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研修設計の完全ガイド|ニーズ把握から効果測定までの4工程

なぜ「設計」で研修の成果が決まるのか

毎年きちんと研修を回しているのに、職場での成果がどうも見えてこない。受講後アンケートの満足度は高いのに、経営層から「で、結局どんな成果が出たのか」と問われると言葉に詰まる。多くの人材育成担当者が、この手応えのなさを抱えています。

その原因の多くは、研修そのものの良し悪しではなく「設計」にあります。ここで言う設計とは、スライドの完成度や演習の数のことではありません。経営層が見たい成果から逆算して、ニーズ把握から効果測定までの全工程を一本の線として組み立てることです。

その手応えのなさを、研修効果測定の第一人者ジャック・フィリップス氏の調査が裏づけています。経営層が研修について「本当に知りたいこと」と、人材育成チームが「実際に報告していること」を比べたものです。経営層が最も知りたいのはビジネス成果(96%)であるのに対し、それが報告されているのはわずか8%。一方、人材育成チームが力を入れがちな受講者の反応や知識テストの結果は、経営層にとっては意外と関心が低いという結果でした。

経営層が研修に求める情報と、実際に報告されている情報のギャップ

「ビジネス成果」について、経営層が知りたい割合 vs 実際に報告されている割合(Jack Phillips 調査)

経営層が知りたい(ビジネス成果)
96%
実際に報告されている(ビジネス成果)
8%

経営層が最も見たい「ビジネス成果」が、ほとんど届いていない。研修の質を上げる前に、成果が生まれ・測れ・伝わる設計になっているかを問い直す必要があります。

このギャップは、現場の努力不足が原因ではありません。受講者数や満足度といった「実施したこと」を熱心にまとめても、経営層の問いである「成果は出たのか」には構造的に答えられないのです。逆に言えば、成果から逆算して設計された研修は、測定も報告も自然に経営層へ届きます。読者の皆さんがいま抱えている手応えのなさは、設計の段階で取り戻せるということです。

「内容を決める」から「成果から逆算する」へ

人材育成研究者のアルン・プラダン氏は、これからの研修設計に必要なのは発想の転換だと指摘します。従来は、研修の目的を「学び・気づき・知識の習得」に置き、こだわるポイントは「教える内容」、視野は短期的でした。これからは、目的を「職場での行動変容とビジネス成果」に置き、こだわるべきは「ニーズ・目的・ビジネス課題」、視野は長期に広がります。

この転換が意味するのは、研修設計のスタート地点が「何を教えるか」ではなく「職場でどんな行動と成果を生みたいか」に変わるということです。そして成果は、一度きりの研修という「点」ではなく、ニーズ把握から効果測定まで続く「線」のなかで生まれます。次の章では、その線の全体像――研修設計の4つの工程を地図として示します。

研修設計の全体像|ニーズ把握から効果測定までの4工程

かつて研修設計といえば、1日単位の対面集合研修を「企画・運営・実施する」ことを指していました。しかし現在、人材育成担当者の業務範囲は大きく広がり、ニーズ分析から研修効果測定までのすべてが射程に入っています。対面に加えてリモート・ハイブリッド・オンデマンドといった形態の選択、研修以外の施策まで含めると、設計が扱う領域は一段と複雑になりました。

つまり、いまの研修設計とは「どんな内容を教えるか」を決める作業ではなく、成果から逆算して一連の工程を組み立てる仕事です。本ガイドでは、その全体像を次の4つの工程として整理します。この4工程が、これ以降の章の地図になります。

研修設計の4工程|成果から逆算して一本の線で組む

STEP 1

ニーズ把握

目的と課題を見極め、何を実現するかを決める

STEP 2

設計

点ではなく線(ジャーニー)として組み立てる

STEP 3

定着

研修と職場をつなぎ、行動として根づかせる

STEP 4

効果測定

成果を出す→測る→伝えるで経営層へ届ける

この4工程は、独立した作業の寄せ集めではありません。前の工程が次の工程を縛る、一本の線です。ニーズ把握があいまいなまま設計に入れば、どれだけ演習を工夫しても成果の的が定まりません。定着の仕掛けがなければ、研修で得たスキルは職場に戻ると消えていきます。効果測定は、設計の段階で「何をもって成果とするか」を決めておかなければ後から測りようがありません。読者の皆さんが自社の研修を点検するときは、どの工程が弱いかという視点で見ると、成果が出ない原因が見えてきます。

