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2026.06.16管理職研修

デザインシンキングを管理職研修に組み込む|単発で終わらせず現場で成果を出す設計

「デザインシンキングを管理職研修に取り入れたい。でも1日の研修では現場で使われず、いい話で終わってしまう」——管理職研修を設計する人事の方が最もつまずくのが、この“定着”です。本記事では、デザインシンキングを管理職研修に組み込み、単発で終わらせずに現場で成果を出すための設計を、アイディア社のイノベーション研修の知見をもとに具体的に解説します。

なぜ今、管理職研修にデザインシンキングなのか

管理職になりたがらない若手社員が増えています。背景には、上司の姿を見て抱く「忙しそう」「ストレスが高そう」「責任が重い」といった印象があります。一方で、変化の速い時代に、管理職にはこれまで以上に多様な能力が求められています。その一つが、正解のない課題に向き合い、新しい解決策を生み出すデザインシンキングです。

実際、管理職自身も日々の現場で手応えのなさを抱えています。新任管理職に聞くと、次のような悩みが上位に並びます。

28%
多様なメンバーとの
コミュニケーションの難しさ
21%
研修で学んだ内容を
現場で応用できるか不安
17%
相手の理解度や
本音を引き出す難しさ

この3つは、いずれも「決まった正解を教える」だけでは越えられない壁です。多様なメンバーの本音を引き出し(17%)、相手や状況に合わせて関わり方を変え(28%)、学んだことを自分の現場で形にする(21%)——どれも、課題を発見し、試しながら最適解を探すデザインシンキングの構えそのものを必要とします。なかでも見過ごせないのが、21%が訴える「研修内容を現場で応用できるか」という不安です。これは、デザインシンキングを1日の研修で教えるだけでは管理職の行動が変わらないこと、つまり“どう組み込むか”の設計こそが本記事の主題であることを示しています。

管理職研修にありがちな4つの落とし穴

デザインシンキングを管理職に根づかせようとしてつまずくのは、たいてい研修の中身ではなく「設計」です。現場でよく起きる落とし穴は、次の4つに整理できます。

よくある落とし穴

単発イベントで終わらせる

1日学んで解散。学んだ手法を職場で試す場がない

挑戦する必要性が腹落ちしていない

管理職本人が「なぜ今これを学ぶのか」を実感していない

全員に同じ内容を流す

自分の現場の課題に引き寄せられず、一般論で終わる

やりっぱなしで成果が見えない

何が変わったかを測る仕組みがなく、効果を説明できない

成果が出る設計

→ 期間 × 職場実践を組み込む

数日の研修と、その間の職場での実践をセットで設計する

→ 冒頭で必要性を実感させる

変化への向き合い方から入り、学ぶ動機をつくってから手法へ

→ 本人の職場課題を題材にする

受講者が実際に抱える課題を持ち込ませ、研修中に扱う

→ 成果発表・効果測定を先に置く

最後の成果発表をゴールに据え、何を測るかを最初に決める

設計の土台:集合研修だけでは、知識は入っても行動変容や成果にはつながりにくいという前提に立つ。

4つに共通するのは、研修を「1日のイベント」で完結させてしまう発想です。裏を返せば、落とし穴はいずれも設計の工夫で防げます。右側の4つを最初から組み込むかどうかが、デザインシンキングが管理職の現場で使われるか、それとも「いい話を聞いた」で終わるかの分かれ目になります。本記事の以降では、この「組み込む設計」を、思考の幹(H2-4)と期間設計(H2-5)の両面から具体化していきます。

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デザインシンキングとは(管理職研修での位置づけ)

デザインシンキングは、使う人の視点に立って本当の課題を見つけ、アイデアを試作と検証で磨いていく、人間中心の問題解決の進め方です。手法の全体像や、共感マップといった入口のツールについては、入門記事で詳しく解説しています(デザインシンキング入門|共感マップで顧客視点をつかむ)。本記事では定義の解説は最小限にとどめ、「それを管理職研修にどう組み込むか」に焦点を当てます。

管理職にとってのデザインシンキングは、フレームワークを完璧に使いこなすこと自体が目的ではありません。正解のない課題に対して、決めつけずに部下やメンバーの声から本当のニーズを捉え、小さく試しながら前に進む——この「構え」を身につけることに価値があります。だからこそ、手法を知識として教えるだけでは足りず、職場で実際に試す設計が必要になります。次の章では、その組み込みの幹になる思考の流れを見ていきます。

管理職研修に組み込む思考の幹:NEEDS→IDEAS→ACTION

管理職研修にデザインシンキングを組み込むとき、幹になるのが「NEEDS → IDEAS → ACTION」という3段の流れです。アイディア社のマネージャー向けマインド研修でも、この3段はIDEO・Apple・Googleのケースとともに実際に使われています。各段で何を狙い、管理職研修ではどう扱うかを整理します。

思考の幹:NEEDS → IDEAS → ACTION

NEEDS(課題発見)

部下や現場の声から、言葉にされない本当の課題をつかむ

IDEAS(発想)

