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ATD人材育成国際会議2024 報告会レポート|AI・心理的安全性・脳科学の最新トレンド

2024年5月、アメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズで開催された「ATD人材育成国際会議 2024(ATD International Conference & Exposition 2024)」。世界77カ国から約9,000名が参加し、約300のセッションと300以上の展示ブースが設けられた、人材育成分野における世界最大級のイベントです。

IDEA DEVELOPMENT株式会社では、多忙な人材育成担当者様に代わってこの国際会議に参加し、現地で集めた最新トレンドと成功事例を報告会として共有しました。2024年6月6日にオンラインで開催された報告会には約300名が参加。本記事では、報告会レポート(全67ページ)の内容を9つのキーワード別に凝縮してお伝えするとともに、セミナー映像を無料公開しています。

ATD2024 帰国報告会レポート(全67ページ)を無料でダウンロード

Booz Allen Hamilton、Novartis、IBM、Amazon、General Motors、米国空軍などの事例をスライド・ビジュアル付きでまとめたフルカラーレポートです。

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ATD2024の概要 ― ニューオーリンズに世界の人材育成関係者が集結

ATD(Association for Talent Development)は1943年に設立された教育研修・能力開発に関する世界最大級の非営利団体です。ATD2024では、著名人の基調講演をはじめ、約300のセッションが13のテーマに分かれて展開されました。

9,000
名の参加者
77
カ国
300+
セッション
13
トラック
4日間
開催期間

ATD2024のレポートは、人材育成の「HOT TOPIC(注目テーマ)」と「CORE COMPETENCY(実務基盤)」の2軸で構成されています。HOT TOPICではAI・心理的安全性・脳科学など2024年ならではの旬なテーマを、CORE COMPETENCYでは研修設計・講師スキル・効果測定といった人材育成担当者の普遍的な実務能力を扱います。気になるキーワードから読み進めてください。

9キーワード ナビゲーション

AI×人材育成 ― ケイパビリティアカデミーからAIリテラシーまで

ATD2024で最も注目を集めたテーマが「ラーニングテクノロジー」、とりわけAIの人材育成への活用です。レポートではこのテーマだけで13ページを割き、ケイパビリティアカデミーの立ち上げ方からAIリテラシーの体系的な育成、VR研修の最前線まで、5つのセッションの知見を凝縮しています。

企業事例:Booz Allen Hamilton ― ケイパビリティアカデミーで「研修」を「実務直結の育成」に変える

Booz Allen HamiltonのJason Jury氏とLi-Ming Yang氏は、従来のeラーニングやタレントマネジメントに代わる新しい育成モデル「ケイパビリティアカデミー」の設計ワークショップを行いました。

CASE STUDY:Booz Allen Hamilton ― ケイパビリティアカデミーの立ち上げ

BEFORE

eラーニング→タレントマネジメント→デジタルラーニング→パフォーマンスサポートと進化してきたが、いずれも「研修を提供する」域を出ず、実務スキルの強化に直結していなかった。責任者は人事部門であり、職場のリーダーは関与が薄かった。

やったこと(ケイパビリティアカデミーの設計4ステップ)
1

ビジネスニーズの把握

企業ビジョン・中期計画・部門目標・経営層ヒアリング・業界トレンド分析から、育成すべき実務スキルを特定

2

ステークホルダーの巻き込み

スポンサー(応援する経営者)とパートナー(内容作成・講師・メンターを担う現場リーダー)を確保。責任者を人事から職場のリーダーに移管

3

テクノロジーの投資

ソーシャル、ラーニングプラットフォーム、コラボレーションツール、交流の場を整備

4

仕組みづくり

研修内容を社内専門家に頼る設計に転換。スキルマッピングに合わせ、必ず職場実践を組み込み、スケールと維持も最初から設計に含める

AFTER

ケイパビリティアカデミーを導入した企業は、変化への対応力も業績も比較的高い傾向が確認されている。修了証ではなく資格の獲得を目指す設計により、受講者のモチベーションと実務への直結度が向上。

ポイント:従来の企業内大学との最大の違いは「責任者が人事ではなく現場のリーダー」であること。研修設計・実施・評価を現場主導に切り替えることで、育成が業務の延長線上に位置づけられる。まずは1つの部門で小さく始め、成功事例をつくってから全社展開するアプローチが推奨された。

ケイパビリティアカデミーのコンセプトは、人材育成モデルの30年にわたる進化の延長線上にあります。1998年のeラーニング登場から2020年代のケイパビリティアカデミーまで、一貫して「研修を現場に近づける」方向に進んできました。

人材育成モデルの進化(1998〜2020年代)

30年で人材育成は「講座提供」から「実務直結型アカデミー」へ。最新モデルの特徴は、責任者が人事から現場リーダーに移ること

1998

eラーニング

2005

タレント管理

2010

デジタル学習

2018

サポートツール

2020〜

ケイパビリティ
アカデミー

AIは5つ目のデジタルパラダイムシフト(Axonify)

AxonifyのJD Dillon氏は、AIをパソコン・インターネット・ソーシャルメディア・モバイルに続く「5つ目のデジタルパラダイムシフト」と位置づけました。Dillon氏が特に強調したのは、過去4回のデジタル変革において人材育成部門はいずれも対応が遅れたという事実です。AIの波に対しても同じ轍を踏まないよう、今から準備を進める必要があるとの警鐘でした。

現在のAI活用は自動音声やチャットボット、自動サマリーやリマインダーが中心ですが、Dillon氏は5年以内の予測として「パーソナライズ学習が当たり前になる」「育成の効果が明確かつ測りやすくなる」「ライン業務が人材育成機能を吸収する」と述べています。人材育成担当者にとっての示唆は「テクノロジーの進化を待つのではなく、今ある技術をまず使い始めること」です。

AIリテラシーこそ次の必須能力(UMU)

UMUのDongshuo Li氏は、AIツールと研修を組み合わせた場合の効果について複数の研究データを紹介しました。特に印象的だったのは、「AI単体」と「AI+研修」で成果に劇的な差が出るという実証データです。

AI単体 vs. AI+研修:成果の違い

AIツールを渡すだけでは不十分。研修と組み合わせると成果は約5倍に跳ね上がる(UMU調査)

AI単体
$10.41
AI+研修
$51.69(約5倍)

フリーランス対象調査:平均収入の比較

だから何? AIツールを導入するだけでは効果は限定的。「AIの使い方」を教える研修をセットで提供することが、人材育成部門の新しい役割になっている。Harvard Business SchoolとBCGの共同研究でも、AIを使うと仕事の効率・スピード・質が上がるが、経験の浅い人ほど効果が大きい(+43% vs +17%)ことが確認されている。つまりAIリテラシー研修は新人・若手から優先すべき。

