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フィリップス5段階モデルでROIまで測る|現場での実装ステップ

「研修の成果を数字で示してほしい」。経営層からのこの一言に、答えを持てずにいる人材育成担当者は少なくありません。ATD人材育成国際会議2021で紹介された1,300人の担当者調査では、自社の研修効果測定に不満を持つ回答者が33%にのぼり、経営層への報告で費用対効果(ROI)を使えている組織も33%にとどまっていました。多くの組織が「測りたいのに測れていない」状態にあるのです。

この課題に対する世界標準の答えのひとつが、ジャック・フィリップス(Jack J. Phillips)の5段階モデルです。本記事では、モデルの全体像だけでなく、「全研修のうち何割をどのレベルまで測ればよいか」というフィリップス本人の推奨割合、実装の設計図であるV型モデル、そしてサウジアラムコ社が3年で測定文化を根づかせた実装ステップまで、現場で使える方法論として解説します。効果測定モデル全体の比較から知りたい方は、研修効果測定の4モデル比較の記事からお読みください。

フィリップス5段階モデルとは?L0からL5までの全体像

フィリップス5段階モデルとは、ROI Instituteの創設者ジャック・フィリップスが提唱した研修効果測定のフレームワークで、研修を6つのレベル(レベル0〜5)で測り、最終的に費用対効果(ROI)を金額で示す点に最大の特徴があります。「研修は良かったか」という感想の世界から、「研修は投資に見合ったか」という経営の言葉まで、測定を段階的に引き上げていく構造です。

6つのレベルの定義

6つのレベルは大きく2つのゾーンに分かれます。レベル0〜2は「研修の中」で測れるゾーン、レベル3〜5は「職場と経営の数字」で測るゾーンです。この区別を押さえると、各レベルで誰を巻き込み、どこからデータを取るのかが見えてきます。

フィリップス5段階モデル(レベル0〜5)の全体像

研修の中で測る(L0〜L2)

実施記録・アンケート・テストなど、育成部門の手元にあるデータで完結する

職場と経営の数字で測る(L3〜L5)

職場での行動・KPI・費用データが必要で、上司と経営層の巻き込みが前提になる

▼ 下のレベルの測定が、上のレベルの前提になる
0

インプット

研修の中で測る

受講者数・対象者・内容・出欠席率など、研修の実施に関する基礎データを押さえる。

実務メモ:ほとんどの組織で既に集まっているデータ。新たな仕組みは不要

1

反応(Reaction)

研修の中で測る

修了アンケートで、研修内容への評価と受講者の声を集める。

実務メモ:サウジアラムコ社のキー質問は「他の同僚にこの研修を勧めたいか。それはなぜか」

2

学習(Learning)

研修の中で測る

テストやロールプレイで、知識・スキルを習得できたかを確認する。

実務メモ:選択式テストなら採点と集計が容易で、継続しやすい

3

活用(Application)

職場と経営で測る

職場に戻った受講者が、研修内容をどれだけ使ったか・活かせたかを測る。

実務メモ:上司の面談やフォローの仕組みが不可欠。ここから難度が一段上がる

4

成果(Impact)

職場と経営で測る

生産性・品質・時間・コストなど、職場のビジネス指標の変化として成果を捉える。

実務メモ:経営層に語れる数字が生まれるのはこのレベルから

5

費用対効果(ROI)

職場と経営で測る

レベル4の成果を金額に換算し、研修費用と比較して投資対効果を算出する。

実務メモ:フィリップスが「The ultimate evaluation」と呼ぶ最終段階。全研修で行う必要はない(次章)

担当者にとって重要なのは、レベル0〜2とレベル3以降の間にある「段差」です。レベル2までは、出欠記録・アンケート・テストという育成部門の手元にあるデータで今日からでも測り始められます。一方、レベル3から先は、職場での行動を追う仕組みと上司の協力、そしてビジネスKPIへのアクセスが必要になり、育成部門だけでは完結しません。この段差があるからこそ、「すべての研修をレベル5まで測る」のは現実的ではなく、次章で解説する「どの研修を、どこまで測るか」という配分の考え方が実装の成否を分けます。

カークパトリックの4段階モデルと何が違うのか?