1つの正解に飛びつかず、新鮮な解決アイデアを複数広げる

ACTION(実行)

小さく試し、職場で動かして成果につなげる

▼ 管理職研修では、この3段を職場実践とセットで回す
1

現場の本当の課題を引き出す

NEEDS

ケース(例:IDEO)や部下との対話を通じて、表面の要望ではなく根っこのニーズを捉える練習をします。

どこまで扱うか:問題の把握・分析の詳しい流れは創造的問題解決研修の進め方へ。本記事は「研修への組み込み方」に絞ります。

2

解決アイデアを広げる

IDEAS

1つの案で決めず、複数の発想を出す練習をします(例:Apple)。質より先にまず量を出すのがコツです。

どこまで扱うか:欠点列挙法・NM法・ブレインライティングなど発想法の手順は実務で使う発想法へ。

3

1stアクションを決めて試す

ACTION

研修中に「明日からの小さな一歩」を決め、職場で実行します(例:Google)。やりきれる大きさにすることが続けるコツです。

設計のポイント:課長層向けの実践型イノベーション研修は、この3段を3〜5カ月の職場実践で繰り返す設計です。

この3段が管理職研修で効くのは、どれも「自分の現場の課題」を持ち込んで初めて回るからです。NEEDSで部下の本当の困りごとを捉え、IDEASで決めつけずに案を広げ、ACTIONで小さく試す——この往復を、知識として聞くだけでなく職場で繰り返すことで、変化対応力が少しずつ身についていきます。発想法そのものの手順や問題解決の詳しい流れは上記の記事に譲り、本記事では「3段をどう研修に組み込み、職場実践で回すか」に集中します。

管理職層の「実践型イノベーション研修」は、このNEEDS→IDEAS→ACTIONの3段を、3〜5カ月の職場実践で回す設計です。プログラムの全体像はこちらでご確認いただけます。

▶ 実践型イノベーション研修を見る

単発で終わらせない:期間×職場実践の設計

では、どれくらいの期間をかければ成果につながるのでしょうか。アイディア社が自社のイノベーション研修で確かめてきたのは、研修の日数と、その後の職場実践の期間によって、成果の出方がはっきり変わるということです。

投入を積み増すほど、到達点が進む

1日 + 1カ月

意識まで

モチベーションは高まるが、行動には移らない人が多い

3日 + 2カ月

行動まで

職場で動き始めるが、誇れる成果にはまだ届かない

5日 + 4カ月

成果が出る

具体的なビジネス成果がはっきり現れる

注目したいのは、投入を増やすほど到達点が「意識→行動→成果」と一段ずつ上がる点です。1日の研修だけでは意識が高まっても行動は続かず、3日でも期間が足りず成果には届きません。5日間と4カ月の実践を重ねて、はじめて具体的なビジネス成果が見えてきます。実際この「5日×4カ月」は、NEEDS→IDEAS→ACTIONを軸にしたイノベーション研修の実際の設計です。変化対応力は一度の研修で身につくものではなく、職場で挑戦し、振り返ることを繰り返して根づくものだからです。

では、単発で終わらせないために何を設計すればよいのでしょうか。効くのは次の5つの組み合わせです。受講者自身の職場課題を研修の題材にすること、小さくても必ず実行する約束をその場でさせること、職場のメンバーや上司を巻き込んで実践しやすい環境をつくること、研修と研修の合間に個別のフォローを入れること、そして1回きりではなく数回のシリーズに組むこと——この5つです。とくに上司の巻き込みは、課題設定・実践支援・成果発表の立ち会いの3点で成果を左右します。研修を「学んで終わるイベント」ではなく、「職場で挑戦し、成果が出るまでのプロセス」として設計することが、デザインシンキングを管理職に定着させる鍵になります。

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組み込みを成功させる注意点

最後に、デザインシンキングを管理職研修に組み込むときの注意点を3つ挙げます。1つ目は、上司の巻き込みを後回しにしないことです。研修の成否を最も左右するのは上司の関与で、とくに「課題設定(業務時間内に取り組めて、解決すれば評価される課題にする)」「職場実践の支援」「成果発表への立ち会い」の3点で関わってもらうことが要になります。

2つ目は、研修の題材を、運営側が用意した架空のケースではなく、受講者本人の職場課題にすることです。自分ごとの課題を持ち込むからこそ、NEEDS→IDEAS→ACTIONの3段が現場で回り、成果につながります。

3つ目は、デザインシンキングの手法を1本の研修で網羅しようとしないことです。定義は入門記事、発想法は実務で使う発想法、問題解決の流れは創造的問題解決研修の進め方に譲り、管理職研修では「3段の思考 × 期間設計」に絞るほうが定着します。なお、同じ“組み込む”でも、新入社員研修への組み込みは設計の勘所が異なります。新入研修にイノベーション要素を後付けする方法は、新入社員研修にイノベーション要素を組み込む3ステップで解説しています。

単発で終わらせない設計こそが、変化に強い管理職を育てる出発点です。

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