さらにLi氏は、AIリテラシーの体系を「マインド(オープンマインド・改善思考・発想力)」「知識(AIの基本・ツールの使い方・応用ケース)」「スキル(プロンプトの書き方・クリティカルシンキング・情報のまとめ方)」の3層で整理しました。企業調査では58%が「AIについてはまだ勉強中」、65%が「AIに対する知識がない」と回答しており、AI活用の最大の障壁は技術の問題ではなく育成の問題であることが浮き彫りになりました。AI活用は重要な経営課題の一つですが、その第一歩は人材育成です。

企業事例:Novartis ― ADDIEの全フェーズでAIをパートナーにする

NovartisのJulie McGovern氏とCourtney Nall氏は、研修設計の基本モデルADDIE(分析・設計・準備・実施・評価)の各フェーズで実際にAIを活用している事例を紹介しました。

CASE STUDY:Novartis ― 研修設計(ADDIE)の全フェーズでAIを活用

BEFORE

研修設計の各フェーズ(ニーズ分析・設計・教材準備・実施・効果測定)に膨大な時間がかかっていた。特に教材作成と効果測定レポートの作成が人材育成チームのボトルネックに。

やったこと(ADDIE×AIの5フェーズ)

A ニーズ分析

受講者データの分析、学習目標の自動提案、既存コンテンツのキュレーション

ChatGPT / Miro Assist / EdCast LxP

D 研修設計

アイディアの集約・整理、学習目標に合った演習の提案、コース構成の自動生成

ID Assist / Miro Assist

D 教材準備

講師スライドの自動作成、スクリプト生成、マイクロラーニング映像の制作

EasyGenerator / Canva / Beautiful AI

I 研修実施

オンラインロールプレイとAIフィードバック、受講者の進捗に合わせた個別コンテンツ配信

Quantified AI / Sana Labs

E 効果測定

アンケートの自動分析、改善ポイント+具体策の提案、報告書の自動作成

Sana Labs / ChatGPT

AFTER

全5フェーズでAIを日常的に活用。特に教材作成と効果測定レポートで大幅な時間短縮を実現。AI導入のメリット(効率化・パーソナライズ・データインサイト)と懸念点(初期費用・人間による管理・セキュリティ)の両面を理解したうえで、チーム全体のAIリテラシーを段階的に引き上げた。

ポイント:AIは研修担当者の「代替」ではなく「強化」ツール。Novartisが最初に着手したのは大掛かりなAI導入ではなく、「受講者アンケートの分析」と「報告書の下書き」という身近な業務。まずは自分の仕事で一番時間がかかっている作業にAIを試してみることが現実的な第一歩。

VR研修の最前線(Gronstedt Group)

Gronstedt GroupのAnders Gronstedt氏は、VR(バーチャルリアリティ)を活用した研修事例を3つ紹介しました。米軍では従来のフライトシミュレーション訓練をさらに進化させ、VRが「体で覚える」効果と圧倒的なリアリティを実現しています。製薬会社では安全を保ちつつ大量の臨床検査技師を短期育成するためにVRクリーンルームを活用。大型HVAC機械メーカーでは、顧客がVRで機械の内部構造を「X線ビジョン」のように確認できる体験を提供し、受講者の80%が「非常に価値がある」と評価しました。VR研修は「リアルでは危険・高コスト・物理的に不可能な体験」を安全かつ反復可能にするところに最大の価値があります。

▼ ラーニングテクノロジー セミナー映像

AI時代の研修設計に関心のある方は、人材育成担当者向けオンデマンド・ブートキャンプの記事もあわせてご覧ください。研修企画から効果測定まで体系的に学べるプログラムを紹介しています。

AI時代の研修設計にご関心のある方へ ATD2024レポートでは、Booz Allen Hamilton、Novartis、IBMなどの具体的なAI活用事例を67ページにわたって紹介しています。

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心理的安全性 ― 脳科学が裏付けるチームの生産性基盤

心理的安全性は近年ますます注目を集めるテーマですが、ATD2024ではAccentureのTorin Monet氏とImmersion NeuroscienceのPaul J. Zak氏が「脳科学的な根拠」という新しい切り口で解説しました。心理的安全性が「良い職場のためのもの」ではなく「ビジネス成果に直結する経営課題」であることを、データと脳科学の両面から裏付けたセッションです。

心理的安全性の高い組織が得る具体的なアドバンテージ

まず示されたのは、心理的安全性が高い組織とそうでない組織の間に生じる定量的な差です。

心理的安全性が高い組織 vs. 低い組織

Harvard Business Review、Accenture、Gallup、Gartner等の複数の研究を統合したデータ

挑戦する意欲
+150%
仕事のエネルギー
+106%
エンゲージメント
+76%
コラボレーション
+57%
生産性
+50%
離職率
-27%

だから何? 心理的安全性は「福利厚生」ではなく「業績を左右する経営指標」。エンゲージメントが76%高く、イノベーションへの挑戦意欲が150%高いということは、研修効果にも直結する。研修前に「安心して失敗できる場」を設計しているかどうかが、同じ研修プログラムでも成果を分ける。

逆に心理的安全性が低い環境では、うつ症状が28%、不安障害が34%、ストレス関連疾患が37%増加するという深刻なデータも示されました。職場での心理的虐待がメンタルヘルス障害の26%を占めるという数字は、心理的安全性が「あると良い」ものではなく「なければ害になる」ものであることを示しています。

GoogleとMicrosoftの研究 ― ハイパフォーマンスチームの共通基盤

Googleの180チーム・2年間の研究「Project Aristotle」では、成功するチームに必要な5つの要素(信頼関係・役割の明確さ・仕事の意義・高い貢献度・心理的安全性)の中で、心理的安全性がすべての土台であることが確認されました。Microsoftが6年間にわたって研究した「The Art of Teamwork」でも、心理的安全性を構成する3要素(認識と包摂・建設的な緊張・信頼と挑戦)が好循環を生むことが明らかになっています。

脳科学の観点からは、安心できる環境ではドーパミン(学習・集中力を高める)、セロトニン(協調性・満足度を促進する)、オキシトシン(信頼・共感を深める)、エンドルフィン(バーンアウトを防ぐ)などの神経伝達物質が適切に分泌され、学習・イノベーション・コラボレーションが促進されることが説明されました。Acccentureの研究では、こうした脳の刺激を意図的に生み出すための具体的な取り組み(明確な目標設定、チームワーク強化、共感、身体活動の奨励など)も提案されています。

ヘルシーな職場風土を実現するための5ステップ(Forzes)

ForzesのEvert Pruis氏は、Unilever、P&G、Saudi Aramco、PwCなどの経営者インタビューをもとに、安全な職場風土をつくる5ステップのプロセスを提唱しました。

