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ATD2026レポート|AI×人間性で読む人材育成トレンド

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AIと人間の役割分担、リーダーシップ開発、研修効果測定など、全23セッションの最新トレンドと企業事例を、スライド・ビジュアル付きでまとめたフルカラーレポートです。

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ATD人材育成国際会議2026(ATD ICE 2026)が、2026年5月17日から20日にかけて、米国ロサンゼルスで開催されました。世界120カ国以上から人材開発の専門家が集う世界最大級のイベントで、本年は約300のセッションと300を超える出展ブースが並びました。注目すべきは、14あるセッショントラックのうち「パーソナルリーダーシップ(Personal Leadership Capabilities)」が新トラックとして加わったことです。一人ひとりの内面的なリーダーシップに光が当たり始めた年だといえます。

アイディア社は、多忙をきわめる人材育成ご担当者に代わって現地に参加し、世界の最新トレンドと企業の成功事例を持ち帰りました。本記事は、2026年6月23日に開催した帰国報告会の内容をもとに、現地で直接得た一次情報を、日本企業の人材育成という視点から整理したものです。

ここ数年、人材育成の現場で最大の関心事は「AIをどう使うか」でした。しかし2026年のATDで、前半10セッションのすべてを貫いていたのは、AIと人間の「役割分担」という問いです。AIが担える領域が広がるほど、人間にしか出せない価値——対話・判断・共感——の比重がむしろ高まる。本記事では、この「AIと人間性(HUMANITY)」への揺り戻しを軸に、現地で特に示唆に富んだトピックを抜き出してご紹介します。

この記事でわかること

2026年の大きな潮流

リーダーと現場をどう動かすか

ATD人材育成国際会議2026とは?開催概要と注目の新トラック

ATD人材育成国際会議2026(ATD ICE 2026)は、約300のセッションが14のトラックに分かれて展開された、世界最大級の人材育成会議です。2026年5月17日から20日まで、米国ロサンゼルスで開催されました。

約300
セッション
14
トラック(うち新設1)
300+
出展ブース

ATD(Association for Talent Development)は、1943年に設立された人材開発の非営利団体で、本部を米国ヴァージニア州に置きます。2014年までは「ASTD(米国人材開発機構)」として知られ、現在は世界120カ国以上に約4万名の会員を擁します。その規模と活動から、人材育成の領域では世界最高水準と認められている団体です。

本年の最大の特徴は、「パーソナルリーダーシップ(Personal Leadership Capabilities)」が新トラックとして加わったことです。自己認識やマインドセットといった、一人ひとりの内面的な力に正面から光を当てるトラックの新設は、それ自体がトレンドの変化を映しています。一方で、最も多くのセッションが集まったのは「リーダーシップとマネジメント開発」(27セッション)で、リーダー育成への関心の高さは健在でした。

新トラックの登場は、AIが知識やスキルの習得を肩代わりし始めた時代に、人材育成の焦点が「外から与えるスキル」から「内側から育てる人間の土台」へと移りつつあることの表れだといえます。この後ご紹介するトレンドも、この視点で読むと一段とわかりやすくなります。なお本記事は、2026年6月23日にオンラインで開催した帰国報告会(参加者250名)の内容をもとに構成しています。

【TECHNOLOGY】AIを「使う」から、AIと「組む」へ

TECHNOLOGYトラックの5セッションが共通して示したのは、AIを道具として「使う」段階から、AIをチームの一員として「組む」段階への移行です。プロンプトを工夫して指示を出す時代から、AI同士が連携して仕事を進め、人はその設計と監督を担う時代へと、舞台が一段上がりました。

AIとの関わり方の変化(Josh Cavalier)

2023年|単発プロンプト

一つの指示に一つの答え。AIは個人が「試す」道具でした。

2024〜25年|プロンプトライブラリ

使えるプロンプトを蓄積・再利用。AIが業務の「部品」になり始めた。

2026年〜|スキルライブラリと連携

AIがエージェントとして自律的に動き、エージェント同士も連携する。人はAIと「組む」設計者になる。

AIは仕事を「奪う」のではなく「一段押し上げる」

Abilitie社のMatt Confer氏は、1,111社・延べ4億4,300万時間の業務分析を引き、AIは既存の仕事を肩代わりする「代替」ではなく、その上に積み重なる「追加の生産性レイヤー」だと指摘しました。実際、優秀な従業員ほどAIを使いこなし、より多くの成果を出しています。コールセンターの5,179名を追跡した研究(NBER)でも、生成AIアシスタントの導入で生産性は平均14%向上し、顧客満足度の改善と離職率の低下まで同時に起きていました。

