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管理職研修の設計事例10選|マネージャー育成の課題と定着するプログラムの作り方

2025年10月、アイディア社はオンラインで「マネージャー育成フォーラム 2025」を開催しました。企業の人材育成・人事担当者を対象に、現場でよく起こる管理職の課題10テーマを取り上げ、それぞれに対応する研修プログラムの設計事例と構成イメージを解説したセミナーです。

管理職研修を企画するとき、「自社のマネージャーにいろんな課題があるが、何から手をつけるべきかわからない」「研修を実施しても定着しない」と感じることはないでしょうか。多くの企業で繰り返し起きているこの悩みに対し、本フォーラムでは「マインド・志向」「スキル・実践」「多様性・ビジョン実現」「ベテラン・グローバル」の4カテゴリ・10課題に分けて、研修設計の具体的なヒントを共有しました。

本記事では、各課題の症状・対応する研修プログラムの設計思想・定着の仕組みをコンパクトにレポートするとともに、ライブ配信映像(全10テーマ)を全編無料で公開しています。気になるテーマから動画をご覧いただき、自社の管理職育成にお役立てください。

本フォーラムのセミナー映像(全10テーマ)を無料公開中です。管理職研修プログラムの全体像については、管理職・実践型マネジメント研修のページもあわせてご覧ください。

▶ 関連事例:管理職研修にマインドセットを組み込んだ設計事例を見る

管理職育成の課題10選 — 全体マップ

本フォーラムで取り上げた10の課題は、大きく4つのカテゴリに分類できます。マインドの問題からスキルの定着、多様性への対応、そしてベテラン・グローバル人材の育成まで、管理職研修が対応すべき領域は広範囲にわたります。まずは下のナビゲーションから関心のあるテーマに直接ジャンプしてご覧いただくか、4カテゴリの全体像を順に確認しながら、自社のマネージャーが抱える課題がどのカテゴリに当てはまるかをチェックしてください。

10の課題テーマ ナビゲーション

マインド・志向の課題

スキル・実践の課題

多様性・ビジョン実現の課題

ベテラン・グローバルの課題

マインド・志向の課題(課題1〜3)

管理職としての意識・意欲・方向性が不足している状態。スキル研修の前に「なぜマネジメントに取り組むのか」を腹落ちさせることが先決です。

課題1:志望しない — 3回シリーズ 課題2:意識不足 — ビジョン構築型 課題3:ビジョンなし — フレームワーク型

スキル・実践の課題(課題4〜6)

重要性は理解していても「できる」に至らない課題群。共通するのは、単発研修では定着しないため、職場実践+個別フォロー+成果発表を組み込んだ長期設計が必要な点です。

課題4:FB困難 — DAPモデル・4カ月 課題5:コーチング — ビデオ提出・GROW 課題6:挑戦不足 — 3日間+個別コーチング

多様性・ビジョン実現の課題(課題7〜8)

個人のスキルを超え、チーム全体の成果に関わる課題です。多様なメンバーとの関係構築や、中期経営計画を部門レベルで実行に移すための仕組みづくりが求められます。

課題7:多様な部下 — SEE/LISTEN/TALK/DO 課題8:ビジョン実現 — 4サイクル・10カ月

ベテラン・グローバルの課題(課題9〜10)

一律のプログラムでは対応できない課題です。一人ひとりの経験・ニーズに合わせたパーソナライズドな設計と、長期間にわたる個別サポートがポイントになります。

課題9:ベテラン — 6カ月パーソナライズド 課題10:外国籍部下 — 12週間3ステージ

この全体マップから見えてくるのは、管理職育成は「単発の研修で解決する課題」と「長期の設計が必要な課題」の二つに大別できるということです。自社のマネージャーがどの段階にいるかによって、研修の設計アプローチは大きく変わります。マインド面に課題がある段階でスキル研修を投入しても効果は限定的ですし、逆にスキルは十分なのに定着の仕組みがなければ行動は変わりません。まずは自社の管理職が「どのカテゴリの課題を抱えているか」を特定するところから始めてみてください。

マインド・志向の課題(課題1〜3)

最初の3つの課題に共通するのは、スキル以前に「管理職としてのマインドセット」が整っていない状態です。マネージャーになりたくない、プレイヤー意識から抜け出せない、チームを率いるビジョンが描けない——いずれも、スキル研修を投入する前に意識の転換を促す設計が求められます。

課題1:マネージャー職を志望しない人材の増加

こんな症状はありませんか?