フィリップスのレベル1〜4は、カークパトリックの4段階モデル(反応・学習・行動・結果)とほぼ対応しています。違いは、その外側にレベル0(インプット)とレベル5(ROI)を加え、最終的に「金額」で研修を語れるようにした点です。つまりフィリップスモデルは、カークパトリックを置き換えるものではなく、経営への説明責任まで延長したモデルと捉えるのが正確です。カークパトリックモデル自体の実務での使い方はカークパトリック4段階モデルの解説記事で、4つの測定モデルの比較と選び方は研修効果測定モデルの比較記事で詳しく解説しています。

どこまで測ればいい?フィリップスが示す推奨実施率

結論から言えば、すべての研修をレベル5まで測る必要はありません。フィリップスらは「全研修プログラムのうち、何割をどのレベルまで評価すべきか」という目安を示しており、ROI(レベル5)まで測るのは全研修の5〜10%で十分だとしています。この「配分の発想」こそ、5段階モデルを現場に実装するうえで最初に押さえるべき考え方です。

レベル別の推奨実施率(フィリップスらの目安)

100%測るのはレベル0だけ。上のレベルほど対象となる研修を絞り込む

レベル0(インプット)
100%
レベル1(反応)
90〜100%
レベル2(学習)
60〜90%
レベル3(活用)
30〜40%
レベル4(成果)
10〜20%
レベル5(ROI)
5〜10%

ポイント:効果測定は「全部やる」ものではなく「配分する」もの。ROIまで測るのは、経営インパクトの大きい一部の研修だけで良い。

この目安が担当者にもたらす最大の意味は、「全研修の約9割はレベル1〜2までで良い」と割り切れることです。フィリップスらのアドバイスも実務的で、レベル1は研修内容と受講者ニーズへの評価に重点を置き、レベル2は簡単なテストで十分だとしています。一方でレベル3は現場でのフォローの仕組みが前提となり、レベル4は対象とするビジネスインパクトを慎重に選ぶ必要があります。そしてレベル5は、フィリップスが「The ultimate evaluation(究極の評価)」と呼ぶ最終段階であり、全研修の5〜10%に絞って初めて実行可能になるのです。冒頭で紹介した「効果測定に不満33%」という現実の一因は、この配分を設計せず、すべての研修に同じ測定を課そうとして息切れすることにあります。

どの研修をROIまで測るのか?

レベル5の対象は、経営指標に直結する研修から選ぶのが原則です。後述するROI 208%の測定事例(Nations Hotel)でも、対象となったのは売上成長・キーパーソンのリテンション・顧客満足度・コスト削減といった経営指標に直接ひもづく施策でした。逆に言えば、階層別の定例研修やコンプライアンス研修のように、実施すること自体に意味がある研修まで無理にROI換算する必要はありません。「どの研修を選抜するか」を年度計画の段階で決めておくことが、次章で解説する測定の設計(V型モデル)の出発点になります。

本記事で紹介しているフィリップス本人のセッション内容や世界企業の効果測定事例は、アイディア社がATD人材育成国際会議を現地取材してまとめた報告会レポートに収録されています。

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実装の設計図——V型モデルとROI Methodologyの12ステップ

ROIまで測ると決めた研修をどう設計するか。その設計図にあたるのが、ROI Instituteの「V型モデル」と、それを実行に落とす12ステップ(ROI Methodology)です。核心はシンプルで、「企画は成果から逆算して上から下りる。測定は下から順に積み上げる」という往復構造にあります。

V型モデル——企画は上から、測定は下から

V型モデルは、左の辺・中央・右の辺の3つで構成されます。左の辺では、ビジネス成果(レベル5・4)から逆算して「この研修で何を達成するか」を各レベルに下りながら企画します。中央では、各レベルの評価項目と目的を設定します。そして右の辺で、実施後にレベル0から順に情報を集め、上へ向かって測定していきます。ここから導かれる実務上の結論は明快です。効果測定は研修が終わってから考えるものではなく、企画の時点でレベル4・5のゴールを定義した研修だけが、ROIまで測れるのです。前章の「どの研修を選抜するか」を年度計画の段階で決めるべき理由も、ここにあります。

