アイデアを大量に出す5つの発想法|ブレインライティング・NM法・欠点列挙・マンダラ・逆転

「他にアイデアはない?」と問われて、会議がふっと静まる。企画書に並ぶのは、去年と似た案ばかり——。アイデアの「量」が出ないのは、担当者の能力やセンスの問題ではありません。
そもそも、発想法を体系的に習った経験のある人は多くありません。アイディア社の受講者が研修前に取り組む事前課題を見ても、イノベーションについての学習経験は限られるという傾向が出ています。多くの人が、自己流のブレインストーミングだけで「数を出す」ことに挑んでいるのが実情です。
量が出ないときに効くのは、新しい手法を1つでも多く覚えることではありません。「いま自分がどこで詰まっているか」を見分け、その詰まりに合った出し方を選ぶことです。本記事では、アイデアの量が出ない5つの詰まりと、それぞれを壊す発想法(ブレインライティング/欠点列挙法/NM法/マンダラチャート/逆転の発想)を、"量を出す使い分け"の視点で紹介します。各手法の具体的な手順まで踏み込みたいときは、実務で使う発想法|欠点列挙法とNM法でアイデアを生み出す具体手順にまとめていますので、あわせてご覧ください。
なぜアイデアは「量」が出ないのか — 5つの詰まり
アイデアが出ないとき、その原因は毎回同じではありません。声の大きい人に流されて出せない場面もあれば、良い案を探しすぎて手が止まる場面もあります。原因が違えば、効く出し方も変わります。まずは、量が出ないときにありがちな5つの詰まりを並べてみます。自分がよくハマるのはどれかを探しながら読んでみてください。
声と空気に消える|書いて出す
会議で声の大きい人の案に流れ、遠慮や沈黙で口に出されないまま消えていくアイデアが多い。参加者の数ほどには案が集まらない。
「良い案」を探して止まる|欠点から出す
最初から使える案を出そうとすると、頭のなかで評価が先に立って手が止まる。完璧を求めるほど数が伸びない。
テーマに近すぎて堂々巡り|離れて借りる
課題のすぐそばだけで考えるため、似た案の周りをぐるぐる回ってしまい、新しい方向が出てこない。
頭の中だけで広がらない|マスで広げる
思いつきを頭のなかで転がすだけだと、数個で打ち止めになる。抜け漏れも多く、網羅感が出ない。
いまの制約から縮こまる|理想から逆算
予算・時間・前例といった制約を先に置いて考えるため、発想が現状の延長でしぼんでしまう。
量が出ないときに「発想法をもっと知ろう」と手法探しに向かうと、かえって遠回りになります。先に自分がどの壁で詰まっているかを見分け、その壁に効く出し方を1つ選ぶ——これが数を伸ばす最短ルートです。次のセクションからは、5つの壁を1つずつ、それを壊すための発想法とセットで見ていきます。
「声の大きい人」に消されない — ブレインライティングで全員から出す
アイデア会議でよくあるのが、発言できる人が限られる状況です。声に出して案を言う方式では、話せるのは一度に1人だけ。順番待ちのあいだに思いつきは薄れ、「こんな案を出しても」という遠慮も重なって、参加人数のわりに案が集まりません。これが壁1「声と空気に消える」です。
この壁を壊すのがブレインライティングです。声に出す代わりに、全員が同時に自分の案を紙に「書いて」出します。書いたシートを隣の人へ回し、受け取った人は、そこに並ぶ案を手がかりにして自分の案を「上乗せ」していきます。MF2022でも、この手法のポイントは「書く」ことと「他者のアイデアに上乗せする」ことだと整理されています。話し合いではなく、書いて回す作業に置き換えるのが要点です。
代表的な進め方が「6・3・5法」です。6人が、3案を、5分で書く。これを1巡として、シートを回しながら6巡します。すると、短時間で案が機械的に積み上がっていきます。
声を出す必要がないため、口下手な人も、立場が下の人も、その場で萎縮しがちな人も、案が等しく残ります。「黙って書く個人作業では弱いのでは」と感じるかもしれませんが、そうとは限りません。ハイブリッドワークを分析したGartnerの調査でも、各自が非同期で進める作業は、同時に集まって進める作業とほぼ同等にチームのイノベーションへ寄与すると報告されています。「まず数を積む」局面では、話すより書くほうが速く、そして公平に量が集まるのです。
一人ひとりの書き方のコツや他の書式については、実務で使う発想法にゆずります。次は、書いてはみたものの、その案がなかなか「良い案」に見えず手が止まってしまう壁を見ていきます。
「良い案」を探して止まるなら — 欠点列挙法で不満から出す
最初から使える案を出そうとすると、書く前に頭のなかで採点が始まります。「これはありきたり」「これは実現できない」と自分で却下してしまい、手が止まる。これが壁2「良い案を探して止まる」です。良い案を1つ出す難しさと、案を数多く出す作業は、本来は別ものなのに、同時にやろうとして詰まってしまいます。