□ 管理職候補者の打診をしても辞退されることが増えてきた

□ 若手・中堅から「自分は管理職に向いていない」と言われる

□ プレイヤーとして優秀な人ほどマネージャー職への異動を嫌がる

「マネージャーになりたくない」という若手が増えている背景には、上司の姿を見て「忙しそう」「ストレスが高そう」「責任が重そう」と感じ、魅力を感じられないという現実があります。一方で、今後の組織運営においてマネージャーは今まで以上に重要な役割を担います。

この課題に対するアプローチは、最初のゴールを「楽しさ・やりがいの実感」に設定し、3回シリーズで段階的にマネジメントへの意欲を引き出す設計です。各回の狙いと具体的な内容を以下に示します。

3回シリーズの設計意図:「楽しさ」から入り「自信」で終わる

1回目
半日

マインド研修 — 「面白い」の実感

イノベーション演習(IDEO事例→ブレインライティング→欠点列挙法→NM法)を通じて、マネジメントの創造的な側面を体験。「管理職=つまらない」というイメージを崩す。

到達状態:「マネジメントって面白いかも」と感じている

↓
2回目
半日

スキル研修 — 「できる」の手応え

コーチング・動機付けの基本スキルを演習で習得。管理職にならなくても使えるスキルとして教えることで心理的ハードルを下げ、研修中のプチ成功体験で自信を高める。

到達状態:「自分にもできそう」という手応えがある

↓
3回目
半日

シミュレーション — 「やってみたい」の意欲

指示出し→コーチング→モチベーション→プレゼン→フィードバックの5場面をシミュレーション。結果を共有し、自分の得意・不得意分野を特定して今後の学習プランを策定。

到達状態:「マネージャーに挑戦してみたい」と思えている

この設計のポイントは、いきなりスキルを教えるのではなく、1回目で「マネジメントは面白い」という実感を持たせることです。面白い→できそう→やってみたいという感情の変化を段階的に設計しているため、管理職候補の意欲醸成に課題を感じている企業にとって参考になるはずです。

▼ 課題1:マネージャー職を志望しない人材の増加(セミナー映像)

課題2:プレイングマネージャーのマネジメント意識不足

こんな症状はありませんか?

□ プレイヤー業務に追われて部下育成や1on1が後回しになっている

□ 部下からの相談機会が減り、チームの状況が把握できなくなっている

□ 自部門の中長期的な人材計画・後継者プランが空白のままになっている

プレイヤーとしての意識は高く時間も多くかけている一方、マネジメント面の意識は低く能力も十分とは言えない——これがプレイングマネージャーの典型的な課題です。放置するとチームマネジメントの停滞、メンバーの成長機会の喪失、属人化の加速、パイプラインの弱体化といった問題が連鎖的に発生します。

この課題に対するアプローチは「現状把握→理想構築→実行計画」の3フェーズで構成されます。各フェーズを3つの異なる視点から掘り下げるのが特徴です。

3フェーズ × 3視点:プレイヤー意識をマネジメント意識に転換する

現状把握
理想構築
実行計画
自分の視点

今までの取り組みを振り返り、変化が必要だと心の準備をする

クイックプロトタイプで2040年のビジョンを具体化する

全体像を描いてビジョン構築のイメージを持つ

会社の視点

現場視点より高い経営者の視点から会社の現状を冷静に把握

様々な刺激を受けながら新鮮な発想でビジョンを明確にする

後継者と他の人材を中心にビジョン実現に必要な人と能力を考える

環境の視点

メガトレンドから今のままでは将来は難しいことを実感

対話を通じて1人では考えない視点からビジョンを磨く

長期ビジョン達成のためにまず今からできる後継者育成プランをつくる

気づき:今の延長ではダメ。変化と新しい挑戦が必要

気づき:会社の発展に後継者づくりと人材育成が不可欠

行動:ビジョン実現の第一歩は後継者づくりとパイプライン強化

この設計のポイントは、現状把握で「よくやった」と認めつつも今の延長ではダメだと気づかせ、理想構築で未来のビジョンを考えさせてワクワクしてもらうことです。3つの視点を交差させることで、受講者は「自分の問題」「会社の問題」「時代の問題」を同時に実感し、ビジョン実現のために後継者づくりが不可欠だという結論に自ら到達します。

▼ 課題2:プレイングマネージャーのマネジメント意識不足(セミナー映像)

課題3:リーダーシップ像・ビジョンを描けない管理職

こんな症状はありませんか?

