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2026.07.01管理職研修

管理職になりたくない若手の本音と魅力の伝え方

「うちの若手は、管理職になりたがらないんです」。人材育成のご担当者から、こうした相談が年々増えています。かつては昇進が当然の目標でしたが、今の若手は必ずしもそうは考えません。とはいえ、次のリーダーは育て続けなければならない——ここに、多くの人事が頭を悩ませる難しさがあります。

本記事では、まず「なりたくない」という本音がどこから来るのかを分解し、放置したときに組織が払う代償を確認します。そのうえで、若手の意欲を引き出す具体的な打ち手——魅力を"語る"のではなく"体験させる"設計——を、実際の研修プログラムをもとに紹介します。読み終える頃には、明日から動かせる一手が見えているはずです。

「管理職になりたくない」は、若手が上司を見て抱く4つの認識から生まれる

「最近の若手は管理職になりたがらない」——人材育成の現場で、この声が確実に増えています。ただ、"意欲がない"と一括りにしてしまうと、打ち手は見えてきません。多くの場合、若手が管理職を避けるのは意欲そのものの問題ではなく、身近な上司を観察して積み上げた「具体的な認識」の結果だからです。

マネージャー育成の現場で繰り返し見えてくるのは、若手が上司の働く姿から受け取る次の4つの印象です。どれも一つひとつは"事実の一面"であり、頭ごなしに否定しても響きません。まずは、若手が何を見て管理職に魅力を感じなくなっているのかを、分解して捉えるところから始めます。

1

「忙しそう」に見える|余裕のなさ

上司は常に予定に追われ、落ち着いて考える時間がないように映ります。若手には「昇進=自分の時間を失うこと」と結びついて見えます。

2

「ストレスが高そう」に見える|板挟み

上位の方針と現場の要望の間で調整に追われ、疲弊しているように見えます。対人的な消耗が"割に合わない"という印象を強めます。

3

「勤務時間が長い」ように見える|時間の拘束

メンバーが帰った後も残って対応する姿が、責任の重さと時間の拘束をセットで印象づけます。プライベートとの両立が難しそうに映ります。

4

「責任が重そう」に見える|リスクの集中

成果もトラブルも最終的に背負う立場に見え、得られるものよりリスクだけが際立って感じられます。失敗の代償が大きく映ります。

この4つに共通するのは、いずれも「上司を外から見た印象」だという点です。裏を返せば、管理職の役割を"内側から体験"していないからこそ生まれる認識でもあります。だからこそ、魅力を言葉で語って説得しても、この4つの壁はほとんど動きません。そして、この認識を放置したまま管理職候補が育たない状態が続くと、組織には見えにくいコストが静かに積み上がっていきます。次章で、その代償を具体的に確認します。

放置すると何が起きるか|「プレイングマネージャー化」が組織に残す見えにくいコスト

「なりたくない」という空気を放置したとき、最初に起きるのは"何も起きていないように見える"ことです。既存の管理職やプレイングマネージャーが現場を回し続けるため、当面は仕事が回ります。ただし、その裏では問題が静かに進行します。プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての意識が高く時間もかける一方で、マネジメントには意識も時間も向きにくい傾向があります。この状態が続くと、次のような連鎖が起こります。

「なりたくない」を放置したときに進む連鎖

STEP 1

志望しない状態を放置

当面は既存メンバーで回るため問題が見えない

STEP 2

プレイングマネージャー化

プレイヤー業務に偏り、マネジメント意識が育たない

STEP 3

育成が後回しになる

チーム運営と部下育成が滞り、成長機会が減る

STEP 4

属人化とパイプライン弱体化

ノウハウが個人に留まり、次のリーダーが育たない

この連鎖のこわいところは、どの段階も「今すぐ困る」ものではない点です。だからこそ後回しにされ、気づいたときには後継者候補がいない、という状態になりがちです。つまり「管理職になりたくない」は、本人の好みの問題に見えて、放置すれば次のリーダー供給が細る経営課題でもあります。だからこそ、魅力の伝え方は「余裕があればやりたい施策」ではなく、パイプラインを維持するための投資として位置づける必要があります。

候補者の育成と並行して、現役のプレイングマネージャーのマネジメント意識を立て直すと、パイプラインの回復が早まります。

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本音の裏にある「不安」を数値で読む|次世代リーダーが本当に困っていること

魅力を伝える設計に入る前に、もう一段だけ掘り下げます。「なりたくない」という言葉の裏で、管理職手前の若手は実際に何に困っているのか。アイディア社がマネージャー育成の受講者調査で集めたデータを見ると、彼らのコミュニケーションの悩みは、ある一点に偏っていることが分かります。

管理職手前の若手が抱えるコミュニケーションの悩み(割合)

