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外国籍の部下を動かす変革の進め方|本気の協力を引き出す7要素

なぜ海外チームの「変化を伝える」はこれほど難しいのか

新しい方針や制度、進め方の変更をチームに伝える。日本人だけのチームであれば、多くを語らなくても「空気を読む」「察する」によって、ある程度は伝わってきました。しかし海外拠点のメンバーや外国籍の部下が相手になると、その前提は通用しません。同じように伝えたつもりでも、「動かない」「表面的には従うが実際は変わらない」「正面から反発される」といったことが起こります。

これは個人の英語力の問題ではありません。上級レベルの英語力があっても、「日本語ならできるが英語だと伝えきれない」「ネイティブのようには踏み込めない」という壁に多くのマネージャーがぶつかります。実際、新任管理職が挙げるマネジメント上のコミュニケーションの悩みで最も多いのは、文化・世代・関係性といった多様性によるコミュニケーション難易度で、全体の28%を占めています。海外チームを率いる立場では、この難しさがさらに前面に出てきます。

マネジメントスキルを「日本文化とのギャップの大きさ」で並べてみると、変化を伝えるチェンジマネジメントが、なぜ特に難しいのかが見えてきます。

海外チームで埋めにくい「文化ギャップ」の大きさ ― スキル別

小さい
タイムマネジメント
ある
指示出し
モチベーション
部下育成
問題解決
影響力
大きい
チェンジマネジメント
ネガティブフィードバック
ネゴシエーション
エグゼクティブプレゼンス

日本文化とのギャップが大きいスキルほど、感覚や言外のニュアンスに頼った伝え方が通用しにくくなります。

チェンジマネジメントは、ネガティブフィードバックやネゴシエーションと並ぶ「難しい会話(Difficult Conversations)」に分類され、文化ギャップが最も大きいスキル群に入ります。タイムマネジメントのように手順を共有すれば埋まるものとは性質が違い、相手の価値観・前提・受け止め方そのものに踏み込むため、「いつものやり方」では届きません。だからこそ、変化を伝えるときは感覚に頼らず、何を・どの順番で伝えるかを要素に分解して設計する必要があります。次の章で、その設計図となる7つの要素を見ていきます。

変化を伝える7要素 ― 納得は「順番」で設計する

変化を伝えるとき、多くの人は「何を変えるか」だけを話してしまいます。しかし、それだけでは相手は動きません。納得は、伝える内容を要素に分解し、順番に積み上げることで生まれます。アイディア社がグローバルマネージャー向けの研修で使っているのが、次の7つの要素です。

1

Details(詳細)

何が、いつから、どう変わるのかを具体的に示す。曖昧な全体像だけでは、相手は何をすればよいか分かりません。

2

Reason(理由)

なぜ変えるのか、背景と必要性を伝える。「決まったから」では納得は生まれません。

3

Benefit(利点)

変化によって何が良くなるか。組織にとってだけでなく、相手本人にとっての利点を明確にします。

4

Negatives(欠点)

マイナス面や負担も隠さず伝える。都合の悪い点を伏せると、後で信頼を失います。

5

Support(支援)

移行期に何を支援するかを示す。「あとは自分で」では、不安が抵抗に変わります。

6

Tools(ツール)

変化を実行するための具体的な手段や仕組みを用意する。意志だけに頼らせません。

7

Questions(質疑応答)

一方通行で終えず、質問を引き出して双方向で確認する。疑問を残したままにしません。

日本式の伝え方で特に抜けやすいのが、4番目のNegatives(欠点)と7番目のQuestions(質疑応答)です。良い面だけを強調し、一方的に通達して終える伝え方は、海外チームのメンバーには「都合の悪いことを隠している」「意見を聞く気がない」と受け取られ、かえって抵抗を生みます。欠点も正直に開示し、質問を引き出して双方向にする。この2つが、海外チームで納得を作れるかどうかの分かれ目になります。

