若手社員の実力診断|考える・伝える・やる9指標を1日で測る

「3年目になったのに、誰が何をできて、何ができないのかが分からない」「同じ研修を受けたはずなのに、配属先での出来が一人ひとり違う」「上司から『あの子は伸び悩んでいる』と言われても、どこを伸ばせばよいのか示せない」。2〜3年目の育成を担当する人事の方から、こうした声をよく聞きます。アイディア社が1-2-3年目社員育成フォーラム2025で示した「3年目社員によくある問題」の1番目と2番目も、まさにこれでした。「各自のできること・できないことがいろいろあり、把握されていない」「個人によって知識とスキルの凸凹があって、個別フォローが必要」です。
先に結論を述べます。若手社員の実力診断とは、1日のビジネスシミュレーションを通じて「考える・伝える・やる」の3領域9指標を、本人の自己申告ではなく実際の行動(演習で提出した成果物と講師の観察)から測り、当日のうちに個別フィードバックを返して、一人ひとりの学習プランにつなぐ仕組みです。目的は点数を付けることではありません。「誰に、何を足せば伸びるのか」を決めるための起点をつくることです。
アイディア社はこの診断の設計を、2022年から毎年の1-2-3年目社員育成フォーラムで公開してきました。2025年版の資料では、診断が必要になった背景をこう説明しています。「最近は人によって能力が大きく異なっており、また自分の長所・短所に気づかない若手社員が増えてきた。それを解決するためには、個別の実力診断が必要」。本記事は、この4年分のフォーラム資料と、代表のダーキーが毎年約2,000名の新入社員研修を担当して得た現場の観察をもとにしています。
本記事では、集合研修だけでは若手の現在地が見えない理由、9つの指標とそれぞれを「何の証拠」で測るのか、1日の時間割とその設計意図、診断結果として返ってくるレポートの中身、「実行力」という一つの指標をどこまで分解して見るのか、結果を本人・上司・人事がどう使うのか、そして何年目に実施するのが効果的か、までを順に解説します。2〜3年目社員の育成を担当し、「一律の研修」から「個別の打ち手」に移りたいと考えている人事担当者に向けた内容です。
なぜ集合研修だけでは若手の現在地が分からないのか?|「態度は良いが、習得度はばらつく」
集合研修の場で見えるのは、受講者の「態度」と「クラス全体の傾向」であって、一人ひとりの習得度ではありません。講師が優秀でも、30名のクラスで全員の演習の出来を個別に記録し、比較できる形で残すことは、通常の研修では設計されていないからです。研修後に残るのは「今年の受講者は前向きだった」という印象と、満足度アンケートの平均点です。
このことを示すのが、アイディア社の代表ダーキーが講師として新入社員研修を担当した現場報告です。2024年は4月9日から26日までに2,000人弱、2025年は4月7日から25日までに約2,000名を担当し、その傾向を1-2-3年目社員育成フォーラムで公開しています。2024年の報告では、受講態度は「どの研修でも受講者は素直で積極的」「集中力は全体的に高い」と評価する一方で、習得度は「全体的に普通で、受講態度ほど良くはない」と記されています。能力別に見ると、伝達力は「コミュニケーションに対してとても積極的で発言は多いが、分かりやすく話すテクニックに欠けている」、論理思考力は「情報整理が遅く、時間があっても正解に至らない新入社員が今年は多かった」という内容でした。2025年の報告でも、論理思考力は「人によってばらつきがある」、主体性は「とても前向きでリスクを恐れない。ただ、職場での行動を見てみないと本当の主体性は分からない」と評価されています。
つまり、態度が良いクラスほど、個人の凸凹は見えにくくなります。全員が前向きに発言し、演習に取り組んでいる中で、「分かりやすく話せている人」と「話してはいるが伝わっていない人」、「情報整理ができている人」と「時間内に整理し終わらない人」の差は、講師の印象には残っても、人事に届く記録にはなりません。
2〜3年目で凸凹が「個別フォローが必要」なレベルまで広がる
