次のマネージャー像を描く|管理職一歩手前のキャリアデザイン研修

管理職になりたくない時代に、なぜ「次のマネージャー像を描く」研修なのか
「管理職になりたくない」と考える若手・中堅社員が増えています。背景にあるのは、上司を間近で見て「忙しそう」「ストレスが高そう」「勤務時間が長い」「責任が重い」と感じ、そのポジションそのものに魅力を持てないという心理です。一方で、これからのマネージャーには今まで以上に幅広い力が求められており、次の世代を担う人材をどう育てるかは、多くの企業にとって避けて通れない課題になっています。
ここで、人材育成のご担当者が見落としがちな事実があります。それは、マネジメントにまつわる悩みが「管理職になってから」ではなく、その手前からすでに始まっているということです。次の図は、管理職一歩手前の中堅社員(次世代リーダー)が実際に抱えているコミュニケーションの悩みを、割合で示したものです。
次世代リーダー(管理職一歩手前)が抱えるコミュニケーションの悩み
上位は「世代差への対応」と「任せ方のさじ加減」。どちらも、本来は管理職になってから直面するはずの悩み
出典:アイディア社「マネージャー育成FORUM 2026」独自調査(管理職一歩手前の中堅社員の回答を割合で集計)
読み解き:上位2つの「世代差への対応」「任せ方のさじ加減」は、いずれもプレイヤーの悩みではなくマネージャーの悩みです。肩書きを得る前から、中堅社員はすでにマネジメントの入口に立っています。
この事実が示しているのは、次世代リーダーに必要なのは「スキルを前倒しで詰め込むこと」ではない、ということです。むしろ先に必要なのは、「自分は次にどんなマネージャーになるのか」という像を、本人に描いてもらうことです。像がぼんやりしたままでは、研修で何を学んでも自分ごとになりません。逆に像が描けると、何を身につけるべきかが定まり、学ぶ意欲も自然と高まります。
そこでこの記事では、管理職一歩手前の中堅社員に向けたキャリアデザイン研修を、「次のマネージャー像を描く」ことを軸に設計する方法を、現状把握 → 像を描く → 差を埋めるの順でご紹介します。汎用的なキャリア研修との違いも含めて、自社の研修設計にそのまま使える形で整理します。
次世代リーダー・管理職一歩手前の中堅社員の育成について、自社に合った研修設計を相談したい方へ。アイディア社が課題整理からお手伝いします。
普通のキャリアデザイン研修では足りない理由
キャリアデザイン研修というと、一般には「自分のこれまでを振り返り、これからのビジョンを描く」汎用型を思い浮かべる方が多いはずです。若手社員向けには、この形でも十分に機能します。ところが、管理職一歩手前の中堅社員(次世代リーダー)に同じ枠組みをそのまま当てはめると、うまくいきません。理由は、次世代リーダーが置かれている状況が、現任の管理職とも、もっと若い世代とも、構造的に異なるからです。
次の図は、現任の管理職と次世代リーダーの違いを、6つの観点で並べたものです。
こうして並べると、次世代リーダーの難しさがはっきりします。部下もマネジメントの経験もない段階で、「今」ではなく「これから」のために、すぐには成果の出ない力を育てていかなければなりません。つまり描くべきは「漠然とした将来の夢」ではなく、「将来、自分が管理職になったときにどうありたいか」という具体的な像です。汎用のキャリア研修が夢物語や今の延長で終わりやすいのは、この像をはっきり描くプロセスが抜けているからです。
では、その「次のマネージャー像」をどう描かせ、研修としてどう組み立てればよいのでしょうか。次の章から、現状把握 → 像を描く → 差を埋めるの3段階で、具体的に見ていきます。
設計の幹:現状把握 → 像を描く → 差を埋める
ここからが本題です。次世代リーダー向けのキャリアデザイン研修は、思いつきの「振り返り+夢を語る」では機能しません。アイディア社がさまざまなパターンを試してたどり着いた、キャリアデザイン研修の王道の型は、いたってシンプルです。それは「現状把握 → ビジョン構築 → 実行計画」という3段階です。
この型を次世代リーダーに当てはめると、真ん中の「ビジョン」が、そのまま「次のマネージャー像」になります。図にすると、次のとおりです。
次世代リーダー向けキャリアデザイン研修の設計フロー
現状把握
自分の現在地を
可視化する
像を描く
将来の管理職像を
具体化する
差を埋める
像との差を行動と
フォローで埋める
3段階の順番には意味があります。いきなり「どんな管理職になりたいですか」と聞いても、自分の現在地が見えていなければ、像は絵空事になります。逆に、現在地を振り返るだけで終われば、ただの反省会で終わってしまいます。だからこそ、まず現在地を正確につかみ、そこから将来の像を描き、その差を具体的な行動に落とす——この順番をひとつながりで回すことが、研修が成果につながるかどうかの分かれ目になります。
この型は、机上の理論ではなくアイディア社の実体験から生まれたものです。事前課題の有無、半日か終日か、社内講師か外部か——さまざまなパターンを試した結果、もっともスムーズだったのは、午前に現状把握、午後にビジョン構築を据えた組み立てでした。さらに踏み込む場合は、2日目にスキル・コツ・実行計画を加える形が定番です。次の章からは、この3段階それぞれを、次世代リーダー向けにどう具体化するかを順に見ていきます。