12ステップはPLAN・DO・SEE・ACTIONの4フェーズで回す

ROI Methodologyの12ステップは論理的・体系的に組まれていますが、全体はPLAN・DO・SEE・ACTIONの4フェーズに整理できます。流れで見ると、担当者の既存の業務サイクルにそのまま重ねられることが分かります。

ROI Methodology 12ステップの4フェーズ

PLAN

成果から企画する

ビジネスゴールに合わせ、現実的なプランと測定プロセスを具体化する

DO

情報を集める

習得系(反応・知識・スキル)と成果系(職場活用・インパクト)のデータを収集する

SEE

分析・換算する

研修と成果の因果関係を明確にし、データを金額に換算してROIを計算する

ACTION

報告し、改善する

経営層に結果を報告し、改善サイクルを回して次のPLANへつなげる

担当者の実務に置き換えると、PLANは年度計画や研修企画のタイミング、DOは研修の前後、SEEとACTIONは四半期や年度末の振り返り・報告に対応します。つまり12ステップは新しい業務を積み増すものではなく、いま回している企画・実施・報告のサイクルに「測定の視点」を組み込むフレームです。見慣れたPDCAに近い構造であることが、このモデルの導入障壁を下げています。ただし、設計図があっても最初の一歩は重い——次章では、測定文化がまったくなかった巨大企業が、たった1人から3年でこのモデルを根づかせた実装例を見ていきます。

現場での実装ステップ——サウジアラムコの完全実装に学ぶ

設計図を「最初の一歩」に変えるうえで、最良の教材がサウジアラムコ社の実装事例です。世界最大級の国営石油会社でありながら、当時は研修効果を測定する文化も手法もありませんでした。そこから、イギリス・リバプール出身の人材育成マネージャーが単身赴任し、わずか3年でフィリップス5段階モデルを組織に根づかせています。ATD ICE 2014で発表されたこの事例の教訓は3つ——「測るとドラマが始まる」「完璧主義を捨てる(精度は二の次、計測することが重要)」「たった1人からでも始められる」です。

CASE STUDY:サウジアラムコ ― 5段階モデルの完全実装(ATD ICE 2014)

BEFORE

研修効果を測定する文化も手法もない。評価基準と評価票の書式は部門ごとにバラバラで、研修の良し悪しを語る共通言語がなかった。

AFTER

3年でレベル1〜4の測定が業務プロセスとして定着。レベル1で2プログラムが劇的改善、レベル2はほぼ全プログラムで前年比改善。初のレベル4測定では、ビジネス成果の大きさに発表者自身が驚くほどの結果が出た。

やったこと ― 実装の4ステップ

STEP 1

書式を統一する

各レベルの評価基準と評価票の書式を全社で統一

STEP 2

L1〜L2で見える化

アンケートと選択式テストで測定を開始し、改善点を可視化

STEP 3

L3を業務プロセス化

上司面談の5ステップを評価票に明記し、週次運用へ

STEP 4

L4は自己証明

受講者自身がMYプロジェクトの成果を評価票で証明

ポイント:完璧主義を捨てて「まず測る」。精度は日々のPDCAで改善できる——測定文化ゼロの巨大企業でも、この順番なら3年で変わる。

この4ステップの並びを見て気づくのは、前章のV型モデルで「上から企画する」一方で、実装の着手は「下のレベルから」始まっているという点です。読者である担当者にとっての示唆は、最初の一手が高度な分析ではなく「評価票の書式統一」という地味な標準化であること。共通の物差しさえできれば、測定は自然と改善のドラマを生み始めます。以下、各レベルの実装を具体的に見ていきます。

レベル1〜2——「測れば一目瞭然」を組織に見せる

レベル1(反応)では、受講者アンケートの書式を統一し、キー質問として「他の同僚にこの研修を勧めたいか? それはなぜか?」を置きました。すると本格的な取り組みの翌年、2つのプログラムで満足度の劇的な改善が数字として現れます。レベル2(学習)では、採点と集計が容易な選択式ペーパーテストを採用。ほぼすべてのプログラムで前年比の改善が確認でき、合格点を大きく下回っていた2つのプログラムは重点対策によって劇的に改善しました。発表者の言葉を借りれば、「改善策を実施しても、計測しない限り本当に良くなったかは分からない。測ってみれば一目瞭然」なのです。ここまでは育成部門の手元で完結する打ち手であり、測定の効果を組織に示す最初の実績づくりに適しています。