ヘルシーな職場風土を実現する5ステップ

制度やルールではなく、リーダー自身の日々の行動と内面の変化から始まるプロセス

1

振り返りと内省

自分の行動パターン・存在・考え方を深く振り返る時間をつくる

Unilever:毎週1日を振り返りに充てている

2

離れる

ルーティンから離れ、周りを受け入れることで信頼関係を構築する

P&G:自分にも相手にも冷静に向き合う

3

心境を意図的に変える

自分の心境をポジティブに変え、メンバーに良い影響を与える

McKinsey:睡眠・運動・栄養・瞑想・人間関係

4

共感する

共感しながら人間関係を改善し、安心できる環境をつくる

Saudi Aramco:毎朝音楽を流しながらチェックイン

5

リラックスする

ガードを下げて感情を出すと、メンバーは安心してより深い対話ができる

PwC:自分を忘れるとメンバーは話しやすくなる

ポイント:5ステップすべてが「制度」ではなく「リーダー個人の内面の変化」から始まっている。心理的安全性の高い組織は、制度改革ではなくリーダーの自己変革から生まれる。管理職研修でこの5ステップを「自分ごと」として体験させることが、組織全体の風土を変える起点になる。

▼ 心理的安全性 セミナー映像

メンタルヘルス ― 従業員ライフサイクルに沿った予防設計

Mind Share PartnersのMichael Davis氏とCarrie Grogan氏は、メンタルヘルスを「対症療法」から「予防設計」へ転換するアプローチを提案しました。重要な前提として、メンタルヘルスはネガティブなイメージだけでなく、喜びや達成感からストレスや不安まで幅広いスペクトルであるという再定義がなされました。メンタルヘルスを改善するために必要な要素は「人間(上司・同僚)」「制度(人事・福利厚生)」「風土(信頼性)」の3つです。

従業員ライフサイクル×メンタルヘルス施策の7ステップ

従業員ライフサイクル×メンタルヘルス施策

各ステージに予防的な施策を埋め込むことで、「問題が起きてから対処」ではなく「最初から設計する」アプローチへ

STEP 1

面談

方針を積極的に発信

STEP 2

採用

採用プロセスが見本に

STEP 3

入社

メンター+定期チェックイン

STEP 4

実務

定期的な状況把握と情報発信

STEP 5

育成

管理職研修に観察ポイント

STEP 6

昇進

好影響を与える人を昇進

STEP 7

退職

ヒアリング+残留者フォロー

だから何? メンタルヘルスを「相談窓口の設置」で済ませていないか。採用サイトにメンタルヘルスの方針を載せることから、退職時のヒアリングまで、各ステージに予防的な施策を埋め込む設計が必要。特にSTEP 5の「マネージャー研修にメンタルヘルスの観察ポイントを組み込む」は、人材育成部門がすぐに着手できる施策。

企業事例:General Motors ― EQ強化で顧客対応とメンタルヘルスを両立

General MotorsのErin Higgenbotham氏は、カスタマーサービス部門が直面する課題をEQ(エモーショナルインテリジェンス)研修で解決した事例を紹介しました。

CASE STUDY:General Motors ― EQ強化研修

BEFORE

カスタマーサービスのメンバーが電話やチャットで日常的にクレーム対応に追われ、精神的に消耗。攻撃的な顧客への対処法がわからず、共感スキルも不足していた。チームリーダーからも「メンバーの対応力とメンタルの両方が課題」との声。

やったこと

EQの4領域に分解

自己認識・自己コントロール・相手への意識・関係構築の4つを明確に定義

クレームの2分類を訓練

「状況に対するクレーム」と「人格攻撃」の違いを見極めるスキルを重点的に練習

シミュレーション中心の設計

コーチング・アクティブリスニング・事例分析を軸に、実際のコール音声を使った演習

ニーズ把握を多角的に

現場の観察・受講者ペルソナ・エンパシーマップ・インタビューの4手法でニーズを特定

AFTER
100%
分かりやすい・実践的
95%
すぐ役立つ
95%
職場で活かせる自信がある

ポイント:EQ研修は抽象的になりがちだが、GM事例の成功要因は「状況クレーム vs 人格攻撃」という具体的な判別基準を持たせたこと。受講者が「何をすればよいか」を明確にイメージできる設計が、95%の「職場で活かせる自信がある」という評価につながった。顧客対応部門に限らず、クレーム対応のストレスを抱えるあらゆる部門に応用可能。

フィードバック文化 ― 「もらう」から始めるリーダーシップ

逆転の発想:上司が部下からフィードバックを「求める」(Zenger Folkman)

Zenger FolkmanのJack Zenger氏は、フィードバック文化の構築について逆転の発想を提案しました。通常フィードバックは「上司から部下へ伝えるもの」というイメージがありますが、フィードバック文化をつくるには上司がまず部下からフィードバックを求めることが最も効果的だというのです。

フィードバックの常識を覆す ― 11万名以上の360度評価データ

「求める上司」ほどリーダーシップ評価が高く、フィードバックを伝えるスキルまで高い

78%
部下からフィードバックを積極的に求める上司の
「フィードバックを伝えるスキル」の評価
5 : 1
行動科学者ゴットマン教授の研究による
ポジティブ : ネガティブの理想的なバランス

だから何? フィードバック文化を浸透させたいなら、マネージャー研修のゴールを「フィードバックの伝え方」から「フィードバックの求め方」に変えてみる。求める姿勢が伝えるスキルも高める好循環が生まれる。また理想的なサイクルは、まずポジティブフィードバックで信頼関係をつくり、そのうえでネガティブフィードバックも受け入れられる土壌を育てるという順序。

フィードバックを求める上司の特徴として、部下育成を重視していること、聞く力が強いこと、メンバーの動機づけに長けていること、エンゲージメントの高いチームを率いていることがデータから確認されています。逆にフィードバックに対する典型的な誤解として、「フィードバック=改善ポイントの指摘」と思っているマネージャーは82%に上り、ポジティブフィードバックの重要性が過小評価されている現実も明らかにされました。

企業事例:MSKCCがんセンター ― ハイブリッドワーク環境でチームワークを強化する4ステップ

Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)のWendy Martling氏とKelly Titus氏は、ハイブリッドワーク環境でチームワークを強化するための4ステップを実例とともに紹介しました。MSKCCは全米でがん治療の評価が30年間連続トップクラスの医療機関で、ニューヨークを中心に24カ所の拠点、7,200名の従業員を擁しています。