次の章からは、この4工程を一つずつ掘り下げます。まずは出発点となる「ニーズ把握」です。

自社の研修設計が4工程として組めているか、どこに改善余地があるかを一緒に整理します。研修設計・効果測定のご相談はお気軽にどうぞ。

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工程1 ニーズ把握|「形態」の前に「目的」を決める

研修設計でつまずく典型は、いきなり「対面か、リモートか、ブレンドか」と形態から入ってしまうことです。形態に正解はなく、目的によって最適解が変わります。先に決めるべきは、その研修が組織にどんな価値を提供するのか――つまり目的(位置づけ)です。

研修効果測定で知られるブリンカホフ教授は、企業研修の目的を「6階層の価値ピラミッド」として整理しました。上位ほど経営インパクトが大きく設計に投資すべき研修、下位ほど全員に効率よく届けるべき基盤的な研修です。自社の研修がどの階層に当たるかを見極めると、おすすめの形態はおのずと決まります。

企業研修の目的|6階層の価値ピラミッド(上=経営インパクト大/下=全員向けの基盤)

上位3階層|成果・人材投資を重視

設計と定着に予算と工数をかけ、職場での成果を狙う研修

下位3階層|全員・基盤・効率を重視

対象者に漏れなく、効率よく届けることを狙う研修

▼ 上から順に、経営インパクトの大きい目的
1

企業戦略の実現(イノベーション・変革)

成果重視

DXや組織変革など、全社方針を実現するための研修。

おすすめ形態:経営者サポート+職場の巻き込み+早期からの効果測定+チェンジマネジメント

2

現職務の成果向上(現場力の強化)

成果重視

現在の職務能力を高め、職場で具体的な成果を出す研修。人材育成チームが最も力を入れるべき領域です。

おすすめ形態:ラーニングジャーニー(研修シリーズ)+定着フォロー+職場実施

3

人材パイプラインの強化(先行育成)

成果重視

デジタル人材・グローバル人材など、数年後のニーズに備えて必要な人材をあらかじめ育てる研修。

おすすめ形態:ブレンドラーニング(インプットはeラーニング、スキルは講師、長期はリマインドで維持)

4

トラブル発生時の対応

基盤・全員

避難訓練やシステムエラー対応など、普段やらない万一の作業に備える研修。

おすすめ形態:パフォーマンスサポート(チェックリスト・マニュアル・FAQ)を中心に整備

5

コンプライアンス

基盤・全員

義務・規制・ルールの周知徹底。各種オリエンテーションもここに含まれます。

おすすめ形態:LMS+eラーニング(いつでも・安定品質・受講履歴を管理)

6

従業員のモチベーション向上

基盤・全員

職場での成果より、受講者の満足度や動機づけ・リテンションを狙う研修。

おすすめ形態:外部の公開コース/オンデマンドのコンテンツライブラリー

自社の研修をこの6階層に当てはめてみると、「成果を出したい研修なのに、全員向けの一律な形態で済ませていた」といったズレに気づくはずです。目的さえ定まれば、形態選びで迷うことは大きく減ります。各階層の位置づけとおすすめ形態の詳細は、研修計画の立て方|6階層の価値ピラミッドで形態と目的を整理するで具体的に解説しています。

目的を「3つの準備」で具体化する

目的を机上で考えるだけでは、現場の実態とずれます。ニーズを的確につかむには、3つの準備が有効です。1つ目は過去受講者へのヒアリング。「研修の評価」ではなく「仕事のどんな場面で使い、どんな成果が出たか」を聞きます。2つ目は現場マネジャーへのインタビュー。「どんな研修が欲しいか」ではなく「職場でどんなアウトプットが必要か」「成果を上げる社員と改善余地のある社員は何が違うか」を引き出します。3つ目は経営方針と人材育成施策の接続。経営計画を読み込み、有識者に確認しながら、優先すべきニーズを見極めます。

この3つに共通する思考の順番は、「職場での行動 → そのために必要な能力 → それを習得する教育」という逆算です。「やりたい研修」から考えるのではなく、職場で起こしたい行動から逆算することで、研修と成果がつながります。それぞれの具体的な質問設計は、研修ニーズのヒアリング方法|把握から設計につなげる3つのアプローチで詳しく紹介しています。

目的と必要な行動が定まったら、次はそれを研修プログラムに落とし込む「設計」の工程です。

工程2 設計|「点」ではなく「線(ジャーニー)」で組む

設計でよくあるのは、研修当日という「点」だけを作り込んでしまうことです。しかし成果は、受講者が「これができない/こうなりたい」と感じる出発点から、職場で行動が変わるところまで続く一連の体験――ラーニングジャーニーという「線」のなかで生まれます。アクセンチュアの整理では、このジャーニーは「出発→初接触→講師との関わり→受講→定着→行動変容」の6ステップで進みます。

