みに

上司が「求める・受ける」側に回るマネジメントは、演習を通じて身につきます。実際の1on1やフィードバックの場面を設計し、管理職が最初の一歩を安心して踏み出せるよう支援します。

管理職・実践型マネジメント研修を見る

関連コンテンツ

「わかった」で終わらない。「できる」ようになる。
研修内容を実践で活かし、徹底した定着フォローにより職場で成果を出す

演習中心の飽きさせないダイナミックな研修

人材育成、企業研修に関するお問い合わせはこちらからどうぞ

WEBサイトに掲載されていない研修も多数ございます。
最適なご提案をさせていただきます

03-5368-0890
メールフォームからのお問い合わせはこちら
メルマガ登録
無料レポートダウンロード
Copyright IDEA DEVELOPMENT INC.
All rights reserved.
TOPへ