この変化は、育成のあり方そのものを変えます。2035年までに労働力の約80%が1980年以降生まれになり、一般社員の仕事は単純作業から「AIが作った内容を確認・編集・ブラッシュアップする」業務へと移っていきます。育成も、繰り返しのOJTから、AIを使ったシミュレーションとリアルタイムのコーチングへと比重を移すことになります。変化が速く不確実な時代のリーダーには、Confer氏は3つのヒントを挙げました。先に制約と障害を認めること、事前に失敗を予想する「プリモータム(事前検死)」を行うこと、そして複雑な判断ほど細部にこだわることです。

育成への示唆は明確です。「AIで底上げできる」を前提に置くと、育成部門の役割は「作業のやり方を教える」ことから、「AIの出力を見極め、導く力を育てる」ことへと移ります。教える対象が、手順そのものから、手順を判断する力へと上がるのです。

AIを前提とした育成体系の見直しは、何から着手すべきか迷いやすいテーマです。全23セッションの最新事例をまとめたレポートが、自社での検討の出発点になります。

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「どこまでAIに任せるか」を設計する

Josh Cavalier氏は、人とAIの関わり方は「人間中心」から「AI自律」まで10段階のスケールで整理できると示しました。プロンプトの成熟度にも5段階があり、単発のプロンプトから、プロンプト集、データベースとマニュアル、自動化、そしてAIがオリジナルのプロンプトを生み出す段階へと進化します。作業の難易度と失敗のリスクを見極めれば、どこまでAIに任せられるかが見えてきます。

2026年の新しい潮流として紹介されたのが、AIエージェント同士が連携して動く「A2A(Agent-to-Agent)」です。Googleが2025年4月に公開し、現在はLinux Foundationが運営、150を超える組織がすでに本番環境で活用しています。AIと道具をつなぐのが縦方向の「MCP」、AIとAIをつなぐのが横方向の「A2A」という関係です。コンテンツ生成・評価・配信を別々のエージェントが分担して一つの教材を作る、といった世界が現実になりつつあります。

では、どこから始めればよいのか。TorranceLearning社のMegan Torrance氏は、AIをコア業務に浸透させる5つのステップを示しました。マインドシフト、AIを使うタスクの特定、必要な情報収集と知識習得、変化を起こすこと、そして環境に合わせた微調整です。その際に強調されたのは、人材育成部門が本来持つ強み——社内ネットワーク、ファシリテーション、複雑な概念をわかりやすくまとめる力——を起点にすることでした。

要点はこうです。AIに任せられる範囲が広がるほど、「何をどこまで任せ、どこから人が関わるか」を設計する力が問われます。この役割設計こそが、これからの育成部門の新しい仕事になります。

一方で、新しいツールが次々と現れる中、「自分は実力が足りないのではないか」と感じる“テクノロジー誘発インポスター症候群”も広がっています。Betty Dannewitz氏は、推定70%の人がこの感覚を抱えながらも、その不快感はコンフォートゾーンを抜け出した成長の証だと語ります。そして、AIには再現できない3つの武器——人間の判断力、人間関係、創造性——に立ち返ることを勧めました。この「人間にしかできないこと」への注目こそ、次にご紹介するHUMANITYのテーマへとつながっていきます。

動画で見る:TECHNOLOGY ダイジェスト

【独自事例】パーソルキャリア:AIと講師の役割分担で成果を出した営業オンボーディング

本年のATDで唯一の日本企業による登壇が、パーソルキャリアの佐々木彩美氏によるこのセッションです。AIロールプレイと講師(トレーナー)を組み合わせた営業職のオンボーディング(早期戦力化)について、成果を数字で示しながら報告されました。「AIを使えば効率は上がるはず」という期待が空回りしがちな中で、何をどう設計すれば成果につながるのか。日本企業がそのまま参考にできる、希少な実例です。