CASE STUDY:MSKCC ― ハイブリッドチームワークの強化

BEFORE

パンデミック後にハイブリッド体制へ移行。従業員満足度やWLバランスは改善したが、チームの一体感低下・緊急対応の遅れ・対面スタッフとの溝が深刻化していた。

やったこと(4ステップ)
1

タレント戦略

ハイブリッドに合わせた人事評価・目標設定・キャリアパス・IDPを再設計。マネージャーのエンゲージメント向上を目標に組み込む

2

風土づくり

対面とリモートのハイブリッドイベント、タウンホール(スタッフ向け・リーダー向け)、チーム活動を定期的に実施

3

人材育成

従業員ペルソナに合わせた入社研修の改善、LinkedInラーニングパスの整備、対面・リモート・オンデマンドの使い分け

4

情報発信

経営者からの定期メッセージ、統一ブランディング、成功事例の共有と表彰制度、リーダーシップサミットの開催

AFTER

4ステップの取り組みにより、ハイブリッド環境でも「意図的なつながり」を維持する仕組みが確立。タレント戦略から情報発信まで一貫したフレームワークで運営することで、対面スタッフとリモートスタッフの溝を解消した。

ポイント:MSKCCの取り組みで特に参考になるのは「風土づくり」の具体性。タウンホールを「全スタッフ向け」「リーダー向け」「リーダーシップサミット」の3種に分け、年間カレンダーに組み込んでいる。ハイブリッドワークの課題は「仕組みの欠如」であり、「つながりを偶然に任せない」設計がカギ。

▼ ヒューマンリーダーシップ セミナー映像

心理的安全性やフィードバック文化の構築は、管理職研修の落とし穴と改善策とも密接に関連しています。管理職研修を見直す際のチェックポイントとしてもお使いください。

心理的安全性・フィードバック文化の構築にご関心のある方へ ATD2024レポートでは、GoogleやMicrosoftの研究データに加え、Accenture、Zenger Folkman、MSKCCなどの実践的なアプローチを紹介しています。

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パーソナライズ学習 ― 一人ひとりに最適化された研修を大規模に実現する

IDEA DEVELOPMENTのJason Durkee社長とNext PracticesのIan Townley氏は、受講者一人ひとりのニーズに合わせた「パーソナルラーニングジャーニー」の設計方法を解説しました。パーソナライズ学習は研修の質と効果が高い反面、個別対応のための運営負荷が大きいことが長年の課題でした。しかし近年のITプラットフォームの進化により、大人数での実施が現実的になりつつあります。IDEA DEVELOPMENTでは2023年から積極的に実施しています。

パーソナライズ学習の5ステップ設計ガイド

パーソナライズ学習の5ステップ

「受講者全員に同じ研修」から「一人ひとりに最適化されたジャーニー」へ。鍵は受講者との対話から始めること

1

ゴールセット

受講者インタビューでモチベーションを高め、アセスメントで実力を把握し、ニーズ分析から個別プログラムを設計する

上司の巻き込みや職場での観察も有効

2

インプット

映像マイクロラーニング、課題図書、既存教材、社内資料、専門家インタビューなど多様な素材を組み合わせる

ノウハウだけでなく「人」を紹介することも効果的

3

アウトプット

文章・プレゼン・職場実践。AIの進化でオンラインのプレゼン練習やロールプレイが可能に

宿題より実践的な課題が効果的

4

講師セッション

職場実践後に講師と1対1で振り返り、体験学習サイクルを回す。AIの限界がある領域は講師との直接練習が必須

ヒューマンスキルは人間同士で練習すべき

5

効果測定

取り組み→習得度→ビジネス成果の3層で測定。ブリンカホフメソッドが信頼性の高い手法として推奨

プラットフォームのデータ+講師評価+職場成果

ポイント:パーソナライズ学習の成否を分けるのはSTEP 1のゴールセット。受講者と直接インタビューして「何を強化したいか」「どんな場面で困っているか」を引き出すことで、モチベーションと研修の的確さの両方が高まる。アセスメントも堅苦しい試験ではなく、ゲームやデモンストレーション、ロールプレイなど多様な手法で実力を把握する工夫が効果的。

アセスメントの効果的な使い方 ― 4種類の使い分け(DDI)

DDIのVerity Creedy氏は、アセスメントツールを4種類に整理し、それぞれの使いどころと注意点を解説しました。受講者にとってアセスメントとは「自分は何ができるか・何を知っているか・周りにどう見られるか・どんな特性があるか」を知るためのツールです。

アセスメントの4種類と使い分け

目的に応じて使い分けることが重要。特にAIの進化で①のシミュレーション型が現実的に

何ができるか(能力評価)

シミュレーションで実力を測定。AIの進化でコスト・手間が大幅に低下し、大規模実施が可能に

例:AIロールプレイ、模擬交渉

何を知っているか(知識評価)

職場実践で必要な内容に絞り、必要以上につらい経験をさせない設計が大事

例:TOEIC、知識テスト

周りにどう見られるか(他者評価)

360度評価。評価基準の明確化と、結果に対する納得できるフィードバック+フォローが鍵

例:360度フィードバック

どんな特性があるか(自己分析)

普段と違う視点から自分を深く理解する。行動と成長につなげる設計にすることが重要

例:強み診断、パーソナリティ診断

企業事例:IBM ― デジタルバッジでスキルの見える化を実現

IBMのDavid Leaser氏は、デジタルバッジによるスキルの見える化について紹介しました。IBMでは環境変化に柔軟に対応するため、マイクロスキル単位のバッジ制度を導入。Knowledge→Skills→Proficiency→Certified→Generalの5段階でスキルを可視化しています。

CASE STUDY:IBM ― デジタルバッジによるスキルの見える化

BEFORE

AI・ジョブ型雇用・採用力強化など急速な環境変化に対応するため、195カ国の従業員のスキルマッピングと継続学習の仕組みが急務に。従来の「修了証」では、従業員が何をどのレベルでできるのかが見えなかった。

やったこと

5段階バッジ体系の設計

Knowledge→Skills→Proficiency→Certified→Generalの5段階。マイクロスキル単位で獲得を可視化

ステークホルダー別の利点を設計

従業員→スキルアップ・昇進、会社→競争力向上・適材適所、顧客→信頼・安心感

スキルマッピングとチーム編成への活用

各従業員のスキルクラウドを作成し、チーム構成やキャリアシフトの判断材料に

LinkedInとの連携

バッジをLinkedInプロフィールに表示。プロフィール閲覧数が6倍に増加し、採用ブランディングにも貢献

AFTER
195
カ国で展開
700万+
獲得バッジ数
+694%
研修修了率
+87%
エンゲージメント
+129%
受講登録数

ポイント:バッジ制度の本質は「修了証のデジタル化」ではなく「スキルの見える化」。IBMのマネージャー調査では76%が「モチベーション向上に効果がある」、48%が「スキル把握に役立つ」と回答。マイクロスキル単位で可視化することで、チーム編成・社内モビリティ・採用の精度まで変わる。自社にバッジ制度を導入する際は、まず1つの職種・1つのスキル領域から始めて効果を検証するのが現実的。