上位2つ「世代差」と「任せ方のさじ加減」で半分を占め、どちらも"人の扱い"の不安

Z世代・世代差
25%
個別対応・任せ方のさじ加減
25%
伝え方(説明・傾聴・FB)
20%
グローバル・文化差
10%
働き方・環境(在宅・1on1)
10%
チーム運営・モチベーション
7%
悩みなし
3%

注目すべきは、悩みが均等に散らばっていない点です。上位2つ「世代差」と「任せ方のさじ加減」を合わせると全体の半分を占め、どちらも突き詰めれば「人をどう扱うか」という不安に行き着きます。つまり「管理職になりたくない」の正体の多くは、地位や責任そのものへの拒否というより、"人を動かす自信のなさ"です。同じ調査で管理職手前が「今後いちばん活用したい」と答えたのも、質問スキル(45%)——相手の考えを引き出し、人を動かす対話の技術でした。

言い換えれば、魅力を語る前に、この不安に効くスキルを先に手渡すことが、遠回りに見えて最短の動機づけになります。なお「世代差」への戸惑いの背景には、各年次がどんな環境で育ったかの違いがあります。世代ごとの前提を整理したい場合は、年代別早見表で読む若手育成もあわせてご覧ください。

魅力は「語る」より「体験させる」|若手の意欲を引き出す3回設計

「では、どう伝えるか」。ここからが本題です。結論から言えば、管理職の魅力は言葉で語るより、"体験"として渡したほうが伝わります。マネージャー志望を高めるプログラムは、単発の説得ではなく、3回に分けて段階的に意欲を積み上げる設計になっています。まず全体像を見てください。

マネージャー志望を高める3回設計(体験の積み上げ)

1回目|マインド研修

「管理職の良さ」を体験で実感。環境変化から求められる力を考え、創造的な演習で小さな成功体験を積む。

2回目|スキル研修

管理職にならなくても使える基本スキル(教える・気づかせる・動機づける)を練習し、「自分にもできそう」という手応えを得る。

3回目|シミュレーション

実際のマネジメント場面を疑似体験し、自分の現在地を測って持ち帰る。

1回目のマインド研修では、あえて「管理職とは」と正面から説くのではなく、IDEO・Apple・Googleといった企業のケースや創造的な演習を通じて、考える楽しさと"できた"という感覚を先に体験させます。この創造演習の具体的な手法(発想を広げるテクニック)は、若手のイノベーション事例で扱っています。ここで大切なのは手法そのものより、「マネジメントに関わる時間は、思っていたより面白い」と体感してもらうことです。

この3回は、順番そのものに意味があります。いきなりスキル習得や適性診断から入ると"やらされ感"が出ますが、最初に良さを実感し、次に手応えを得て、最後に自分を測る流れにすると、"なりたくない"という気持ちが"できそう"へと自然に動いていきます。魅力は1回の説得ではなく、段階的な体験の設計で伝わるのです。

「語る」と「体験させる」はどう違うか|若手が動く分かれ目

前章で3回設計の全体像を見ました。では、なぜ"語る"より"体験させる"ほうが効くのか。両者を同じ観点で並べてみると、若手の意欲が動くかどうかの分かれ目がはっきりします。

従来|魅力を「語る」

入り口

管理職の意義ややりがいを、言葉で正面から説明する。

扱うスキル

管理職になったら必要な、高度な話が中心になりがち。

手応え

聞くだけで終わり、自分の成功体験は得られない。

適性の扱い

向き不向きを、上司や人事など他者が判断する。

結果

「立派だが自分ごとにならない」と、意欲は動きにくい。

アイディア流|「体験させる」

入り口

楽しい研修や演習で、"良さ"を先に実感させる。

扱うスキル

管理職にならなくても使える、基本スキルから入る。

手応え

プチ成功体験を重ね、「自分にもできた」を積む。

適性の扱い

自分で測って、現在地と伸びしろを自ら知る。

結果

「意外とできそう」と、"なりたくない"が動き出す。

共通して効く原則:人は語られた魅力ではなく、自分が体験した手応えで動く。

この対比が示すのは、若手の意欲は「管理職は素晴らしい」という言葉ではなく、「意外とできた」という自分の体験で動く、ということです。とはいえ、体験させれば無条件に前向きになるわけではありません。押し付けになった瞬間に、若手はまた身構えます。そこで効いてくるのが、次に見る"押し付けない設計"です。

押し付けにしない5つのポイント|「ならなくてもいい」が意欲を動かす

では、その"押し付けない設計"とは具体的にどうするのか。マネージャー志望を高める研修が共通して守っているのが、次の5つのポイントです。並び順そのものにも意味があります。

