人材育成×AI Forum 2026 セミナーレポート|階層別に設計するAI活用研修12プログラム

2026年7月28日(火)、アイディア社は、企業の人事・人材育成をご担当される皆さまを対象に「人材育成×AI Forum 2026」をオンラインで開催いたしました。生成AIの急速な普及により、AIは研修で「学ぶテーマ」であると同時に、研修を届ける「手段」にも、育成業務そのものを支える「ツール」にもなっています。本フォーラムでは、この掛け合わせ方をマネージャー・若手社員・新入社員・グローバル人材・人材育成担当者という5つの対象に整理し、合計12のプログラムとして約2時間でご紹介しました。
「経営からAI活用を求められているが、人材育成のどこから手をつければよいか分からない」というご相談が増えています。本レポートでは、当日ご紹介した12のプログラムを対象階層別に整理し、それぞれがどの課題を解くために設計されているのかを、期間・時間数といった具体的な設計条件とあわせてご紹介します。各章には当日の解説動画も掲載しています。最後に、自社でどこから着手するかを決めるための3つの判断軸をまとめました。
開催概要
開催日:2026年7月28日(火)10:05〜12:00
形式:オンライン(Zoom)・参加無料
登壇:Jason Durkee(IDEA DEVELOPMENT株式会社 代表取締役)
ご紹介した内容:マネージャー/若手社員/新入社員/グローバル人材/人材育成担当者の5つの対象 × 12プログラム
世界のAI×人材育成トレンドもあわせて押さえたい方へ。世界最大級の人材育成国際会議「ATD ICE 2026」の現地取材レポートを無料で公開しています。本レポートでご紹介するプログラム設計の背景にある、世界の潮流をご確認いただけます。
本レポートの構成(5つの対象+着手の判断軸)
AIは「学ぶテーマ」だけではない — 2つの型と12プログラムの地図
12のプログラムを1つずつご覧いただく前に、押さえておきたい前提があります。「人材育成にAIを活用する」と言うとき、その掛け合わせ方には大きく2つの型があるということです。1つは、AIそのものを学習対象にする「学ぶテーマとしてのAI」。もう1つは、研修の届け方・定着フォロー・学習コンテンツ・担当者の業務そのものをAIで変える「届け方と支えを変えるAI」です。当日ご紹介した12プログラムを、この2つの型と5つの対象層で整理すると、次のようになります。
この地図から読み取っていただきたいのは、12プログラムのうち8プログラムが「学ぶテーマとしてのAI」ではないという点です。AI活用と聞くと、まず社員にAIツールの使い方を教える研修が思い浮かびます。しかし実際に組み立てられる打ち手の3分の2は、研修の届け方・定着のさせ方・担当者業務の支え方を変えるものでした。自社の施策が「AIリテラシー研修を1本実施する」で止まっているとしたら、残りの3分の2に手がついていない可能性があります。
もう1つの読みどころは、対象層によって型の比率が変わることです。マネージャー・若手・新入社員は2つの型が併存しますが、グローバル人材と人材育成担当者は「届け方と支え」に寄ります。学ぶ内容がAIでない領域ほど、AIは裏方として効くということです。なお、AI活用の場面を階層に関係なく整理した基礎編はAI活用の5つの場面で、世界の人材育成業界がAIをどう位置づけているかはATD2026レポートでご紹介しています。
1. マネージャー向け|AIの基本と、一人ひとりに合わせるジャーニー
組織としてAIを活用しようとしたとき、実際にブレーキになりやすいのはマネージャーの理解不足です。部下がAIを使い始めても、上司側に判断の基準がなければ、成果物の質も情報の扱い方も現場任せになります。マネージャー向けの2プログラムは、この「上司側の空白」を埋めるために設計されています。まずは当日の解説動画をご覧ください。
マネージャー向けのAIの基本|1日で押さえる4つの場面