▼ パーソナライズ学習 セミナー映像

脳科学×研修設計 ― 集中力低下時代の5つの処方箋とAIコーチング

Consciously DigitalのAnastasia Dedyukhina氏は「テクノロジーが記憶力と学習力に与える影響」について、最新の脳科学研究をもとに解説しました。パンデミック以降、私たちの集中力は急激に低下しています。

データが示す「学べない環境」の深刻さ

テクノロジーが学習力を奪っている

パンデミック前との比較で、集中力・記憶力ともに大幅に悪化している

+148%
会議の増加
パンデミック前比
44秒
画面の切り替え間隔
2004年は2.5分
-11%
作動記憶の低下
スマホが机にあるだけで

だから何? 2004年に2.5分だった画面切り替え間隔が2021年には44秒にまで短縮。さらにスマートフォンが机にあるだけで作動記憶が11%低下するという研究結果は、「研修中のスマホ禁止」が科学的に正当化されることを意味する。研修設計者は「受講者の集中力が低下している」前提でプログラムを設計する必要がある。

Dedyukhina氏は、人間とコンピュータの学習の違いにも言及しました。コンピュータは複数タスクを同時に処理しても質が落ちませんが、人間は長い集中時間、間隔学習、身体感覚が学習に不可欠です。また、記憶をITにアウトソーシングする「デジタル健忘症」の問題も指摘されました。検索できることは覚えようとしなくなり、覚えようとしないとますます覚えなくなる悪循環です。記憶は単なる情報の保管場所ではなく、発想力・想像力・集中力・判断力・EQのすべてとつながっていると強調されました。

脳科学から見た研修設計の5つのヒント

集中力低下時代の研修設計 5つの処方箋

脳の仕組みを理解すれば、同じ研修時間でもはるかに効果的なプログラムが設計できる

1

集中力管理に重点を置く

時間管理より集中力管理が重要。少人数研修にする、マルチタスクを禁止する、情報を吸収する時間を与える、デバイスを視界から外す

2

体験学習にする

情報発信ではなく記憶に残る体験を設計する。五感を刺激し、ストーリーテリングやメタファーを活用する。一方的なウェビナーは避ける

3

記憶を再構築する

間隔をあけた反復学習(AIチャットボットも有効)、アクティブラーニング、集中しやすい時間帯(朝)に学習を配置する

4

脳と身体を活性化させる

30分に1回は画面から離れる(1〜2分)、画面を使わない演習を入れる、音声のみのコンテンツ(歩きながら聴ける)も活用する

5

目標達成をサポートする

本人の利点を強調する、周りを巻き込む、明確な納期を与える(「いつでもアクセス可能」は逆効果)、定期的に認める

ポイント:5つのヒントの中で最もすぐに実践できるのは④「30分に1回画面から離す」と①「研修中のスマホ禁止」。科学的根拠があるため受講者への説得力も高い。自社のオンライン研修で「画面から離れる時間」を意図的に設計しているかどうかを確認してみてほしい。

コーチングの脳科学 ― プロコーチ vs. AIボットの意外な結果(Envisia Learning)

Envisia LearningのKenneth Nowack氏は、コーチングの効果に関する脳科学的な裏付けと、プロコーチとAIボットの比較研究を紹介しました。

プロコーチ vs. AIボット ― 目標達成に差はあるか?

複数の研究が示す、コーチングにおけるAIの可能性と限界

目標達成

プロコーチとAIボットの間に有意な差なし。どちらもコーチングを受けないグループより明確に高い目標達成率

共感性

AIボットの方が共感性・傾聴力の評価が高い。ただしAIだと明かされると評価は下がる

コーチングスタイル

問題解決重視より共感・承認重視のスタイルの方が、クライアントの満足度・オープンさ・行動変容が高い

だから何? AIコーチングは「プロコーチの代替」ではなく「コーチングの裾野を広げる手段」として有効。特にコーチングの機会が限られる企業では、AIボットによる初期コーチングで全社員にコーチング体験を提供し、より深い課題にはプロコーチが対応する2段階設計が現実的。また「共感から始めるスタイルが効果的」という知見は、人間のコーチ育成にも直接活かせる。

▼ 脳科学 セミナー映像

脳科学に基づいた研修設計の基本は、ブレンドラーニングの設計ガイドでも解説しています。「間隔学習」「マイクロラーニング」「体験学習」の設計原則を自社の研修に取り入れる際の参考にしてみてください。

パーソナライズ学習・脳科学に基づく研修設計にご関心のある方へ ATD2024レポートでは、IBM、DDI、Envisia Learningなどの具体的な事例と研究データを67ページにわたって紹介しています。

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研修設計 ― 既存プログラムの見直しとアジャイル設計

CORE COMPETENCYの最初のテーマは「研修設計」です。既存研修をどう見直すか、ハイポテンシャル人材の育成をどう再設計するか、そしてソフトウェア開発のSCRUM手法を研修設計にどう応用するか。3つの異なる角度から、研修設計の実践的な改善方法が紹介されました。

既存研修の4分類 ― ベクトル合わせ×効果測定で見直す(Torch)

TorchのMandy Varley氏は、既存研修を「ベクトル合わせ(職場ニーズ・経営課題との一致度)」と「効果測定(ビジネス成果との結びつき)」の2軸で4分類し、それぞれの改善方向を提示しました。

既存研修の4分類と改善の方向性

自社の研修プログラムを2軸で仕分けし、それぞれに最適な打ち手を選ぶ

成功(ベクトル合致+成果あり)

職場ニーズに合い、ビジネス成果にもつながっている研修

→ 経営者を巻き込み、受講者数を増やしてインパクトを拡大

注目(ベクトル合致+成果不明)

職場ニーズには合っているが、ビジネス成果との結びつきが見えない研修

→ 効果測定を強化してビジネス成果を明確に出す

的外れ(ベクトル不一致+成果あり)

何らかのビジネス成果は出ているが、本来の職場ニーズとずれている研修

→ 職場ニーズと経営課題に合わせてインパクトを高める

要改善(ベクトル不一致+成果不明)

職場ニーズにも合わず、ビジネス成果も見えない研修

→ 職場ニーズへの再接続 or 効果測定の強化、あるいは廃止

ポイント:多くの企業で「なんとなく続けている研修」が存在する。この4分類で棚卸しをすると、限られた予算と時間をどこに集中すべきかが明確になる。まずは自社の主要研修10本をこの2軸でマッピングしてみることから始められる。

ハイポテンシャル人材の新しいアプローチ(DDI)