1

まず「楽しい」から入る

説得より先に、マネジメントの良さと面白さを体感させる。最初の印象が、その後の意欲を大きく左右します。

2

「ならなくても使える」スキルを渡す

コーチングや動機づけなど、管理職にならなくても役立つスキルから教える。この一手で押し付け感が消えます。

3

プチ成功体験で自信を積む

研修中に小さな「できた」を重ね、"自分にもできそう"を頭ではなく体で覚えさせます。

4

シミュレーションで刺激的に体験させる

実際のマネジメント場面を疑似体験させ、机上の学びで終わらせない。臨場感が意欲に火をつけます。

5

得意・不得意を特定し学習プランをつくる

最後に自分の現在地を可視化し、次の一歩を自分で描かせる。押し付けではなく、自ら選ぶ形に落とします。

この5つに一貫しているのは、「管理職にならなくてもいい」という逃げ道を残す姿勢です。逆説的ですが、"管理職にさせよう"という圧を抜くほど、若手は安心して前向きになります。特に効くのがポイント2で、コーチング(相手に気づかせる質問)は、管理職にならなくても日々の対話で役立つ代表格です。その具体的なやり方は、管理職に効くのは気づかせる質問で解説しています。まずはこうした"すぐ使えるスキル"から入ることが、遠回りに見えて意欲への近道になります。

「自分にもできそう」を測って返す|マネジメントシミュレーション

3回設計の最後に置かれるのが、マネジメントシミュレーションです。ここで受講者は、指示出し・コーチング・動機づけ・プレゼンテーションといった実際の場面を疑似体験し、その結果を個人レポートとして受け取ります。ポイントは、曖昧な「向いている/向いていない」ではなく、4つの"測れる力"に分解して現在地を返すことです。

シミュレーションが返す「4つの測れる力」

「向いている/向いていない」を、名前のついた4つの力に分解して現在地を示す

教える(TEACHING)

相手の理解度に合わせて分かりやすく伝え、知識・スキルの習得を支援する力。

気づかせる(COACHING)

質問と傾聴で相手の思考を整理し、自ら答えに気づいて動けるよう促す力。

動機づける(MOTIVATION)

相手のタイプや価値観を理解し、その人に合った関わりで行動意欲を高める力。

発表する(PRESENTATION)

目的を明確にし、構成・話し方・表情で理解・納得・行動を引き出す力。

大切なのは、シミュレーションが「向いている/向いていない」という曖昧な印象を、この4つの"測れる力"に分解し、本人に現在地を返すことです。たとえばある受講者の個人レポートでは、4領域すべてが5点満点で3.4〜3.8と「実践できる」水準に収まり、突出した弱点はありませんでした。強みは発表、伸びしろは動機づけ——というように、次に何を磨くかまで具体的に見えてきます。つまり管理職適性は一部の人だけの才能ではなく、練習で届く範囲にある。この事実を自分の数値で突きつけられると、"なりたくない"の前提が静かに崩れます。魅力は、こうして自分の手応えとして持ち帰れて初めて本物になります。

ここまで見てきたように、若手の管理職離れは「本音の4認識」から生まれ、放置すればパイプラインを細らせます。有効な打ち手は、魅力を語ることではなく、良さを実感させ・すぐ使えるスキルを渡し・測って返す一連の体験を設計することです。まずは自社の若手が何につまずいているかを一つ特定し、そこに効く"すぐ使えるスキル"から着手してみてください。

よくある質問(FAQ)

管理職になりたくない若手に、どう声をかければいいですか?

いきなり「管理職を目指そう」と説得するより、まずコーチングや動機づけなど"管理職にならなくても使えるスキル"を体験してもらうのが効果的です。良さを実感し、小さな成功体験を積むうちに、"自分にもできそう"という気持ちが自然に育ちます。押し付けず、逃げ道を残すほど、かえって前向きになります。

「なりたくない」という気持ちは、無理に変えるべきですか?

無理に変える必要はありません。目的は全員を管理職にすることではなく、食わず嫌いのまま選択肢を閉じさせないことです。体験を通じて「意外と面白い」「自分にもできそう」と感じてもらえれば十分で、その先に進むかどうかは本人が選べる形が理想です。

管理職候補の育成は、何年目から始めるべきですか?

明確な決まりはありませんが、管理職になる直前ではなく、もう少し早い「管理職手前(プレーヤー期)」から人を扱う基本スキルに触れておくと、移行がスムーズになります。管理職手前の若手の悩みで最も多いのは「世代差」と「任せ方のさじ加減」で、いずれも早めの練習が効くテーマです。

魅力を伝える研修は、どれくらいの期間・回数が必要ですか?

1回の説得では動きにくいため、複数回に分けた設計が有効です。代表的には「マインド研修→スキル研修→シミュレーション」の3回で、良さを実感する→手応えを得る→現在地を測る、と段階的に意欲を積み上げます。単発よりも、体験を重ねられる構成のほうが定着します。

若手の「なりたくない」を「やってみたい」に変える研修設計を、一緒に

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