英語はできるのに会議で発言できない中堅を育てる|即興アタマと英語発想転換

海外メンバーとのオンライン会議で、メールやレポートは問題なくこなすのに、いざ議論が始まると発言のタイミングを逃し、終わってみれば一度も意見を言えなかった——。そんな中堅社員の姿に、心当たりのある人事・人材開発のご担当者は少なくないはずです。
「ビジネスの場でもっと積極的に発言できるように」「英語の会議についていけるように」。こうした要望は、当社が25年以上にわたってグローバル研修のニーズをうかがってきたなかで、業界や階層を問わず必ず挙がってきた定番の悩みです。つまり、英語ができる中堅が会議で発言できないという課題は、一時的な流行ではなく、長年解かれないまま残ってきた根深いテーマだということです。
本記事では、なぜ英語ができる中堅ほど会議で発言できないのか、その原因を解きほぐしたうえで、「即興アタマ」と「英語発想転換」という2つの土台から、会議で発言できる中堅を育てる具体策を、人材開発のご担当者の設計視点で整理します。
管理職手前の中堅(プレーヤー層)の発言力を、診断から実践演習まで体系的に鍛える設計は「グローバル実践力強化研修」として実践されています。具体的な進め方は、プログラムページもあわせてご覧ください。
なぜ「英語ができる中堅」ほど会議で発言できないのか
会議で発言できないという課題に対して、多くの企業がまず手を打つのは語学研修です。TOEICのスコアを上げ、英会話のレッスンを重ねる。ところが、スコアが伸びても会議で発言できるようにならないという声は後を絶ちません。原因は、鍛えている力がそもそもずれていることにあります。
当社は、グローバルビジネスで成果を出すために必要な力を「語学力」と「グローバル実践力」の2つに分けて捉えています。語学力は、文法・語彙・リスニングといった英語そのものの力で、TOEICなどで測ることができます。一方、会議で求められるのは、限られた時間で自分の意見を組み立て、ネイティブのスピードの議論に割って入り、要点をまとめて伝える力——これがグローバル実践力です。両者は地続きの濃淡ではなく、別の能力なのです。
歴史を振り返っても、日本のグローバル研修は90年代の英会話・TOEICから、「英語で仕事を進める」ことをうたう一石二鳥型研修のブームを経て現在に至りますが、30年を費やしてなお「会議で堂々と発言できる人材」を安定して育てられたとは言いがたいのが実態です。語学力という器に実践力まで期待してきたことが、長年のすれ違いを生んできました。
ご担当者がまず押さえたいのは、会議で発言できない中堅の課題を「英語力の不足」として捉えると打ち手を見誤るということです。追加の語学研修を重ねても、鍛えている能力がずれているため成果につながりにくい。課題を「実践力という別軸の不足」として捉え直したとき、はじめて有効な設計が見えてきます。次章では、その実践力の前に立ちはだかる、もう一つの見えにくい壁を取り上げます。
発言を止めているのは性格ではなく「文化の癖」
実践力という別軸が課題だと分かっても、その手前にもう一つ、見えにくい壁があります。発言を控えてしまう、日本のビジネス文化に染み付いた「癖」です。コミュニケーションの前提は文化によって大きく異なり、当社はその違いを4つの切り口(異文化フィルター)で整理しています。日本人の中堅がグローバル会議で黙りがちなのは、内向的な性格のせいではなく、この4つの癖がそろって「発言しない」方向に働くからです。逆に言えば、それぞれの癖に対して発言する側への切り替え方が分かれば、振る舞いは変えられます。
ハイコンテクスト|言葉にしなくても察し合う癖
日本は行間や空気で伝え合う文化。だが会議では、言葉にしなければ伝わりません。切り替え方は、テンポよく話し、テーマと「ポイントは3つです」のように数を先に示すこと。
権力格差の大きさ|上の立場の前では発言を控える癖
日本は上下関係を重んじる権力格差の大きい文化。多くのグローバル会議は格差の小さい前提で進みます。切り替え方は、立場に関係なく理由を述べ、根拠で裏付けて発言すること。
集団主義|自己主張をしすぎない癖
周囲との調和を優先する集団主義の文化。個人主義が前提の場では、控えめさは「意見がない」と受け取られます。切り替え方は、聞き手のメリットを示しながら自分のオリジナルの意見を言うこと。
詳細重視|完成度が整うまで口を開かない癖
細部の正確さにこだわる詳細重視の文化。完璧に整理できるまで発言を待つと、議論は先へ進んでしまいます。切り替え方は、まず大枠から話し、細部より目的を先に伝えること。