注目すべきは、この線のどこが弱いかを示す調査データです。研修前に上司と面談しているのはわずか30%、学んだことを職場で試す前後に振り返る時間が確保されているのは7%にとどまります。多くの研修は「受講」の点に資源を集中し、その前後の「線」が手薄なのです。設計とは、この線全体を組み立てることにほかなりません。

設計が満たすべき3つの要素

効果的な設計は、3つの要素を同時に満たす必要があります。ビジネスニーズ(経営・職場が求める成果)、実施の制約・条件(時間・予算・人数・形態)、受講者ニーズ(受講者の状況や動機)です。設計がうまくいかない原因の多くは、受講者や職場へのヒアリング不足、ビジネスニーズの理解不足、そして研修を「単発イベント」として捉えてしまう発想にあります。工程1のニーズ把握が、ここで効いてきます。

線で組む具体例|9週間のブレンドラーニング設計

「線」で組むとは具体的にどういうことか。アイディア社が用いる9週間のブレンドラーニング設計を例に見てみましょう。準備から総括までの弧の中で、集合・自己学習・リモートが進み、その裏で職場実施と上司の巻き込みが最後まで並走します。

9週間ブレンドラーニング設計

準備から総括への弧の中で、職場実施と上司の巻き込みが並走する

フェーズ
準備
学習
実践(最重要)
定着・総括
1
2
3
4
5
6
7
8
9
集合研修
キックオフ
成果発表
自己学習
インプット
リモートセッション
中間
定着
職場実施
最重要|職場で試す
上司の巻き込み
研修前から研修後まで通して関与

オレンジ=研修効果を最も左右する「職場実施」。弧の中盤に厚く置き、上司の巻き込みで機会と優先度をつくることが設計の肝です。

この設計で研修効果を最も左右するのは、研修期間中の「職場実施」です。学んだ内容を職場で試す機会がなければ、シリーズにする意味も薄れてしまいます。受講者が内容を活かさない理由は「使う機会がない」「何をすればいいか分からない」「優先順位が低い」の3つに集約され、いずれも上司を巻き込んで機会と優先度をつくることで解消できます。読者の皆さんが研修を組むときは、当日の中身だけでなく「研修の前後に何が起きるか」を一枚の線として描けているかを確認してみてください。

ブレンドラーニングの設計の考え方と実践ポイントは、ブレンドラーニングとは|研修効果を高める設計の考え方と実践ポイントで詳しく解説しています。線として組んだ研修を、職場の行動に根づかせるのが次の工程「定着」です。

工程3 定着|研修と職場をつなぐ(最も差がつく工程)

研修で「分かった」と、職場で「やっている」のあいだには、深い溝があります。この溝を埋めるのが定着の工程であり、研修の成果が最も大きく分かれるポイントです。多くの研修が「やりっぱなし」で終わるのは、定着を設計に組み込んでいないからです。

定着の失敗は「気合不足」ではなく、5つの類型で設計できる

定着がうまくいかないのを、受講者本人のやる気のせいにしても解決しません。アイディア社代表のジェイソン・ダーキーとイアン・タウンリーは、定着を妨げる問題を5つの類型に整理しました。状況(Situational)=職場で試す機会がない、知識(Knowledge)=どこで使うか分からない、習慣化(Habituation)=つい元のやり方に戻る、認識(Perceptions)=自分の状況では効かないと思い込む、準備(Preparation)=当面使う場面がない。

そして各類型には、上司の支援・パフォーマンスサポート・アクションプラン・コーチング・リマインド・スケジュール化といった、決まった打ち手が対応します。設計のときに「この研修ではどの問題が起きそうか」「それにどう対応するか」を埋めていくだけで、定着は気合ではなく設計で組めるのです。