【ステップ1】現状把握――まず「自分の現在地」を可視化する
最初のステップは現状把握です。次のマネージャー像を描く前に、まず「今の自分がどこにいるのか」をはっきりさせます。ここを飛ばして将来像から入ると、像が現実離れした夢物語になりがちです。アイディア社では、現状把握を次の3つの視点から行います。
環境の視点
世の中の変化やこれからのマネージャーに求められることを把握し、「今のままでは将来は難しい」と実感する。
自分の視点
これまでの取り組みを振り返り、自分の経験や強みを確認しながら、「変化が必要だ」という心の準備をする。
会社の視点
現場より一段高い経営者の目線で、会社が今どこに向かおうとしているのかを冷静に捉える。
3つをそろえると、現在地が立体的に見えてきます。環境の視点が「なぜ変わる必要があるのか」を、自分の視点が「自分は何を持っていて何が足りないのか」を、会社の視点が「会社は自分に何を期待しているのか」を教えてくれます。この3つがそろって初めて、次に描く像が地に足のついたものになります。
現状把握を深めるには、いくつかのコツがあります。まず、振り返りの「機会」を与えるだけでも意味があります。多くの中堅社員は、日頃立ち止まって自分のキャリアを考える時間が取れていないからです。次に、本人の成長と成果を「認める」ことです。入社時と比べてどこまで変わったか、どんな成果を出してきたかに気づいてもらうと、心に余裕が生まれ、改善点を前向きに考えられるようになります。
さらに大切なのが、自己評価だけで終わらせないことです。自分ひとりの振り返りは、甘くも辛くもなりがちです。そこで、上司や先輩からの評価コメント(180度評価)、尊敬できる先輩のベンチマーキング、先輩へのインタビューといった外からの視点を加えると、現在地がぐっと正確になります。あわせて、マネジメントに必要な力――たとえば「教える」「気づかせる」「動機づける」「伝える」といった領域――を簡単な演習や診断で測っておくと、どこが強みでどこが伸びしろかが一目で分かり、このあと像を描くときの土台になります。
現在地の可視化に使えるアセスメントや180度評価の設計について、自社の状況に合わせて相談したい方へ。
現在地がはっきりしたら、いよいよ「次のマネージャー像」を描く段階に進みます。
【ステップ2】「次のマネージャー像」を描く
現在地が見えたら、次は将来像です。ここがこの研修の心臓部にあたります。ただ「どんな管理職になりたいですか」と問いかけるだけでは、ほとんどの人は答えに詰まります。リーダーシップやマネージャー像は人によって定義が違ううえ、部下を持った経験もないからです。だからこそ、像を「描きやすくする」仕掛けが必要になります。
アイディア社では、まず「自分なりのリーダーシップの定義」をはっきりさせるところから始めます。定義があいまいなままでは、像も描けないからです。定義づけには、2つの観点を使います。1つは客観的な観点――社員・企業・お客様から見て、どんなリーダーが必要かという視点です。もう1つは主観的な観点――自分の価値観・性格・行動から、どんなリーダーでありたいかという視点です。この2つを重ねると、独りよがりでも借り物でもない、自分の言葉によるマネージャー像が立ち上がります。
ここで、次世代リーダーならではのコツがあります。まだ部下がいない段階では、「自分が上司だったら」と考えるより、「部下の立場から見て、どんな上司についていきたいか」を考えるほうが、像を描きやすくなります。日々接している自分の上司や先輩を題材に、「この人のここは真似したい」「ここは自分なら変えたい」と棚卸しするだけでも、像の輪郭がはっきりしてきます。
ビジョンそのものを膨らませるときは、次の3つのアプローチを使い分けます。
分析的なアプローチ
計画や数字から入り、将来(たとえば数年後)のビジョンを具体的な形に落とし込む。論理から考えるのが得意な人に向く。
想像的なアプローチ
さまざまな刺激を受けながら、自由な発想で新鮮なビジョンを描く。固定観念にとらわれず広げたい人に向く。
ヒューマンなアプローチ
上司・先輩・同僚との対話を通じて、一人では出てこない視点から像を磨く。人と話す中で考えがまとまる人に向く。
3つのアプローチは、得意・不得意が人によって分かれます。数字や計画から入るのが得意な人は分析的アプローチ、自由に発想を広げたい人は想像的アプローチ、人と話す中で考えがまとまる人はヒューマンなアプローチが向いています。研修では複数を組み合わせ、どの受講者からも新鮮な像が出てくるようにします。ここで大切なのは、像が「分かりやすく」「心に響く」ものになっていることです。壮大なだけで自分が動き出せない像では、意味がありません。
像が描けても、それだけでは現実は変わりません。最後のステップは、現在地と像の差を埋める実行計画とフォローです。
【ステップ3】差を埋める――実行計画とフォローで「像」に近づく