状況:多くの企業がつまずく「2つの失敗」と、知識が行動に変わらない壁

AIを研修に取り入れる際、多くの企業が2つの失敗に陥ります。1つ目は、AIへの過剰な期待です。難易度の設定を誤ったり、受講者のモチベーションのフォローが抜け落ちたりします。2つ目は、AIと人の役割の境界が曖昧なことです。担当が不明確なまま進めると、教える内容が重複し、受講者の「気づき」が生まれにくくなります。

その根っこにあるのは、「知っている(Knowing)」状態は身についても、「できる(Doing)」状態に変換されないという壁です。知識を入れるところまではAIが得意ですが、それを実際の行動に変えるには、人の関わりが欠かせません。パーソルキャリアは、この境界を丁寧に見極めることから設計を始めました。

やったこと:AIと人の役割を分け、6ステップのハイブリッド研修に組み立てた

設計の出発点は、役割分担の明確化です。知識習得まではAIに任せ、人だけが提供できる価値——対面でモチベーションを高める、自分の失敗体験を共有して挑戦意欲を引き出す、質問を通じて本人の強みを言語化する——に人の時間を集中させました。これらが育てるのは、結局のところEQ(感情的知性)です。同社はEQの育成を、コスト(ソフト投資)ではなくビジネスへの投資だと位置づけていました。その考え方を、次の6つのステップに落とし込んでいます。

1

分かっている人が関わる(人)

まずは経験豊富なトレーナーが入り、何を目指すのか、何が「できる」状態なのかを共有します。

2

AIと練習する(AI)

AIロールプレイで反復練習します。恥ずかしさや評価を気にせず、何度でも失敗しながら試せます。

3

EQを育てる(人)

対話・失敗の共有・問いかけを通じて、相手の強みや意味づけを引き出し、感情面の土台をつくります。

4

実際の商談に臨む(実践)

練習で得た自信を持って、本番の商談へ。ここで初めて「できる」状態が試されます。

5

AIを相手に壁打ちする(AI)

商談後、AIを相手に振り返ります。うまくいった点・課題をAIとの対話で言語化します。

6

トレーナーと1on1する(人)

最後にトレーナーと1対1で対話し、次の成長に向けた意味づけと方向づけを行います。

注目したいのは、人の関与が一定ではない点です。フェーズ1では人が100%関わり、フェーズ2ではAIが90%・人が10%まで下がります。しかしフェーズ3では、AIが40%・人が60%へと、人の比重がむしろ戻ります。AIで効率化して空いた時間を、人にしかできない関わりへ再投資する。これがこの設計の肝です。

自社の研修にAIをどう組み込むか、役割分担の設計から相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

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結果:トレーナーを減らしながら、生産性が伸びた

入社2カ月未満のキャリアアドバイザーについて、前年度(FY24)と本施策後(FY25)を比較した成果が報告されました。人の関与を厚くしたにもかかわらず——いえ、厚くしたからこそ——次のような数字が出ています。

+126%
トレーナーの生産性
19→15
トレーナー数(22%減)
+3.1pt
早期戦力化率(年約$45,667増)
+31%
トップ層のAIロールプレイ回数

トレーナーの数を19名から15名へと減らしながら、一人あたりの生産性は126%向上しました。AIに任せられる練習や振り返りを移したことで、トレーナーはより本質的な関わりに集中できたためです。月次のアウトリーチ活動も8.7%、週次では30%増え、練習量そのものも底上げされました。

受講したメンバーの声も、この設計の意味を裏づけます。AIとの練習については「心理的安全性が高く、恥ずかしさも評価への不安もない。自由に失敗して挑戦し続けられた」。トレーナーのフィードバックについては「営業としてだけでなく、一人の人間として強みと伸びしろを理解してくれた」という声が寄せられました。AIが安全な練習量を支え、人が意味づけと動機づけを担う。役割を分けたからこそ、両方が活きています。

この事例の核心は、AIで「人を減らす」のではなく、AIで生まれた余白を「人にしかできない関わりへ再投資する」ことにあります。効率化と人間的な関わりは、トレードオフではなく両立できる。自社で営業や接客のオンボーディングを設計する際の、確かな設計図になります。