研修の種類で、起きやすい問題と打ち手が変わる

定着の打ち手は、研修の種類によって変えるのが効果的です。知識・スキル・マインド・将来準備という4つのタイプごとに、起きやすい問題と有効な打ち手をまとめました。

知識

知識系の研修|例:クロスカルチャー

起きやすい問題は「内容を忘れる」「どこで使うか分からない」。事前アンケートで使う場面を特定し、研修後はリマインダーで思い出させる打ち手が有効です。

スキル

スキル系の研修|例:プレゼンテーション

起きやすい問題は「スキルが身につかない」「使う機会がない」。繰り返しの反復演習と、上司を巻き込んだ実践機会づくりが効きます。

マインド系の研修|例:イノベーション

起きやすい問題は「失敗を恐れる」「途中であきらめる」。丁寧なフォローと、上司・外部コーチによる個別サポートで安心させる打ち手が有効です。

将来

将来準備系の研修|例:英語

起きやすい問題は「いま業務で使う機会がない」。業務以外でも使う、一部だけでも業務で試す、間隔をあけて反復しスキルを維持する打ち手が有効です。

自社の研修がどのタイプに当たるかで、打つべき定着の手は変わります。知識系にひたすら反復演習を課しても響きませんし、マインド系をリマインダーだけで定着させるのは困難です。読者の皆さんがいま回している研修を、この4タイプに当てはめて打ち手を見直すだけでも、定着率は変わってきます。研修設計と定着フォローを組み合わせた実際の企業事例は、研修設計と定着フォローの企業事例3選|AI活用からラーニングジャーニーまでで紹介しています。

自社の研修タイプに合った定着の打ち手を設計に組み込みたい方へ。研修と職場をつなぐ定着フォローの設計をご相談いただけます。

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ここまでで、ニーズ把握・設計・定着の3工程をたどってきました。最後は、組み立てた研修が本当に成果を生んだのかを確かめ、経営層へ届ける「効果測定」の工程です。

工程4 効果測定|出す→測る→伝える

効果測定は、重荷に感じて後回しにされがちな工程です。アイディア社の調査でも、効果測定に意味があると考える人は100%である一方、期待する測定が半分以上できている企業はわずか14%でした。86%が「やったほうがいいと分かっているのに、できていない」状態にあります。けれども効果測定は、実はそれほど難しくありません。次の3つのステップで進めます。

ステップ1:成果を出す(Transfer)。効果的な設計と定着があってはじめて、測るべき成果が生まれます。これは工程2・3で組み立ててきたことそのものです。成果がなければ、どれだけ精緻に測っても残念な結果しか出ません。ステップ2:成果を測る(Measure)。できるだけ研修期間中に測ります。ラーニングジャーニーなら期間中に成果が出始めるので、各受講者の職場実施をアンケートや個別ヒアリングで把握します。ステップ3:成果を伝える(Share)。測るだけでは不十分で、結果を分かりやすく伝えてこそ改善につながります。

どこまで測ればいいか|全部を最上位まで測らなくていい

効果測定を重く感じる原因の多くは、「すべての研修を、すべてのレベルまで測らなければ」という思い込みです。ROI研究所のフィリップスらは、研修の何割をどのレベルまで測ればよいかの現実的な目安を示しています。レベルが上がるほど、測る研修の割合は小さくてよいのです。

研修効果測定|レベル別の推奨評価割合(ROI研究所)

レベルが上がるほど、測る研修の割合は小さくてよい(全研修に占める割合の目安)

L0 インプット
100%
L1 評価(反応)
90〜100%
L2 習得(学習)
60〜90%
L3 活用(応用)
30〜40%
L4 成果(インパクト)
10〜20%
L5 費用対効果(ROI)
5〜10%

全研修をROIまで測る必要はありません。成果が強く求められる2割程度の研修に絞って上位レベル(成果・ROI)を測るのが現実的です。

つまり、満足度や習得はほとんどの研修で軽く測ればよく、職場での活用や成果・費用対効果まで踏み込むのは、経営層の関心が高い少数の重要研修に絞ればよいのです。読者の皆さんがまず取り組むべきは、「成果が強く求められている研修はどれか」を見極め、そこから小さくスタートすることです。カークパトリック・フィリップス・LTEM・SCMといった測定モデルの違いと選び方は、研修効果測定モデル比較|カークパトリック・フィリップス・LTEM・SCMの違いと選び方で詳しく整理しています。

成果は「数字」より「エピソード」で伝える

測った成果を経営層に届けるとき、レポートを一方的に送るより、口頭で説明したほうが改善につながります。説明後の質疑応答が、相手の理解を大きく左右するからです。伝える際の勘どころは、データより具体的な成果エピソードのほうが記憶に残ること、「どんな成果が出たか(What)」だけでなく「なぜ出たか(Why)」を伝えること、そして成功要因として研修そのものより受講者の職場・上司・環境に光を当てることです。職場の風土や上司の関わりこそが、他部署へ展開すべき経営の財産になります。

