2024年の人材育成トレンドと研修効果を高める設計ポイント|対面・リモート・ハイブリッドの使い分け

2024年10月8日、IDEA DEVELOPMENT株式会社は「BIG人材育成フォーラム 2024」をオンラインで開催しました。経営者からの期待が高まる一方で、ハイブリッドワーク・生成AI・リスキルといった大きな変化が同時に押し寄せている今、人材育成担当者は「何にどう投資すれば成果が出るのか」という難しい判断を迫られています。
本フォーラムでは、この時代を「人材育成のBIGチャンス」と捉え直し、研修を成果につなげるための具体的な設計手法を4つの視点から解説しました。本記事はその全体像を、当日参加された23社の声とともにレポートします。
本フォーラムで扱った4つのテーマ
本フォーラムは、人材育成担当者がいま向き合っている課題を「BIG」という共通キーワードで4つの切り口に整理しました。気になるテーマから読み進められるよう、目次として配置しています。
CONTENTS — 4 BIG TOPICS
2024年の人材育成を取り巻く外部環境の変化。マッキンゼーが示す8つの経営課題、DDIによるリーダーシップ調査、WEFのリスキル動向から「いま動くべき理由」を整理します。
研修を「やって終わり」にしないための5つのヒント。ブレンドラーニングジャーニー設計と、効果測定の新しい考え方(SCM・HPLJ)を実例とともに解説します。
対面研修の価値を最大化する3つの設計軸(内容・登場人物・会場)と、ハイテク×ハイタッチ合宿の実例。リモートでは絶対に再現できない体験のつくり方。
大人数(数十〜数百人)でも成果を出すための4形式の使い分け。対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンドそれぞれの成功ポイントを比較します。
4つのテーマは独立しているように見えて、底に流れるメッセージは1つです。「人材育成は経営課題と直結する重要投資である。だからこそ、設計次第で成果を最大化できる」。本記事ではこの考えを、当日のフォーラムで使った図表・データ・実例とともに余すところなくお届けします。
BIG チャンス:2024年の人材育成を取り巻くBIGな変化
「2024年は人材育成にとってBIGなチャンスである」——本フォーラムの出発点となるこの主張には、3つの裏付けがあります。世界の経営者が直面している課題、リーダーシップ研究の最前線、そして働き方そのものの変化。それぞれを別々に見ると個々のトレンドですが、重ね合わせると、すべての矢印が「人材育成への投資」に向かっていることが分かります。本セクションでは、その3つの根拠を具体的なデータで確認していきます。
2024年の最重要経営課題8つ — マッキンゼー調査
マッキンゼー・アンド・カンパニーは数多くのCEOへのインタビューに基づき、2024年の最重要経営課題を8つに整理しました("What Matters Most? Eight CEO Priorities for 2024")。重要なのは8つを並べて眺めることではなく、これらが「人材育成」とどう接続するかを読み取ることです。
マッキンゼー:CEOが2024年に最も注力する8つの課題
テクノロジー・環境変化への対応
1. 生成AIの本格導入
業務に組み込み、競争力に変える
2. テクノロジーで競争優位を
デジタル投資で差別化を実現する
3. カーボンニュートラルへの移行
エネルギー転換を急ピッチで進める
組織と人材の強化
4. 自社のスーパーパワー
自社の独自の強みを認識し、それを伸ばす
5. 中間管理職の強化
マネージャーを再び大切にする
外部リスクと成長戦略
6. 地政学的リスク
分断する世界で勝ち筋を見つける
7. 新しい成長源
勇気ある成長への道筋を描く
8. マクロ経済の見直し
経済環境を新しい視点で読み直す
8つを通読すると見えてくること:赤色で強調した課題4・5は、いずれも「人材」に関わるテーマです。さらに課題1・2の生成AIとテクノロジーへの対応も、結局は「使う人」のスキル次第。8つの経営課題のうち少なくとも半分以上が、人材育成と直接結びついていることが見て取れます。
リーダーシップ開発の最重要テーマ — DDI調査が示す「信頼関係の危機」
リーダーシップ開発の世界最大手DDI(Development Dimensions International)が発表した「2024 Leadership Trends」では、例年と異なる傾向が示されました。複数の細かいトレンドというより、「ひとつの最重要課題」が浮き彫りになったのです。それは——信頼関係の構築です。
DDI調査:従業員のリーダーへの信頼度(2024年)
読み取れること:経営層への信頼は3人に1人未満、上司への信頼も半数を切ります。さらに調査では、政治・大企業・メディアへの信頼度はこれよりさらに低い水準でした。「信頼が薄い社会」のなかで組織を動かすには、まずは信頼度の高いマネージャー層から、信頼関係構築を始める必要があります。
DDIは信頼関係構築の第一歩として、4つの行動を挙げています。心理的安全性をつくる/メンバーを巻き込んでイノベーションを起こす/インクルージョン(多様性の包摂)を実現する/意思決定プロセスを明確に提示する——いずれもリーダーシップ研修・マネジメント研修の中核テーマです。生成AI・ハイブリッドワーク・DEI・社会の不安といった他のトレンドも、突き詰めれば「信頼を土台にした人と人との関係性」が問われる場面です。
働き方を変える3つのトレンド — WEF調査が示すリスキルの本気度
世界経済フォーラム(WEF)の "Future of Jobs Report 2023" は、企業が今後5年間にどのような戦略で人材を確保するかを調査しました。その結果は、人材育成担当者にとって追い風となる事実を示しています。
WEF調査:今後5年間の主な人材戦略(複数回答)
81%
従業員の育成・OJT
最も多く採用される戦略
80%
プロセスの自動化
2位(ほぼ同率)
46%
既存社員のリスキル
衰退分野→成長分野へ
読み取れること:1位「人材育成・OJT」と3位「リスキル」を合わせると、人材戦略の中心は「育てること」に集中しています。一方で、企業変革の最大の障害として60%の企業が「スキル不足」を、53%が「優秀な社員の獲得困難」を挙げています。スキルが足りないから育てる、という当たり前の構図が、世界規模で改めて確認されたわけです。
もうひとつ、人材育成担当者が知っておきたい数字があります。WEF調査によれば、経営者の75%が「6カ月未満」の研修期間を期待しており、60%以上が「1年以内」の投資効果を期待しています。短期間で成果を出さなければならない——これは現場へのプレッシャーですが、同時に「成果につながる研修設計」を真剣に追求する正当な理由でもあります。
4つのビジネス目的に直結する人材育成施策
これまで見てきた経営課題・リーダーシップ・リスキルの動向は、現場の人材育成施策にどう落とし込めばよいか。フォーラムでは、これを「4つのビジネス目的」と「必要な能力」「人材育成施策」の3段で整理しました。下図では、4目的を「守り/攻め」と「個人/組織」の2軸で配置し、自社の人材育成投資がどこに偏っているかを点検できるマトリクスとして示しています。
人材育成投資ポートフォリオ
4つのビジネス目的 × 必要な能力 × 人材育成施策
守り(基盤強化)