【HUMANITY】AIが進むほど、人間の価値が上がる

HUMANITYトラックの5セッションが口をそろえて示したのは、AIが知識やスキルを担うほど、人間にしか出せない力——自己認識・EQ・マインド——の価値がむしろ高まる、という逆説です。AIをどう使うかという問いの先に、「では人は何を磨くのか」という問いが立ち上がってきました。

人間が磨くべきは「垂直系」の力

リーダーシップ開発コンサルタントのRyan Gottfredson氏は、能力向上を2種類に分けて整理しました。知識・分析・効率といった「水平系」の力と、自己認識・EQ・マインドセットといった「垂直系」の力です。水平系はAIが得意とする領域であり、今後ますますAIに置き換わっていきます。だからこそ、人間が価値を出し続けるには垂直系を伸ばすことが大切になる、という指摘です。

水平系の力(AIが担いやすい)

知識・情報の蓄積

調べる・覚える・まとめるはAIが高速で代替できます。

分析・処理のスピード

大量のデータ処理や定型的な分析はAIの得意領域です。

技術的な問題解決

手順の決まった課題は、AIの支援で解きやすくなります。

垂直系の力(人間にしか磨けない)

自己認識

自分のクセや盲点、守りに入る傾向に気づく力です。

EQ(感情的知性)

自分と相手の感情を扱い、関係を動かす力です。

複雑な状況での判断

平常心を保ち、ニュアンスを抱えたまま賢い判断を下す力です。

ここがポイントです:AIが左側を担うほど、右側の「垂直系」が人の競争優位になります。AI時代の育成投資は、ここに向けるのが要点です。

Gottfredson氏は、人のマインドにも4つの軸があると示しました。固定と成長、クローズとオープン、予防と推進、内向と外向です。同じAIでも、成長・オープン・推進・外向のマインドを持つ人は「学びを加速し、視野を広げ、価値を生み出す」ために使うのに対し、その逆のマインドでは「自分を守り、弱みを隠す」ために使ってしまう傾向があります。どんなマインドでAIに向き合うかが、得られる成果を大きく左右するということです。

元OpenAIのZack Kass氏は基調講演で、AIの展開を3つのステージ——拡張されたアプリケーション、自律的エージェント、自然言語OS——として描きました。一方で、論理思考が要らなくなる世界では、人が生きる意味や意義を見失うリスクもあると警鐘を鳴らします。だからこそ未来への対策として、強い理念を持つこと、学び方そのものを学ぶこと、意識的に自然にふれること、人間らしくあること、そして柔軟に対応することの5つを勧めました。

人間性は「会話」と「フィードバック」に表れる

垂直系の力は抽象的に聞こえますが、現場では具体的な「会話」として現れます。Crucial LearningのJustin Hale氏は、アジリティー(新しい取り組みを行動に移し定着させる力)の高いチームは、実行の速さで12倍、一貫性で6倍、エンゲージメントで3倍という差を生むと示しました。そして全社的なAI導入が失敗する典型を「5つの危ない会話」として整理し、率直でオープンなコミュニケーションこそが鍵だと強調しました。

フィードバックも同様です。Kenneth Nowack氏とSandra Mashihi氏によれば、従業員の65〜72%がタイムリーなフィードバックを求めているのに、効果的なフィードバックを受けられているのは5人に1人にすぎません。注意したいのは、共感力の高いリーダーほど厳しい会話を避け、評価を甘くしてしまう傾向があるという指摘です。相手のタイプに応じて、情報や指摘を率直に伝える「プッシュ」と、傾聴して引き出す「プル」を戦略的に使い分けることが求められます。さらにKatie Aldrich氏は、笑いのある場では脳が学習を定着させやすくなることを脳科学から説明し、研修に意図的にユーモアを設計する価値を示しました。

育成投資の向け先は明確です。AI時代の育成投資は、スキルの習得だけでなく、自己認識・EQ・対話・フィードバックといった「垂直系」の領域に向けることが差を生みます。これらは、人が担うからこそ価値を持つ領域です。

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【LEADERSHIP】データで動かすリーダーシップとエンゲージメント

