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2026.06.23管理職研修

1on1が変わるGROWモデル|目標から行動まで導く対話の型

1on1を制度として導入する企業は増えました。しかし「毎週続けているのに部下が変わらない」「結局こちらが話して、指示して終わってしまう」「気づけば近況報告と世間話で時間が過ぎている」——そんな手応えのなさを感じている管理職は少なくありません。

背景には、相反する2つの難しさがあります。ひとつは、心理的安全性が重視されるなかで、部下に率直に踏み込みづらくなっていること。もうひとつは、せっかくの対話に「型」がなく、何を聞けばいいか分からないまま雑談に流れてしまうことです。前者は配慮の問題ですが、後者は技術で解決できる問題です。

この記事では、1on1を「目標から行動まで」導く対話の型——GROWモデルを、各ステップで実際に使える問いかけと、やってはいけないことまで含めて解説します。一般的な「4文字の意味」の説明にとどまらず、アイディア社のプロコーチが実際の1on1セッションを評価したデータも交えながら、次の1on1からそのまま使える形で整理します。

あなたの1on1は大丈夫? ― 空回りする4つのサイン

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上司が一方的に話してしまう|傾聴の不足

決めつけや自分の経験談が中心になり、部下の言葉や本音が出てこない。対話のはずが、上司の独演会になっている。

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コーチング・ティーチング・指示の区別がつかない|場面のミスマッチ

教えるべき相手にコーチング、自分で考えさせるべき相手に指示をしてしまう。手法が場面に噛み合わず、空回りする。

!

何のための時間か分からなくなる|雑談で終わる

テーマも目標も曖昧なまま、近況報告と世間話で時間が過ぎる。終わった後、何が前に進んだのかが残らない。

!

次の行動を決めずに終わる|やりっぱなし

「何を・いつまでに」が決まらず、振り返りも共有もない。部下は情報提供者のままで、成長のサイクルが回らない。

これら4つのサインは、突き詰めると2つの原因に行き着きます。ひとつは傾聴やコーチングそのものへの理解不足、もうひとつは対話を導く「型」がないことです。前者は良いコーチングを体験することで埋まりますが、後者を埋めるのはフレームの習得です。本記事が扱うのは、この後者——多くの管理職に欠けている「型」、すなわちGROWモデルです。次の章から、その中身を具体的に見ていきます。

GROWモデルとは ― 目標から行動まで導く対話の地図

GROWモデルは、1on1やコーチングの進め方を4つのステップで構造化したフレームワークです。Goal(目標)、Reality(現実)、Options(選択肢)、Will(意思)の頭文字をとってGROW。それぞれが「いま、この対話で何を扱っているか」を示す道しるべになります。

GROWモデル ― 1on1の対話を導く4ステップ

G | Goal

何を目指すか

この時間で何を得たいか。テーマと到達点を最初に決める。

R | Reality

いま何が起きているか

事実と現状を、思い込みを挟まず引き出す。

O | Options

何ができるか

視野を広げ、選択肢を一緒に増やす。

W | Will

何をするか

最初の一歩・期限・フォローを本人が決める。

このモデルの肝は、4つの順番にあります。現状(R)を十分に把握しないまま選択肢(O)へ飛ぶと、対話は「自分ならこうする」という上司の経験則の押しつけ、つまり指示に変わってしまいます。逆に、目標(G)を曖昧にしたまま始めると、話は行き先のないフリーディスカッションに流れ、雑談で終わります。冒頭で挙げた4つのサインは、多くがこの「順番の崩れ」から生まれています。

言い換えれば、GROWは上司が答えを出すための順路ではなく、部下が自分で答えにたどり着くための順路です。だから主役は終始、部下の側にあります。では、各ステップで上司は具体的に何をすればよいのか——次の章で、ステップごとの「やること」と「やってはいけないこと」を見ていきます。

各ステップの「やること」と「やってはいけないこと」

GROWの本当の難しさは、4つの文字を覚えることではありません。各ステップで「何を問い、何を避けるか」を、その場で判断できるかどうかです。ここでは、アイディア社のコーチング研修で使われている各ステップのヒント注意点、そして実際の1on1で使える問いかけを整理します。まず全体像を1枚で押さえましょう。

GROWの4ステップ ― 2つのフェーズに分けて捉える

引き出すフェーズ(G・R・O)

問いと傾聴で、部下の思考を広げる時間。上司は聞き役に徹する。

決めるフェーズ(W)