攻め(成長拡大)
個人スキル
GOAL 1 / 守り × 個人
効率を上げる
必要な能力
ハイブリッドスキル・デジタル対応力(ハード面)/マインド・レジリエンス(ソフト面)
人材育成施策
▸ 幅広いITリテラシーを高めるeラーニング・オンデマンドサポート
▸ コーチング・1on1で社員のストレスや不安をケア
GOAL 2 / 攻め × 個人
売り上げを伸ばす
必要な能力
イノベーション力/グローバル対応能力
人材育成施策
▸ 実ビジネス課題を扱うアクションラーニング
▸ リモートグローバルスキルのブラッシュアップと異文化対応
組織能力
GOAL 3 / 守り × 組織
品質を向上する
必要な能力
チームワーク/チームとしての連携・協働の質
人材育成施策
▸ チーム単位のイベント・研修・ミーティング・オフサイトで関係性と一体感を醸成
GOAL 4 / 攻め × 組織
組織力を強化する
必要な能力
階層別・場面別のリーダーシップ/人を動かす力
人材育成施策
▸ ニーズに合わせたリーダーシップ開発
例:短期成果型/次世代型/ヒューマンスキル型
自社診断のヒント:このマトリクスは、自社の人材育成投資が4象限のどこに偏っているかを点検する道具として使えます。多くの企業は「守り×個人」(効率向上のIT研修)と「攻め×組織」(リーダーシップ研修)に投資が集中しがちです。手薄になりやすいのが「攻め×個人」(イノベーション・グローバル)と「守り×組織」(チームの協働)。来年度の研修計画を立てる際、4象限を均等に埋めようとするのではなく、自社のビジネス目的に応じてどの象限を厚くするか、戦略的に決めることが重要です。
この4目的を眺めると、いずれも「経営者が今すぐ成果を求めている領域」と「社員自身が伸ばしたいと考えている領域」が重なっていることが分かります。経営者の期待と社員の自発的なニーズが一致する瞬間は、長い人材育成の歴史のなかでもそう多くありません。だからこそ、いまが「BIGなチャンス」なのです。
BIGチャンスを成果に変えるために
ここまで、外部環境(マッキンゼー)・リーダーシップ研究(DDI)・働き方変化(WEF)の3つの視点から、2024年が人材育成にとってBIGなチャンスである根拠を確認してきました。次のセクション「BIG成果」では、このチャンスを実際の研修成果に変えるための具体的な設計手法——5つのヒントを取り上げます。
アイディアニュース
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BIG 成果:研修を成果につなげる5つのヒント
2024年が人材育成のBIGチャンスである——前章ではその根拠をデータで確認しました。ただし、チャンスがあるからといって、従来通りの研修を続けていれば成果が出るわけではありません。むしろ「やったのに変わらない」「研修後に職場で使われない」という声が多くの企業で繰り返されているのが現実です。本章では、研修を成果に結びつける具体的な5つのヒントを、ブレンドラーニングジャーニーという全体設計の観点から解説します。まずは、なぜ多くの研修が成果につながらないのか——その代表的な5つの課題から見ていきましょう。
そもそもなぜ研修が成果につながらないのか
アイディア社が長年の研修設計経験から蓄積してきた「成果につながらない研修」の共通パターンは、5つに集約できます。下図は、よくある課題と、それぞれを解決するアプローチを対比したものです。自社の研修と照合しながらご覧ください。
研修が成果につながらない5つの課題と解決法
CASE 1 / よくある課題
研修の優先度が低い
SOLUTION / 解決法
受講者の上司を巻き込む
補足:確実に成果を出すために、ニーズが高い受講者を選抜し、職場で上司に支援してもらう体制を作る
CASE 2 / よくある課題
研修内容を職場で使わない
SOLUTION / 解決法
研修期間中に職場実践を設計する
補足:職場実践を先に設計して、それをさせるために必要な能力から逆算して研修内容を決める
CASE 3 / よくある課題
研修後でも能力が不十分
SOLUTION / 解決法
スキル定着を徹底的にフォローする
補足:実際のビジネスで通用するレベルまで上げるには、定着フォローが必要不可欠。研修後の継続支援が成果を分ける
CASE 4 / よくある課題
フィードバックがない
SOLUTION / 解決法
個別コーチングを取り入れる
補足:汎用的なスキルを職場の個別事情に合わせるためには、一人ひとりに対するフィードバックが必要
CASE 5 / よくある課題
明確な成果が出ない
SOLUTION / 解決法
成果発表としっかりした効果測定
補足:成果が出るまで研修期間を伸ばし、最後に経営者向けの成果発表を実施する。可視化された成果が次の投資判断につながる
5つの課題に共通すること:いずれの課題も「研修当日」だけを切り取って解決できるものではありません。研修前(上司の巻き込み・対象者選定)、研修中(職場実践の組み込み)、研修後(定着フォロー・コーチング・成果発表)の3つの局面すべてに手を打つことが、成果につながる研修設計の本質です。次の「ブレンドラーニングジャーニー」は、まさにこの3局面を統合する設計フレームになります。
5つのヒントを統合した3局面のブレンドラーニング設計
前項で見た5つの課題への解決法を、ばらばらに実施しても効果は半減します。「研修前」「研修中」「研修後」の3局面を統合して設計する——これがアイディア社の提唱する「ブレンドラーニングジャーニー」の発想です。下図は、5つのヒントが3局面のどこに配置されるかを示した設計図です。集合研修だけで終わらせず、前後を学習活動と職場実践で挟み込むことで、知識が「分かった」から「できる」に変わります。
研修を成果につなげる3局面の設計
PHASE 1
研修前
狙い:学ぶ準備を整え、研修への動機を高める
対象者の選定とニーズ確認
ニーズの高い受講者を選抜。事前ヒアリングで業務上の課題を把握する
上司の巻き込み(事前)
研修の目的を上司と共有。期間中の支援内容と職場実践機会を事前に約束する
事前自己学習の提供
基礎知識をeラーニングで先に習得。当日は演習に集中できる状態を作る
PHASE 2 — 中核
研修中
狙い:知識を職場で使えるスキルに変え、実践を促す
3つの活動が並行して走る
(0) キックオフ/集合研修
経営者からのスピーチで研修の重要性を伝える。最終ゴール(成果発表)を明確化し、最後までやり抜くモチベーションを高める
(1) 自己学習+(2) リモートセッション
数週間ごとに自己学習とリモート研修を交互に実施。知識補強と実践共有を繰り返すことで、研修内容に触れる頻度を最大化する
(3) 職場実践+(4) 上司の巻き込み
学んだ内容を職場で即実践。上司は定期的にフィードバックと支援を提供し、研修の優先度を業務の中で確保する
PHASE 3
研修後
狙い:成果を可視化し、次の投資判断と動機付けにつなげる
(5) 成果発表
経営者と直上の上司に向けて、研修期間中に得た成果を発表する。経営層の前で語ることで、受講者自身の達成感も最大化する
効果測定
成果が出た受講者へのヒアリングを通じて、次回プログラムの改善点を抽出する
成功事例の共有
サクセスストーリーを社内に発信。次回受講者の動機付けに活用する