LEADERSHIPトラックの4セッションに共通していたのは、勘や経験ではなく「データ」でリーダー育成とエンゲージメントを設計するという流れです。研修を実施して終わりにせず、サクセッションプランや人事評価とつなぎ、効果を数字で確かめる。そんな仕組み化の事例が並びました。

「自社のリーダーは優秀」と言えるのは40%——育成部門の4つの成熟ステージ

DDIの大規模調査(Global Leadership Forecast)によると、「自社のリーダーは優れている」と回答する経営者・人材育成担当はわずか40%で、この数字は20年前からほとんど改善していません。DDIのKevin Tamanini氏とTacy Byham氏は、この停滞を抜け出すために、人材育成部門が次の4つのステージで成熟していく道筋を示しました。

人材育成部門の成熟ステージ(DDI)

STAGE 1

受身的・縦割り

言われた研修を個別に実施。データの裏づけはない

STAGE 2

標準化・運用

体系化されたプログラムと基本指標で運用する

STAGE 3

パーソナライズ・データ駆動

アセスメントに基づき個別最適化。事業の変化に合わせる

STAGE 4

戦略的・最適

育成を事業戦略と接続し、成果を継続的に生む

ステージ4まで進むと、データに基づく提案ができ、一貫したリーダーシップ戦略のもとでビジネス成果を出し続けられます。実際、ステージ4の組織では育成のROIが300%に達した例も報告されました。鍵になるのは、育成部門の立ち位置を「指示待ち(Reactor)」から「現場と組むパートナー(Partner)」、さらに「ニーズを予測する先回り役(Anticipator)」へと引き上げることです。受講者のニーズも一様ではなく、現ポストで安定している層が60%、次のポストに備える層が30%、現ポストに適応中の層が10%と分かれます。この違いに合わせて育成を設計することが、ステージを上げる第一歩になります。

自社の育成体系が今どのステージにあるか、次に何を整えるべきか。具体的な事例をもとに検討したい場合は、レポートとあわせてご相談ください。

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サクセッションとエンゲージメントを「データ」でつなぐ

米国の電力会社Entergy(従業員約1万2,000名)は、DDIと組み、リーダーシップ研修とサクセッションプラン(後継者計画)を一体で強化しました。マネージャー候補向けの「RISE」、部長候補向けの「VOLT」、次期役員向けの「POWER UP」という階層別プログラムを、後継者計画と連動させたのです。「次のポストが見えている」状態が受講者のモチベーションを高め、成果につながりました。チームの生産性は77%向上し、360度評価では各項目が12〜27%改善、RISE修了者の97%が定着し、71%が初めての管理職に昇進しています。

エンゲージメントも、推測ではなくデータで動かす対象です。Zenger FolkmanのJoe Folkman氏は、課題を分析して改善策を実行した結果、エンゲージメントが53%から62%へ上昇した事例を示しました。さらに、エンゲージメントの70%は直属の上司とチーム環境に左右され、96%は同僚とのつながりが強いほど高まること、そして3つの優れた強みを持つチームではエンゲージメントが86%に達することを、データで裏づけています。米国一のがんセンターMSK(従業員約2万2,000名)も、3つのレベルと6つの共通コンピテンシーを採用・評価・研修のすべてに連動させ、ウェビナーには472名が参加、NPSは9〜10、プログラムのフォロワーは旧モデルの約30から439へと大きく増えました。

リーダー育成の勝ち筋は、「研修を実施する」ことから、「データで設計し、サクセッションや人事評価とつなぐ」ことへと移っています。点の施策ではなく、仕組みとして回すことが成果を生みます。

動画で見る:LEADERSHIP ダイジェスト

【DEVELOPMENT】研修を「成果」に変える実装知

DEVELOPMENTトラックの9セッションは、研修を「やって終わり」にせず成果につなげる、実装の知恵が中心でした。共通していたのは、理想論ではなく現場の現実から設計を始めるという姿勢です。ここでは、日本企業がそのまま使えるヒントの多かった4つを取り上げます。

立派な研修より、現場に溶け込む「仕組み」を

JD Dillon氏は、デスクを持たず常に動き回るフロントライン(現場)の従業員・管理職に光を当てました。企業は研修予算の25%、金額にして約890億ドルをリーダーシップ開発に投じています。しかし75%の組織は、その投資が高い価値を生んでいないと感じています。理由のひとつは、現場マネージャーの厳しい現実にあります。