ここで効くのが欠点列挙法です。MF2022では、この手法の核を「マイナス要素をアイデアに変換する(−から+へ)」と整理しています。ねらいは単純で、出しにくい「良い案」ではなく、いくらでも出せる「不満・欠点」を入り口にすることです。次の3ステップで進めます。
欠点・不満を書き出す
対象の商品・サービス・業務について「使いにくい」「面倒」「時間がかかる」といったマイナス面を、良し悪しを判断せずにとにかく数だけ出します。批判はだれでも大量にできます。
欠点を「裏返す」
出した欠点を1つずつ「これが解消されたらどうなるか」と反転させ、あるべき状態に言い換えます。「時間がかかる」なら「一瞬で終わる」に置き換えます。
解決案に落とす
裏返した状態を実現する具体策を、欠点1つにつき複数考えます。欠点の数だけ、案の入り口が生まれます。
「良い案を出そう」と身構えると手が止まりますが、「不満を挙げよう」なら、だれでもいくらでも出せます。欠点列挙法は、その"止まらなさ"を発想の燃料に変える方法です。挙げた欠点の一つひとつが解決案の入り口になるので、最初に出した欠点の数が、そのまま案の量の上限を押し上げます。完璧主義で固まりがちな人ほど、はっきり効果を感じられるはずです。
次は、テーマに近づきすぎて、似たような案の周りをぐるぐる回ってしまう壁を見ていきます。
「同じ案ばかり」で堂々巡りなら — NM法で離れて借りる
課題のすぐそばだけで考えていると、出てくるのは自分がすでに知っている案の焼き直しばかりになります。「もっと速く伝えるには」と考えて、出るのは「メールを短くする」「会議を減らす」——どれも近い発想で、似た案の周りをぐるぐる回ってしまう。これが壁3「テーマに近すぎて堂々巡り」です。
この壁を壊すのがNM法です。MF2022でも、この手法の核は「テーマから離れる」ことだと整理されています。課題を一度わきに置き、まったく無関係な世界から仕組みを借りてきて、それを課題に持ち帰る。次の流れで、遠い世界を経由して案の元ネタを増やします。
遠回りして案の元ネタを増やす流れ
キーワードを決める
課題の本質を一語に絞る(例「速く伝えたい」)
遠くへ離れる
似た性質を持つ無関係な世界を探す(速い→稲妻・新幹線)
仕組みを借りる
「なぜ速いのか」を観察し、工夫を書き出す
課題へ戻す
借りた仕組みを課題に当てはめ、案に翻訳する
テーマの近くをいくら掘っても、出てくるのは知っている案の焼き直しです。NM法は、いったん課題から離れることで、遠い世界の仕組みを"借り物"として持ち込みます。離れる先を増やすほど案の元ネタも増えるので、「同じ案ばかり」の堂々巡りから抜け出せます。連想を広げるコツやNM法の詳しい進め方は、実務で使う発想法|欠点列挙法とNM法でアイデアを生み出す具体手順にまとめています。
次は、頭のなかだけで考えて数個で打ち止めになる壁を、マスの力で強制的に広げます。
「頭の中だけ」で数個で止まるなら — マンダラチャートで枠を埋める
思いついたことを頭のなかだけで転がしていると、たいてい数個で打ち止めになります。しかも、どこに抜けがあるのかも分かりません。自由に考えていいはずなのに、かえって数が伸びない。これが壁4「頭の中だけで広がらない」です。原因は単純で、埋めるべき空欄がないからです。人は、空いているマスがあると埋めたくなります。
その性質を使うのがマンダラチャートです。MF2022では「分解統合(ビジュアル)」の手法として位置づけられています。3×3の9マスの中央にテーマを置き、周囲8マスに関連する切り口を書きます。さらに、その8つの切り口それぞれを新しい3×3の中央に据えて展開すると、シート全体は9×9=81マスに広がります。
マスを1段展開すると、案の枠は8倍に
中央テーマの周囲8マス(切り口)を、それぞれさらに8マスへ展開した場合
差の意味:切り口を1段展開するだけで、考える対象が8から64へ強制的に広がります。空欄が先にあるから、手が止まりません。
頭のなかで数個で止まるのは、埋めるべき空欄が用意されていないからです。マンダラチャートは、先に81マスの空欄を並べておき、「ここを埋めよう」という力で量を引き出します。中央のテーマから8つの切り口を出し、その一つひとつをさらに8つに割る。この単純な作業で、考える対象が機械的に広がっていきます。網羅感が出るので、「抜けているところ」も同時に見えてきます。
次は、そもそも制約を先に置いてしまい、発想が現状の延長でしぼんでしまう壁を、逆から攻めて外します。
「制約から縮こまる」なら — 逆転の発想で理想から引き算する
案を考えるとき、多くの人は「予算が」「前例が」「時間が」と、できない理由を先に置きます。すると発想は現状の延長でしぼみ、面白い案ほど「うちでは無理」で早々に消えていきます。これが壁5「いまの制約から縮こまる」です。制約を先に置くほど、案の量も質も、今できることの範囲に閉じ込められてしまいます。
この壁を外すのが逆転の発想です。MF2022では、この手法の核を「理想から逆算する」ことだと整理しています。制約をいったん脇に置き、「もし何の制約もなければ、最高の状態はどうなっているか」を先に描く。そこから今へ引き算して、埋めるべき差を案に変えていきます。