4つを並べてみると、発言できない理由が一つではなく、複数の癖が重なって生じていることが分かります。ここでご担当者が意識したいのは、発言できない中堅を「内向的な個人」として捉えると、本人の努力だけに委ねることになり、打ち手を失ってしまうという点です。これは性格ではなく文化に根ざした癖であり、会議での振る舞いの型として上書きできます。「性格を変える」のではなく「会議での振る舞いを入れ替える訓練」として設計する——そう捉え直すことが出発点です。次章では、その振る舞いのなかでも最後まで難しい、会議の“即興”に焦点を絞ります。
「準備できる英語」と「準備できない英語」——会議の即興だけが最後に残る
ここで一つ、グローバル業務の実態を押さえておきます。日常のグローバルビジネスは、実は読み書きが占める時間が圧倒的に長いのが実情です。メール、チャット、資料、スライド——これらは時間をかけて準備でき、いまは翻訳や作文を支援するツールも充実しています。つまり業務全体で見れば「準備できる英語」の比重は大きく、この部分は仕組みとツールで十分に底上げできます。スピーキングやプレゼンの研修が明るく刺激的で人気を集めやすいのも事実ですが、力を入れるべき本丸は別にあります。
本丸は、準備が効かない英語です。会議でその場で意見を求められる、プレゼンの直後に予想外の質問が飛んでくる——こうした即興のやり取りだけは、台本を用意できません。準備したプレゼンはうまくいっても、直後の質疑応答で的を外した答えをしてしまい、かえって信頼を損ねる。これはグローバル会議で中堅が陥りやすい、典型的なつまずきです。
英語の課題を「準備できる英語」と「準備できない英語」に分けて捉えると、中堅が会議で発言できないという悩みは、ほぼ後者——会議の即興——に集中していることが見えてきます。ここだけは、翻訳ツールでも事前準備でも埋められず、最後まで残る難所なのです。
ご担当者にとっての含意は明確です。語学研修やライティング支援をいくら充実させても、この「準備できない即興」の部分は別に鍛えなければ動きません。裏を返せば、訓練の的をここに絞り込めば、限られた予算と時間でも発言力を大きく伸ばせるということです。では、その即興を支える力はどう鍛えるのか。次章で、2つの土台を具体的に見ていきます。
会議の即興までを訓練の対象に含めた設計は「グローバル実践力強化研修」として提供しています。10週間で「英語で仕事を進める力」を鍛えた実施事例もあわせてご覧ください。
発言を支える2つの土台——即興アタマ(Think to Speak)と英語発想転換(English Switch)
会議の即興という難所を越えるために必要な力は、当社のグローバル研修では2つの土台に整理しています。1つは「即興アタマ(Think to Speak)」、もう1つは「英語発想転換(English Switch)」です。即興アタマとは、自分の考えを短時間でまとめ、知っている単語で言い切る頭の使い方。英語発想転換とは、日本語の発想のまま英訳しようとするのをやめ、英語の組み立てそのものに切り替えることです。この2つは、さらに具体的な振る舞いに分解できます。
並べてみると分かるのは、どれも特別な才能ではなく、反復で身につく具体的な振る舞いだということです。ご担当者にとって重要なのは、「英語をもっと勉強させる」ことではなく、この5つの振る舞いを繰り返し練習し、会議の場で自然に出るまで定着させる場を用意することです。では、その定着をどう設計するのか。次章では、「分かる」を「会議でできる」に変える実践演習の型を見ていきます。
「分かる」を「会議でできる」に変える実践演習の型
即興アタマと英語発想転換は、知識として「分かる」だけでは会議で出てきません。当社のグローバル研修が一貫して重視しているのは、「分かる」を「できる」に変える反復演習です。そのために用意しているのが、実際のグローバル会議に近い場面を段階的に再現する「グローバルビジネスシミュレーション」という演習です。初対面の挨拶から始め、徐々に即興性の高い場面へと負荷を上げていく流れになっています。
グローバルビジネスシミュレーション:即興性が段階的に上がる5場面
Meet & Greet|初対面の挨拶
まずは挨拶から。相手と場に慣れ、口を開く心理的なハードルを下げます。
Discussion|テーマ討議
与えられたテーマについて意見を出し合う。ある程度準備のある発言から練習を始めます。
即興説明|写真をその場で説明
写真を見て、用意なしにその場で説明する。ここから即興性が一段上がります。
Meeting|会議
与えられたテーマで会議を進める。発言のタイミングを自分でつかむ練習です。
Social English|立食での雑談
立食形式で自ら話題を出して広げる。最も即興性が高く、仕上げにあたる場面です。