現場マネージャーが抱える困りごと(JD Dillon)

正式な訓練を受けないまま管理職になった人が8割を超える

正式な訓練のない「偶然の上司」
82%
エンゲージメントは上司任せ
70%
いきあたりばったりで対応している
67%
板挟みで燃え尽きている
49%

ここがポイントです:立派な研修を足すより、現場の流れに溶け込む仕組みが要ります。Dillon氏は、知識へのアクセス・実践支援・コーチング・反復という4要素のエコシステムで、「分かる→できる→自分のものに→主体的に」の4ステップを支えることを勧めます。

「仕組み化」の力を大規模に示したのが、食品最大手のJBS USAです。受講者7万5,000名、国内だけで14カ国語、14のLMS、終日3日間の入社研修——この非効率を、2,400種類の研修を1つの基盤に統合し、Google翻訳で14カ国語の同時通訳を実現し、個別のデバイスを貸与することで解決しました。結果、研修は3日から2日に短縮され、LMSは14から4に整理され、わずか6名の担当者が6カ月以内に9万2,000名分のセッティングを完了しています。理想は20分未満の短い研修だといいます。

上司の巻き込みと効果測定まで設計する

研修を成果に変えるうえで避けて通れないのが、受講者の上司をどう巻き込むかです。Georgia TechのRacheal Watts氏は、新任管理職向けの4カ月のブレンド研修で、思い切った設計を採りました。募集の時点で100%の出席を条件とし、1回でも欠席すれば脱落、さらに職場側にもペナルティが発生する仕組みにしたのです。その結果、出席率は100%を達成しました。ポイントは、すべての取り組みを受講者起点で設計し、忙しい上司の負担を最小限に抑えたことです。

そして最後は、効果測定です。CTDIのErika Tedesco氏は、指標を3つの層——基本指標(完了・出席・満足)、パフォーマンス指標(スキル・知識の定着)、インパクト指標(昇進・定着・生産性)——に分けて設計することを示しました。各指標は「価値(Value)・可視性(Visibility)・妥当性(Validation)」の3つのVでスコアリングし、低いものは見直すか置き換えます。同じ指標でも、経営者はトレンドとROIを、管理職は即応性とリスク低減を、従業員は成長と公平性を見たいという視点の違いも押さえておきたい点です。

研修を成果に変える企業に共通するのは、現場の現実から設計を始め、上司の巻き込み・運用・効果測定までを一連の仕組みとして組み立てていることです。研修そのものの出来栄え以上に、その前後の設計が成果を分けます。

動画で見る:DEVELOPMENT ダイジェスト

日本企業はどう動くか——参加者の声と3つの示唆

報告会の参加者である人材育成ご担当者からは、2026年のトレンドを「自社でどう動くか」に引き寄せる声が数多く寄せられました。そこから見えてきた、日本企業に効く3つの示唆を整理します。

1

AI偏重から「AI×人間性」へ、バランスを取り直す

AIの活用を急ぐあまり、対話・共感・動機づけといった人間の関わりが後回しになっていないか。技術への偏りはかえって失敗を招きます。AIで効率化した余白を、人にしかできない関わりへ再投資する発想が要ります。

「AI活用について、現状はどちらかといえばヒューマニティを軽視しているので、先に課題感を知れたのは良い学びでした」
――全社の人材育成に直接携わる方

2

階層別研修は「時代遅れ」ではなく、設計を磨いて活かす

世界の先進企業も、階層やニーズに応じた育成へと回帰しています。階層別研修を廃止するのではなく、データと個別最適化で設計を磨けば、十分に成果を出せる打ち手になります。

「日本では前時代的だと淘汰されつつある階層別教育に回帰しているのは面白く、自身が担当する研修設計の参考にしたいと思いました」
――全社の人材育成に直接携わる方

3

成果は「測って見せる」までを設計に含める

研修を実施して終わりにせず、効果を測り、経営や現場に見える形で示すところまでを設計に組み込みます。AIを使えば、これまで手間のかかった定性データの分析や個別フィードバックも現実的になります。