ただし、7つの要素を丁寧に尽くしても、抵抗が完全になくなるわけではありません。むしろ、抵抗は変化につきものです。問題は、その抵抗を正しく読み取れるかどうかにあります。次の章では、見落とされやすい抵抗の正体から見ていきます。

自社の海外チーム向けに体系立てて学ばせたい場合は、グローバル人材育成研修で、ここで紹介した7要素を含む「難しい会話」のスキルを実践的に習得できます。

伝えても動かない ― 抵抗は「見かけ」と違う

なぜ、丁寧に伝えても抵抗は起きるのでしょうか。背景には、人が変化に対して抱く根本的な感覚があります。「不確実性の痛みは、確実な痛みより大きい」。今のやり方に不満があっても、先が見えない変化よりはマシだと感じるものです。だから人は、過去に失うものに目を向け、今あるものにしがみつき、未来に期待を持つのはずっと後になります。抵抗は、変化につきものの自然な反応です。

ここで多くのマネージャーがつまずくのが、抵抗の「読み違い」です。「動かない部下=やる気がない」と決めつけてしまう。しかし、観察できる表面の言動と、その奥で本当に起きていることは、しばしば食い違います。

観察される言動

1. 締め切りを守らない・できないように見える

スキルや能力が足りないせいに見える

2. 取り組んでいる「ふり」をする

研修や新しい手順に、形だけ参加している

3. うまく適応したように見える

表面上は変わったように振る舞う

4. 何も言わず、ただ動かない

時間が経てば過ぎ去ると待っている

本当に起きていること

1. 表立って抵抗を示している

「できない・やりたくない」を行動で表明している

2. 意識的に、変わらないことを選んでいる

納得しないまま、やり過ごそうとしている

3. 表面だけで、行動は変わっていない

隠れた抵抗。最も見抜きにくいタイプ

4. 本人も気づかずに抵抗している

無意識の抵抗。悪意はありません

読み解く原則:抵抗はあなたへの攻撃ではなく、変化が何か重要な点に触れた証拠。見かけの言動ではなく、その奥で何が起きているかを読む。

表面だけを見て「やる気がない」と決めつけ、叱責してしまうと、無意識の抵抗を意識的な反発に変えてしまいます。特に海外チームでは、この読み違いが起こりやすくなります。沈黙は同意とは限らず、文化的に上司へ異議を口にしにくいだけのこともあるからです。だからこそ、観察された言動の裏で何が起きているかを見極める必要があります。次の章では、その抵抗が「どこから来ているのか」を読み解く手がかりを見ていきます。

抵抗を見分ける ― 出どころを読む8つの型

抵抗は、見分けられれば対応できます。同じ「反対」でも、出どころが違えば効く打ち手はまったく変わります。相手の言動を頭ごなしに抑え込むのではなく、「この抵抗はどこから来ているのか」を読み取る。抵抗の出どころは、大きく次の8つの型に分けられます。

何を

The What|必要性への疑問

「本当に今やる必要が?」優先順位・タイミング・実現可能性そのものを疑っている。

進め方

The How|やり方への疑問

変化そのものは認めつつ、方法・計画・段取りに矛先が向いている。

信頼

Understanding/Trust|腑に落ちない

2〜3回説明しても理解されない。情報や、伝え手そのものへの信頼が不足している。

利益

Self-Interest|自分への影響

「自分の立場はどうなる」地位・取り分・主導権など、個人的な損得への不安。

習慣

Habit|慣れの喪失

慣れた手順や居心地のよさが崩されることへの脅威。内容への反対ではありません。

過去

Old Stuff|過去のしがらみ

「前のときもこうだった」今回とは別の、過去の変化や出来事を持ち出してくる。

喪失

Endings/Loss|手放す痛み

価値あるもの・大切にしてきたものを失うことへの、深い懸念。

ずらし

Red Herrings|論点ずらし

細部であふれさせる・一言で返す・話をそらす・黙り込む・伝え手を攻撃する。本当の出どころを隠している。

大切なのは、相手の言動から「どの型か」を当てにいくことです。たとえば、細かい質問を次々に浴びせてくる(論点ずらし)のは、本当は別の不安、たとえば喪失感や自分への影響を隠していることが少なくありません。表面の言葉をそのまま受けて答えても、堂々巡りになります。出どころが分かれば、次にやることは自然と決まります。次の章では、見分けた抵抗にどう対応するか、その5つのステップを見ていきます。