この設計が成果を生む理由:従来型の研修は中央の「研修中」だけに資源を集中させ、前後を放置していました。前後を統合した3局面設計では、研修内容に触れる頻度・職場で使う機会・成果を可視化する仕組みのすべてが組み込まれます。「分かった」が「できる」になり、「できる」が「成果として認められる」までを一連の流れとして設計するから、研修投資が確実に成果につながるのです。
研修期間は研修テーマや受講者数、業務状況に応じて、6週間にも12週間にも設計できます。アイディア社では9週間程度を一つの目安としていますが、重要なのは期間の長さではなく「3局面すべてに手を打つ」という設計思想そのものです。次に、5つのヒント(自己学習・集合研修・定着フォロー・上司の巻き込み・成果発表)それぞれを実践レベルで深掘りしていきます。
5つのヒントを実践レベルで深掘りする
ここからは、3局面設計を構成する5つのヒント——インプット・集合研修・定着フォロー・職場の巻き込み・成果発表——をそれぞれ実践レベルで掘り下げます。各ヒントには「これだけは外せない核心」と「具体的な実践テクニック」、そして「誤解されがちな押さえどころ」があります。下記5枚のカードを順に確認することで、自社の研修設計の抜け漏れを点検できます。
HINT 1 / インプット(自己学習)
「迷わせない」ことがすべて
核心メッセージ:大切なのは多機能LMSや最新ツールではなく、受講者が「次に何を学べばよいか」で迷わない仕組みづくり。手段ではなく体験設計の問題
実践テクニック
飽きさせないコンテンツ
イメージ・トランジション・シナリオ・解説の4要素を組み合わせる
全体像の可視化
研修の構造を常に把握できる導線(プログレスバー・章立て)
1ヶ所に集約
必要な教材・資料・連絡事項をすべて同一プラットフォームに置く
押さえどころ:「ITが大事」と勘違いしやすいが、本質は受講者の認知負荷を下げる体験設計。簡素なメール添付でもこの3点が満たされていれば成立する
HINT 2 / 集合研修(アウトプット演習)
対面とリモートを「演習タイプ」で使い分ける
核心メッセージ:「集合かリモートか」の二者択一ではなく、演習の種類に応じて使い分ける。同じ「演習」でも、向き不向きが明確に存在する
実践テクニック:演習タイプ別の向き不向き
▶ 集合が向く演習
ペアワーク・ロールプレイ/フィジカル系の演習/チームの活発さが重要な演習
▶ リモートが向く演習
共同作業(職場で活かしやすい)/受講者の巻き込み(途中で声を拾える)
押さえどころ:個人ワーク・ディスカッションは集合とリモートで差が出ない。「対面の方が必ず効果が高い」という思い込みは捨て、演習目的から逆算する
HINT 3 / 定着フォロー
課題の「タイプ」に応じて打ち手を変える
核心メッセージ:定着しない理由は「知識」「スキル」「マインド」「応用」の4タイプに分類できる。一律の「リマインドメール」では効かない
実践テクニック:4タイプ別の打ち手
知識の活用ができない → アクションプラン/成功事例の共有/リマインダー
習慣化できない → スケジュール化/フォローアップ研修/チーム単位の取り組み
マインドが伴わない → 不安除去/コーチング/受講者間の相互フォロー
応用ができない → 仕事以外への展開/定期的なフォローアップ研修
押さえどころ:定着しない受講者を観察すると、4タイプのどれに該当するかが見える。診断→打ち手の順序を間違えると、合わない処方箋を飲ませることになる
HINT 4 / 職場の巻き込み(フォローコーチング・上司面談)
研修成果を分けるのは、講師ではなく上司
核心メッセージ:研修成果は「研修中の講師」よりも、「研修前と研修後の上司の関わり方」で決まる。多くの企業はここを見落としている
研修成果への影響度(10点満点)
8/10
受講者の上司
研修前・研修後の関わり
9/10
講師
研修中のファシリ
6/10
受講者本人
研修中の取り組み
研修中だけ見ると講師の影響が最大。しかし研修前・研修中・研修後を通算すると、上司の影響度が最も累積する
実践テクニック
事前ミーティング
上司と研修目的・実践機会・サポート内容を合意する
研修ダイジェスト共有
上司にもアドバイスやフィードバックの仕方を伝える
振り返りミーティング
事前に予定を入れ、実践後のフィードバックを必ず得る
押さえどころ:「忙しい上司を巻き込めない」は、巻き込む側の準備不足が原因のことが多い。受講者の業務上のメリットを上司に提示できれば、合意は得やすい
HINT 5 / 成果発表
「経営者の前で語る」ことで成果が定着する
核心メッセージ:成果発表は「報告会」ではなく「成果を確定させる装置」。経営者・上司の前で語ることで、本人の達成感と組織内の認知が同時に得られる
実践テクニック
役員と直上の上司を呼ぶ
聴き手のレベルが、発表の真剣度を決める
1人5分・3人ごとに質疑応答
短く区切ることで集中を維持し、議論を深める
リハーサル+ビデオレビュー
本番前に発表スキルそのものを磨く時間を確保
経営者からのクロージング
研修と業績の関係を経営者の言葉で締める
押さえどころ:リモートでも実施可能。むしろリモートの方が遠隔地の役員参加が容易になり、参加率が上がるケースもある
5つのヒントは、それぞれ独立した取り組みではなく連動して機能する一つの設計です。インプットで迷わせない仕組みを作り、集合研修で適切な演習を選び、定着フォローで4タイプの課題に対応し、上司を巻き込み、最後に成果発表で確定させる——この一連の流れが揃って初めて、研修は「投資に見合う成果」を生みます。次項では、こうした設計をどう「効果測定」していくか、ブリンカホフが提唱した新しいアプローチを紹介します。
効果測定の新しい考え方:サクセスケース・メソッド
研修の効果測定というと、「全受講者にアンケートを送り、平均点を出す」という方法を思い浮かべる方が多いはずです。しかし、効果測定の世界的権威ロバート・ブリンカホフが提唱した「サクセスケース・メソッド(SCM)」は、まったく別の発想に立っています——全員を測るのではなく、上下の20%だけに注目せよ。一見乱暴に見えるこの方法が、なぜ実用的で信頼できる効果測定になるのか。仕組みを見ていきましょう。
SUCCESS CASE METHOD
研修後の受講者は3つの層に分かれる
20%
研修後に実践しない
60%
実践したが成果が出ない・あきらめる
20%
実践して成果を出す
LAYER 1 / 実践しない 20%
簡単なヒアリングで「障害」を聞く
行動していない、当然成果も出ていない受講者に、簡単なヒアリングを行う。ポイントは「どのような障害があったか」「なぜ行動できなかったか」
代表的な理由 研修内容が仕事と関係ない/行動できる職場環境がない/上司のサポートがない
LAYER 2 / 中間層 60%
最初のアンケート以外は測らない
中間層の60%について、追加の効果測定は行わない。代わりに、上下20%から得た学びを使って、次回プログラムを改善する
改善の積み重ね プログラムが改善されれば、次回以降「成果を出す」層の割合が増えていく
LAYER 3 / 成果を出す 20%
深いヒアリングで「成功要因」を聞く
明らかに成果が出ている受講者(全体の15%程度)に絞って、深いヒアリングを実施。「どのような成果が出たか」「なぜ成果が出たか」を把握する
成功の典型理由 職場環境が整っていた/上司のサポートが手厚かった