DDIのMatt Paese氏は、従来の早期選抜プログラムに対して根本的な問いかけを行いました。核心は「ハイポテンシャルの高い人は誰?」という問いを「成長を加速できそうな人は誰?」に変えることです。固定的なポテンシャル評価ではなく、成長の可能性に着目するアプローチへの転換を提案しました。

今すぐできる3つの改善ポイントとして、①決まったポテンシャル評価から成長の実績に視点を変える、②経験を通じた成長の実績を重視する、③選抜者を決めつけずに成長の機会を広く提供する、が挙げられました。具体的な育成プログラムは、自己分析(360度・パーソナリティ診断)→役割に対する適性アセスメント→ストレッチ体験(異動・特別プロジェクト)→研修とコーチングの4要素で構成されます。

企業事例:Amazon ― SCRUM手法で研修設計のスピードと品質を両立

CASE STUDY:Amazon ― SCRUM風の研修設計

BEFORE

従来のADDIEモデルベースの研修設計では、コンテンツの締切遵守率が77.8%にとどまり、制作に26週間を要していた。設計チーム内の進捗の見える化も不十分だった。

やったこと(SCRUMの5ステップ導入)
1

プランニング

バックログ、計画ボード、スプリントボード、バーンダウンチャートなどSCRUMのフレームワークとツールを導入

2

タスクブレイクダウン

テーマ→エピック→ストーリー→タスクの4階層に分解。eラーニングやオンラインコンテンツ制作に特に有効

3

チェンジマネジメント

3日間のワークショップで新しい働き方を浸透。比較ジョブエイド、用語集、テスト環境、Slackチャンネルを整備

4-5

実行と評価

毎日のスタンドアップミーティング、2〜4週間ごとのスプリント納品。事前事後アンケートとターンアラウンドタイムで効果を測定

AFTER(SCRUM導入12週間後)
SCRUM前
96.3%
SCRUM後
99.3%

締切遵守率(1年前の77.8%から大幅改善)

26週間
SCRUM前(227本)
12週間
SCRUM後(154本)

制作期間とコンテンツ本数

ポイント:研修設計でSCRUMが効くのは、特にeラーニングやオンラインコンテンツなど「複数の制作物を継続的に作り続ける」場面。チェンジマネジメント(ステップ3)を丁寧にやったことが成功の鍵で、3日間のワークショップ+比較ジョブエイドで「従来のやり方との違い」を可視化した。研修設計チームが3人以上いる企業なら検討の価値がある。

講師スキル ― 専門家を講師に変える・講師の5タイプ

講師スキルのセクションでは、米国空軍の講師育成プログラム、講師タイプの5類型診断、米国内務局のコーチ養成施策という3つの事例が紹介されました。いずれも「専門知識はあるが教え方を知らない人」を「効果的な講師・コーチ」に変えるための実践的なアプローチです。

企業事例:米国空軍 ― 10日間で専門家を講師に変えるプログラム

CASE STUDY:米国空軍 ― 10日間の講師育成プログラム

BEFORE

10万名以上の空軍ボランティアメンバーに200以上の研修を提供する必要があるが、講師は全員が現場の専門家であり、大半が講師経験も研修設計の知識もない。受講者の勤務日数も年間15日未満と限られるため、講師育成は10日間以内に完了させる必要があった。

やったこと(3本柱×10日間の設計)

成人学習の基本

高卒中心の受講者に、学習理論・認知プロセス・大人の学び方の基本から「良い研修とは何か」の目指す姿を教える

研修設計(ADDIE)

内容の絞り方・まとめ方・コンテンツ作成・レッスンプラン作成。研修中にレッスンプランを2本作成・評価される

講師スキル

プレゼン・ファシリテーション・受講者対応。模擬研修を3回実施し、全受講者と講師から個別フィードバック

AFTER ― 学び・気づき

成功の鍵は「内容を絞る」「演習を多く入れる」「コーチとの人間関係」の3つ。インプットを前半に寄せ、後半は模擬研修と個別フィードバックに充てる構成が効果的だった。研修内容よりも「教えるスキル」に講師の目を向けさせることが重要。

ポイント:「専門家だから教えられる」は最大の誤解。空軍の事例が示すのは、専門知識と講師スキルは別物であり、後者は体系的に育成する必要があるということ。16名・2名講師・10日間という小規模設計で、模擬研修3回+個別フィードバックという実践密度の高いプログラム。社内講師育成を検討中の企業にとって、このコンパクトな設計は良いモデルになる。

講師タイプ別診断 ― あなたは5タイプのどれ?(Shift Facilitation)

Shift FacilitationのMoe Poirier氏は、講師の強みとスタイルを5つのタイプに分類する診断ツールを紹介しました。自分のタイプを知ることで、強みを活かした講師スタイルを確立できるだけでなく、足りない要素を意識的に補うこともできます。

講師の5タイプ診断

あなたの講師スタイルはどのタイプ? 強みを活かし、足りない要素を意識的に補う

先生タイプ

ありたい姿を分かりやすく見せ、テクニックとマインドをバランスよく教える。受講者のレベルに合わせ、細かいステップで成長させるのが得意

体育会系タイプ

繰り返しの訓練と反復演習を重視。指示は簡潔明確で求めるレベルが高い。成長だけでなく目標達成も大切にする

ヒーロータイプ

前向きで可能性を信じる。受講者の特性・才能・ポテンシャルを見抜いて引き出すことが上手。受講者の成長に喜びを感じる

コーチタイプ

信頼関係構築からスタートし、質問を使って受講者に考えさせる。教えるより成長支援をするスタイル。内省やリフレクションが得意

エンターテイナータイプ

ユーモアセンスが高く、雰囲気づくりが上手。体験談や冗談を交えながら教える。変化に強く臨機応変に対応できる

ポイント:優れた講師は複数のタイプを場面に応じて使い分けている。ちなみにIDEA DEVELOPMENTのダーキー社長の診断結果は「体育会系タイプ」が最高スコア、次いで「先生タイプ」。最も少ない要素は「コーチタイプ」で、丁寧な信頼関係構築とダイアログは他のコーチに任せているとのこと。自分のタイプを知ることが、チームとしての講師力を高める第一歩。

企業事例:米国内務局 ― 社内コーチ養成で3億円のコスト削減

CASE STUDY:米国内務局 ― 社内コーチ養成プログラム

BEFORE

独特のミッションを持ち、汎用的な研修が効かないケースが多い組織。コーチングを中心にした育成を目指すも、経営者の理解なし・予算なし・ITインフラなし・コーチ不在・風土的に浸透困難という五重苦の状態。