外国人部下を率いる現場で実際にどう設計したのかは、外国人部下を率いるグローバルマネジメント研修の設計事例が参考になります。

抵抗への対応5ステップ

見分けた抵抗には、決まった対応の型があります。ポイントは、抵抗を力で抑え込むのではなく、いったん表に出させて、相手と一緒に扱うこと。次の5つのステップで進めます。

抵抗マネジメントの流れ

STEP 1

引き出す

率直な本音を尋ねる

STEP 2

受け止める

反論せず聴いて認める

STEP 3

出どころ特定

8つの型のどれか

STEP 4

言語化する

中立的に形にする

STEP 5

行動を促す

動かせる責任を持たせる

このプロセスの肝は、STEP2とSTEP4にあります。抵抗をすぐに論破しようとせず、まず受け止める(STEP2)。そのうえで「これはこういう抵抗だね」と中立的に言語化し、相手と共有する(STEP4)。海外チームでは特に、抵抗を「自分への攻撃」と受け取らないことが重要です。抵抗は、変化が何か大事な点に触れた証拠であり、対応できるもの。そう捉え直すことが、関係を壊さずに前へ進める鍵になります。次の章では、ここまでの7要素と抵抗対応を、海外チームの現場でどう組み合わせるかを整理します。

海外チームで7要素と抵抗対応を回す

ここまで見てきた「7要素で伝える」と「抵抗を読んで対応する」は、別々の技術ではありません。変化を動かすという1つの仕事の、表と裏です。伝えて終わりにするのではなく、出てきた抵抗を受け止めてはじめて、変化はチームに根づきます。海外チームの現場では、この2つをどう組み合わせるのかを整理します。

変化を動かす2つの層 ― 伝える×受け止める

伝える層

7要素で変化を設計し、納得の土台をつくる(送り手の仕事)

受け止める層

出てきた抵抗を読み、対応する(相手と向き合う仕事)

▼ 現場ではこの2層を行き来しながら進める
1

変化を7要素で伝える

伝える層

Details から Questions まで順に設計する。特に、欠点を隠さないNegativesと、双方向にするQuestionsを厚く。

現場の勘所:相手の文化的背景(言外を読む文化か、明示を好む文化か)に合わせ、どこまで言葉にするかを調整する。

2

抵抗を引き出し、出どころを読む

受け止める層

出てきた反応を8つの型で見分ける。表面の同調も、沈黙も、そのまま鵜呑みにしない。

現場の勘所:海外チームでは沈黙は同意とは限りません。「率直にどう思うか」を質問で引き出し、本音を表に出してもらう。

3

言語化し、行動を促す

受け止める層

抵抗を中立的に言葉にして共有し、動かせる範囲の責任と、次の一歩を約束してもらう。

現場の勘所:個人の特定の行動を正したいときは、事実→解釈→期待の順で伝えるDAPを併用し、「変化の伝達」と「個別の指摘」を使い分ける。

海外チームでは、この「伝える×受け止める」を一度きりで終えず、繰り返し回すことが欠かせません。変化に対する気持ちは、失うことへの不安から始まり、時間をかけて「何が残るのか」を整理し、ようやく未来への期待へと移っていきます。一度の説明で完結させようとせず、抵抗を受け止めながら何度も対話する。その積み重ねこそが、文化や言語の壁を越えて、海外チームの納得を作っていきます。

海外チームの変化を、納得とともに前へ

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