このプログラムの前提は、マネージャーはプレーヤーと違い、各ツールの細かい操作を習得する必要はないというものです。必要なのは、AIの可能性、メリット、正しい活用法、リスク、そしてマネジメント上のコツを知ること。そこで職場でAIを使う代表的な4つの場面に絞り、1日で全体像を押さえる構成にしています。扱うのは、プロンプトの書き方や訂正の仕方を含む情報収集、メールの返信からレポート、数字・表・グラフまでの資料作成、内容のまとめ方からスライド・スクリプト・リハーサルまでのプレゼンテーション、そして英文資料の作成やAIによる英語学習を含む英語対応の4場面です。
この4場面それぞれについて、「何ができるか」「どんな利点があるか」「何に気をつければよいか」「マネージャーとして何をすればよいか」の4点を必ずセットで扱います。特に4つ目が要です。たとえば資料作成では、AIが書いた文章は表面的で鋭さがなく記憶に残りにくいという弱点があります。数字や表では計算式のトラブルも起こります。マネージャーが押さえるべきなのは、こうした弱点が出たときに部下にどうフィードバックするかであって、プロンプトの上手さではありません。
パーソナルラーニングジャーニー|6カ月で一人ひとりに合わせる
もう1つは、管理職育成そのものの届け方を変えるプログラムです。全員に同じ内容を一斉に届けるのではなく、実力診断とニーズ把握をもとに受講者ごとに異なるテーマを組む設計になっています。AIは「学ぶテーマ」ではなく、これを現実的なコストで回すための手段として使われています。
パーソナルラーニングジャーニーの全体像(事前〜6カ月〜事後)
複数講師によるロールプレイ診断(半日)と、1対1のニーズ面談(30分)。強みと改善点、優先度の高い場面を特定し、個別プログラムを組む
1カ月1テーマ×6カ月。指示出し・目標設定・部下育成・ネガティブフィードバックなどから必要なものを自己学習で習得する
AIツールを使った反復演習。話すスピード、表情、口ぐせ、アイコンタクト、滑舌まで、講師以上に細かくフィードバックが返る
オンラインコーチングでアクションプランを具体化し、上司を巻き込んで職場で実践。20分の振り返りで次につなげる
学習・行動・成果の3階層で測定。受注率やクレーム件数、残業時間といったビジネス成果まで追う
この6カ月で効いているのは、AIそのものではなく「個別化」と「毎月止まらないこと」の両立です。一人ひとりに別テーマを設定すれば、本来は講師の工数が人数分だけ増えます。それを、インプットは自己学習、反復演習はAIのフィードバック、講師は月1回のコーチングに集中する、という分担で成立させています。管理職研修が単発で終わりやすいのは、受講後に一人ひとりの実践を追いかける手が足りないからです。その手を増やす方法として、AIが使われているとお考えください。
2. 若手社員向け|「使える」を仕事の成果に変える3プログラム
若手社員は、AIツールそのものへの抵抗はほとんどありません。問題は、使えることと成果が出ることのあいだに距離があることです。3つのプログラムはいずれも、その距離を埋めるために「職場で試す」工程を研修の内側に組み込んでいます。まずは当日の解説動画をご覧ください。
実践型AIワークショップ|10週間で職場の成功体験をつくる
AIを日常的に使いこなせるようになるために何より重要なのは、職場での成功体験です。このプログラムでは、受講者が自分の実際の業務をテーマに設定し、10週間かけてAI活用の実験を行います。1日のキックオフセミナーでテクニックを学んだあとは、職場実践、3〜4人でのグループコーチング、個別コーチング、プレゼンクリニックと続き、最後は上位層に向けて一人5分の成果発表を行います。研修が終わるころには、使い方を知っているだけの状態から、職場で使える自信と、社内に共有できるベストプラクティスが残ります。
キックオフで扱うのは、AIリテラシーの土台となる4つのCです。
Choose(選択)
AIのみ、人間のみ、人間+AIのどれで進めるかを決める。使わない判断も選択肢に含める。
Communicate(指示出し)
AIに適切な指示を出す。前提・目的・制約をどこまで渡すかで出力の質が決まる。
Confirm(ブラッシュアップ)
出てきたアウトプットを鵜呑みにせず、やりとりを重ねて質を上げていく。
Commit(再確認)
世に出す前に成果物の質を自分で担保する。最終責任は使った本人が負う。