やったこと

数年かけて経営者を巻き込み

全体方針とミッションに合わせてステークホルダーにとっての利点を強調。11組織の共通予算から承認を獲得

厳選された人選

多様なメンバー、マインドセットとモチベーションを重視した書類選考、コミュニケーション力を見る面談

100%リモートのコーチ研修

パンデミック中に完全リモートで実施。ボランティアのプロコーチが講師。ICFレベル1〜2の認定を目標

ITプラットフォームの構築

コーチとクライアントの自動マッチング、運営管理、コーチング時間の自動記録、フィードバック自動送信

AFTER(2021〜2023年の実績)
921
マッチング数
5,000
コーチング時間
約3億円
コスト削減
100%
推奨率

ポイント:「予算がない」「経営者の理解がない」は多くの企業に共通する課題だが、内務局はそれを数年かけて乗り越えた。成功の最大の要因は「人選にこだわったこと」と「IT基盤を先に整えたこと」。社内コーチ養成は一度仕組みが回り始めると、外部コーチ費用の約3億円が削減されるインパクトがある。まずは10名程度のパイロットから始めることを検討してみてほしい。

▼ 講師スキル セミナー映像

研修効果測定 ― ROI 1,620%を実現した2つのケース

ATD2024の最後のテーマは、すべての人材育成担当者にとって最大の課題ともいえる「研修効果測定」です。ROI InstituteのPatti P. Phillips氏が、First Advantageと石油・ガスセクターの2つのケーススタディを紹介しました。効果測定の手法だけでなく、「効果測定の結果をどう経営者に伝えるか」まで踏み込んだ実践的な内容です。

企業事例:First Advantage ― 管理職研修でROI 1,620%を達成

CASE STUDY:First Advantage ― ピープルマネジメント研修の効果測定

BEFORE

パンデミック中に昇格した管理職が研修を受けておらず、ピープルマネジメントの基本が分からない状態。メンバーも管理職自身も困っていた。

やったこと

7カ月間のブレンドラーニング

合計50時間。事前課題、リモート研修、eラーニング、対面研修を組み合わせたマネジメント+リーダーシップの基本プログラム

4段階の効果測定を設計段階から組み込み

段階1(各研修形態の満足度)→段階2(知識テスト事前事後)→段階3(360度評価+EQ診断)→段階4(職場KPI+ROI計算)

AFTER
ROI 1,620%
費用対効果
85〜91
満足度(100点満点)
75%
時間削減(主要KPI)

ポイント:ROI 1,620%という数字自体よりも重要なのは、「設計段階から何を測るかを決めていた」こと。ROI計算の方法は、受講者に効果の概算費用とその数字に対する自信(%)を聞き、2つを掛けて控えめな費用対効果を算出するアプローチ。この「受講者に聞く」方法は、効果測定のハードルを大幅に下げる現実的な手法。研修効果測定の実践方法については研修効果測定のやり方で詳しく解説しています。

企業事例:石油・ガスセクター ― ROI 97%でも研修予算が増えた理由

CASE STUDY:石油・ガスセクター ― ヒューマンリーダーシップ研修の効果測定

BEFORE

チームリーダー層のコスト意識を高め、マイクロマネジメントを改善する必要があった。研修の効果を経営層に数字で示すことも求められていた。

やったこと

2日間対面研修+コーチング

受講者48名。事前eラーニング→対面研修→アクションプラン→プロコーチによるコーチング→受講者交流のブレンド設計

多角的な効果測定

満足度(4.2〜4.6/5点)+スキル自己評価+行動変容(使用頻度×インパクト)+職場環境分析(障害とサポート)+ROI計算

AFTER
ROI 97%
費用対効果
4カ月
研修費回収期間
+26%
行動変容(8割の受講者)

ポイント:ROI 97%は「投資額をかろうじて回収した」数字だが、経営者は数字そのものよりも「しっかりした効果測定を行った姿勢」を評価し、翌年の研修予算を増額した。また「職場環境の分析」で障害(時間がない・自信がない)とサポート(上司の理解・メンバーのサポート)を可視化したことで、次回の研修設計への改善点が明確になった。効果測定は「研修の成否を判定するもの」ではなく「次の研修をより良くするためのデータ収集」と捉えるべき。

Phillips氏が強調したのは、効果測定の結果を「誰に・どう伝えるか」も設計のうちだという点です。経営者には対面での結果報告、受講者の上司には簡単なサマリー資料、受講者本人には簡単な資料とリモート解説、人材育成担当にはすべてのデータを開示。報告先ごとに粒度と形式を変えることで、効果測定の結果が組織全体の意思決定に活かされます。

2024年のトレンドが示す「不変の本質」

ATD2024のレポートを振り返ると、テクノロジーの表層は急速に変わっても、人材育成の本質的な課題は驚くほど変わっていないことに気づきます。2024年に語られたキーワードを、2020年代の実践と照らし合わせて整理しました。

2024年に語られたこと

AI×人材育成

ADDIE全フェーズでAIを活用。AIリテラシーが新しい必須能力として浮上。AIと研修の組み合わせで成果が5倍に

2020年代にこう使われている

→ AI活用は「導入するかどうか」ではなく「どう使いこなすか」の段階に

多くの企業がまだ勉強中(58%)。ツール導入より「AIリテラシー育成」が先決という認識が広がっている

2024年に語られたこと

心理的安全性

脳科学で裏付けられたメカニズム。Google・Microsoftの長期研究。ドーパミン・オキシトシン等の神経伝達物質との関係

2020年代にこう使われている

→ 「感覚的に大事」から「科学的に必須」へ

心理的安全性は研修プログラムの前提条件。パルスサーベイや1on1で定期的に測定し、マネージャーのKPIに組み込む企業が増加

2024年に語られたこと

パーソナライズ学習

5ステップの設計ガイド。IBMのデジタルバッジで研修修了率694%向上。DDIのアセスメント4分類

2020年代にこう使われている

→ AIパーソナライズ+ジャストインタイム配信が標準に

AIが学習履歴と業務状況に応じて最適なコンテンツを自動配信。「全員に同じ研修」モデルからの脱却が加速

2024年に語られたこと

研修効果測定

ROI 1,620%の事例。ROI 97%でも「測定した姿勢」で予算増。受講者にROIの概算を聞く手法

2020年代にこう使われている

→ 効果測定は「判定」ではなく「改善のためのデータ収集」に

AIによるアンケート分析・報告書自動作成で効果測定のハードルが下がり、「まずやってみる」企業が増加

2024年に語られたこと

AIコーチング

プロコーチとAIボットの目標達成に有意な差なし。AIの方が共感性の評価が高いが、AIと明かすと評価が下がる

2020年代にこう使われている

→ AIコーチで裾野を広げ、プロコーチで深い課題に対応する2段階設計

「全社員にコーチング体験を」という理想がAIで実現可能に。人間のコーチは複雑な課題や感情面に集中

変わらない原則

「研修の前後の設計が成果を決める」「上司の巻き込みが効果を倍増させる」「目標はシンプルに、導入はStep by Stepで」「成果から逆算して企画し、ビジネスKPIで語る」。これらはATD2024だけでなく、ATD2017以来一貫して語られてきた普遍的なメッセージです。テクノロジーは変わっても、この原則を押さえた研修設計が持続的な成果につながります。