SCMが効果測定として優れている理由:従来型の「全員アンケート平均値」は、最も人数の多い中間層60%の声に引きずられ、何が成果を生み、何が失敗を生むかが見えなくなります。SCMは上下20%だけに集中するため、「次回どこを変えれば成果層が増えるか」という改善設計に直結します。受講者の声を集めるための測定ではなく、プログラムを進化させるための測定——これがSCMの発想です。
SCMの背景には、ブリンカホフの長年の効果測定研究があります。彼が提唱したもう一つの重要な枠組みが「HPLJ(High Performance Learning Journey)」——研修効果を高める4つの要素と、それを実証する大規模調査データです。次項で詳しく見ていきましょう。
研修効果を高めるHPLJ 4要素と実証データ
ブリンカホフが長年の効果測定経験から導き出した、研修効果を高める仕組みが「HPLJ(High Performance Learning Journey)」です。研修の効果を出すためには、4つの要素が肝となります。コミット/インプット/定着/フォロー——この4要素を意図的に組み込んだ研修設計は、実際に7業界・7社・616名の受講者を対象とした調査で、従来研修とは大きく異なる結果を残しました。
HPLJ — HIGH PERFORMANCE LEARNING JOURNEY
研修効果を高める4つの要素
01 COMMIT
コミット
モチベーションとニーズの高い受講者に絞る。上司を巻き込み、研修に真剣に取り組む環境をつくる
02 INPUT
インプット
研修内容そのもの。新しい知識とスキルを効率的に習得させる
03 PRACTICE
定着
職場での実践と活用。アウトプットを多くし、難易度を初級→中級→上級と段階的に上げる
04 FOLLOW
フォロー
職場でのサポートツール、実際のプロジェクト、活かす場面を用意する
EVIDENCE
7業界・7社・616名を対象とした効果測定の結果
調査対象:HPLJ風の研修プログラムを実施した7業界・7社/受講者616名/コーチ441名/期間6〜12カ月/講師による3〜4回の集合研修
受講者の研修直後の成果
81%が成果を実感
研修後に仕事上で成果が得られた受講者の割合。残り9%は「実践中で成果はまだ」、10%が「実践も成果もなし」
研修修了1年後の長期成果
70%が長期的に持続
修了1年後も成果が続いた割合。27%は「中期的な成果」、わずか3%だけが「短期で成果が消えた」
この数字が示すこと:従来型研修が「研修直後は良かったが半年後には忘れられる」課題を抱えるのに対し、HPLJの4要素を組み込んだ研修は1年経っても7割の成果が持続します。集合研修で「分かった」を生むだけでなく、コミット・定着・フォローの3要素を意図的に設計することで、研修投資が長期的なリターンに変わるのです。
HPLJを支える代表的な実践書籍
HPLJの考え方を実装するための代表的な実践書籍として、ROI研究所のジャック&パティ・フィリップス、C.H.コンサルティングのシンディ・ハゲット、Leverのエマ・ウェーバーの3名による共著『Designing Virtual Learning for Application and Impact』があります。同書では、リモート時代における研修設計の7つのチェックポイントが提示されています。
DESIGN FOR APPLICATION AND IMPACT
職場活用と成果につなげる7つの設計ポイント
1.受講者を巻き込み、職場で活かしやすい内容を設計する
2.職場活用を意識した講義を行う
3.講師が定着フォローのヒントを提供する
4.職場実践の期待を事前に伝える
5.職場(上司・同僚)を巻き込む
6.上司を「ロールモデル」として活用する
7.職場ツールを積極的に使う(チェックリスト・ヒント集など)
これら7つのポイントを通読すると、本記事で繰り返し登場する「上司の巻き込み」「職場実践」「フォロー」という3軸が、HPLJ研究の世界でも一貫して重要視されていることが分かります。世界の研究者と現場の実践者が同じ結論に至る——それがいま、研修設計の世界で起きているコンセンサスです。
関連記事
研修効果測定の主要モデルを横断的に比較
本記事で紹介したサクセスケース・メソッド(SCM)やHPLJ以外にも、研修効果測定には複数の代表的なモデルがあります。カークパトリックの4段階モデル、フィリップスのROI算出、ブリンカホフのSCMなどを横断的に比較し、自社の状況に最適な測定アプローチを選ぶための判断軸を解説しています。
ラーニングジャーニーの3つの設計パターン
ここまで5つのヒント・SCM・HPLJと、研修を成果につなげる手法を見てきました。最後に、これらを統合して研修テーマ別の設計パターンに落とし込みます。研修の中身は大きく「知識系」「スキル系」「マインド系」の3タイプに分けられ、それぞれで起きる課題と効く打ち手が異なります。自社の研修がどのタイプに該当するかを見極めて、適切な設計を選んでください。
LEARNING JOURNEY DESIGN
研修タイプ別・3つの設計パターン
研修タイプ
よくある課題
研修の打ち手
定着の打ち手
TYPE 01
知識系の研修
情報インプットが多すぎて、受講者が吸収しない・忘れる
反転教室を活用。事前の自己学習でインプット、集合研修で理解を深めてアウトプット
事前ヒアリング・アクションプラン・成功事例の共有。定期的なリマインダーで忘却を防ぐ
TYPE 02
スキル系の研修
研修だけでは能力が不十分。実務レベルまで届かない
インプットを最低限にして事前に行う。研修を演習中心にして、研修中にできるだけスキルを身につける
反復演習を継続。研修直後に職場で使う機会をつくり、即実践につなげる
TYPE 03
マインド系の研修
研修内容が分かっていても、受講者が不安で職場で使わない
受講者が安心して職場実践できるように丁寧に教える。心理的ハードルを下げる演習を組み込む
上司を巻き込んでフォローしてもらう。研修期間中に職場で実践し、コーチングで個別フォロー
3タイプの使い分けが研修設計の核心:「知識を増やしたいのか、スキルを身につけさせたいのか、マインドを変えたいのか」——この問いに答えることが、研修設計の出発点です。3タイプを混同すると、知識系の研修にスキル系の打ち手を使ってしまったり、マインド系の課題に知識系のリマインダーで対応してしまったりと、ちぐはぐな設計になります。研修テーマを企画する段階で、まず「どのタイプの研修なのか」を見極めることが、成果につながる第一歩です。
BIG成果セクションでは、研修を成果につなげるための5つのヒント、効果測定の新しい考え方(SCM)、HPLJの4要素、そして3タイプ別の設計パターンを見てきました。これらは「研修中に何をするか」ではなく、「研修の前後と中で、研修内容が職場で活かされる仕組みをどう設計するか」という発想を共有しています。集合研修だけで完結させず、3局面・5ヒント・4要素・3タイプを組み合わせて統合的に設計することが、人材育成のBIGチャンスを成果に変える鍵です。次の「BIGインパクト」セクションでは、視点を変えて「対面研修の価値を最大化する設計手法」を取り上げます。
BIG インパクト:対面研修の価値を最大化する3つの設計軸
リモート研修が当たり前になった今、対面研修に求められる水準はかつてないほど高くなっています。「なぜわざわざ移動して、わざわざ集まる必要があるのか」——この問いに答えられない対面研修は、もう成立しません。本セクションでは、対面研修ならではの価値をどこで・どう発揮させるか、その設計手法を6つの価値・7つの設計ヒント・3つの設計軸の順で解説していきます。