この4つが順序になっていることが要点です。プロンプトの書き方から入る研修が多いなかで、ここでは「そもそもAIを使うべき仕事か」を決めるChooseが最初に置かれ、最後に人間が責任を持つCommitで閉じられています。指示出しとブラッシュアップという操作は、その内側にあります。使い方だけを教えると、使わなくてよい場面でも使ってしまう若手が出てきます。この順序は、それを防ぐための設計です。
AI時代に必要なサバイバルスキル|テクノロジー・ヒューマン・リアルの3日間
2つ目は、AI時代に求められる力を3つの系統でとらえ、3日間の集中研修で一度に体験するプログラムです。1つ目の系統がテクノロジーで、AIによる情報収集や資料作成に加え、VRやARによるバーチャル体験を扱います。2つ目がヒューマンで、簡潔に伝える力と深く聴く力、相手を巻き込む影響力、さまざまな人と付き合えるマインドを鍛えます。3つ目がリアルで、障害物コースやスポーツで身体を動かし、自然のなかを歩き、他の受講者と直接交流します。
設計上の工夫は、この3つを日ごとに分けていないことです。初日からテクノロジーとヒューマンが交互に組まれ、2日目にリアルが入り、3日目はスポーツと成長確認で締めくくられます。3つの系統は独立したスキルではなく、組み合わせて初めて効くという前提があるためです。AIで資料を作れる人が、その内容を人に伝えて動かせるとは限りません。画面の向こうの作業に長けていることと、目の前の相手や現実の状況にうまく関われることは、別の能力です。
AIを使い倒すプレゼンテーション研修|変わるのは作業ではなく順序
3つ目は、2日間でプレゼンテーションの準備の仕方そのものを組み替えるプログラムです。THINK(考える)・MAKE(つくる)・SPEAK(話す)の3段階それぞれに、従来のやり方とAIを活用したやり方の両方を置いて比較します。当日は、この対比が具体的に示されました。
この表で変わっているのは、作業の速さだけではありません。準備の順序そのものが入れ替わっています。従来はスライドを作りながら構成を考えていたため、全体像が固まるのは制作の終盤でした。AIを使うと、聴衆分析と全体構成を最初に済ませてから作り始められます。そして削れた時間は、練習と発表に回ります。実際にこの研修の2日目は、参加者が全員2回ずつ発表し、あいだにAIコーチとビデオによるフィードバックを挟む構成になっています。プレゼンテーション研修で最も効果が出るのは発表と修正の反復ですが、従来はその時間が資料作成に食われていました。AIが返してくれているのは、その時間です。
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3. 新入社員向け|落ちた思考力を鍛え直し、配属後を支える
新入社員向けの2プログラムは、他の階層とは前提が違います。彼らは学生時代からAIを使ってきた世代であり、AIを教える必要はほとんどない一方で、AIに任せてきたことによる弱みが入社時点ですでにあるからです。当日は、その弱みを埋める2つの打ち手が示されました。まずは解説動画をご覧ください。
AI時代に必要な思考力|3カ月×毎日30分で鍛え直す
学生時代からAIに頼ってきた社員が増えるにつれ、思考力の強化が重要な課題になっています。学生から社会人へのシフトを支える要素の1つとして、思考力の訓練を新入社員教育に組み込むという提案です。ここでいう思考力は、次の3系統で整理されています。
ロジカル|論理思考力・クリティカルシンキング力・戦略思考力・分析思考力
訓練の例は、ロジカルにプロンプトを書く、AIが出してきた不出来なアウトプットを分析して訂正する、大量のデータを解釈して適切な対応を提案する。
クリエイティブ|発想力・想像力・問題解決能力・仮説思考力・未来思考
訓練の例は、オリジナルのアイディアを出す、今後のニーズを想像する、問題解決の演習に取り組む、未来を予測する。
ヒューマン|顧客志向・相手思考・人間中心思考力
訓練の例は、お客様のニーズに合わせる、内容を相手に合わせてコミュニケーションを変える、倫理的なジレンマについて考える。