新入社員研修の時点では小さかった差が、配属後の1〜2年で大きく開きます。アイディア社が1-2-3年目社員育成フォーラムで示している「2年目社員によくある問題」には、「基本的なビジネススキルがまだまだ弱い」「言われたことはやるが、+αの仕事をしない」「フォーカスが絞られていない、成果が不十分」が並びます。3年目になると、先に挙げた「できること・できないことが把握されていない」「個人によって知識とスキルの凸凹があって、個別フォローが必要」に加えて、「3年間の明確な成果がない」が問題として挙がります。
この凸凹は、配属先の仕事内容、上司の関わり方、本人の得意不得意が2〜3年かけて掛け合わされた結果なので、同期全員に同じ研修を当てても埋まりません。2023年のフォーラム資料は、2年目社員を取り巻く「即戦力」「自律」という環境変化への対策として、「個人ごとに実力診断をして、個別学習プランをつくってフォローする」を挙げています。一律の研修から個別の打ち手に移るには、その前に「誰が、どの指標で、どのくらいなのか」を同じ物差しで測る工程が要る、ということです。年次ごとにどの能力を育てるかの全体像は若手社員育成の完全ガイドで整理しています。
自己申告・知識テスト・行動観察で、見えるものが違う
「測る」と言ったとき、人事が使える手段は大きく3つあります。自己申告のアンケート、知識テスト、そして行動の観察です。自己申告は手軽ですが、本人の自己認識がそのまま結果に乗ります。「自分の長所・短所に気づかない若手が増えている」という2025年の観察が正しいなら、自己申告が実態から最も離れやすい層が、まさに診断したい層ということになります。知識テストは「分かっているか」を正確に測れますが、「できるか」は測れません。ロジカルシンキングの用語を知っていることと、会議のメモを時間内に整理できることは別です。
行動の観察は「できるか」を測れる唯一の手段ですが、職場のOJTで行うと、見る上司によって基準が違い、見ている場面も違うため、同期同士を比較できません。だからアイディア社の診断は、全員に同じ演習を同じ順番で1日かけて行わせ、演習ごとに「何を証拠として残すか」を決めて観察する、ビジネスシミュレーションの形を取っています。ペーパーテストでも自己申告でもなく、実際の業務場面に近い演習の成果物と講師の評価から、本人の自己認識ではない客観的な能力データを得るための設計です。次のセクションでは、その9つの指標と、それぞれを何の証拠で測るのかを見ていきます。3年目の年間プログラムの中で診断がどこに位置づくかは、3年目社員の育成と研修体系の記事を参照してください。
何を測るのか?|「考える・伝える・やる」3領域9指標と、それぞれの「証拠の形」
アイディア社の実力診断が測るのは、「考える(THINKING)」「伝える(COMMUNICATION)」「やる(ACTION)」の3領域に属する9つの指標です。考えるは論理思考力・課題発見力・発想力、伝えるは理解力・伝達力・共感力、やるは主体性・実行力・協働力で構成されます。この9指標の特徴は、指標ごとに「どの演習で測るか」と「何を証拠として残すか」があらかじめ決まっていることです。たとえば論理思考力はカードを使った情報整理の演習で測り、整理し終えたカードの写真を証拠として残します。伝達力はテーマについて分かりやすく話す演習で測り、話している映像を残します。講師の印象ではなく、後から見返せる成果物が一人ひとりに残る設計です。
この図から人事担当者が読み取るべきことは、「証拠の形」が指標ごとに違う理由です。考える領域はカードや付箋の写真、伝える領域は映像や文字提出、やる領域はメモと講師の行動評価というように、それぞれの能力が最も表れる成果物を証拠にしています。写真や映像として残すから、複数の講師が同じ基準で評価でき、本人にも「この整理のここが抜けていた」と具体的に返せます。さらに、同じ演習を年度末にもう一度行えば、成果物同士を並べて伸びを確認できます。研修の満足度アンケートでは絶対にできない比較です。
経済産業省の「社会人基礎力」とは何が違うのか