対面研修には逆説があります。豪華な外部会場とカリスマ講師による「特別な対面研修」ほど、かえって成果が出にくい。当日のインパクトは強くても、受講者は「その特別な体験を、いつもの職場でどう活かせばよいか分からない」状態に陥るのです。この逆説の正体を、まず6つの価値の配置から見ていきましょう。
対面研修だからこそ実現できる6つの価値
対面研修の価値は、研修体験のどの局面で発揮されるかによって意味が変わります。「来る前」「当日」「帰った後」の3局面に整理すると、各価値の役割と、対面研修の典型失敗パターンが同時に見えてきます。
FACE-TO-FACE TRAINING VALUES
3局面で発揮される6つの価値
PHASE 1 / 来る前
受講者の期待値を最大化する
特別感
長く記憶に残る貴重な体験を予告する
モチベーションアップ
「楽しみだ」「やる気が出る」を事前に醸成する
PHASE 2 / 当日
対面でしか得られない体験を提供
対面らしさ(現場感)
集まらないと絶対にできないことを全面に出す
インパクト
会場・スピーカー・内容で強い印象を与える
交流
普段関わらない人との出会いと深い対話
PHASE 3 / 帰った後
職場実践への熱量を維持
勢いをつける
研修後の職場実践に向けて動機付けする
対面研修の典型失敗パターン:多くの企業の対面研修は、「当日」の3つの価値(対面らしさ・インパクト・交流)に力を入れる一方で、「来る前」の期待値づくりと「帰った後」の熱量維持が手薄になりがちです。結果として「当日は盛り上がったが職場で何も変わらない」状態になる。冒頭で触れた逆説——豪華な会場とカリスマ講師の研修ほど成果が出にくい——は、まさにこの当日偏重が原因です。3局面すべてで価値を実現する設計に切り替えることが、対面研修を成功させる第一歩です。
対面研修を成功させる7つの設計ヒント
「3局面で価値を実現する」を具体的な行動に落とし込むと、7つの設計ヒントになります。アイディア社が長年の経験から導き出した、対面研修を成果につなげる設計の全体像です。時系列に並べることで、研修前・研修中・研修後のどこに何を仕込むかが一目で見えます。
7 DESIGN HINTS
対面研修を成果につなげる7つの設計ヒント
PHASE 1 / 研修前
充実した事前課題
インプットを事前に行い、当日は参加型の演習中心の研修にする
受講者へのマーケティング
受講者がワクワクして高い期待で参加するよう、事前に動機付けを行う
PHASE 2 / 研修中
アクションプラン作成
研修中に「職場でどう使うか」の実行計画を必ずつくる
職場の巻き込み
職場実践を促進するため、チームや上司・部下も研修に巻き込む
PHASE 3 / 研修後
研修後のフォロー
研修後の気づきと学びが仕事で活かされるよう、継続的な支援を行う
成果確認
研修後にどのような成果が出たかを、しっかりと把握する
成功事例の共有
サクセスストーリーを社内で共有し、次回受講者の動機付けにつなげる
7つのヒントの偏在に注目:研修前2つ・研修中2つ・研修後3つ——研修後のヒントが最も多いことに気づきます。多くの企業は「研修中」のヒント3・5にだけ注力しがちですが、対面研修の成果は研修前の動機づけと、研修後のフォロー・成果可視化・事例共有に大きく依存します。BIG成果セクションで紹介した5つのヒントと、ここで挙げた7項目は重なる部分も多くありますが、対面研修においても完全に同じように効きます。研修中の上司の影響度が10段階で8という事実は、対面研修にもそのまま当てはまります。
これら7ヒントは、対面研修の3局面(来る前・当日・帰った後)の価値を具体的な行動に変えるためのチェックリストとして機能します。次に、対面研修ならではの体験を組み立てる「3つの設計軸」(内容・登場人物・会場)を見ていきましょう。
対面研修を構成する3つの設計軸
対面研修ならではの体験を組み立てるには、設計の軸を3つに整理すると考えやすくなります。「内容」「登場人物」「会場」の3軸です。中心に「対面研修」を置いて、3本の軸が伸びていく構造で全体像を捉えます。それぞれの軸には、選択肢が複数あります。
3 DESIGN AXES
対面研修を構成する3つの設計軸と選択肢
AXIS 01
内容
非日常的な体験を組み込む
イベント
基調講演・パネル討論・参加者発表会・社内アワードなど祝祭的な要素
フィジカル
身体を使う演習。スポーツ・ダンス・料理・工作・アウトドア活動など
プロジェクト
複数日の本格課題。新規事業立ち上げ・課題解決・提案書作成など
非日常体験
救命救急訓練・他社見学・特別なディナー・文化体験など
AXIS 02
登場人物
誰と出会うかが体験を決める
特別なゲスト
経営者・有識者・著名人。社内では聞けない話で強い刺激を与える
受講者の交流
他部署・他職位のメンバーとの対話。クロスファンクショナルな出会い
ソーシャル
懇親会・ランチ・カフェなど、研修外の時間もネットワーキングに活用
異業種交流
自社外の参加者との交流。視野を広げる強力な契機になる
AXIS 03
会場
場所が研修の質を決める
チャレンジ
アスレチック・登山などの冒険系。チームの結束力を引き出す
ハイテンション
ライブハウス・大規模イベント会場。日常のギャップでテンションを上げる
リラックス
リゾート・温泉宿。深い対話やリフレクションを可能にする
ハイテク
VR体験施設・先端技術スタジオ。技術と人材育成の融合を体感
スポーツ
運動会会場。協調性・戦略性・身体性を同時に鍛える
遊び
テーマパーク。「遊び」を真剣にデザインして創造性を解放
3軸の組み合わせが対面研修ならではの体験を生む:「内容」だけでも「会場」だけでも、対面研修の独自性は出ません。3軸を意図的に組み合わせることで、リモートでは絶対に再現できない体験が生まれます。重要なのは「豪華な会場を選ぶ」ことではなく、「研修目的に最適な3軸の組み合わせを選ぶ」こと。冒頭で触れた逆説(豪華な外部会場とカリスマ講師の研修ほど成果が出にくい)は、3軸の組み合わせが目的とズレているケースで起きます。
3軸を理解したところで、次は実際の対面研修事例を見ていきましょう。アイディア社が5年以上の実装と改良を重ねて到達した「ハイテク+ハイタッチ合宿」の3日間プログラムは、3軸を統合的に使った代表例です。
事例:ハイテク×ハイタッチ合宿の3日間
抽象論よりも、まず1つの実例から見ていきましょう。アイディア社が2019年のATD人材育成国際会議で発見した三大キーワード「ハイテク・ハイタッチ・ラーニングジャーニー」を起点に、5年以上の実装と改良を重ねて到達した3日間の合宿プログラムです。AI・VR・ARという3つのテクノロジー(ハイテク)と、アウトドア・スポーツ・非日常体験(ハイタッチ)を統合的に組み合わせた、対面研修ならではの体験設計です。
CASE STUDY
3日間で受講者の認知を「自分→外側→未来」へ拡張する合宿
DAY 1
自分を客観視する
スタートラインの自分を可視化し、視野を広げるVR体験へ
朝〜午前
移動・オリエンテーション。AR で自分の現在地(パフォーマンス)を記録
午後
VR ターザン体験。高所跳躍を仮想体験で「恐怖を超える」感覚を呼び起こす
夜
レストランディナーでチームビルディング
DAY 2
外側の世界に触れる