3系統を並べたときに見えてくるのは、訓練の素材がAIそのものだという点です。ロジカルの訓練例が「AIの出したアウトプットを分析して訂正する」であるように、AIから遠ざけて鍛えるのではなく、AIを使いながら鍛える設計になっています。プログラムは1カ月目の集合研修(1日)から始まり、その後は毎日30分の訓練と月1回の振り返り共有(3時間)を3カ月続け、最後に成果発表を行います。1日の研修で思考力が身につくとは考えず、日々の反復に落としているところが要点です。
この点については、当日ご参加の人材育成ご担当者からも「特に新入社員の話が興味深かった。AIを使ってきた世代なので、思考力の強化が本当に不可欠だと思った」という声をいただきました。あわせて「人と付き合う能力の欠如は、ビジネスでは本当に致命的。ここは何とかしないといけない」ともお話しされていました。3系統のうちヒューマンは最も後回しにされやすい一方で、現場に出たときに真っ先に問われる力でもあります。なお、2026年の新入社員がAIをどう使い、どこでつまずいているかについては、新入社員1,700名の調査でも同じ傾向が見えています。
新入社員用のナイススタート|配属後3カ月を毎日30分で支える
新入社員研修には以前から知られた弱点があります。導入研修そのものは充実していても、配属後のフォローが薄くなることです。フォローがあっても上司任せであれば、内容も成果も上司によって大きく左右されます。しかも最近の新入社員は、以前より手厚いケアを求める傾向にあります。この3つが重なると、せっかくの導入研修が配属後に消えていきます。
そこで設計されたのが、配属直後から3カ月間、毎日30分の定着演習を続けるプログラムです。曜日ごとにテーマを固定し、月曜はロジカルコミュニケーション、火曜はプロフェッショナルマインド、水曜はビジネスライティング、木曜はビジネスマナー、金曜はその週の振り返りとPDCAにあてます。月1回は講師との個別コーチング(30分)が入り、開始前の事前テストと3カ月後の事後テストで伸びを確認します。
このプログラムが解いているのは、新入社員の課題であると同時に上司側の課題です。配属後のフォローを上司の力量に委ねている限り、育ち方のばらつきは避けられません。毎日の演習とAIによるフィードバックが土台を担い、上司は本来の業務指導に集中できる。新入社員研修の効果が配属後に薄れてしまうとお感じでしたら、研修そのものより、配属後3カ月の設計を見直すほうが早いかもしれません。
4. グローバル人材向け|講師費用を抑えながら、練習量を増やす
グローバル領域の2プログラムは、研修テーマ自体はAIではありません。学ぶ内容は英語とグローバル実践力のままで、AIはこれまで費用と講師の確保が壁になって実現できなかった練習量を成立させるために使われています。まずは当日の解説動画をご覧ください。
グローバル実践力強化|研修+AIサポートで、練習の壁を外す
まず従来のプログラムをご説明します。事前と事後にグローバル人間ドック®という実力診断を置き、そのあいだの10週間で、異文化とロジック、ミーティング、ネゴシエーションのセミナーを受け、外国人講師との少人数レッスンで英語の反復演習を行います。必要なテクニックは日本語でインプットし、定着は英語で行うという分担です。この設計で、3カ月以内に業務でグローバルビジネスをこなせるレベルまで到達できています。
ただし、この形式には以前から2つの懸念がありました。外国人講師がいなければ受講者は練習できないことと、身につくまで練習量を確保しようとすると講師費用が跳ね上がることです。練習が足りないと分かっていても、予算が理由で回数を削るしかない。この矛盾に対する答えが、AIによる自己学習とフィードバックを組み込んだ改訂版です。当日示された数字は次のとおりです。
3つの数字は、それぞれ別のことを語っています。増えたのは練習時間、伸びたのは期間、そして変わっていないのが講師つき演習の単位です。増えた5時間分を担っているのはAIによる自己学習と定着演習で、講師の稼働は増えていません。だからこそ、練習量を増やしながら講師費用を下げられます。