「社会人基礎力」という言葉は、経済産業省が2006年に提唱した「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力と12の要素を指すのが一般的です。アイディア社のフォーラム資料でも、若手社員に求められる能力をこの12要素に学習能力・応用力・テクノロジー活用力を加えた15項目で整理し、それぞれをどの年次で育てるかを示しています。診断の9指標は、この枠組みと対応しています。「考える」は考え抜く力(課題発見力・計画力・創造力)に論理思考力を加えたもの、「伝える」はチームで働く力のうち発信力・傾聴力にあたる伝達力・理解力と共感力、「やる」は前に踏み出す力の主体性・実行力と、働きかけ力にあたる協働力です。
資料には再編の理由は書かれていませんが、対応関係を見ると、15項目のうち1日の演習で成果物として残せる能力に絞った形になっています。規律性やストレスコントロール力のように、1日の演習では観察しにくく職場での継続的な関わりで見るべき能力は、診断の対象から外れています。つまり9指標は「若手に必要な能力の全て」ではなく、「1日で客観的に測れる能力」の集合です。15項目を年次別にどう育て分けるかは、若手社員育成の完全ガイドで扱っています。診断で測った9指標と、職場で見る残りの項目を組み合わせて、一人ひとりの育成を設計するのが実務上の使い方です。
自社の2〜3年目社員が9指標のどこでつまずいているのかを、診断から設計したい方はご相談ください。対象人数・年次・既存の研修体系に合わせて、診断と研修の組み合わせをご提案します。
どう測るのか?|9:00〜17:30の時間割と、順番に込めた設計意図
診断は1日、9:00のオリエンテーションから17:30の終了までで完結します。順番は「考える」「やる」「伝える」で、午前に情報整理・課題発見・アイディア出しの3演習、昼食後にインバスケットとグループ協働作業、午後の後半に映像と発話を使った3演習を行い、17:00から個別フィードバックを返します。この時間割は2022年のフォーラムで公開されてから2025年まで変わっていません。4年間同じ設計で運用されているということは、演習の内容と順番が安定して機能しているということです。
実力診断の1日|ビジネスシミュレーションの時間割(9:00〜17:30)
オリエンテーションの後、論理思考力(カードで情報整理)→課題発見力(ケースとフィールドワーク)→発想力(アイディア出し)。頭が最も冴える午前に思考系の3演習を集める
主体性・実行力(ミニ・インバスケット)→主体性・協働力(グループの協働作業)。集中力が落ちやすい昼食直後に、手と身体を動かす演習を置く
理解力(映像を聞いて整理)→伝達力(テーマについて話す・映像に記録)→共感力(映像を見て解釈)。1日の演習を経て場に慣れた状態で、対話の力を測る
その日の成果物をもとに個別フィードバック。記憶が新しいうちに「どこが強く、どこが伸びしろか」を本人に返してから解散する
人事担当者にとってこの時間割が持つ意味は、「1日で9指標を測る」が無理のない設計で成り立っていることです。アイディア社は研修設計の鍵として、講師スキルではなく「受講者のバイオリズム、研修のコンセプト、演習のバリエーション」を挙げており、2024年の新入社員研修報告でも「集中力が低下するリスクが高いのは、朝の時間帯、月曜日、昼食直後」などと具体的に記しています。思考系の演習を午前に、インバスケットやグループ作業のように動きのある演習を昼食直後に、場に慣れてからでないと本来の力が出にくい対話系の演習を最後に置く。この順番は、受講者が1日を通して力を出し切れるように組まれています。自社で簡易版を設計する場合も、「静かな思考系は午前、動きのある演習は昼食後」の原則はそのまま使えます。
設計の4つのポイント
アイディア社の資料は、この診断の設計ポイントを4つ挙げています。第一に、ダイナミックなシミュレーション体験にすること。受講者が「試験を受けている」と感じると行動が縮こまり、普段の力が出ません。演習は仕事の場面に近い課題にして、受講者が夢中で取り組む中で行動を記録します。第二に、ツールを組み合わせて広範囲の能力を測ること。インボックス演習、インタラクティブ映像、ロールプレイというように、指標ごとに最も力が表れる形式を選びます。1種類の演習で9指標を測ろうとすると、特定の指標だけが強く出て、残りは推測になります。