レベル3——測定を業務プロセスに埋め込む

難度が上がるレベル3(活用)で同社が取った方法は、評価票そのものに職場で行うステップを明記することでした。具体的には、①上司と面談しアクションプランをすり合わせる、②実践した結果を評価票に記入する、③上司とビジネス成果について議論する、④上司にコメントを記入・サインしてもらう、⑤人材育成部門にメールで送信する、という5ステップです。さらに測定結果を回す運用として、毎週の教育センター掲示板への掲示と振り返りミーティング、毎月のイントラ更新、隔月の経営層への共有、四半期ごとの外部ベンダー見直しを業務プロセスに組み込みました。想定外の効果は、改善が見られないプログラムが「見える」ようになったことで、すぐに対策を打ちたくなる力学が現場に生まれたことです。フィードバックループを業務プロセスに埋め込めば、現場が自律的に改善し続ける仕組みになります。

レベル4——受講者自身が成果を証明する

レベル4(成果)では、受講者が研修を契機に取り組んだ「MYプロジェクト」のビジネス成果を、本人が評価票で証明する方式を採りました。自ら行った業務の効果を自ら説明する——以前の同社にはなかった説明責任の風土が、測定の仕組みによって生まれたのです。そして初めてレベル4を測定した結果、ビジネス成果があまりに大きいことに発表者自身が驚いたと報告されています。得られた知見も実務的です。現場レベルの改善アイディアはそのままでは実現されにくいものの、研修のアクションプランとして位置づけると確実に実践に移されること。そして、上司や経営層を巻き込み続けることが不可欠であることです。

「自社ではどの研修から、どのレベルまで測り始めるべきか」。測定の設計は、研修の目的や組織の状況によって最適解が変わります。アイディア社では効果測定の設計から実装までをご支援しています。

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ROI計算の中身と限界——208%はどう作られたのか?

レベル5のROIは「(効果−費用)÷費用×100」というシンプルな式です。しかし実装の難所は式ではなく、分子である「効果の金額換算」にあります。ここでは、ATD人材育成国際会議2021でROI InstituteのCEOパティ・フィリップスが公開した、Nations Hotel(15カ国で300ホテルを展開する米国ホテルグループ)のROI 208%事例をもとに、分子と分母の作り方を具体的に見ていきます。対象となった施策は、役員25人への手挙げ式の個別コーチング(360度評価つき)。各役員は売上成長・生産性/業務効率・コスト削減・キー人材のリテンション・顧客満足度という5つのターゲット領域から、自分が改善する3つの経営指標を選び、アクションプランに落とし込みました。

分子の作り方——年間金額×影響度×自信率で「盛らない」

効果の金額換算は、22人分のアクションプランをもとに、評価項目ごとに「年間金額」を算出するところから始まります。換算には2つの方式を併用しました。離職コストのように組織で標準化された単価を使うStandard Value(標準値)と、本人が根拠とともに見積もるParticipant Estimate(本人見積もり)です。重要なのは、この年間金額をそのまま合計しない点です。各項目に「そのうち研修の影響は何%か(影響度)」と「その見積もりにどれだけ自信があるか(自信率)」を掛けて、二重に割り引きます。たとえばキー人材のリテンション効果17万5,000ドルは、影響度40%×自信率70%を掛けて4万9,000ドルとして計上されました。こうして割り引いた22人分の合計が、効果186万1,158ドル(報告会の換算で約2億円)です。

分母の作り方——費用はfully-loadedで全部載せる

分母の費用は「fully-loaded(全部込み)」が原則です。この事例では、コーチング費用48万ドルだけでなく、事前のニーズ調査・移動費・役員が拘束された時間の人件費・運営サポート・通信費・会議室・そして効果測定自体の費用まで計上し、合計57万9,800ドル(約6,500万円)としています。費用を小さく見せればROIは簡単に大きくなりますが、それでは経営層に見抜かれます。分母に全部載せる誠実さが、算出されたROIの説得力の条件なのです。

Nations Hotel事例:効果と費用の比較(ROI 208%)