部下自身が行動を選び、自分の言葉にする時間。

↓ 各ステップの「やること」と「最大の注意点」
G

Goal|到達点を決める

引き出す

この時間で何を得たいかを最初にすり合わせる。注意点は、目標を決めずにフリーディスカッションへ流れないこと。

使える問い:「終わった時、どうなっているのが理想ですか?」

R

Reality|現状を引き出す

引き出す

沈黙とフォロー質問で詳しく語ってもらい、要約して確認する。注意点は、状況把握の前に解決へ走らないこと。

使える問い:「いま、実際には何が起きていますか?」

O

Options|選択肢を広げる

引き出す

視野を広げる質問で、複数の案が出るまで待つ。注意点は、解決策を押しつけ、評価を急がないこと。

使える問い:「ほかには? 制約がなければ何ができそうですか?」

W

Will|行動を決める

決める

最初の一歩・期限・サポートを本人に決めてもらう。注意点は、先に指示しないこと、そして自分の話で終わらせないこと。

使える問い:「この中で、まず何から始めますか?」

図を見渡すと、最初の3ステップ(G・R・O)はすべて「引き出す」、つまり上司が聞き役に回る時間だと分かります。上司が主導権を握るのは、実は最後のWで部下の決定を後押しする場面くらいです。だからこそ、全ステップに共通する最大のNGは「上司が5割以上話してしまう」こと。GROWは話す技術ではなく、問い・沈黙・要約の技術なのです。ここからは、各ステップを掘り下げます。

G(Goal)― 目標:到達点を最初に決める

最初のステップは、このセッションで何を扱い、終わった時にどうなっていたいかを決めることです。話しやすい雰囲気をつくり、対話の目的と流れを明確にしたうえで、求めたい成果を早めに言葉にしておくと、その後の対話が一本の線でつながります。

避けたいのは、目標を決めないまま話し始め、フリーディスカッションに流れてしまうことです。緊張させたり焦らせたりするのも逆効果になります。アイディア社のプロコーチが実際の1on1を評価したフィードバックでは、Goalの段階で選択肢を広げようと欲張らず、シンプルに「終わった時にどうなるといいですか?」と聞くことが勧められていました。数を求めて広げるのは後のOptionsの役割であり、Goalでは到達点を一つ、明確に定めることが先決です。

R(Reality)― 現実:思い込みを挟まず現状を引き出す

次に、いま何が起きているのかを部下自身の言葉で語ってもらいます。質問で多くの情報を引き出し、沈黙とフォロー質問を使って詳しく説明してもらう。そして定期的に要約して確認し、相手が頭を整理できる時間を与えます。

ここで最も起こりやすい失敗は、状況を十分に把握する前に解決へ走ってしまうことです。自分の思い込みで決めつけたり、自分の体験を押しつけたりすると、部下の現実は見えなくなります。実際の評価フィードバックでも、相手の話を要約・確認するアプローチが、傾聴と承認につながり、安心して話せる場をつくっていると高く評価されていました。聞いて、まとめて、確認する——この地味な往復が信頼関係の土台になります。

O(Options)― 選択肢:答えを与えず、一緒に広げる

現状が見えたら、では何ができるかを一緒に考えます。ポイントは、上司が答えを出すのではなく、部下がアイデアを考えられるように支援すること。視野を広げる質問を投げ、複数の選択肢が出てくるまで質問を続けます。

避けたいのは、解決策の押しつけ、自分の成功体験へのとらわれ、そしてアイデアの評価を急ぐことです。一つ案が出た時点で「それでいこう」と飛びつくと、より良い選択肢が埋もれてしまいます。評価フィードバックでは、「いいアイデアですね」とまず承認したうえで、自分の考えを一つの観点として簡潔に渡す関わり方が効果的だとされていました。なお、部下のアイデアを引き出す関わり方そのものは、部下の創造性を引き出す管理職のコーチングでさらに詳しく解説しています。

W(Will)― 意思:部下自身の言葉で行動を決める

最後に、目標と取り組みを具体的に決め、最初の一歩を確認します。必要なサポートを聞き、フォローの仕組みについて合意し、行動につながる建設的な雰囲気でセッションを終えます。

このステップには、特に注意すべき落とし穴があります。アイディア社のプロコーチが評価した2つの異なる1on1セッションで、いずれも同じ指摘がされていたのです。それは、「アクションとして何をすべきかを上司が先に伝えてしまうと、それは『指示』になってしまう」ということ。今後の取り組みを部下が自分の言葉で説明してこそ、主体的な行動につながります。相手に重い負担をかけない、やらされ感を覚えさせない、フォローの仕方を決めずに終えない、最後に自分の話で締めない——Willは、上司が一番「言いたくなる」ステップだからこそ、ぐっとこらえる場面です。