先端企業の動きをARで体感し、AIとともに新しい発想を生む
朝〜午前
AR でNIKEリモート企業訪問。ARで成長・成果を可視化
午後
VR ディープ体験/AI でのアイディア出し
夜
BBQ で受講者同士の関係を深める
DAY 3
未来を形にする
AIと共同で新規事業案を仕上げ、経営者にプレゼンテーション
朝〜午前
AI でゼロから新規事業の立ち上げ。AIを思考のパートナーとして活用
午後
プレゼンテーション準備・本番
夕方
経営者からのフィードバック、解散
3日間の構造が生む変化:1日目に自分を客観視し、2日目に外側の世界に触れ、3日目に未来を形にする——3日間で受講者の思考は「自分の業務範囲内で考える」から「会社全体・業界全体・未来の事業を考える」へと、解像度と射程が一段引き上がります。これが、対面研修だからこそ実現できるBIGインパクトです。
3つのテクノロジーの役割分担
合宿で使う3つのテクノロジーには、それぞれ明確な役割があります。並べると、3日間を通して受講者の認知が「自分→外側→未来」へ段階的に拡張していく構造が見えてきます。
3 TECHNOLOGIES
AI・VR・ARの役割と効果の対応
TECH 01 / AR
パフォーマンス向上
「自分」が起点
役割
現実世界に情報を重ね、自分の動作・スキル・パフォーマンスを客観視する
受講者にもたらす効果
スポーツ選手と同じ原理で自分の行動を可視化し、改善点を発見する
TECH 02 / VR
エクスペリエンス
「外側」への拡張
役割
普段の業務では絶対に体験できない世界に没入し、視野を広げ感情を動かす
受講者にもたらす効果
受講者の認知の枠を一度壊し、新しい発想の余地をつくる
TECH 03 / AI
イノベーション
「未来」を形にする
役割
AIと共同でアイディアを生成し、人間だけでは思いつかない発想に出会う
受講者にもたらす効果
思考のパートナーとして活用し、3日間で新規事業案を仕上げる
なぜこの組み合わせが機能するのか:3つのテクノロジーは単独ではただのツールですが、「自分→外側→未来」という認知拡張の物語に沿って配置されることで、強力な学習体験になります。さらにここに「ハイタッチ要素」(アウトドア・スポーツ・非日常体験・夜のディナー)が加わることで、頭をフル活用したあとの感情の整理と人間関係の深化が起きます。ハイテクとハイタッチの緩急のリズムが、受講者の脳と心の両方を最大限に活性化するのです。
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対面研修をリモートとどう使い分けるか
本セクションでは対面研修ならではの価値と設計手法を解説しましたが、実際の研修設計では「対面とリモートをどう組み合わせるか」という判断が常に必要になります。両者の使い分けの具体的な判断軸と、対面研修を効果的に設計する4つのポイントについて、別記事で詳しく解説しています。
BIGインパクトのセクションでは、対面研修の価値を最大化する3つの設計軸(内容・登場人物・会場)と、6つの価値・7つの設計ヒント・合宿事例を見てきました。鍵は「対面で集まる理由」を設計者自身が明確に答えられることです。「研修目的に最適な3軸の組み合わせ」を選ぶことで、リモートでは絶対に得られない強烈なインパクトが生まれます。次の「BIGスケール」セクションでは、視点をさらに変えて——少人数ではなく「大人数(数十〜数百人)の研修をどう成功させるか」を解説します。少人数のきめ細かい研修と、大人数の効率的な研修——この両極を使い分けられることが、現代の人材育成担当者に求められる新しいスキルセットです。
BIG スケール:大人数開催を成功させる4形式の使い分け
これまで研修設計の「質」を中心に解説してきました。ここからは視点を変えて、研修の「規模」を扱います。数十人から数百人という大人数の研修を、どう成功させるか。少人数の丁寧な研修と、大人数の効率的な研修——両極を使い分けられることが、現代の人材育成担当者に求められる新しいスキルです。本セクションでは、大人数開催の特性を理解した上で、対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンドという4つの実施形式の使い分けを解説します。
大人数開催の利点と懸念点
大人数開催は「効率的に多くの社員を一度に育成できる」というメリットだけでなく、独自の難しさも抱えています。両面を理解した上で、対策を講じることが成功の前提になります。
ADVANTAGES
大人数開催の6つの利点
01
イベントのような特別感
数百人規模の場ならではの祝祭的な雰囲気が生まれる
02
受講者同士の交流
普段は接点のない人同士のネットワーキングが可能
03
組織の一体感
同じ場で同じ内容を学ぶことで、共通言語と一体感が生まれる
04
短期間で全社展開できる
数回の開催で全社員に研修を行き渡らせられる
05
高い研修品質を保てる
大人数に強い講師・会場・プラットフォームを選べば品質維持が可能
06
運営が1回で済む
少人数を何度も繰り返すより、運営コストを抑えられる
これらの利点を最大限に活用するには、交流の機会を意図的に組み込み、複数回の開催ではなく短期集中で実施することが鍵となります。
CONCERNS & SOLUTIONS
大人数開催の懸念点と対策
懸念点
一方通行の講義になる
対策
演習中心の研修設計にする。受講者が積極的に動く時間を確保
懸念点
受講者の集中力が切れる
対策
演習中心の研修設計にする。90分ごとに楽しい演習を入れて集中力を維持
懸念点
演習の指示が伝わらない
対策
複数講師でしっかりとフォローする。ゾーン別に担当講師を配置する
懸念点
受講者の理解が把握できない
対策
複数講師でしっかりとフォロー。投票機能やチャットで理解度を確認
懸念点
受講者への個別フォローができない
対策
複数講師でしっかりとフォロー。ブレイクアウトやサブルームで小規模化する
5つの懸念点に共通する対策:「演習中心の設計」と「複数講師による役割分担」の2つです。一方通行を防ぐ最大の手段が演習であり、大人数を捌く最大の手段が複数講師の連携。次項では、これらを実装するための3つの成功ポイント——分かりやすい研修内容・ダイナミックな研修設計・複数講師との連携——を順に見ていきます。
大人数開催の3つの成功ポイント
前項で見た5つの懸念点を乗り越え、利点を最大化するために、アイディア社が大人数開催で重視している成功ポイントは3つに整理できます。「分かりやすい研修内容」「ダイナミックな研修設計」「複数講師との連携」——この3つが揃って初めて、大人数開催は単なる「効率的な情報伝達」を超え、参加者一人ひとりの学びの質を保てます。順に見ていきましょう。
ポイント1:分かりやすい研修内容(THINK/MAKE/SPEAK)
大人数の前で講師が話す時、内容が伝わるかどうかは「研修内容そのものの質」で決まります。アイディア社では、研修コンテンツをTHINK(研修内容と全体ストーリー)/MAKE(投影スライドと資料)/SPEAK(講師の解説と演習指示)の3要素で設計します。それぞれの基準を見ていきましょう。
CONTENT DESIGN
分かりやすい研修コンテンツの3要素
01 / THINK
研修内容と全体ストーリー
受講者が頭の中でストーリーを描けるか
明確な受講者の利点
汎用的に誰にとっても役立つ内容
つかみやすい全体構成
