みな口々に「今年はすごく良かった!」
今日もデンバーは快晴。日本の五月晴れのような感じです。
さて、ASTD 2012に参加して6日目、いよいよ最終日です。個別Sessionが3つの時間帯で行われた後、閉幕を飾る基調講演が開催されました。
昨日から本日に掛けて、いろいろ人たちに今回参加した感想を聞いてみました。そこで出て来る言葉は、「例年に増して今年は本当に良かった!」とか「初参加でしたが、これほどまでに深い学びが得られるとは!!」という感じで、みな大満足の笑みを浮かべていました。
これにてASTD ICE 2012はすべて終了です。それでは、今日の諜報活動の成果をお伝えします。
※ 来年のASTD ICE 2013は、5月19日〜22日にテキサス州ダラスで開催されます
基調講演のレポート
HEIDI GRANT HALVORSONからのメッセージ
社会心理学者であるHalvorson博士より、本当にほしい成果を手にするためのシンプルでパワフルな具体策が紹介された。ほしい成果を得るためには、次の2段階に分けて、それぞれで対策を講じるのが効果的。
phase 1:Getting Ready to Do It(実行の準備に取りかかる)
マインドセットのシフトを促す具体策は、GET BETTER mindsetの言葉を使うこと
→特に部下に話しをする時に意識すると部下のマインドセットと行動が変わる
phase 2:Actually Do It(実際に実行する)
「if – then planning」で、Knowing-Doing Gap(分かってはいるがやらない)を埋めることができる。いつ、どこでやるのか、予め計画を立てて置く習慣。
これらの具体的なコツは、どんなテクノロジーを活用するよりも、人が成果を生み出すために効果的であるとHalvorson女史が最後に強調していたことが、印象に残る講演でした。
Halvorson博士による自著「Succeed」の紹介映像
書籍「Succeed」の要約はこちらからダウンロードできます。
https://experiencelife.com/wp-content/uploads/2011/12/Succeed.pdf
潜入したSessionのキモ
以下に3人のスパイが手分けして潜入したSessionの概要を、今日は次の5つのテーマに整理して紹介していきます。
- 1.GLOBAL
- 2.LEADERSHIP
- 3.LEARNING TECHNOLOGY
- 4.LEARNING TRANSFER
- 5.GREAT TRAINING
※文章中の「ヒント」とは?
各Sessionでスパイたちが収集した情報の中から、日本の人材育成担当者の方にとってヒントになりそうなことをエッセンスとして記しています。
1. GLOBAL
#005 David
W319 グローバルチェンジをリードする:組織変革の最新リサーチ
Leading Global Change: Making Cutting Edge Research Work for You
(Lawrence Polsky)
内容:
Advice for implementing change projects based on extensive research and experience.
ヒント:
- Lesson 1: Never underestimate the amount of work necessary for a change project.
- Lesson 2: People need an emotional motivator to change, such as to succeed, to help others, or to be happy.
- Lesson 3: Everything is subject to change – once you start changing something, other things will change.
- Lesson 4: If the odds are against you, do not overcompensate.
- Lesson 5: Air (share) emotions so that you can address people’s worries and concerns.
- Lesson 6: Change calluses – experience with change will make it easier to change again.
- Lesson 7: Confront or die – if you have a problem or people are not performing, you need to address them not ignore.
- Lesson 8: Stop wishful thinking – you must work hard to make success happen.
- Lesson 9: Be positive – provide constant positive feedback to encourage continuous good performance and improvement.
2. LEADERSHIP
#002 Kageyama
W222 大惨事を防ぐための社風変換:石油業界から学んだこと
Culture Change to Avoid Catastrophe: Lessons from the Oil Industry
(Ann McGregor, Doug Upchurch)
内容:
安全第一を掲げながらも従業員からは全くそのことが信じられていない社風を、根本から丹念に変革させた、石油業界のTechnip社の事例が紹介された。
- 世界46ヶ国、30,000人の社員によい影響を与えた大規模プロジェクト
- ある一定のClimate(職場における態度や行動)が続くとCultureとして定着する。その良くないCultureを変えるために、Cultureそのものではなく日常のClimateを変える施策を行った
- まずは350名のリーダー層から研修を実施
- そのリーター達の日々の行動を変えることで、社員達の考え方と行動を変えるアプローチをとった
- リーダー層向け研修では自己診断レポートを上手に活用した
ヒント:
- 多くの日本企業にフィットした社風改善のアプローチ手法が採用されている
- コミュニケーションとリーダーシップの二つを強化することに徹底的にこだわって実施した点は示唆に富む
#004 Catherine
W317 リーダーシップ開発の変容 – サウジアラムコ社の事例
Leadership Development Transformation – The Saudi Aramco Way: A Case Study
(Kent Christensen)
内容:
2009年、サウジアラビアの石油会社サウジアラムコ社が、自社のシニアマネジメント層に実施していたリーダーシップ開発研修とタレントマネジメントに大幅な改良を加えた。その改良のプロセスと企業パフォーマンスに与えた成果を紹介した
ヒント:
サウジアラムコ社が人材育成にする投資は、年間800万ドルにも及ぶ。王様の所有財産である同社は、サウジアラビアを代表する会社であり国の代表であるという自負がある。グローバル企業として世界で活躍するために、人材育成に巨額を投資するスケールの大きさに圧倒される事例であった
3. LEARNING TECHNOLOGY
#005 David
W106 モバイルアプリを研修に取り入れる
Implementing Mobile Learning Applications
(Joe Saturnino)
内容:
Facts and figures on the need to start mLearning, and considerations when choosing mobile platforms and tools.