参加者の声

報告会には約300名の人材育成担当者が参加しました。アンケートから、掲載許可をいただいた方の声を紹介します。

★★★★★

コンパクトに要点を絞った、濃い内容

ATD ICEに関する内容が、コンパクトに要点を絞って伝えられていたため、あっという間に2時間が過ぎました。それくらいずっと集中しながら聞けるような、濃い・参考になる内容でした。

— 人材育成担当者(研修設計・ピープルマネジメント領域)

★★★★★

AI活用の具体的な手法が興味深い

AI活用について、活用の切り口を知ることができて大変勉強になりました。コンテンツを小さくしてバッジで受講者、社内、社外にもわかる形で示すなど、具体的な手法が興味深かったです。効果的と思いながらもやらない、やれない、という発想に陥りがちですが、身の回りの小さいところから実践していきたいと思います。

— 人材育成担当者(部門内L&D)

★★★★★

心理的安全性と脳科学の結びつきが印象的

今回のセミナーでは、心理的安全性チームワークの脳科学の内容が特に印象に残りました。メンタルヘルスにも大きく影響を与えており、人材育成で心理的安全性を高めるヒントが大変参考になりました。

— 人材育成担当者(クライアント企業のL&D支援)

★★★★★

最新情報を惜しみなく提供してもらえた

どこにもない最新の情報を惜しみなく提供いただき、ありがとうございました。事前にメールで現地の報告を届けていただき、こちらも非常に興味深かったです。

— サッポロビール株式会社 梶浦典子 氏

★★★★★

AI×人材育成と脳科学を今年度から取り入れたい

世界的な人材育成のトレンドに触れることができた点はとてもよかったです。特に、AI×人材育成と脳科学の観点から見た研修設計の改善ポイントは今年度から少しずつでも取り入れてみたいと思います。

— 人材育成担当者(全社L&D)

★★★★★

AI育成は良い意味で刺激的だった

AI育成に関して、今後取り入れていくことが主流だろうなと感じていましたが、全くタッチできていませんでしたので、良い意味で刺激的でした。まずは今日のセッションを聴き、当社で何ができるのか、気になるワードも数多くあったので検討していきたいと思います。

— 人材育成担当者(全社L&D)

★★★★★

短い時間でグローバルトレンドを学べた

短い時間でグローバルトレンドを学ぶことができた。また、パーソナライズ学習、AIポッド進化はすぐにトライアルしたいです。

— 人材育成担当者(全社L&D)

★★★★★

使えるヒントをたくさんもらえた

それぞれの内容について、ポイントや解釈の仕方をセットで教えていただけたので非常に理解しやすいし使えるヒントをいただきました。

— 人材育成担当者(全社L&D)

★★★★★

研修設計と評価を科学的に解説していて納得感が大きい

研修設計や研修評価を科学的視点で解説されていたので、納得感が大きかった。

— 人材育成担当者(全社L&D)

★★★★★

上司が部下にフィードバックを求めることを実践したい

いくつかデータを用いての新しい発見がありました。上司が部下にフィードバックを求めることは考えてみたいと思います。

— 人材育成担当者(全社L&D)

よくある質問(Q&A)

Q1. ATD人材育成国際会議とはどのようなイベントですか?

ATD(Association for Talent Development)が毎年開催する、人材育成分野の世界最大級の国際カンファレンスです。1943年設立の非営利団体が主催し、世界120カ国以上から数千名の人材育成専門家が参加します。約300のセッション、基調講演、ワークショップ、300以上の展示ブースが設けられ、最新の研修手法やテクノロジー、成功事例を学ぶことができます。2024年はアメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズで5月19日〜22日に開催されました。

Q2. ATD2024で最も注目されたテーマは何ですか?

2024年で最も注目されたのはAIと人材育成の融合です。研修設計の各フェーズ(ニーズ分析・設計・教材準備・実施・効果測定)でAIを活用する事例がNovartisやBooz Allen Hamiltonなどから紹介されました。またUMUの研究では、AI単体で作業した場合と比べ、AIと研修を組み合わせると成果が約5倍に向上することが実証されています。心理的安全性の脳科学的な裏付け、パーソナライズ学習の大規模実現、脳科学に基づく研修設計の改善も大きな注目を集めました。

Q3. 報告会のレポートや映像は無料で視聴できますか?

はい、報告会の全映像は本ページで無料公開しています。また、当日使用したフルカラーテキスト(全67ページ・9テーマ・22事例収録)もこちらのページから無料でダウンロードいただけます。Booz Allen Hamilton、Novartis、IBM、Amazon、General Motors、米国空軍などの事例をスライド・ビジュアル付きでまとめたレポートです。

Q4. ATDの報告会は毎年開催されていますか?

はい、IDEA DEVELOPMENTでは毎年ATD国際会議に参加し、帰国後に報告会を開催しています。2019年、2021年、2022年、2023年、2024年と毎年実施しており、各年のレポートもダウンロードいただけます。最新のATD2025報告会についてもレポートをご用意しています。

Q5. ATD2024の知見を自社の研修にどう取り入れればよいですか?

まずは本記事の9キーワードの中から、自社の課題に最も近いテーマを1つ選び、そこで紹介されている「やったこと」を参考に小さく試してみることをお勧めします。たとえばAI活用であれば「受講者アンケートの分析」をChatGPTで試す、心理的安全性であれば「上司が部下からフィードバックを求める」仕組みを1チームで始めるなど、コストをかけずに着手できるものが多くあります。「自社の状況に合わせて具体的に何から始めるべきか」を一緒に考えたい方は、お気軽にお問い合わせください。

レポートを無料で公開中

本イベントで使用したフルカラーテキスト(全67ページ)を無料で公開・配布しています。ラーニングテクノロジー(AI活用)、心理的安全性、メンタルヘルス、フィードバック文化、パーソナライズ学習、脳科学、研修設計、講師スキル、研修効果測定の全トピックが、セッションで使われた実際のスライドやデータとともにまとめられています。ぜひお手元にダウンロードいただき、関係者の皆様でご共有・ご活用ください。

ATDの知見を自社の研修に取り入れませんか?

IDEA DEVELOPMENT(アイディア社)は、ATD国際会議で得た世界最新の人材育成トレンドと事例をもとに、お客様の研修プログラムを設計・実施しています。AI活用、心理的安全性、パーソナライズ学習、研修効果測定など、お気軽にご相談ください。

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