□ 部下から「上司が目指す方向が見えない」と言われたことがある

□ 数値目標の管理はできるが、チームの中長期ビジョンが語れない

□ 上位者の指示伝達にとどまり、自分の言葉で部下を動かせていない

タスクマネジメントには長けていても、部下を引っ張り、チームをリードするリーダーシップ力が鍛えられていない管理職は少なくありません。変化の激しいビジネス環境下では、従業員は直上の上司のリーダーシップをより求めます。

この課題に対するアプローチは、リーダーシップを「立場・性格・行動・結果・価値観」の5軸で定義するところから始め、4つのステップで自分のビジョンと実行計画に落とし込む設計です。

リーダーシップ具体化フレームワーク:定義→目標→現在地→計画

What

リーダーシップとは

問い:自分にとってリーダーシップとは何か?

5つの軸(立場・性格・行動・結果・価値観)で定義を具体化。抽象的なリーダーシップに自分なりの輪郭を与える

▼

Where to

ビジョンとゴール

問い:どこに向かうのか?最終的にどうなればよいか?

客観的な観点(社員・企業・顧客にとっての価値)と主観的な観点(自分の価値観・行動との一致)の両面からゴールイメージを設定

▼

Where from

現在地の確認

問い:今の自分はどこにいるか?ゴールとの差は何か?

ビジョンを先に決めてから現在地を測るのがポイント。ゴールなしに現状分析しても方向性が定まらない

▼

How

実行計画

問い:どうやって差を埋めるか?

3つのアクション:(1) 自分の強みを最大限活かす (2) 弱みをカバーする仕組みをつくる (3) モチベーションを上手に使う

このフレームワークのポイントは、「Where to(どこに向かうか)」を「Where from(今どこにいるか)」より先に考えさせることです。ゴールが決まっていないまま現状分析をしても、差分が見えず実行計画が曖昧になります。また、まだ部下のいない社員には逆に部下の視点から考えさせることで、良いヒントが得られます。リーダーシップ研修が「抽象論で終わってしまう」と感じている企業は、この具体化フレームワークが参考になります。

▼ 課題3:リーダーシップ像・ビジョンを描けない管理職(セミナー映像)

マインド・志向に課題のある管理職には、スキル研修の前に意識転換を促す段階的な設計が効果を発揮します。具体的なプログラム例や貴社の状況に合わせた設計のご相談は、管理職・実践型マネジメント研修のページからお問い合わせください。

スキル・実践の課題(課題4〜6)

次の3つの課題に共通するのは、「重要性は理解しているが、できるようにならない」という定着の壁です。フィードバック、コーチング、イノベーション——いずれも単発研修では身につかず、職場実践と個別フォローを組み込んだ長期設計が必要になります。

課題4:心理的安全性を重視するあまりフィードバックができない

こんな症状はありませんか?

□ 部下の問題行動を見ても指摘できず、行動が改善されないまま放置されている

□ ハラスメントを恐れて、当たり障りのない肯定的なフィードバックに偏っている

□ 1on1で話すべき改善点が「次回に持ち越し」を繰り返している

心理的安全性が重視される時代になり、部下へのネガティブフィードバックに悩む管理職が急増しています。指摘しなければ行動は変わらず会社にダメージを与えかねませんが、やり方を間違えればハラスメントと受け取られるリスクもあります。

この課題に対するアプローチは、DAPモデル(Describe→Appreciate→Prescribe)という構造的なフレームワークを4カ月かけて定着させる設計です。上位の「フレームワーク」と下位の「定着の仕組み」が対応関係にあります。

DAPモデル × 4カ月定着設計

フレームワーク:DAPモデル

D — Describe

事実を客観的に描写する。感情や評価を混ぜず、起きたことをそのまま伝える

A — Appreciate

事実に意味づけをする。なぜそれが重要か、どんな影響があるかを解釈して伝える

P — Prescribe

具体的な要望を伝える。次にどうしてほしいかを明確にし、行動変容を促す

▼ このフレームワークを4カ月かけて定着させる ▼

定着設計:なぜ4カ月必要か

1カ月目

事前インプット

フィードバックに対する思い込みを確認・訂正。重要性を理解しストレスを減らす

2カ月目

集合研修(1日)— DAPモデルの集中習得

D→A→Pの順に解説と演習を繰り返す。総合演習で実際の職場シーンを使ったロールプレイ

3カ月目

個別トレーニング(1対1 × 20分)