期間が10週から17週に伸びることを負担増と受け取られるかもしれませんが、設計の意図は逆です。同じ内容をより長い期間に分散させることで、1週あたりの拘束時間は減ります。しかも自己学習の比率が上がるため、受講者は自分の業務に合わせて時間を選べます。詰め込んで離脱されるより、薄く長く続けたほうが習得度は上がる。グローバル実践力強化研修で英語研修が続かないという課題をお持ちでしたら、教材ではなく期間と練習相手の設計に原因があるかもしれません。
グローバル底上げ|自社オリジナルの自己学習コンテンツをAIでつくる
もう1つは、選抜ではなく全社的な底上げのためのプログラムです。底上げで最も難しいのは、英語を使う必要性が薄い受講者のモチベーション維持です。特に自己学習が中心になると、続ける理由が本人の意志だけになってしまいます。効果があると分かっているのは、業務との関連性が高い教材を使うことですが、そのオリジナル教材を大量に用意するには手間も時間も費用もかかります。ここが従来の限界でした。
AIを使えば、自社の実際の業務内容に基づいた教材を現実的なコストで用意できます。当日紹介された運用例は、毎日15分の自己学習を曜日で分けるパターンです。月曜と火曜は覚える日として英語発想と語彙力、水曜は聞く日、木曜は書く日でメールのやりとり、金曜は話す日としてボットとの対話にあてます。教材の中身が他社の汎用例文ではなく自社の製品やサービスの話であれば、学習そのものが業務理解を兼ねます。グローバル人材育成を一部の選抜層で止めず、全社の底上げまで広げられるかどうかは、この教材づくりのコストが下がるかどうかにかかっていました。
5. 人材育成担当者向け|担当者自身の学習と、手が回らない領域を支える
最後の3プログラムは、受講者ではなく人材育成をご担当されている方ご自身に向けたものです。一年中、社員の育成と教育に携わりながら、ご自身が体系立てて人材育成を学ぶ機会は案外少ない。定着フォローも効果測定も、大切だと分かっていながら手が回らない。当日は、この3つの空白に対する打ち手が示されました。まずは解説動画をご覧ください。
人材育成ブートキャンプ|OJTで3年かかる知識を50時間で
人材育成の仕事は、経験しながら覚える人がほとんどです。OJTでベストプラクティスをひと通り把握するには、だいたい3年かかります。概要は分かっていても、企画から設計、実施準備、実施、定着フォロー、効果測定までを体系立てて学ぶ機会はほとんどありません。そこで用意されたのが、OJTで3年かかる内容を50時間以内で身につけるオンデマンドのブートキャンプです。5〜10分の映像と短い記事によるマイクロラーニングで構成され、新入社員研修から管理職研修まで、また知識系・スキル系・マインド系・グローバル系といった研修タイプ別のヒントも扱います。
設計上の工夫は、自己学習が続かない理由を先回りして潰しているところにあります。膨大な情報を整理して現在地とゴールが見えるようにし、インプットは負担の少ない長さに切り、振り返りやコメントの機会を挟み、他の受講者や講師とのやりとりでモチベーションを保つ。そのうえで、人材育成のテーマについて相談できるチャットボット「デジタルダーキー」が加わります。分からないことをその場で聞ける相手がいるかどうかは、オンデマンド学習が続くかどうかを大きく左右します。
定着パック|「分かる、けれどできない」を仕組みで埋める
「分かる、けれどできない」は、数十年前から変わらない人材育成の悩みです。定着フォローができない理由は、突き詰めると2つしかありません。定着させる方法を知らないことと、仕組みをつくるリソース(エネルギー・時間・人材)がないことです。定着パックは、前者をアイディア社の定着ノウハウで、後者をAIによる教材作成の手軽さで埋めます。既存の研修内容に合わせて定着プランを設計し、必要な教材をAIと一緒につくり、フォローを実施して、最後に定着度を測る。この4つを一つのパッケージとして提供する形です。
当日は、定着しない原因を「状況により制限されてしまう」「知識の活用がうまくできない」「習慣がない」「マインドセットができていない」「応用ができない」の5つに分けた診断表も示されました。原因ごとに効く打ち手は異なり、上司面談が要る場合もあれば、リマインドやチェックリストで足りる場合もあります。定着しないという一言でまとめてしまうと、打ち手を選び間違えます。
気軽な研修効果測定|「どこから始めればよいか」に順番を与える