現在地と像が出そろったら、最後はその差を埋める段階です。差を埋めるのは、研修当日ではなく、研修が終わってからの行動です。だからこそ、実行計画とフォローの設計が、成否を分けます。
まず実行計画です。多くの中堅社員は「自分にビジョンを実現できるのか」という不安を抱えています。そこで、モチベーションを上げる第一歩は、発破をかけることではなく「安心させる」ことです。具体的な実行計画を一緒に立て、時間の使い方、周りを巻き込むコミュニケーション、実行力を高めるちょっとしたコツを渡すと、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
実行計画を立てても、その勢いは長続きしないことが多いものです。そこで、簡単な進捗報告と定期的な1on1でフォローします。ここで1つ、見落とされがちなポイントがあります。この1on1を直属の上司だけに任せると、細かい業務の話や説教の時間になってしまいがちです。キャリアや像について落ち着いて話すには、メンター、人事、外部コーチなど、日々の業務から少し離れた相手のほうが効果が出やすくなります。
もう1つ、次世代リーダー特有の注意点があります。研修を受けてから実際にマネジメントを担うまで、数年空くことが珍しくありません。その間に、せっかく描いた像も学んだ内容も、忘れられ、薄れていきます。だからこそ、この研修は単発で終わらせてはいけません。次の図のように、時間をかけて像を更新し続ける設計が必要です。
描いた像を「絵」で終わらせない維持設計
描いた像と実行計画を、すぐに小さな行動へ。第一歩は「安心」から。
進捗報告と定期的な1on1でフォローし、失速や忘却を防ぐ。
フォロー研修やシミュレーションで像を更新し、実際にマネジメントを担う時期へつなげる。
こうして時間軸で見ると、次世代リーダー向けのキャリアデザイン研修が「1日で完結するイベント」ではないことが分かります。像を描いた直後に小さく動き出し、1年目はフォローで失速を防ぎ、2〜3年目には像そのものを見直しながら、実際にマネジメントを担う時期へとつなげていきます。この継続があって初めて、研修で描いた像が「絵」で終わらず、現実の行動に変わります。
研修後のフォロー設計や、像を更新し続ける継続プログラムまで含めて相談したい方へ。自社の体制に合わせて組み立てをご提案します。
まとめ:次のマネージャー像を描く研修が、次世代リーダーを動かす
管理職になりたがる人が減るなかで、次世代リーダーをどう育てるかは、多くの企業の共通課題です。ポイントは、スキルを前倒しで詰め込むことではなく、本人に「次のマネージャー像」を描いてもらうことでした。像が描けて初めて、学ぶ意味とモチベーションが生まれます。
設計の幹はシンプルです。まず現状把握で現在地を可視化し(環境・自分・会社の3視点に、180度評価などの外からの視点を加える)、次に客観×主観の2軸と3つのアプローチで次のマネージャー像を描き、最後に実行計画とフォローでその差を埋めます。さらに、研修から実務まで数年空くことを見越して、像を更新し続ける長期設計を組み込む――これが、次世代リーダーを実際に動かすキャリアデザイン研修の形です。
よくある質問
次世代リーダー向けのキャリアデザイン研修は、若手向けと何が違いますか?
汎用の若手向けが「自分のキャリアを振り返って将来を描く」ものであるのに対し、次世代リーダー向けはビジョンに「次のマネージャー像」を据えます。部下がいない、即戦力より将来のリーダーシップが求められるなど、現任の管理職とは状況が6つの点で異なるため、その違いを踏まえた設計が必要になります。
「管理職になりたくない」社員にも効果はありますか?
あります。スキルを押し付ける前に、現在地を可視化し、次のマネージャー像を本人に描いてもらうことで、管理職という役割の意味とやりがいが自分ごとになります。最初に楽しい体験やプチ成功体験を入れ、管理職にならなくても使えるスキル(傾聴や動機づけなど)から始めると、前向きな意欲が生まれやすくなります。
研修は何日くらいが目安ですか?
もっともスムーズなのは、午前に現状把握、午後にビジョン構築を行う1日対面型です。スキルや実行計画まで踏み込む場合は、2日目を加えて「1日目=現状把握・ビジョン構築/2日目=スキル・コツ・実行計画」とする形が定番です。
研修後のフォローはどうすればよいですか?
簡単な進捗報告と定期的な1on1が基本です。1on1は直属の上司だけに任せると業務確認や説教の時間になりがちなので、メンター・人事・外部コーチなど、業務から少し離れた相手が効果的です。実務を担うまで数年空くこともあるため、フォロー研修やシミュレーションで像を更新し続ける長期設計が望ましいです。
部下がいない段階で「マネージャー像」を描けるのですか?
描けます。「自分が上司だったら」と考えるより、「部下の立場から、どんな上司についていきたいか」を考えるのがコツです。日々接している上司や先輩を題材に、「真似したい点」と「自分なら変えたい点」を棚卸しすると、像の輪郭がはっきりしてきます。
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