しっかりしたナビゲーション
ロジカルな章立て
02 / MAKE
投影スライドと資料
後ろの席からでも、ぱっと見て理解できるか
インパクトの強いビジュアル
ぱっと見て、ぱっと分かるスライド
大きく、少ない文字
1スライド@1メッセージ
メモしやすい配布資料
バリエーション豊富な演習資材
03 / SPEAK
講師の解説と演習指示
受講者を惹きつけ、迷わせないか
簡潔明瞭な解説
受講者を惹きつける話し方
効率的な進行
具体的・明確な演習指示
話しやすい研修の雰囲気
受講者とスムーズに対話できる
3要素はセットで機能する:THINKだけが優れていても、MAKEで投影スライドが分かりにくければ伝わりません。MAKEだけ凝っても、SPEAKで講師が早口で説明したら集中力が切れます。THINK→MAKE→SPEAKは「思考の組み立て→可視化→伝達」の連続プロセスであり、どこか1つでも品質が落ちると全体が機能しなくなります。大人数の前ほど、この3要素の整合性が重要です。
ポイント2:ダイナミックな研修設計
大人数の研修で「眠くなった」「集中力が切れた」と言われたら失敗です。それを防ぐために、研修全体を1日のバイオリズムに沿って設計します。研修中の受講者の集中力は一定ではなく、波があります。その波に合わせてモジュール(90分単位)を配置し、各モジュール内で講義(インプット)→演習(アウトプット)→振り返り(落とし込み)のサイクルを回すことで、1日中受講者を飽きさせずに学びを深められます。
1-DAY BIORHYTHM
1日4モジュールのダイナミックな設計
9:00
オリエンテーション・テクニカルテスト
9:30〜
90分
モジュール1:ウォームアップ
丁寧な解説 + 簡単なディスカッション + 講師の振り返り
11:00〜
90分
モジュール2:慣れる
普通の解説 + 工夫した共同作業 + 演習結果の共有
13:20〜
90分
モジュール3:ハイテンション(昼食後の山場)
簡潔な解説 + スピード感のある楽しい演習 + 感想共有
15:00〜
90分
モジュール4:理解を深める
レベルの高い解説 + 考える個人ワーク・共有 + 理解度確認
16:30
アクションプラン作成 + クロージング + 上司面談(事前設定が必要)
4モジュール構成の核心:各モジュールは90分=講義(解説)+演習+振り返りのセット。モジュールごとにテーマを変える(ウォームアップ→慣れる→ハイテンション→理解を深める)ことで、受講者の集中力の波に合わせて学びの強度を調整できます。特に昼食後のモジュール3は、眠気が来る時間帯にあえてスピード感のある楽しい演習を配置することで、午後の集中力を取り戻すリカバリーポイントになっています。
このバイオリズム設計の本質は、「研修中ずっと同じテンションを維持する」ことではなく、「波を意図的に作って、ピークと谷を使い分ける」ことです。研修内容の難易度・演習の種類・講師の話し方すべてを、1日の時間帯に合わせて変化させる——これが大人数開催で受講者を飽きさせない唯一の方法です。
演習の「量」と「質」を意図的に設計する
バイオリズム設計の中核を支えるのが、演習の「量」と「質」です。同じ「演習」でも、配置の量と内容の質によって、受講者の体験はまったく違うものになります。アイディア社の研修と従来型のインプット中心研修を、量と質の2軸で比較してみましょう。
EXERCISE QUANTITY
演習の「量」:演習が全体に占める割合
従来のインプット型研修
講義中心の設計
講師がスライドを使って解説し続け、受講者は受け身。集中力が切れやすく、職場で使えるスキルが身につかない
アイディア社の演習中心型研修
演習中心の設計
受講者が手を動かす時間を全体の7割以上に。インプット1に対してアウトプット3以上の比率で、職場で使えるスキルが身につく
「量」の4つの設計ポイント:①90分ごとに10分の休憩を入れて集中力を維持/②90分サイクルに最低1つの演習を入れる(特に昼食前後と終了直前は楽しい演習)/③長い総合演習1つより、数分の細かい演習を多数/④演習は研修全体の70%を目安にする(セッティング・共有を含む)
EXERCISE QUALITY
演習の「質」:レベルで考える9段階
避けるべきレベル
レベル0以下
「悪い」研修を「普通」の研修に持っていくには、まずこの段階を排除する
−4寝る
−3集中力が切れる
−2聞いて分からないことがある
−1聞いて分かる
0聞いて納得する
目指すべきレベル
レベル2以上
「普通」の研修を「良い」研修に持っていくには、レベル2以上の演習をできるだけ増やす
+1個人ワークや考える時間
+2話し合いやディスカッション
+3楽しい演習
+4全身を使った激しい演習
「質」の4つの設計ポイント:①90分ごとに盛り上がる演習を最低1つ入れる/②休憩・昼食・終了直前にテンションを上げる演習を配置(受講者同士の会話で「今日はいいね」と話される)/③レベル0以下の解説を排除する/④レベル2以上の演習をできるだけ多く配置する
演習の「量」と「質」は、片方だけでは機能しません。演習を全体の70%にしても、その中身がレベル0以下の単なる「聞いて納得するだけ」の時間では、受講者は退屈します。逆に、レベル2以上の質の高い演習を1つだけ用意しても、講義時間が長すぎれば集中力が持ちません。量と質をセットで設計することで、初めて大人数の研修でも受講者の集中力と学びを最大化できます。
ポイント3:複数講師とのスムーズな連携
大人数開催で1人の講師がすべてを担うのは無理があります。受講者の集中力を維持し、演習指示を的確に伝え、個別フォローまで行うには、複数の講師が役割分担して連携することが必須です。アイディア社が大人数開催で重視する3つの連携シーンを見ていきましょう。
MULTI-TRAINER COORDINATION
3つの連携シーン
SCENE 01
飽きさせない解説
目的
90分の講義時間を1人の講師の声だけで埋めると、受講者は集中力を保てない
役割分担
メイン講師が解説の主役を務め、サブ講師が要点を補足したり、別の角度から事例を紹介したりする。声のトーンや進行ペースを意図的に変えることで、受講者を飽きさせない
効果
講師の交代がリズムの変化となり、長時間の講義でも集中力を維持できる
SCENE 02
講義と演習のつながり
目的
講義から演習への移行で受講者が混乱すると、その後の演習効果が大きく落ちる
役割分担
メイン講師が演習の指示を出している間、サブ講師は受講者の表情や反応を観察し、混乱しているテーブルにすぐ駆け付ける。質問が出たら即座に対応できる体制を作る
効果
演習開始の「始動の遅さ」を最小限に抑え、限られた時間で深い学びにつながる
SCENE 03
丁寧な演習フォロー
目的
数十〜数百人の受講者に1人ずつ個別フィードバックは、物理的に不可能
役割分担
会場をゾーン分けして担当講師を配置。各ゾーンの講師が担当テーブルを巡回し、つまずいているグループを発見してすぐにフォローする
効果
大人数でも個別フォローが行き届き、研修の質が「少人数研修並み」に保てる
複数講師連携の本質:3つのシーンに共通するのは、「メイン講師の役割を絞り込み、それ以外の機能をサブ講師に分担させる」という発想です。1人で全てをこなそうとせず、複数の専門役割で連携することで、大人数開催でも少人数研修並みの質を確保できます。これが、複数講師との連携が大人数開催の生命線となる理由です。