ヒント:
Mobile devices are experiencing extraordinary growth (for example, Android alone is growing at 4% per week), so it is imperative to take advantage of such devises.
#004 Catherine
W113 グローバルeラーニング:より早く安く優れたものをデザインする
Global E-Learning: Faster, Better, Cheaper
(Darron Johnson)
内容:
eラーニングコンテンツを国際化(自国以外の受講者向けに)する際、より早く安く優れたコンテンツにするためのテクニカル面での実際的アドバイスを、コンテンツデザイン会社のエキスパートが解説する
ヒント:
コンテンツが他言語化された時に起こりやすい問題点に焦点をあてる
- リソースは編集可能なフォーマットにしておく
- 他言語に翻訳表示された時のWhite Spaceを考慮してデザインする
- どの言語にも対応できるエンコードの使用(UTF-8)
問題点を解決することによって、ローカライゼーションコストを4年間で1,200%も削減できた事例もある
#002 Kageyama
W320 研修効果を高めるiPadアプリの設計術
There’s an iPad App for That
(Aubrae Lutz, Bruce Margetich)
内容:
iPadをビジネスに活用するには、以下の特徴を正確に理解した上で、狙った効果を上げることを求められる。その特徴とは、Collaboration, Social, Just in TImeなどである。
ヒント:
今から数年後には、iPadなどのモバイルツールをフル活用して、生産性の向上を目指す業務改革や人材育成が当たり前のように実施されている世界が到来する可能性はゼロではないと感じた。もし世の中がそう動くのであれば、まず今自社がやるべきことは何なのか、一度考えてみる必要があるかもしれない。
4. LEARNING TRANSFER
#004 Catherine
W221 モバイルラーニングは過去のもの、今はモバイルパフォーマンス!
Mobile Learning is SO 10 Minutes Ago… Mobile Performance is Now!
(Richard Mesch)
内容:
米国では若年労働者(25〜34歳)の平均在職年数が1社につき3.1年だという調査がある。次々と職場を変えていく社員たちに、企業はどのようにして新人研修を行い、職務知識を早く身につけさせパフォーマンスを向上させればよいか、その鍵をにぎるのはモバイルラーニングであるとスピーカーが主張した
ヒント:
モバイルラーニングの特徴を活かして職場パフォーマンスの成果を上げる
- 70:20:10コンセプトを認識する
→学習の70%はon the job(経験)から - 知識としてすべてを記憶する必要はない
→知識をツール化して携帯する - モバイルの最大の特徴
→時間/場所/状況を特定せずに使える(in-context)
5. GREAT TRAINING
#002 Kageyama
W109 セールス研修の生産的展開:訪問販売売上を20%伸ばしたコカ・コーラ社の事例
A Productive Twist on Sales Training: How Coca-Cola Increased Sales Calls by 20%
(Carson Tate, Jeannie Sullivan)
内容:
お客様の都合で週末や夜にも仕事が入ってしまう特殊なワークスタイルを持つ営業マンの生産性を改善することで、売上を20%高めたコカ・コーラ社の事例が紹介された。
ヒント:
単に製品知識や営業スキルの研修を行うのではなく、営業マンの業務改善に本格的に取り組むことにより、ワークライフバランスを大幅に改善することができた。もし、ワークライフバランスの改善に本格的に取り組むのであれば、この事例のように具体的な数値目標を掲げて取り組むことが効果的であろう。
#005 David
W209 エキサイティングな研修:参加者を研修に引きこむロストシークレット
Exciting Training: The Lost Secret of Engaging Audiences
(Jeffrey Gitomer)
内容:
Advice and techniques for providing great training by transferring messages not giving messages, and reality checks on what is important for doing this.
ヒント:
Mr. Gitomer’s 12.5 Rules of Audience Engagement:
- Be approachable before you speak – walk around, say hi, shake hands.
- Engage people with questions – show interest in others.
- Be funny – even simple jokes are good.
- Be original – have something that will draw interest.
- Quote yourself – establish your expertise.
- Tell stories – stories are powerful teaching tools.
- Create a listening atmosphere – five elements to make people listen: clarity, rhythm, compelling words, music, and story.
- Connect with your eyes.
- Issue challenges – encourage people to do more.
- Don’t blame the audience if you didn’t do well – transferring the message is your responsibility.
- There is no such thing as nervousness: it is being unprepared.
- Have an emotional ending – make it memorable.
- It is the responsibility of the trainer to be compelling.
明日の予告:
ASTD ICE 2012はHalvorson博士の基調講演をもってすべて終了しました。ASTDスパイの3人は明日からはまた別行動。明日急いで帰国の途に着く者もいれば、アメリカで別件の活動をする者もいます。
ということで、明日以降どのような情報をこのブログに記すかは未定です。