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「良いGROW」はどう見えるか ― プロコーチ評価に学ぶ

ステップごとの「やること」は分かっても、実際に良いGROWがどう見えるかはイメージしにくいものです。そこで、アイディア社のプロコーチが実際のマネージャーの1on1を評価したフィードバックから、再現できるポイントを取り出してみます。まずは、高い評価を得た1つのセッションです。

CASE:プロコーチが評価した、あるマネージャーの1on1

状況

リモート(カメラオン)の1on1。自分から話を進めるタイプの部下に対し、マネージャーがGROWを意識して対話を進めた。

結果

プロコーチの評価は全体4.5/5点。「終始、相手を尊重し、聞く姿勢を示せている」と高く評価された。

やったこと ― ステップ別の打ち手

R

要約・確認しながら、多角的に質問

状況を要約・確認したうえで、良かった点・気づき・課題感を質問。全体把握と承認が同時に進む。

O

承認してから、自分の考えを渡す

「どんなイメージか」でアイデアを引き出しリソースを確認。「いいアイデアですね」と承認したうえで、自分の考えを一つの観点として伝えた。

W

サポートを具体的に約束

アクションに対して、自分ができるサポートを具体的に伝えた。

POINT:高評価の中心は、特別な話術ではなく「要約・確認」と「承認」の繰り返し。聞いて、まとめて、認める関わりが、安心して話せる場をつくっている。

このセッションが4.5点を得た理由は、難解なテクニックではありません。要約して確認する、アイデアを質問で引き出す、承認してから自分の考えを渡す——どれも、今日の1on1で真似できる動作です。

興味深いのはここからです。アイディア社のプロコーチは、これとは別の1on1セッションも評価しており、そちらは全体4.25点でした。担当したコーチも部下も別人、扱ったテーマも別。それでも、高く評価されたポイントは驚くほど共通していました。そして、両方のセッションで唯一同じ「伸びしろ」として挙げられたのが、Wの段階だったのです。

同じW(意思)でも、ひとつの違いが評価を分けた

プロコーチが評価した2つの1on1セッションのWステップ評点(5点満点)

部下が自分の言葉でアクションを語った
5.0
上司が先に「何をすべきか」を伝えた
4.0

POINT:部下に自分の言葉でアクションを語ってもらうか、上司が先に答えを言うか。この一点が、コーチングを「主体的な行動」につなげるか「指示」に変えるかの分かれ道になる。

つまり「良いGROW」は、特別な才能ではなく、再現できる3つの動作に支えられています。Rで要約・確認する、Oで質問してアイデアを引き出す、Wで部下に語らせる。そして最大の落とし穴も一点に集約されます——Wで上司が先に言ってしまうこと。次の章では、そもそもGROWを使うべき場面と、使うべきでない場面を整理します。

GROWを使う場面・使わない場面 ― コーチング/ティーチング/指示の線引き

ここまで読むと、GROWをあらゆる1on1で使いたくなるかもしれません。しかし、GROWは万能ではありません。冒頭で挙げた4つのサインの2つ目、「コーチング・ティーチング・指示の区別がつかない」は、まさにこの使い分けの失敗から生まれます。GROW(コーチング)は、部下が考えれば自力で答えにたどり着ける段階で初めて効く道具です。

部下の状態で、関わり方を選ぶ

ティーチング(教える)

部下にまだ知識・経験がない段階。答えややり方を具体的に教える。

考えさせても辿り着けない相手には、問いはかえって負担になる。

コーチング=GROW(引き出す)本記事の対象

考えれば自力で答えに辿り着ける段階。問いで思考を引き出す。

主体性と納得感が生まれ、行動が続く。

指示(決めて伝える)

緊急時、安全やコンプラに関わる時、選択の余地がない時。明確に指示する。

悠長に問いを重ねる場面ではない。

同じ部下でも、テーマによって適した関わりは変わります。新しい業務のやり方はティーチングで教え、その業務の進め方の工夫はGROWで引き出し、納期直前のトラブルは指示で動かす——この切り替えができると、1on1の空回りは大きく減ります。なお、ティーチング・コーチング・定着という管理職に必要な3つのスキルの全体像は、管理職研修で身につけるべき3つのスキルで体系的に解説しています。本記事はそのうち、コーチングを「GROWという型」として深掘りした位置づけです。