第三に、当日のうちに個別フィードバックを与えること。結果を後日レポートで郵送するのではなく、その日の17:00に本人へ返します。本人が自分の演習の出来を覚えているうちに「ここが強い、ここが伸びしろ」と伝えるから、納得感が生まれます。第四に、診断結果に基づいて個別学習プランを作成すること。診断は単体で完結させず、結果を次の学習につなげて初めて意味を持ちます。この4つのうち、第三と第四が「テストと診断の違い」を決めています。
「伝える」の演習を1日に収める技術
伝達力と共感力は、本来は相手がいる場面でしか測れない能力です。しかし受講者30名に対して一人ずつ講師が相手役を務めると、それだけで1日が終わってしまいます。アイディア社はこの部分に、SkillGymというシミュレーション技術を使っています。事前に収録した役者が受講者の発話に合わせてリアルタイムに反応し、話している間の行動を記録して、後から本人が自分の映像を見ながら振り返る仕組みです。受講者一人ひとりが「相手がいる状態」で話し、その映像が証拠として残るため、講師の人数に関係なく全員の伝達力と共感力を同じ条件で測れます。新しいツールを入れること自体が目的ではなく、「1日で全員を同じ条件で測る」という診断の要件を満たすためにツールを選んでいる、という点が設計の考え方です。
結果は何として返ってくるのか?|個人レポート・全体レポート・学習アドバイスの3点
診断の結果は、本人向けの「個人レポート」、組織向けの「全体レポート」、そして指標ごとの「学習アドバイス」の3点で返ってきます。個人レポートは、3領域の平均を示すレーダーチャート、9指標それぞれの1〜5点のスコア、スコアごとのコメント、そしてコメントに対応するアドバイスで構成されています。ここで重要なのは、スコアが単体で返るのではなく、「この点数の人はこういう状態で、次にこれをすると伸びる」という処方とセットで返る点です。フォーラム資料に掲載されたサンプルを見ると、その構造がよく分かります。
個人レポートのサンプル|一人の若手社員の9指標スコア(5点満点)
出典:1-2-3年目社員育成フォーラム資料に掲載された個人レポートのサンプル。同じ人の中で4点の指標と2点の指標が同居している(主体性は実行力・協働力の演習内で行動観察するため、サンプルの項目別スコアは8項目)
読み方:橙のバーが2点の指標。この人は課題を見つけ、理解し、やり切る力は高い一方、アイディアの量と周りを巻き込む力に伸びしろがある。全員一律の研修では、この人の「発想力」と「協働力」だけを狙って鍛えることはできない。
このサンプルが人事担当者に示しているのは、「平均3.1点の若手」という見方では何も決められない、ということです。この人の課題発見力と実行力は4点で、おそらく職場では「仕事が早くて筋が良い」と評価されています。しかし発想力と協働力は2点で、「自分の案は平凡で、チームを自分から動かせない」という状態です。上司の印象評価では前者が目立ち、後者は「おとなしい」で片付けられがちです。診断はこの凸凹を数字にして、「この人には発想法のトレーニングと、周りを巻き込む練習の場が要る」という個別の打ち手に変換します。
スコアには「コメント」と「アドバイス」が対になっている
個人レポートでは、9指標のスコアそれぞれに、その点数の人がどういう状態なのかを示すコメントと、次に何をすれば伸びるかを示すアドバイスが付いています。サンプルの発想力2点には、「短い時間に出せるアイディアの数が限られている。アイディアの質は平凡でよくあるアイディア」というコメントと、「多くの発想法を知って、短時間で多くのアイディアを出す訓練をする。視野を広げるために様々なテーマで練習する」というアドバイスが対になっています。協働力2点には、「他のメンバーと良い雰囲気で共同作業ができる。相手に言われたら参加する」というコメントと、「自ら周りを巻き込む努力をする。主体的にチームを動かす」というアドバイスが付きます。