「360度サーベイをスコアでなくコメントだけ集めてAIで要約し、本人フィードバックや育成に活用するという発表が、非常に興味深かったです」
――人材育成に間接的に携わる方

3つの示唆は、いずれも「AIか、人か」ではなく「AIと、人をどう組み合わせるか」という問いに帰着します。2026年のトレンドを自社に取り込む鍵は、この役割設計にあります。

報告会に寄せられた参加者の声

ここ数年のAIトレンドから、Humanity(人間性)への動きが出てきたのは非常に面白いです。

全社の人材育成に直接携わる方

AIが進むほど人間性の重要性が高まると再認識しました。やはり目的と手段のアラインメントが重要ですね。

全社の人材育成に直接携わる方

AIをどう使うかから、AIのある世の中で人が人らしい強みを発揮できる場面が具体的にたくさんあると浮き彫りになってきました。

全社の人材育成に直接携わる方

AIとの住み分け、ユーモアの重要性、経営視点での研修企画、リーダーの共感力などが印象に残りました。

全社の人材育成に直接携わる方

研修成果の見せ方や測定方法の話が、特に勉強になりました。

全社の人材育成に直接携わる方

生成AIを活かした部門施策で、メンバーが納得して受け取るために上司としてどう動くべきか悩んでいたので、参考になりました。

自部門の人材育成に携わる方

世界の最新トレンドと、日本企業の現場感覚。その両方を行き来しながら、自社の次の一手を描く手がかりになれば幸いです。各セッションの詳細は、全57ページのレポートにスライドとともにまとめています。

よくある質問(ATD人材育成国際会議2026)

ATD2026の最大のトレンドは何ですか?

AIを「使う」段階から、AIと「組む」段階への移行です。前半10セッションのすべてが「AIと人間の役割分担」を通底テーマとし、AIが担える領域が広がるほど、対話・判断・共感といった人間にしか出せない価値(垂直系の力)の重要性が高まる、という方向性が示されました。AI偏重から「AIと人間性(HUMANITY)」へと、振り子が戻った年だといえます。

日本企業の事例は紹介されましたか?

はい。パーソルキャリアが、AIロールプレイと講師を組み合わせた営業職のオンボーディングを報告しました。AIに反復練習を任せ、人は動機づけやEQの育成に集中する6ステップの設計により、トレーナーを19名から15名に減らしながら、トレーナーの生産性を126%向上させています。AIで生まれた余白を、人にしかできない関わりへ再投資した点が特徴です。

AIを人材育成に取り入れるとき、最初の一歩は何ですか?

「AIに何をどこまで任せ、どこから人が関わるか」という役割設計から始めるのが有効です。知識を習得するところまではAIが得意で、「できる」状態にするには人の関わりが欠かせません。TorranceLearningは、マインドシフト、AIを使うタスクの特定、情報収集と知識習得、変化を起こすこと、環境に合わせた微調整という5つのステップを示し、人材育成部門の強み(社内ネットワークやファシリテーション)を起点にすることを勧めています。

階層別研修はもう時代遅れですか?

いいえ。世界の先進企業はむしろ、階層やニーズに応じた育成へと回帰しています。DDIは人材育成部門の成熟を4つのステージで示し、データに基づく個別最適化(ステージ3〜4)まで設計を磨けば、ROI300%といった成果も報告されています。階層別研修を廃止するのではなく、設計を磨いて活かすことが要点です。

研修の効果はどのように測ればよいですか?

指標を3つの層に分けて設計するのがおすすめです。基本指標(完了・出席・満足)、パフォーマンス指標(スキルや知識の定着)、インパクト指標(昇進・定着・生産性)の3層です。各指標は価値・可視性・妥当性の3つの観点で評価し、効果の低いものは見直します。経営者はトレンドとROIを、管理職は即応性とリスク低減を、従業員は成長と公平性を見たいという視点の違いも押さえておきましょう。

ATD2026の最新トレンドを、自社の一手に

本記事で取り上げた全23セッションの詳細は、スライドとビジュアルつきの全57ページのレポートにまとめています。AIと人間の役割分担、リーダーシップ開発、研修効果測定まで、自社の施策を検討する出発点としてご活用ください。具体的な設計のご相談も承っています。

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