職場に近いフィードバックの予習を個別対応で実施。一人ひとりの部下の状況に合わせた練習

4カ月目

振り返り・成功事例の共有(半日)

職場実践の結果を振り返り、成功事例を受講者間で共有。経験学習サイクルを回して自信を定着させる

この設計で重要なのは、フレームワーク(DAP)を「知る」だけでは不十分で、4カ月かけて「思い込みの修正→集中習得→個別練習→振り返り」のサイクルを回すことです。研修期間を長めにとることで、研修期間中にある程度の自信を高められます。フィードバック研修が「やったけど変わらない」状態になっている企業は、この定着設計を参考にしてみてください。

▼ 課題4:心理的安全性を重視するあまりフィードバックができない(セミナー映像)

課題5:コーチングスキルが実践・定着に至らない

こんな症状はありませんか?

□ コーチング研修直後はできるが、1〜2カ月で「指示出し」モードに戻ってしまう

□ 質問しているつもりが、結論を誘導する話法になっている

□ 部下の成長が見えず、自分のコーチングが効いているか確信が持てない

コーチング研修を実施している会社は多いものの、高度なコミュニケーションスキルが求められるコーチングの定着はなかなか難しく、リモート環境ではさらに顕著です。「知っている」と「できる」の間にある溝をどう埋めるかが課題です。

この課題に対するアプローチは、研修で知識を入れた後、職場での実践をビデオで撮影・提出させ、GROWモデルに基づく個別フィードバックを返し、最後にプロコーチのセッションを体験させるという設計です。

「知っている→できる」を埋める4段階の定着設計

Stage 1
研修当日

リモートコーチング研修(1日)

受講者のコミュニケーション力と職場での使用場面に合わせた内容。良い見本を見せて演習を多くさせ、個別フィードバックを行う。

到達状態:コーチングの型(GROWモデル)を「知っている」

↓
Stage 2
職場実践

コーチング実施のビデオ提出

職場で実際にコーチングを行い、その様子をビデオ撮影して提出。「やりっぱなし」にせず、実践の証拠を残させる。

到達状態:職場で「やってみた」

↓
Stage 3
個別FB

GROWモデルに基づく個別フィードバック

提出ビデオをGROWの4要素(Goal/Reality/Options/Will)ごとに評価し、具体的な改善コメントを返す。

GROWモデル評価の例:

G:セッション目的の明確化 R:多角的な質問で状況把握 O:相手のアイデアを引き出す W:主体的な行動計画の策定

到達状態:自分の強みと改善点が「見えた」

↓
Stage 4
コーチ体験

プロコーチとの個別コーチングセッション

良いコーチングの見本を自分が「受ける側」として体験。目指すイメージを持つことで、その後の職場実践の質が変わる。

到達状態:目指す姿が「見えた」。職場で「続けられる」

この設計のポイントは、Stage 2のビデオ提出にあります。「やりっぱなし」を防ぎ、職場で実際にやっているコーチングを可視化して個別フィードバックを返すことで、「知っている→やってみた→改善点がわかった→目指す姿が見えた」という学習サイクルが回ります。コーチング研修の定着に課題を感じている企業は、このビデオ+個別FBの仕組みを検討してみてください。

▼ 課題5:コーチングスキルが実践・定着に至らない(セミナー映像)

管理職のコーチングが現場で機能しない原因と、それぞれに対応する解決策については、関連記事「管理職コーチング研修|現場で機能する5つの課題と解決策」で詳しく解説しています。本記事の内容とあわせてご覧ください。

課題6:新しい挑戦に積極的に取り組むマネージャーが不足

こんな症状はありませんか?

□ 新規プロジェクトや新規事業に手を挙げる管理職が少ない

□ 業務改善や新しい施策の提案が現場から上がってこない

□ イノベーション研修を受講したことがある管理職が社内にほとんどいない

環境の変化が激しい中でイノベーションと価値創造は必要不可欠ですが、ほとんどの管理職はイノベーション研修を受けたことがなく、自信と知識もかなり少なめです。イノベーション力を高めるための最重要ポイントは、リスクを恐れない挑戦するマインドです。そのマインドを身につけさせるには、受講者の現場での成功体験が必要です。

この課題に対するアプローチは、3日間の集合研修+研修間の個別コーチング+成果発表で構成される長期プログラムです。3日間それぞれにテーマがあり、日を追うごとに深まる設計になっています。