高いスコアにもアドバイスはあります。課題発見力4点には「さらに能力を高めるために鋭い視点から普段気づかない課題を見つけて、解決へのアプローチを考える」、理解力4点には「会話中にリアルタイムで正確に把握できるようにする。相手の言葉だけではなく裏にある意図も含めて把握する」と、次の段階が示されます。資料が強調しているのは、このアドバイスが「汎用的で、他の研修を受けなくても分かるようになっている」ことです。つまり本人は、レポートを受け取った時点で、追加の研修を待たずに自分で動き始められます。診断を受けた若手が「点数を付けられただけ」で終わらないための設計です。
全体レポートと学習アドバイスは、人事と本人のそれぞれが使う
全体レポートは、受講した同期全体の傾向を示すもので、各領域の平均と項目別の分布が分かります。「今年の3年目は理解力と実行力が高く、発想力と協働力が全体的に低い」と分かれば、来期の集合研修のテーマは発想力と協働力に絞れます。個人レポートが「誰に何を足すか」を決めるのに対し、全体レポートは「全員に何を足すか」を決める材料です。一律研修を否定するのではなく、一律で行う価値のあるテーマを、データで選べるようになります。
学習アドバイスは、指標ごとに「定義」「役立つ場面」「評価ポイント・目指す状態・アドバイス」「おすすめのリソース」をまとめたもので、本人が自習するための手引きです。たとえば論理思考力には、情報整理のピラミッド構造・フレームワーク・自由整理・メッセージという4つの評価ポイントと、それぞれの目指す状態、そして書籍(『マッキンゼーで学んだフレームワーク超活用術』)、アプリ(グロービス学び放題の論理思考講座)、ゲーム(Fit Brains Trainer)といった具体的なリソースが示されています。実行力には『ストレスフリーの整理術』、共感力には『コーチング・バイブル』とコーチ・エィ社のメールマガジンが挙がっています。診断を受けた本人が、翌日から自分の弱い指標に取りかかれる状態をつくっているわけです。この診断を年度初めと年度末の2回行い、25名のスコア変化と離職率で効果を確かめた実例は、3年目社員の年間研修事例で紹介しています。
診断を年度初めと年度末の2回実施し、「伝える」「やる」の指標が1ポイント前後伸びた一方で「考える」は単発研修では伸びにくいと分かった、3年目25名の年間プログラムの実例があります。
1つの指標はどこまで分解して見るのか?|「実行力」の5つの評価ポイント
9指標のそれぞれは、さらに4〜5個の「評価ポイント」に分解されています。実行力であれば「早いスタート」「明確な計画」「集中して進める」「目標達成のために微調整をする」「時間内に終える」の5つです。診断の学習アドバイスは、この評価ポイントごとに「目指す状態」と「アドバイス」を対にして示します。なぜここまで分解するのか。上司が「あの子は実行力が弱い」と言うとき、その中身は人によって違うからです。スタートが遅いのか、途中で脱線するのか、時間が読めないのか。同じ「実行力が弱い」でも打ち手は全く別になります。
「実行力」の5つの評価ポイント|目指す状態とアドバイス
早いスタート
目指す状態:早くスタートを切るための明確な動きがある
アドバイス:迷わずスタートを切ることを意識する。簡単ですぐできる第一歩を考える。勇気を持って一歩を踏み出す
明確な計画
目指す状態:計画を事前に立てて、進行中にも意識して動いている
アドバイス:最終目標や成果物のイメージを想像して逆算する。先に全体の流れを想像する。いろいろな計画のバリエーションを考える。うまくいったときの流れを分析して再利用する
集中して進める(脱線しない)
目指す状態:最初から最後まで目標達成に向けて集中して取り組む
アドバイス:作業中に集中力が切れたり脱線したりするときを記録して、直す意識をする。目標に向かっているかどうかを常に意識する。周りが目標からずれても影響されないように努力する
目標達成のために微調整をする