1on1のあとが本番 ― 合意したアクションが動かない時

GROWは、1回のセッションで完結する魔法ではありません。Wでアクションを合意しても、次の1on1までに実行されないことはよくあります。そこで上司が直面するのが、いま多くの管理職が抱える葛藤です。心理的安全性を重視するあまり、部下に率直に踏み込めない——気をつけないと傷つけてしまうし、ハラスメントと受け取られるリスクもある。かといって放置すれば、行動は変わらず、1on1はまた雑談に戻ってしまいます。

この「安全性」と「率直さ」を両立させるのが、DAPという伝え方の型です。事実を描写し、自分の解釈を添え、これからの期待を伝える——この順番を守るだけで、責めずに行動へ踏み込めます。

責めずに踏み込むDAPの型 ― 事実→解釈→要望

D

Describe(事実)― 評価を交えず描写する

起きたことを、感情や評価を交えず、事実として描写する。

例:「先週の資料、提出が2日遅れたね」

A

Appreciate(解釈)― 「私は」を主語に受け止めを伝える

その事実をどう受け止めたか、自分の解釈を「私」を主語にして伝える。

例:「私は、何か進めにくい事情があったのかなと感じた」

P

Prescribe(要望)― これからどうしてほしいかを具体的に

過去を責めるのではなく、これからの行動への期待を具体的に伝える。

例:「次は、遅れそうだと分かった時点で一言知らせてほしい」

順番が肝心です。いきなりPrescribe(要望)から入ると、相手は責められていると感じます。事実から始め、自分の解釈を「私」を主語に添えることで、相手は防御的にならずに受け取れます。これは、心理的安全性を損なわずに率直さを保つための橋渡しです。

そして最も大切なのは、GROWを1回で完結させず、ループにすることです。Wの段階でフォローの仕組みを合意し、次回の1on1はその進捗の確認から始める。回し続けることで初めて、対話は行動の変化につながります。1on1は、終わった瞬間からが本番なのです。

まとめ ― 1on1を「型」で変える

1on1が雑談で終わったり、指示で終わったりするのは、上司の人柄や努力の問題ではなく、多くの場合「型」がないからです。GROWモデルは、Goal(目標)からReality(現実)、Options(選択肢)を経てWill(意思)へと、部下が自分で答えにたどり着く道筋を用意します。各ステップで「何を問い、何を避けるか」を押さえ、最大の落とし穴であるWの段階で先に答えを言わないこと——この一点を守るだけで、対話は大きく変わります。

そして、GROWは1回で完結しません。Wでフォローを合意し、次回はその進捗から始めるループにすることで、対話はようやく行動の変化につながります。まずは次の1on1で、ひとつの問いを変えてみることから始めてみてください。

よくある質問(Q&A)

GROWモデルとティーチングは何が違いますか?

GROW(コーチング)は、部下が考えれば自力で答えにたどり着ける段階で、問いによって思考を引き出す手法です。一方ティーチングは、まだ知識や経験がない段階で、答えややり方を具体的に教える手法です。考えても辿り着けない相手にGROWで問い続けると、本人の負担になるだけなので、状態に応じた使い分けが必要です。

1on1の時間が10分ほどしか取れません。GROWは使えますか?

使えます。GROWは1時間のセッションが前提ではありません。10分でも、G(到達点を決める)→R(現状を聞く)→O(選択肢を広げる)→W(次の一歩を決める)を意識するだけで、対話の質は変わります。短い時間では、問いを絞り、特に要約・確認を丁寧に行うことがポイントです。

部下が口数が少なく、話してくれない時はどうすればよいですか?

沈黙を恐れず、フォロー質問で少しずつ引き出すことが基本です。Reality(現実)の段階で、相手の話を要約・確認しながら「いま、実際にはどうなっていますか?」と具体的に尋ね、安心して話せる場をつくります。最初から多くを語ってもらおうとせず、認める・まとめる関わりを重ねることで、徐々に言葉が出てくるようになります。

GROWを使うと、部下に指示をしてはいけないのですか?

そうではありません。緊急時や、安全・コンプライアンスに関わる場面、選択の余地がない場面では、明確に指示することが適切です。GROWはあくまで、コーチングが適した場面——部下が考えれば答えにたどり着ける場面——で使う型です。場面に応じて、ティーチング・コーチング・指示を切り替えてください。

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