理想から引き算して案を出す流れ
制約を外して理想を描く
予算・時間・前例を無視し「最高の状態」を言葉にする
理想と今の差を出す
理想像と現状を並べ、足りないものを洗い出す
差を埋める一手に変える
差の1つずつに「埋める案」を複数ぶつける
制約から考えると、発想は「今できること」の範囲に閉じ込められます。逆転の発想は、先に制約のない理想を置くことで、その天井を外します。理想と現状の差はいくつも見つかるので、差の一つひとつが案の入り口になり、量に変わります。「無理」で消えていた案が、「では何があれば可能になるのか」という問いに変わる——これが効き目です。
ここまでで、アイデアの量が出ない5つの壁と、それぞれを壊す発想法がそろいました。最後に、出した"量"を"使える案"に変えるための、場のつくり方を見ていきます。
出した"量"を"使える案"に変える — 発散と収束を分ける
ここまでの5つの発想法は、どれも「量を出す」ための道具です。ただ、量はそのままでは使える案になりません。最後に、出した量を活かすための場のつくり方を2つ紹介します。
1つめは、発散と収束を「分ける」ことです。同じ時間のなかで「たくさん出す」と「良し悪しを決める」を一緒にやると、評価する頭が働いた瞬間に、出しかけの案が止まります。量を出す局面と、絞る局面は、時間を分けるのが鉄則です。
アイデア会議の時間の流れ
何について量を出すのか、テーマを1つに絞る。ここが曖昧だと量も散る。
評価は禁止。5つの発想法で、とにかく数を出すことだけに集中する。
別の時間に切り替え、出した量から良し悪しをまとめて判断する。
広げる時間は評価を禁止し、とにかく数を出すことだけに集中します。良し悪しは、次の「選ぶ時間」にまとめて判断します。この線引きをするだけで、同じメンバー・同じ会議時間でも、出てくる量ははっきり変わります。
発想法や研修設計のヒントを、メールでお届けしています。現場ですぐ使える事例をまとめて受け取りたい方はこちらから。
2つめは、自分ごとの「実課題」で回すことです。アイディア社の発想力開発プログラムも、既成のお題ではなく「自己課題を使った実践的な発想演習」を特徴にしています。練習用のきれいなお題より、いま自分が本当に困っている課題のほうが、当事者意識が働いて量も質も出ます。次に発想法を試すときは、明日の会議で使う本物の問いを持ち込んでみてください。
なお、どの発想法を、どの順番で研修に組み込み、出した案を現場への定着まで運ぶかは、イノベーション研修の進め方|発想を出す仕組みから定着までで扱っています。また、発散して出した量を、筋道立てて1つの答えに収束させる流れは、創造的問題解決研修の進め方|ロジカル×クリエイティブで答えを出すが詳しいです。
よくある質問
アイデアを大量に出すには、まず何から始めればいいですか?
まず「自分がどこで詰まっているか」を見分けることから始めます。声に流されて出せないのか、良い案を探して手が止まるのか、テーマに近すぎて堂々巡りなのか——原因によって効く発想法は変わります。本記事の5つの壁から近いものを選び、その壁に対応する手法を1つ試すのが最短です。手法をたくさん覚えることより、詰まりに合った出し方を1つ選ぶほうが、量は早く増えます。
発想法はたくさんありますが、量を出すにはどれを使い分ければいいですか?
目的を「量を出すこと」に絞るなら、詰まりの種類で選ぶのがおすすめです。会議で案が集まらないならブレインライティング、良い案を探して手が止まるなら欠点列挙法、同じ案ばかりならNM法、頭のなかで広がらないならマンダラチャート、制約で縮こまるなら逆転の発想、という対応です。まず1つを選び、慣れてから増やしてください。
ブレインストーミングで意見が出ません。どうすればいいですか?
声に出して順番に話す方式は、一度に話せる人が1人に限られ、遠慮も重なって案が集まりにくくなります。全員が同時に紙に書くブレインライティングに切り替えると、口下手な人や立場が下の人の案も等しく残り、短時間で数が積み上がります。まず「話す」を「書く」に置き換えるだけでも、出る量は変わります。
アイデア出しの会議で、量が質の判断に埋もれてしまいます。
「たくさん出す」と「良し悪しを決める」を同じ時間にやっているのが原因であることが多いです。発散(広げる)と収束(選ぶ)の時間を分け、発散の最中は評価を禁止してください。良し悪しは次の時間にまとめて判断します。この線引きだけで、量を保ったまま、あとから質を高められます。
アイデアが「量」から動き出す仕組みを、チームに
発想法は、個人の練習にとどめず、チームで回す仕組みにすると定着します。アイディア社の実践型イノベーション研修では、自己課題を使って発想から実行までを一気通貫で体験できます。現場で使える最新の事例やヒントは、メールマガジンでもお届けしています。
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