目指す状態:目的を意識して動き、周りに言われなくても途中で計画を見直したり微調整したりする
アドバイス:取り組みの途中で意図的に立ち止まり、プロセスについて考える習慣を身につける。「目標を達成するためにもっと良いやり方はないか」「このまま続けたほうが良いか」「さらに良くするために何か工夫できないか」
時間内に終える
目指す状態:時間を意識し、時間内に終える
アドバイス:普段から作業に実際にかかっている時間の感覚を磨く(思っている以上に時間がかかっているケースが多い)。チームワークのときは自分の分を減らし、より積極的に相手を巻き込んで任せる
この分解が人事担当者にとって意味を持つのは、「実行力が弱い」という評価が、診断を通すと5つのどれかに特定されるからです。ミニ・インバスケット演習では、受講者が処理の過程をメモに残します。そのメモを見れば、最初の5分で手が止まっていたのか(早いスタート)、順番を決めずに手当たり次第に処理していたのか(明確な計画)、途中で関係ない案件に時間を使っていたのか(集中して進める)、最後の案件が時間切れだったのか(時間内に終える)が分かります。同じ2点でも、止まっていた場所が違えば、本人に返すアドバイスは違います。「とにかく早くやれ」という指導は、計画で止まっている若手には逆効果です。
他の指標も同じ粒度で分解されています。論理思考力は「情報整理(ピラミッド構造)」「情報整理(フレームワーク)」「情報整理(自由)」「メッセージ」の4つ、共感力は「相手の話を聞く姿勢」「話す機会を与える」「アクティブリスニング」「相手の話を要約する」「相手に合わせたコミュニケーション」の5つです。共感力の「話す機会を与える」には「自分の話を90秒以内にまとめて必ず相手に振る」というアドバイスが付いており、ここまで具体的だから、本人が明日の会議で試せます。診断で特定した評価ポイントを、研修でどう鍛えるかの例は、同じ「考える・伝える・やる」を軸にした実行力研修の事例にまとめています。診断は「どこが弱いか」を特定する工程、研修は「そこを鍛える」工程で、この2つは対になっています。
結果をどう使うのか?|本人・上司・人事の3つの宛先と、年間の流れ
診断結果には3つの宛先があります。本人、上司・メンター、そして人事です。本人は個人レポートと学習アドバイスをもとに自分の学習プランをつくり、上司・メンターは本人の凸凹を知った上で日々の関わり方を変え、人事は全体レポートをもとに集合研修のテーマを決め、年度末の再診断で効果を測ります。診断を「本人に返して終わり」にすると、この3つのうち1つしか使っていないことになります。
上司・メンターに診断結果を渡す理由
見落とされがちなのが2つ目の宛先です。アイディア社の資料は、上司・メンター向けの成長支援研修のポイントとして「担当する新入社員の個別情報をできるだけ与える(アセスメント結果など)」を挙げています。上司やメンターは、相手の理解を確認しながら話すティーチング、質問で気づかせるコーチング、分かることをできるようにさせる定着のテクニックを学びますが、どの技術をどの場面で使うかは、相手がどこでつまずいているかによって決まります。「伝達力3点・理解力4点」の若手には、報告を遮らず最後まで聞いてから整理を手伝う関わり方が効き、「理解力2点」の若手には、指示の後に復唱させる関わり方が効きます。診断結果は、上司が自分の経験則ではなく相手のデータで関わり方を選ぶための材料です。
診断を起点にした1年間の流れ
人事にとって診断は、年間プログラムの起点です。2024年のフォーラム資料は、3年目社員の育成の工夫として「実力診断」「個人別学習」「スキリング研修」「個別コーチング」の4つを挙げ、それぞれを「一人一人の社会人基礎力を把握してオリジナル学習プランをつくる」「既存のリソースを使って個人に合わせた学習プランをつくる」「個別学習に向けてのモチベーションとノウハウを高める」「個別学習の進捗を把握して促しながらマインドのサポートもする」と説明しています。この4つは並列ではなく、順番に効く設計です。
実力診断を起点にした若手育成の1年間(4月の診断から翌3月の成果発表まで)