3日間の設計意図:焦点を毎回ずらし、螺旋的に深める

1日目:全体像
2日目:深掘り
3日目:統合
NEEDS
課題発見

IDEO事例でニーズ把握の基本を学ぶ

インタビュー、ビデオ分析、POEMSヒアリング法で深いニーズを発掘

マッピングで深いニーズにつなげ、イノベーションタイプを特定

IDEAS
発想法

ブレインライティング、欠点列挙法、NM法の3手法を実践

逆転の発想、達人の知恵、分解の発想、フォト連想の4手法を追加

7つの手法を総合的に使いこなすアイディア出し総合演習

ACTION
実行

1stアクション:まずトライする

クイックプロトタイプで形にする

ビデオプレゼンで成果発表

研修間のフォロー:
各日の間に個別コーチング(1対1 × 20分)を実施。職場で実践した結果を振り返り、次の研修日に向けた課題を設定

この設計のポイントは、3日間でNEEDS・IDEAS・ACTIONの3要素を「浅く広く→深く狭く→統合して使いこなす」の順に螺旋的に深めることです。研修内容を簡単ですぐ使える実践的なテクニックにし、受講者の実際の職場課題を扱うことで、研修期間中に実際のビジネス成果が生まれます。最後の成果発表で成功体験を共有することが、挑戦するマインドの定着につながります。

▼ 課題6:新しい挑戦に積極的に取り組むマネージャーが不足(セミナー映像)

多様性・ビジョン実現の課題(課題7〜8)

ここからの2つの課題は、個人のスキルを超えてチーム全体・部門全体の成果に関わる領域です。多様なメンバーとの関係構築、そして中期経営計画を部門レベルで実行に移すための仕組みづくり——いずれも、単発の研修ではなく組織を巻き込んだアプローチが必要になります。

課題7:多様な年代・バックグラウンドの部下マネジメント

こんな症状はありませんか?

□ 年上の部下や年代が離れた若手とのコミュニケーションでズレを感じる

□ 若手から「何を考えているか分からない」「指示が伝わらない」と言われる

□ 多様なメンバー間で情報共有や役割分担がうまく機能していない

年上の部下、Z世代の若手、外国籍社員、派遣社員や時短勤務のメンバー——自分と異なるバックグラウンドの部下をマネジメントする場面が増えています。抽象的なDEI(多様性・公平性・包摂性)の講義ではなく、マネージャーが現場ですぐ使える実践的なテクニックが求められます。

この課題に対するアプローチは、SEE→LISTEN→TALK→DOの4ステップで「相手の立場に立つ」から「相手が動きたくなるようにする」まで段階的にスキルを積み上げる1日研修です。各ステップは前のステップが次の前提条件になっています。

SEE→LISTEN→TALK→DO:前のステップが次の前提条件

SEE

相手の目で見る

前提:まず相手の世界を理解しなければ、何を言っても届かない

ケース「各自のメガネ」で、同じ出来事が文化・世代・立場によってまったく違って見えることを体感。演習で「見える視点を増やす」トレーニングを行う。

到達:相手の立場から状況が見えるようになる
▼

LISTEN

相手の耳で聞く

前提:相手が見えたら、次は相手が何を聞いているかを知る

ケース「心の声」で、同じ言葉が相手にどう聞こえているかを探る。演習で「聞くスキル」を強化し、言葉の裏にある本当のニーズをつかむ。

到達:相手の本音と背景事情が聞き取れるようになる
▼

TALK

相手に伝わるように

前提:相手の世界が見え、聞こえたら、初めて「伝わる」伝え方ができる

ケース「伝わる・伝わらない話し方」で、同じ内容でも伝え方次第で結果が変わることを体験。演習で「説明するコツ」を習得する。

到達:相手のバックグラウンドに合わせた伝え方ができる
▼

DO

動きたくなるように

前提:見え、聞こえ、伝わって初めて、相手が自発的に動く

演習「相手を動かすメカニズム」で、指示や命令ではなく相手が「やりたい」と感じる仕掛けを設計。アクションプランを策定して研修を締めくくる。

到達:多様なメンバーが自発的に動くチームをつくれる

この設計のポイントは、人事視点の抽象的なDEI研修ではなく、マネージャー視点のビジネス目標達成のためのテクニックとして位置づけていることです。SEE→LISTEN→TALK→DOの順序に意味があり、「見えないまま話す」「聞かずに動かそうとする」といった現場でよくある失敗を構造的に防ぎます。多様なチームのマネジメントに苦労している企業は、この「順序」の発想が参考になります。

▼ 課題7:多様な年代・バックグラウンドの部下マネジメント(セミナー映像)

課題8:部署ビジョンの実現に時間がかかる

こんな症状はありませんか?