効果測定は大切だと認識されていても、実際にしっかり取り組めている企業は多くありません。最も多い声は「どこから始めればよいかが分からない」です。このサービスは、既存の研修プログラムに対して、測定の流れの提案・必要なツールの提供・報告フォーマットの用意までをセットで行います。当日示された流れは次の5段階です。
研修効果測定の5ステップと、AIが肩代わりする作業
プラン
事業戦略と研修をつなぐ。知識・行動・成果・ビジネスゴールの4段階で測る対象を決める
アンケート
受講者を3分類する。作成・送信・集約はAIに任せる
インタビュー
成果が出た人と出ていない人に絞って聴く。文字化と要約が楽になる
レポート作成
数字よりストーリー。成果の出た受講者の事例を具体的に記録する
成果発表
効果に加えて改善点を提案する。職場環境や上司の関与も視野に入れる
この5段階を並べると、効果測定が進まない本当の理由が見えてきます。判断が難しいのは最初と3番目だけで、残りは作業量の問題です。何を測るかを決めることと、誰に話を聴くかを見極めることは人にしかできません。一方、アンケートの配布と集約、インタビューの文字起こし、レポートの整形、報告資料の準備は、時間さえあれば誰にでもできる代わりに、その時間が確保できずに止まっていました。ここが軽くなれば、効果測定は特別な取り組みではなくなります。
研修の設計から定着フォロー、効果測定までを実際にどう組み立てたかは、企業ごとの導入事例でもご紹介しています。同じ課題をお持ちの企業がどこから着手したのか、あわせてご覧ください。
自社は何から始めるか|着手順を決める3つの判断軸
当日のアンケートでは、「具体的なソリューションが示されていたこと」「受講対象別のアプローチとともに、人材育成担当者を対象とした提案が示されたこと」を評価する声をいただきました。一方で、12のプログラムを前にすると、自社ではどれから手をつけるべきかという問いが残ります。ここでは、着手順を決めるための判断軸を3つに整理してご紹介します。
1つ目は、AIを「テーマ」として教えたいのか、「手段」として使いたいのかです。冒頭の地図でご覧いただいたとおり、12のうち8つは後者でした。もし自社の施策がAIリテラシー研修の実施で止まっているとしたら、それは12分の4の側だけに手をつけている状態です。逆に、既存研修の定着や効果測定を変えたいのであれば、研修のテーマをAIにする必要はまったくありません。この2つは目的が別なので、同じ予算の中で比較検討するものではないとお考えください。
2つ目は、対象層によって埋めるべき穴が反転するという点です。新入社員や若手社員は、AIツールを使うこと自体に抵抗がありません。彼らに必要なのは使い方ではなく、AIに任せてきたことで薄くなった思考力と、人と関わる力です。一方でマネージャーに必要なのは、ツールの操作ではなく、部下の成果物をどう見て、どうフィードバックするかという判断の基準です。若手には人間の力を、上司にはAIの可能性を教える。この非対称を踏まえずに全社一律のAI研修を組むと、どちらの層にも噛み合わないものになります。
3つ目は、止まっている原因が「知らないこと」なのか「回すリソースがないこと」なのかです。定着パックの前提として示されたとおり、定着フォローができない理由は方法を知らないことか、仕組みをつくる時間と人がないことのどちらかでした。効果測定も同じで、5段階のうち判断が要るのは2つだけで、残りは作業量の問題です。前者であれば学ぶことが解決になりますが、後者は何を学んでも解決しません。手を動かす部分をAIに渡すほうが早いということです。
この3つを自社に当てはめると、最初の一歩は「AI研修を1本追加すること」ではないケースが少なくありません。すでに実施している研修の定着フォローと効果測定にAIを差し込むほうが、投資額も社内調整も小さく、成果が見えるのも早いためです。そのうえで、階層別のAI研修をどこから入れるかを検討する。なお、現場でAI活用が進まない理由が制度やツールではなく組織の空気にある場合については、AI時代に管理職が向き合う組織風土の課題でも取り上げています。
よくある質問
AIを使った人材育成は、まずどの階層から始めるのが効果的ですか?