とりわけ会議(Meeting)の場面で発言を成立させる勘所は、3つに整理できます。1つ目は、聞き役で終わらず積極的に参加すること。2つ目は、自分の意見を分かりやすく伝えること。3つ目は、議論の流れを要約して論点を引き取ることです。この3つは、前章の即興アタマと英語発想転換を、会議という本番で発揮するための「出口の型」にあたります。
ご担当者が押さえたいのは、これらが座学では完結しないという点です。挨拶から即興、会議、雑談へと負荷を上げながら、外国人講師の前で繰り返し試して初めて、知識は「会議でできる」に変わります。研修を選ぶ際は、解説の量ではなく、こうした実践演習の場がどれだけ確保されているかを見ることが、成果を大きく分けます。次章では、この演習を中堅(管理職手前)向けにどう設計するかを具体的に見ていきます。
中堅(管理職手前)向けの設計——グローバル実践力強化という解
ここまで見てきた即興アタマ・英語発想転換・実践演習を、中堅(管理職手前)向けに体系化したのが「グローバル実践力強化」です。当社のプログラム体系では、この層の代表プログラムに位置づけています。特徴は、語学力ではなくグローバル実践力に的を絞ること、そして事前・事後の実力診断「グローバル人間ドック」で成長を可視化することです。具体的には、約10週間で次のように進みます。
グローバル実践力強化:約10週間の流れ
実力診断で現在地を測る(1日)
ロジック・ミーティング・交渉のテクニックを、まず日本語で習得する
外国人講師との少人数演習(90分)と電話トレーニング(20分)を繰り返す
再診断で成長を数値として確認する
この設計が中堅に効く理由は、3つあります。1つ目は、必要なテクニックをまず日本語でインプットするため、英語力の不足で学びが止まらないこと。2つ目は、外国人講師との少人数の反復演習で、「知っている」を「会議でできる」に変えるだけの練習量を確保できること。3つ目は、事前・事後の診断によって、感覚ではなく数値で成長を示せるため、上司や経営層への説明、すなわち投資対効果の根拠としても使えることです。
中堅(管理職手前)の発言力を、診断から実践演習まで一気通貫で設計したのが「グローバル実践力強化研修」です。現状を測る「グローバル人間ドック」とあわせてご検討ください。
研修を選ぶ際は、対象の階層に合った設計になっているか、診断で成長を可視化できるか、実践演習の量が十分に確保されているか——この3点を確認することが、成果と社内説明の両面で効いてきます。
よくある質問
TOEICスコアが高い社員でも、会議で発言できないのはなぜですか?
TOEICで測れるのは文法や語彙といった「語学力」で、会議で求められるのは、限られた時間で意見を組み立て、議論に加わり、要点をまとめて伝える「グローバル実践力」です。この2つは別の力のため、スコアが高くても実践力が育っていなければ会議では発言できません。打ち手は、追加の語学研修ではなく、実践力を直接鍛える設計です。
英語が苦手な中堅でも、会議で発言できるようになりますか?
なります。鍵は「即興アタマ」、つまり難しい言い回しを探さず、知っている単語で短く言い切る習慣です。完璧な英語よりも、その場で発言が出ることを優先します。結論から短くまとめる、主語を先に置くといった振る舞いを反復すれば、英語力に自信がなくても発言の量は確実に増えていきます。
短期間で会議の発言を改善するには、何から始めればよいですか?
訓練の的を「準備できない英語」、すなわち会議での即興発言と質疑応答に絞ることです。メールや資料はツールと事前準備で対応できるため、限られた時間はその場のやり取りの練習に集中させます。挨拶から会議、雑談へと段階的に負荷を上げる実践演習を、外国人講師の前で繰り返すのが近道です。
中堅と若手・管理職で、訓練内容は変えるべきですか?
変えるべきです。当社の体系では、若手は異文化対応力強化、中堅(管理職手前)はグローバル実践力強化、管理職はグローバルマネジメント力強化と、階層ごとに必要な力が異なります。本記事で扱った即興アタマと英語発想転換は、まさに中堅が会議で渡り合うための土台にあたります。
まとめ
英語ができる中堅が会議で発言できないのは、語学力と実践力が別の力であること、そして発言を控える文化の癖が重なって働くためです。日常業務の読み書きと違い、会議の即興だけは準備が効かず、最後まで残る難所になります。ここを「即興アタマ」と「英語発想転換」という訓練可能な土台で鍛え、実践演習で「会議でできる」に変えていく。中堅向けには、診断で成長を可視化するグローバル実践力強化が、有効な解になります。語学研修で止まっている取り組みを、発言できる中堅を育てる設計へと一歩進めてみてください。
会議で発言できる中堅を育てる設計を、ご一緒します
即興アタマと英語発想転換を軸に、現状の診断から実践演習までを中堅向けに設計します。自社の状況に合わせた進め方は、お気軽にご相談ください。