実力診断
1日のシミュレーションで9指標を測り、当日フィードバック。個人・全体レポート
個別学習プラン
低い指標と学習アドバイスをもとに、本人と講師が伸ばす指標と学習リソースを決める
研修と個別学習
全体に共通する弱みは集合研修で、個人の弱みはインプット→定着演習→職場実践で
個別コーチング
進捗を確認し、職場実践を振り返り、次の一歩を決める。上司の巻き込みもここで
再診断と成果発表
年度末に同じ演習で再診断し、スコアの変化と本人の発表で1年の成長を確認する
この流れが人事担当者に示しているのは、診断の価値は「測ること」ではなく、「測った結果が次の4工程の入力になること」だという点です。STEP 2の個別学習プランは、STEP 1の個人レポートがなければ全員同じ内容になります。STEP 4の個別コーチングは、STEP 2のプランがなければ「最近どうですか」という雑談になります。STEP 5の再診断は、STEP 1と同じ演習を使うから、スコアの変化が1年の成長として読めます。逆に言えば、診断だけを単発で入れて後工程を省くと、本人には点数と汎用的なアドバイスが残るだけで、組織としては投資が回収できません。
STEP 3の個別学習は、インプット(オンデマンド教材で必要な知識を習得)、アウトプット(AIツールを使った定着演習)、個別サポート(オンラインコーチングとアクションプラン)、職場実践(上司を巻き込んで実務で試す)、成果(学習・行動・成果の3段階で測る)の5つのプロセスで組まれています。この個別学習の設計そのものは、Myラーニングジャーニーの記事で詳しく扱っているため、本記事では診断との接続点だけを押さえます。接続点は一つで、「どの指標を伸ばすか」が診断で決まっていること。これが決まっていないと、インプット教材の選定から迷い始めます。3年目の1年間を影響力・キャリアと合わせてどう組むかは、3年目社員の育成と研修体系の記事に整理しています。
診断の後工程(個別学習プラン・個別コーチング・再診断)まで含めて、来期の若手育成を1年の流れで設計したい方はご相談ください。対象年次と人数に応じて、診断の実施時期と後工程の組み合わせをご提案します。
いつ・どの年次で測るのか?|2年目の終わりから3年目の初めが起点になる
実施時期は、2年目の終わりから3年目の年度初めが起点になります。アイディア社のフォーラム資料でこの診断が置かれている章を4年分たどると、2022年は3年次、2023年は2年目、2024年と2025年は3年目で、いずれも年間プログラムの4〜6月、つまり年度の最初に位置づけられています。2023年に2年目へ移したのは、「即戦力」「自律」という環境変化への対策として、個人ごとの実力診断と個別学習プランを早めに回す必要があると判断したためです。2024年以降に3年目へ戻った背景には、3年目の問題として「できること・できないことが把握されていない」「個人の凸凹があって個別フォローが必要」が最も強く現れることがあります。
この変遷から読み取れる実務上の答えは、「2年目の終わりか3年目の初め、どちらでもよいが、年度の最初に行い、年度末にもう一度行う」です。年度の最初に行う理由は、結果をその年の個別学習プランと集合研修のテーマに反映できるからです。年度末に再診断する理由は、同じ演習で測るからスコアの変化を1年の成長として読めるからです。年度の途中に1回だけ行うと、結果を使う時間が足りず、翌年には本人の状態が変わっています。
新入社員に使う場合は、1年目の終わり、成果発表の前が適しています。資料が挙げる新入社員の問題には「1年間の成長と成果がよく分からない」「2年目に向けての目標が曖昧で、モチベーションが低い」があります。1年目末に9指標を測れば、本人は成果発表で「1年でここまでできるようになった」を数字で語れ、2年目の目標は「発想力と協働力を伸ばす」のように具体化します。新入社員研修の年間設計の中でこの時期がどこにあたるかは、新入社員研修の設計4フェーズの記事で確認できます。
よくある質問
若手社員の実力診断は何年目に実施するのが効果的ですか?