効果測定の3ステップの実践手順は研修効果測定のやり方|実践できる3つのステップを解説で、経営層に伝わる年間報告のまとめ方は研修の成果を経営層に報告する方法|ROIで伝わる年間報告の作り方で詳しく解説しています。

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ここまでで、ニーズ把握から効果測定までの4工程をひととおりたどりました。最後に、この設計力を高めるのは担当者自身であること、そして経験に応じてどこを伸ばせばよいかを見ていきます。

設計力を高めるのは担当者自身|経験別に伸ばす領域

ここまで見てきた4工程を実際に回すのは、人材育成担当者自身です。業務範囲がニーズ分析から効果測定まで広がり、対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンドと形態も複雑化したいま、担当者のスキルアップそのものが研修の成果を左右します。設計力は、一度身につければ終わりではなく、経験に応じて伸ばす領域が変わっていきます。

アイディア社の担当者向け講座のデータを見ると、その傾向がはっきり表れます。経験年数が3年未満の担当者は、研修の企画と設計という基本を学びたいと考えています。一方、8年以上のベテランは、定着フォローと効果測定という、成果に直結する後半の工程を伸ばしたいと希望しています。前半の工程でつまずきを経験するうちに、その手前を改善したくなり、やがて成果を出す難しさに向き合うようになる――この変化は、自分が次に何を学ぶべきかを考えるヒントになります。

経験年数を問わず共通して大切なのは、「知っている → できる → やっている」の最後の「やっている」まで到達させることです。研修はあくまで行動変容のきっかけにすぎず、受講者が「研修を受けた結果、職場でこんな良いことがあった」と実感できてはじめて、設計は目的を果たします。そのために人材育成チームに求められるのは、個々の要望に応えるだけの受け身の姿勢ではなく、経営方針やビジネスKPIから先を見据え、先手を打つ施策を主体的に提案することです。

担当者に求められる専門性とその伸ばし方は人材育成担当者のスキルアップ|今押さえるべき5つの専門性と段階別の伸ばし方で、経験年数別のより具体的な段階別アドバイスは人材育成担当者が今すぐ改善したい分野と段階別アドバイス|経験年数別データ付きで詳しく解説しています。実際に設計が成果につながった企業の事例は研修で本当に成果を出すには?3つの事例が示す設計の鍵を参考にしてください。

最後に、研修設計についてよく寄せられる質問をまとめます。

よくある質問(FAQ)

研修設計は何から始めればいいですか?

形態(対面・リモート・ブレンド)を決める前に、その研修の目的、つまり組織に提供する価値を決めることから始めます。ブリンカホフの6階層の価値ピラミッドで目的を見極めると、最適な形態はおのずと決まります。さらに過去受講者・現場マネジャー・経営方針の3つからニーズを把握し、「職場での行動 → 必要な能力 → 習得する教育」という順で逆算すると、研修と成果がつながります。

研修をやっても職場で定着しません。どうすればいいですか?

定着は受講者のやる気の問題ではなく、設計に組み込むものです。研修期間中に職場で試す機会をつくり、上司を巻き込むことが基本になります。また、研修のタイプ(知識系・スキル系・マインド系・将来準備系)によって起きやすい問題と有効な打ち手が変わるため、自社の研修タイプに合った定着の手を選ぶことが大切です。

研修の効果測定は、すべての研修で行う必要がありますか?

いいえ。すべての研修をあらゆるレベルまで測るのは非現実的です。満足度や習得はほとんどの研修で軽く測れば十分で、職場での活用や成果・費用対効果といった上位レベルまで踏み込むのは、経営層の関心が高い2割程度の重要な研修に絞るのが現実的です。まずは成果が強く求められる研修を見極め、小さくスタートしましょう。

研修設計と研修効果測定の違いは何ですか?

効果測定は、研修設計の一工程です。いまの研修設計は「ニーズ把握 → 設計 → 定着 → 効果測定」という全工程を、成果から逆算して組み立てる仕事を指します。効果測定はその最後の工程にあたり、組み立てた研修が本当に成果を生んだのかを確かめ、経営層へ届ける役割を担います。

効果測定の結果を経営層にどう伝えればいいですか?

レポートを一方的に送るより、口頭で説明したほうが改善につながります。データより具体的な成果エピソードのほうが記憶に残り、「どんな成果が出たか」だけでなく「なぜ出たか」を伝えることが重要です。成功要因として研修そのものより受講者の職場・上司・環境に光を当てると、他部署へ展開すべき経営の財産が見えてきます。

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