□ 中期経営計画は策定したが、各部門の行動が変わらず1年経っても進捗が見えない

□ ビジョンは部長が掲げるものの、メンバーレベルまで自分事として落ちていない

□ 部門間連携が必要なテーマで、結局誰もボールを持たないまま時間だけが過ぎる

新しい中期経営計画や変革的なビジョンが掲げられても、部門レベルでは行動がそう簡単に変わらず、結果的に全社ビジョンが実現されないという問題が多くの企業で起きています。「研修」ではなく「プロジェクト」として位置づけ、経営者を巻き込んで各部門のビジョン実現をサポートするアプローチが必要です。

この課題に対するアプローチは、5月〜翌2月の10カ月間を4サイクルに分け、ビジネス目標・組織開発・能力向上の3つの観点を同時に回す設計です。

10カ月間のビジョン実現プロジェクト:4サイクル × 3観点

サイクル1
5月〜6月
キックオフ — 目標設定と取り組み具体化

ビジネス目標

キックオフで取り組みを具体化して計画立てる。職場実践で積極的に実行する

組織開発

部署間を超えたコラボレーション。他部門の部長と詳しく話し情報共有

能力向上

自己学習でチームビルディングのコツを学ぶ。サポートで練習する

↓
サイクル2
7月〜8月
変化対応力の強化

ビジネス目標

環境変化に対する柔軟な対応力を身につける

組織開発

アウトプットを高める。成果発表とインパクト分析でメカニズムを明確化

能力向上

成長支援のテクニックを学ぶ。職場実践で試す

↓
サイクル3
9月〜10月
チームビルディング強化

ビジネス目標

各部署の目標に向けて行動する。コーチングとサポートで進捗把握

組織開発

他部門の取り組みを把握し理解を深める。成果発表で情報共有

能力向上

コーチングとサポートで視野を広げ理解を深める

↓
サイクル4
11月〜翌2月
成果発表と効果測定

ビジネス目標

経営者に向けて成果発表。しっかりした研修効果測定を実施

組織開発

成果発表で幅広く様々な部署の取り組み内容と成果を把握

能力向上

成果発表で視野を広げる。インパクト分析で自部署の成長を可視化

この設計のポイントは、「研修」ではなく「プロジェクト」として位置づけ、経営者を巻き込んでいることです。4サイクルを通じてビジネス目標・組織開発・能力向上の3観点を同時に回すことで、スキルアップが目的化せず、あくまでビジョン実現のための手段として機能します。中期経営計画が「絵に描いた餅」になりがちな企業は、この「プロジェクト型」の設計アプローチが有効です。

▼ 課題8:部署ビジョンの実現に時間がかかる(セミナー映像)

多様性への対応や部署ビジョンの実現には、複数の研修要素を統合した設計と長期的な伴走が必要です。実際にマインドセット・変化対応・成長支援を3日間で統合的に組み込んだ研修事例については、関連事例「管理職研修にマインドセットを組み込む|変化対応と成長支援を3日間で統合した設計事例」をご覧ください。

ベテラン・グローバルの課題(課題9〜10)

最後の2つの課題に共通するのは、一律のプログラムでは対応できないという点です。経験豊富なベテランも、外国籍部下を抱えるマネージャーも、一人ひとりの状況が大きく異なります。パーソナライズされた設計と、長期間にわたる個別サポートが成果を左右します。

課題9:ベテランマネージャーに適した学びの機会が少ない

こんな症状はありませんか?

□ ベテラン管理職向けに用意できる研修が「新任向け基本」や「MBA系知識」しかない

□ 経験10年以上の管理職から「学ぶことがない」「知っている内容ばかり」と言われる

□ ベテラン層を集めた研修を企画しても出席率が低く、成果も見えにくい

マネージャー研修の大多数は新任管理職向けの基本やMBAのような知識系で、経験豊富なベテランに適切な研修はそう多くありません。ベテランは個別のキャリア・経験・バックグラウンドがあり、共通のニーズが少ないことが主な理由です。とはいえ、OJTだけでは自然と身につかないスキルもあります。

この課題に対するアプローチは、一人ひとりのニーズに合わせた6カ月間のパーソナライズドラーニングジャーニーです。アセスメントでスタート地点を測り、6つのテーマを順に学び、再アセスメントで成長を可視化します。