2年目の終わりから3年目の年度初めが最も効果的です。配属後の1〜2年で個人の凸凹が「個別フォローが必要」なレベルまで広がる時期であり、年度初めに測れば結果をその年の個別学習プランと集合研修のテーマに反映できます。年度末に同じ演習で再診断すると、スコアの変化を1年の成長として確認できます。新入社員には1年目の終わり、成果発表の前に行う使い方もあります。
経済産業省の社会人基礎力と、この診断の9指標はどう違いますか?
経済産業省の社会人基礎力は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3能力12要素で、アイディア社のフォーラム資料はこれに学習能力・応用力・テクノロジー活用力を加えた15項目を年次別に整理しています。診断の9指標はこの枠組みと対応しつつ、1日のビジネスシミュレーションで成果物や行動として客観的に測れる能力に絞ったものです。規律性やストレスコントロール力のように、職場での継続的な関わりで見るべき能力は診断の対象外で、9指標は「若手に必要な能力の全て」ではなく「1日で測れる能力」の集合です。
診断だけを単独で実施することはできますか?
実施自体は1日で完結し、当日の個別フィードバックと、指標ごとの学習アドバイスまでが診断の中に含まれています。アドバイスは他の研修を受けなくても分かる汎用的な内容なので、本人は結果を受け取った時点で自分の弱い指標に取りかかれます。ただし、診断の価値は結果を次の工程(個別学習プラン・集合研修のテーマ設定・個別コーチング・年度末の再診断)の入力にするところにあるため、後工程を省くと本人に点数とアドバイスが残るだけで、組織として投資を回収しにくくなります。単独で始める場合も、少なくとも全体レポートを翌年の研修テーマ選定に使うことをお勧めします。
スコアが低かった若手のモチベーションが下がりませんか?
診断は合否や順位を付けるものではなく、一人の中の凸凹を可視化するものです。サンプルのように課題発見力4点・発想力2点というように、同じ人の中に強い指標と伸びしろの指標が必ず同居します。フィードバックは当日のうちに、本人が自分の演習の出来を覚えている状態で行い、低いスコアには「次に何をすれば伸びるか」のアドバイスが、高いスコアにも次の段階のアドバイスが対になって返ります。「点数を付けられた」で終わらず「次にやることが決まった」状態で解散できるため、自分の長所・短所に気づけていなかった若手ほど、診断を受けた後のほうが動き出しやすくなります。
若手の「現在地」を測ってから、来期の研修を決めませんか
アイディア社の若手社員向け実力診断は、1日のビジネスシミュレーションで「考える・伝える・やる」9指標を行動から測り、当日の個別フィードバック、個人・全体レポート、指標ごとの学習アドバイスまでをお返しします。対象年次・人数・既存の研修体系に合わせて、診断の実施時期と後工程(個別学習プラン・集合研修・個別コーチング・再診断)の組み合わせをご提案します。まずは現状の課題をお聞かせください。
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