影響度と自信率で割り引いた効果 vs fully-loadedの費用

効果(22人分の換算合計・割り引き後)
約186万ドル(約2億円)
費用(fully-loaded・測定費まで計上)
約58万ドル

ROI=(効果−費用)÷費用×100=208%。差額の約128万ドルが「この施策が生んだ」と主張できる金額になる。

「このあたりがかなり怪しい」——数字の限界を知って使う

ここで、アイディア社独自の視点を率直に共有します。この事例をATD現地で取材した弊社代表のダーキーは、報告会レポートの中で、影響度と自信率の見積もり部分に「このあたりがかなり怪しい」、そして算出された208%という数字に「So what?(だから何?)」というコメントを添えています。影響度も自信率も、突き詰めれば本人の主観的な見積もりです。掛け算で割り引く手続きは誠実ですが、ROIの数字が仮定の産物であるという性質は変わりません。だからこそ、実務での正しい使い方は次の3点に集約されます。第一に、レベル5は全研修の5〜10%に絞る(推奨実施率の章のとおり)。第二に、経営への主張の土台は、行動と成果というレベル3〜4の事実に置く。第三に、ROIは仮定を開示したうえで、経営層との対話の入口として使う。数字の限界を理解していることこそ、このモデルを使いこなしている証拠です。なお、ROIを実際に算出した海外企業の実例は研修ROI測定の海外事例の記事で複数紹介しています。

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フィリップス5段階モデルに関するよくある質問

すべての研修をROI(レベル5)まで測るべきですか?

いいえ。フィリップスらの推奨実施率では、レベル5まで測るのは全研修の5〜10%で十分です。全研修の約9割はレベル1〜2までで良く、ROIまで測るのは費用規模が大きく経営指標に直結する選抜研修に絞ります。すべてに同じ測定を課すと息切れし、測定そのものが形骸化します。

カークパトリックの4段階モデルとどちらを使うべきですか?

2つは対立するモデルではありません。フィリップスのレベル1〜4はカークパトリックの4段階とほぼ対応しており、そこにレベル0(インプット)とレベル5(ROI)を加えた拡張版と捉えられます。経営層に金額で説明する必要があるならフィリップス、まず行動変容と成果の把握から始めるならカークパトリックが出発点になります。4つの測定モデルの特徴と選び方は研修効果測定モデルの比較記事をご覧ください。

担当者が少ない組織でも実装できますか?

できます。本記事で紹介したサウジアラムコの変革は、たった1人の人材育成マネージャーから始まり、3年で測定文化が定着しました。最初の一手は高度な分析ではなく、評価票の書式統一とレベル1〜2の測定という、育成部門の手元で完結する打ち手です。完璧主義を捨てて「まず測る」ことが、規模を問わない実装の原則です。

測定結果は経営層にどう報告すればよいですか?

主張の土台はレベル3〜4の事実(職場での行動変容とビジネス指標の変化)に置き、ROIを示す場合は影響度・自信率という仮定を開示したうえで対話の入口として使うのが誠実な報告です。経営層向けの報告のまとめ方は研修成果を経営層に報告する方法の記事で詳しく解説しています。

まとめ——「測る」とドラマが始まる

フィリップス5段階モデルの実装は、「全部やる」のではなく「配分する」ことから始まります。レベル5まで測るのは全研修の5〜10%。選抜した研修は成果から逆算して企画し(V型モデル)、着手は評価票の書式統一とレベル1〜2の見える化から。そしてROIの数字は、限界を理解したうえで経営との対話に使う——これが本記事で見てきた方法論の全体像です。最後に、3年で測定文化を根づかせたサウジアラムコが「勧めたいポイント」として挙げた4つの指針を引いておきます。実践と成果にこだわること。測って見える化すること。関係者を巻き込み続けること。そして、常に実験しながら改善し続けること。測り始めた組織では、改善のドラマが自然と動き出します。まずは次の研修の評価票を統一するところから始めてみてください。

研修の成果を、数字で語れるように

どの研修を、どのレベルまで測るか。測定の設計は組織の状況と研修の目的によって最適解が変わります。アイディア社では、ATD現地取材で蓄積した世界標準の知見をもとに、効果測定の設計から研修の実施・定着フォローまでを一貫してご支援しています。

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