6カ月パーソナライズドラーニングジャーニー

事前

アセスメント — 実力とニーズを的確に把握

一人ひとりのスキルレベル・課題・学習スタイルを診断し、6カ月間のテーマと学習計画をカスタマイズ

▼

毎月繰り返す3層の学習サイクル(テーマ1〜6)

層1:インプット(自己学習)

講義ではなく既存のeラーニングや教材を使用。受講者のペースと興味に合わせた学習

→

層2:アウトプット(定着演習)

学んだ内容を職場で実践。必ずアウトプットさせることで「知っている」を「できる」に変える

→

層3:個別サポート(コーチング)

講師やコーチが1対1で振り返り、経験学習サイクルを回す。次月のテーマへの橋渡し

この3層サイクルを6カ月間、テーマを変えながら繰り返す。テーマは事前アセスメントの結果に基づいて一人ひとり異なる

▼
事後

再アセスメント+成果発表 — 成長を可視化

事前と同じ基準で再測定し、6カ月間の成長を数値で確認。研修効果測定を実施し、成果発表で学びを共有

この設計のポイントは、インプットに講義を使わず、既存のeラーニングや教材を活用していることです。ベテランにとって「教室で座って聞く」形式は退屈なだけでなく、自分の経験と合わない内容が多くなりがちです。自分のペースでインプットし、職場で実践し、コーチと振り返るサイクルを繰り返すことで、一人ひとりの経験を活かした成長が可能になります。

▼ 課題9:ベテランマネージャーに適した学びの機会が少ない(セミナー映像)

課題10:外国籍部下へのマネジメント対応の難しさ

こんな症状はありませんか?

□ 英語の業務会話はできるが、自分のビジョンやマネジメント方針を英語で語れない

□ 外国籍部下からの信頼・リスペクトが日本人部下と比べて薄いと感じる

□ 英語でネガティブフィードバックを伝えるのが難しく、つい後回しになっている

グローバル化が進む中で、日本人マネージャーが複数の外国人部下をマネジメントするケースが増えています。上級レベルの英語力があっても「日本語ならできるが英語だと…」という壁があります。日本語でのマネジメントとは根本的に異なるストーリーテリング、存在感、人を動かす力、部下育成、ネガティブフィードバックの強化が必要です。

この課題に対するアプローチは、12週間を3ステージに分け、マイクロラーニング×自己学習×少人数演習×個別フィードバックを組み合わせた密度の濃い集中プログラムです。

12週間3ステージ:毎週「学ぶ→実践→確認」を回す

Stage 1

1〜4週目

Storytelling, Presentation, Presence

外国籍部下の前で存在感を発揮し、自分のビジョンとマネジメント哲学を英語でストーリーとして語れるようになる

毎週の学習サイクル(4週間繰り返し)

自己学習

マイクロラーニング

→

理解度確認

20分テスト

→

個別演習

55分・2人体制

Week 1: 基本テクニック(半日セミナー) → Week 2: My Mission/Vision → Week 3: My Management Philosophy → Week 4: My Team Expectations

▼

Stage 2

5〜8週目

Influence, Development

外国籍部下に英語で影響を与え、コーチングやモチベーション付けで部下を育成できるようになる

Week 5: 基本テクニック(半日セミナー) → Week 6: Coaching → Week 7: Motivating → Week 8: Developing

▼

Stage 3

9〜12週目

Difficult Conversations

英語でネガティブフィードバックや困難な会話を適切に行えるようになる。最も高度なスキルを最後に配置

Week 9: 基本テクニック(半日セミナー) → Week 10: Negative Feedback (Output) → Week 11: Company-wide Change → Week 12: Negative Feedback (Attitude and Behavior)

この設計のポイントは、反転学習でインプットを効率化し、毎週の個別演習を2人体制(受講者1名+講師1名)にしていることです。少人数だからこそ受講者一人ひとりのレベルと課題に合わせたフィードバックが可能になります。また、Stage 1(存在感)→Stage 2(影響力)→Stage 3(困難な会話)と難易度を段階的に上げることで、12週間で着実にスキルが積み上がります。外国籍部下のマネジメントに課題を感じている企業は、この「密度の濃い個別対応」の設計が参考になります。

▼ 課題10:外国籍部下へのマネジメント対応の難しさ(セミナー映像)

