研修計画の立て方|6階層の価値ピラミッドで形態と目的を整理する

「来年の研修は対面にするかリモートにするか、それともブレンドか」——毎年この時期、多くの人材育成担当者がこの問いに頭を悩ませます。対面・リモート・オンデマンド・ブレンドラーニングと選択肢が増えたことは良いことですが、多すぎる選択肢は「何をいつどの形式でやるべきか」の判断を難しくさせます。こうした悩みを解消するための思考ツールが「6階層の価値ピラミッド」です。研修形態を決める前に目的を整理することで、最適な形式が自然と見えてきます。
研修形態を決める前に「目的」を問い直す
「どんな研修形態にするか」を考える前に、「この研修は何のためにやるのか」を問い直すことが重要です。ここで言う「目的」とは研修のテーマや内容ではなく、「この研修が組織と社員にどんな価値を提供するか」という位置づけです。
研修効果測定で著名なブリンカホフ教授は、企業研修の目的を「6階層の価値ピラミッド」として可視化しました。ピラミッドの上に行くほど組織への直接的なインパクトが大きく、設計の複雑さと求められるコミットメントも増していきます。各階層の目的と推奨される研修形態を理解することで、「何のために誰に何をどう届けるか」という判断が格段にしやすくなります。
出典:ブリンカホフ教授の価値ピラミッドをもとに構成
6つの目的別——推奨される研修形態とポイント
階層⑥ 従業員のモチベーション向上
この層の研修は知識習得・スキルアップ・行動変容ではなく、受講者の満足度向上とモチベーションアップが目的です。外部の公開コースや社外の人と意見交換できる研修は思わぬ視野の広がりをもたらし、気分転換にもなります。オンデマンドのコンテンツライブラリーも有効で、社員が自分の好きなテーマについていつでもどこでも学べることが利点です。ポイントは「しっかりした研修プログラムは不要」という割り切りです。幅広い選択肢があり、気軽に受けられ、一つひとつが重くないことが大切です。
階層⑤ コンプライアンス
全対象者に安定した質の研修を受講させ、重要事項を周知徹底することが最低限の目的です。LMS(受講管理システム)によるeラーニングが最適な形式で、いつでもどこでも受講できること、研修内容と質が安定していること、受講履歴を細かく管理できること、大人数でも膨大なリソースが不要なことが理由です。コンプライアンス研修以外にも、入社・昇格・異動時のオリエンテーションなど多くのケースがこの層に当てはまります。
階層④ トラブル発生時の対応
避難訓練・火災発生時の対処・社内システムエラーへの対応など、コア業務ではなく万が一の場面に備える研修です。研修で教えても受講者はいつ使うかがわからないため忘れてしまいます。だからこそチェックリスト・マニュアル・ヘルプ・FAQなどの「サポートツール(パフォーマンスサポート)」を準備する方が効果的です。サポートツールは研修ではありませんが、非常に便利な人材育成施策のひとつです。研修の中でツールを必ず使う機会を設けることと、職場単位で実施することで共通の意識と言語が生まれます。
階層③ 人材パイプラインの強化
デジタル人材・グローバル人材などの育成はまさにこの位置づけです。研修直後の成果より数年後の業務ニーズに合わせて先行投資する目的があります。ブレンドラーニングがピッタリで、最初のインプットでeラーニングやオンデマンドを使ってエネルギーとコストを最小化し、高いスキル習得には講師によるリモートか対面研修を使い、スキルを長期間キープするためにリマインダーと定期復習の仕組みを組み込みます。よくある失敗パターンは「立派な研修で能力を一気に上げるが、研修後に使う機会がなくてスキルが消えてしまう」ことです。研修期間を半年〜1年に長くして、フォローとリマインドのスキームを研修設計に最初から組み込みましょう。ブレンドラーニングの設計方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
階層② 現職務の成果向上
研修によって受講者の現在の職務能力を高め、職場での行動変容を促して成果を出すことが目的です。個人別に「研修効果・行動変容の成果目標」を具体的に設定することがポイントです。ラーニングジャーニー(複数回の研修シリーズ)に定着フォローと職場実施を組み合わせたスタイルが最適で、インプットだけでなく演習中心にし、研修直後に職場で使えるよう実行計画やアクションラーニングを組み込みます。予算・時間・エネルギーをここに最も多く投入すべきです。研修効果の測定方法はこちらも参考にしてください。
階層① 企業戦略の実現
DXや持株会社へのシフトなど、全社的な大方針を実現するための研修です。成功させるために不可欠な要素は4つです。経営者のサポート(従業員への重要性とビジョンの発信・継続的な関与)、職場の巻き込み(職場の上司・メンバーへの丁寧な説明と理解の獲得)、早期からの効果測定と進捗確認によるチューニング、そして組織レベルの変革を円滑に進めるチェンジマネジメントの意識です。人材育成チームだけでは対応しきれない場合が多いため、ラインマネージャーと経営陣と連携しながら進めることが前提となります。
自社の研修をこのピラミッドに当てはめて整理することで、人材育成のポートフォリオが明確になり、何にどれだけ投資すべきかの判断がしやすくなります。研修計画の設計についてのご相談はお気軽にどうぞ。
よくある質問
6階層のピラミッドで、最も投資を集中すべき層はどこですか?
階層②(現職務の成果向上)が最も投資対効果が高く、優先順位を置くべき層です。受講者の求められている行動が比較的明確で、そこから逆算して研修を設計できるため成果が出やすいです。予算・時間・人員をここに集中させ、階層⑤(コンプライアンス)はeラーニングで効率化することで、リソースを最大限に活用できます。
同じ「コンプライアンス研修」でも、対象者によって階層が変わりますか?
変わります。一般従業員にとって保安知識はコンプライアンス(階層⑤)に近い内容ですが、航空会社のCAにとっては命に関わる重要スキルであり階層②(現職務の成果向上)以上の位置づけになります。研修のテーマ名ではなく「その受講者にとってどんな価値があるか」で層を判断することが重要です。
研修形態(対面・リモート・オンデマンドなど)はどのように決めればよいですか?
まず価値ピラミッドで目的の層を決め、その後で形態を選ぶという順序が正解です。階層によって推奨される形態の傾向はあります。階層⑤⑥はオンデマンド・eラーニングが向き、階層③はブレンドラーニング、階層②はラーニングジャーニー(複数回のシリーズ)+職場実施、階層①は組織全体を巻き込むプロジェクト型が基本です。「対面か否か」より「目的に合っているか」を先に問うことが大切です。
研修計画の設計を見直したい方へ
「来年の研修計画をどう整理すればよいかわからない」「何を対面でやり、何をリモートやオンデマンドにするか決め方がわからない」——IDEA DEVELOPMENTがヒアリングから研修ポートフォリオの設計まで一貫してサポートします。