階層から選ぶ前に、目的を分けることをおすすめします。AIそのものを学ばせたいのであれば、影響範囲が大きいマネージャー層から始めるのが現実的です。部下がAIを使い始めても、上司に判断の基準がなければ成果物の質は現場任せになるためです。一方、既存の研修の効果を上げたいのであれば階層は関係なく、定着フォローと効果測定にAIを差し込むほうが早く成果が見えます。本フォーラムで紹介された12プログラムのうち8つは後者にあたります。
マネージャーにも、AIツールの操作を細かく覚えてもらう必要がありますか?
必要ありません。マネージャーに求められるのは、AIで何ができるかの実感、利点とリスクの理解、そして部下のアウトプットをどう見てどうフォローするかの判断です。たとえばAIが書いた文章は表面的で記憶に残りにくく、数字や表では計算式のトラブルも起こります。こうした弱点が出たときに指摘して直させられることのほうが、プロンプトの巧みさより実務では効きます。1日で情報収集・資料作成・プレゼンテーション・英語対応の4場面を押さえる構成が、この考え方に基づいています。
AIを活用すると、研修費用は下がりますか?
下がる場合がありますが、削減そのものを目的にすると効果を落とします。グローバル実践力強化の例では、英語での練習時間を15時間から20時間に増やしながら、講師費用は下がりました。増えた分をAIによる自己学習と定着演習が担い、講師の稼働を増やさずに済んだためです。つまり同じ予算でより多く練習できるようになったのであって、単純に安くなったわけではありません。費用だけを削ると、練習量も一緒に削れます。
新入社員がAIに頼りすぎることへの対策はありますか?
AIから遠ざけるのではなく、AIを使いながら思考力を鍛える方法が示されました。論理思考や分析思考といったロジカル系、発想力や仮説思考といったクリエイティブ系、顧客志向や相手思考といったヒューマン系の3系統に分け、3カ月間、毎日30分の訓練を続けます。訓練の素材はAIそのもので、たとえばAIが出してきた不出来なアウトプットを分析して訂正する、といった演習を行います。1日の研修で身につくものではないため、日々の反復に落とし込むことが前提です。
研修効果測定をこれから始める場合、何から手をつければよいですか?
測る対象を決めることから始めてください。事業戦略や経営方針と研修をつなげ、知識・スキル、行動、成果、ビジネスゴールのどこまでを追うかを先に決めます。そのうえで、アンケートで受講者を「成果が出た人」「出ていない人」「途中であきらめた人」に分け、両端の方に絞ってインタビューを行います。5段階の流れのうち、判断が要るのは測る対象を決める場面と、誰に話を聴くかを見極める場面だけで、残りは作業量の問題です。この作業が重くて止まっているのであれば、そこをAIに任せる余地があります。
登壇者紹介
JASON DURKEE / ジェイソン ダーキー
IDEA DEVELOPMENT株式会社 代表取締役
1972年、米国シアトル生まれ。1992年に来日し上智大学を卒業。在学中より研修企画会社に勤務し、インストラクターおよび開発を担当、その後専任部長を務める。2003年に企業向け教育研修会社 IDEA DEVELOPMENT(アイディア社)を設立し、代表取締役に就任。現在は能力開発のコンサルタント・インストラクターとして、上場企業や外資系企業などに人材育成サービスを提供している。
主な著書:「ビジネス英語の技術」「ガツンといえる英語」(Japan Times 刊)、「無理なく続く英語学習法 忙しいビジネスパーソンでも挫折しない」(日本実業出版社)。
創業以来、毎年ATD国際会議(世界最大級の人材育成の国際会議)に自ら参加し続け、世界の人材育成トレンドを日本企業の文脈で読み解いて解説することに定評があります。本フォーラムでご紹介した12のプログラムも、こうした世界の最新知見と、当社が研修現場で積み重ねてきた実践知をダーキー自身が統合・設計したものです。
AI時代の人材育成についてのご相談はこちら
本レポートでご紹介した12のプログラムは、いずれも貴社の対象層や既存研修に合わせて組み替えることを前提としています。どこから着手すべきかの整理段階からご相談いただけます。最新情報の受け取りや、世界の人材育成トレンドをまとめたレポートのダウンロードもご活用ください。
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