参加者の声

マネージャー育成フォーラム 2025に参加された方々からいただいたフィードバックをご紹介します。

★★★★★

現場の問題に直結した研修設計のポイントが理解できた

実際に職場で発生している問題を挙げ、それに対する研修構成イメージとポイントを丁寧にご説明いただいたことで、理解が深まりました。

— 人材育成ご担当者様

★★★★★

自社の課題に対する多くのヒントを得られた

マネージャー育成において弊社が課題に感じていることについて、多くのヒントを得ることができました。

— 人材育成ご担当者様

★★★★★

研修を実施しただけでは定着しないという気づき

コーチングの事例では、研修を実施しただけでできるようになると考えてはいけないことに改めて気づかされました。また、研修にはワクワク感・楽しさも重要なことだと認識しました。

— 人材育成ご担当者様

★★★★★

インタラクティブな進行で理解が深まった

こちら側の悩みを聞いていただき、それに対して厚めに話してくださったり、リアルタイムのやり取りが楽しかったです。途中に挟むビデオによってより理解が進みました。

— 人材育成ご担当者様

よくある質問

マネージャー育成フォーラム 2025の内容に関連して、人事・人材育成担当者の方からよくいただく質問をまとめました。

Q1. 管理職研修で最初に取り組むべき課題は何ですか?

最初に確認すべきは、自社の管理職が「マインド・志向の課題」「スキル・実践の課題」「多様性・ビジョン実現の課題」「ベテラン・グローバルの課題」のどのカテゴリに該当するかです。マインド面に課題がある段階でスキル研修を投入しても効果は限定的ですし、逆にスキルは十分でも定着の仕組みがなければ行動は変わりません。本記事の「全体マップ」を参考に自社のマネージャーがどの段階にいるかを特定し、優先順位の高い課題から取り組むことをおすすめします。

Q2. 研修をやっても定着しない原因は何ですか?どう設計すれば定着しますか?

定着しない最大の原因は、「知っている」と「できる」の間にあるギャップを埋める仕組みが研修設計に組み込まれていないことです。フィードバック研修やコーチング研修のように高度なコミュニケーションスキルを扱う領域では、単発の集合研修だけでは習得できません。本記事で紹介した課題4(DAPモデル+4カ月定着プログラム)や課題5(ビデオ提出+GROWモデル個別FB+プロコーチ体験)のように、職場実践・個別フィードバック・経験学習サイクルを組み合わせた長期設計が必要です。

Q3. 管理職研修とマネージャー研修の違いは何ですか?

一般に、両者は対象範囲・呼称の慣習が異なるだけで、内容としてはほぼ同義に使われることが多い概念です。「管理職研修」は組織階層上の「課長・部長等の役職者」を対象とすることが多く、「マネージャー研修」はチームを率いる役割としての「マネージャー機能」を対象とする色合いが強い傾向にあります。本記事のように「管理職育成フォーラム」とした場合は前者の文脈、「マネージャー育成フォーラム」とした場合は後者の文脈ですが、設計上の本質的な違いはなく、自社で求める育成成果に応じてプログラムを組み立てることが重要です。

Q4. 10の課題のうち、自社に合った課題の優先順位をつけるにはどうすればよいですか?

まずは管理職層へのヒアリングやアンケートで「現場で最も困っていること」を把握するのが効果的です。各H3に掲載している「こんな症状はありませんか?」のチェック項目で、自社の管理職が直面している課題と照合してみてください。複数該当する場合は、マインド系の課題が先(スキル研修の前提条件のため)、スキル系・多様性系は同時並行可能、ベテラン・グローバル系は対象者の状況に応じて個別判断、という順序で検討するのが基本です。アイディア社では管理職研修の企画段階で課題の優先順位づけからサポートしています。お気軽にお問い合わせください。

Q5. コーチング研修・フィードバック研修が職場で定着しない場合の対策は?

「研修期間が短く実践機会がない」「集合研修だけで個別の練習がない」「研修後の振り返りや成功体験の共有がない」のいずれかが原因であることが多いです。フィードバック研修なら本記事の課題4で紹介したDAPモデル+4カ月定着プログラムのように、事前インプット→集合研修→個別トレーニング→振り返りの4段階設計が有効です。コーチング研修なら課題5で紹介した「ビデオ提出+GROWモデル個別フィードバック+プロコーチセッション」の組み合わせで、「知っている→やってみた→改善した→目指す姿が見えた」という学習サイクルが回ります。詳細は関連記事「管理職コーチング研修|現場で機能する5つの課題と解決策」もご参照ください。

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「マネージャー育成に課題はあるが、何から手をつけてよいかわからない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。貴社の状況をお聞きしたうえで、最適なアプローチをご提案します。

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