ここまでで、大人数開催の3つの成功ポイント——分かりやすい研修内容(THINK/MAKE/SPEAK)、ダイナミックな研修設計(バイオリズム・演習の量と質)、複数講師との連携——を一通り見てきました。次の項では、これらの成功ポイントを4つの実施形式(対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンド)にどう適用するか、形式別の使い分けを解説します。
4形式の使い分け(対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンド)
大人数開催の3つの成功ポイントを押さえた上で、実際にどの実施形式を選ぶかが次の判断になります。アイディア社では、対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンドの4形式を扱っており、それぞれに固有の成功ポイントがあります。順に見ていきましょう。
形式1:対面研修 × 大人数
大人数の対面研修では、会場の物理的な制約を逆手に取って研修を成立させる必要があります。後ろの席まで内容が伝わる工夫、複数講師がゾーン分担で動く運営、そして大人数の集中力を持たせる演習バリエーションが鍵となります。
FORMAT 01 / FACE-TO-FACE
対面研修×大人数の成功ポイント
01
見やすい大画面
後方の席からでも内容が読み取れる大型スクリーン、または複数のサブ画面を会場全体に配置する
02
ゾーン別の演習フォロー
会場をテーブル単位でゾーン分けし、各ゾーンに担当講師を配置。30人につき1人の講師が目安
03
簡潔明瞭な解説
大人数では細かいニュアンスは伝わりにくい。1メッセージを1スライドで、明確な言葉で伝える
04
飽きさせない演習バリエーション
積極的な交流/体を動かす演習/全受講者を巻き込む工夫/エネルギーを引き出す演習を組み合わせる
対面×大人数の本質:大人数の対面研修は「特別なイベント感」を最大化できる形式です。受講者同士の交流・ネットワーキングが自然に発生し、組織全体の一体感を醸成できる。一方で、運営コストと会場手配の難しさは最大級。「集合する価値」が明確にある場合に選ぶ形式です。
形式2:リモート研修 × 大人数
意外に思われるかもしれませんが、リモート研修は大人数開催に強い形式です。地理的制約がなく、一斉に研修を行うことで迅速な全社展開が可能となり、共通理解や組織の一体感にもつながります。ただし、一方通行の講義で終わらせないための工夫が必須です。
FORMAT 02 / REMOTE
リモート研修×大人数の成功ポイント
01
経験豊富なプロデューサー
リモート研修で最も大事な役割は、講師ではなくプロデューサー。テクニカルサポート・投票実施・ブレイクアウト誘導・チャット対応まで担当する
02
プロセッティング
画質の良いカメラ・適切な照明・有線LAN・スプリットディスプレイ・ヘッドセット・最新ソフト——技術環境が研修品質を左右する
03
講義中の巻き込み(インタラクション)
チャット質問・投票(アンケート)・アイコン表示・記入機能。受講者を講義中ずっと巻き込む手段が複数用意されている
04
3つのモードを使い分け
インプット(解説/全体)/アウトプット(演習/ブレイクアウト)/ディブリーフ(共有/全体or サブルーム)の3モードを意識的に切り替える
リモート×大人数の本質:リモートは「大人数に強い」だけでなく、ブレイクアウトルームを使うことで少人数研修の良さも同時に実現できる形式です。150人の研修でも、ブレイクアウトに分ければ5人単位の濃い議論ができる。地理的・コスト的なメリットに加えて、研修の柔軟性も最大級。次のH3-4では、これを実現する「3階層モデル」を詳しく解説します。
形式3:ハイブリッド研修 × 大人数
ハイブリッド研修は、対面とリモートの両方を同時に成立させる、最も難易度の高い形式です。アイディア社では2つの異なる作戦を使い分けています——「サテライト作戦」と「ハイブリッド作戦」です。それぞれの構造と向くケースを見ていきましょう。
FORMAT 03 / HYBRID
ハイブリッド研修×大人数の2つの作戦
STRATEGY 01
サテライト作戦
インプット:映像配信/フォロー:対面講師
構造
メイン講師1人がスタジオから映像で全会場に配信。各サテライト会場には演習講師が対面で配置され、ローカルで演習をフォローする
向くケース
同じ研修を全国の複数拠点で同時実施したい場合。1つの拠点に出張で集まる必要がない
運営のポイント
現地スタッフが演習講師を兼ねれば、1人の講師で複数会場をカバーすることも可能
STRATEGY 02
ハイブリッド作戦
メイン会場+サブ会場+リモート参加者の3拠点同時
構造
メイン会場(講師+一部受講者)/サブ会場(受講者集団)/個別リモート参加者の3拠点を同時につなぐ。それぞれが演習に参加できる体制
向くケース
対面参加と在宅参加を選べるようにしたい場合。会場への出張が困難な受講者がいても全員参加できる
運営のポイント
メイン講師に加えて、リモート講師(演習指示・フォロー担当)とプロデューサー(リモート操作・運営担当)の3役で連携する
ハイブリッドの本質:2つの作戦の使い分けは「目的」で決まります。同じ内容を多拠点で実施するならサテライト作戦、個々の受講者が対面/リモートを選べるようにするならハイブリッド作戦です。どちらも対面とリモートの長所を組み合わせる設計ですが、運営難易度は最も高い形式。確実にプロデューサー1人+複数の演習講師を配置できる体制が必要です。
形式4:オンデマンド研修 × 大人数
オンデマンド研修は、受講者が好きな時間に映像を見る形式です。理屈の上では大人数に最適ですが、受け身の視聴で終わらせない工夫がなければ効果はゼロに近くなります。映像コンテンツの質と、受講者の進捗管理が成否を分けます。
FORMAT 04 / ON-DEMAND
オンデマンド研修×大人数の成功ポイント
01
映像コンテンツのバリエーション
良い例=実際のシーン/解説とビジュアル/解説と全画面イメージ。避けたい例=集合研修の録画/文字と音声/文字のみ
02
飽きさせないビデオ作成
イメージとトランジション/シナリオ(ビジネス場面)/分かりやすい解説の3要素を組み合わせる
03
分かりやすいコンテンツ提供(LMS)
受講者が迷わない構造が肝心。「次に何を学ぶか」「研修の全体像」「必要な教材が1ヶ所」の3点を満たす
04
受講者の進捗確認
視聴の有無だけでなく、コメント投稿・演習回答・説明音声などのアウトプットを追跡。フィードバックで動機付ける
オンデマンドの本質:オンデマンド成功の鍵は「受講者が孤立しない仕組み」にあります。映像を見るだけでなく、他の受講者とのつながりを持たせ、講師や上司からのフィードバックをもらえる環境を作ること。これらが揃えば、コスト効率が最も高く、大人数を最も効率的に育成できる形式になります。
4つの形式(対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンド)にはそれぞれ固有の強みと運営要件があります。次のH3-4では、リモート研修で特に効果を発揮する「3階層モデル」——150人規模の大人数を、サブルーム(30人×5)とブレイクアウトルーム(5人×30)に分けて運営する手法を詳しく解説します。
大人数リモート研修の3階層モデル
前項で「リモート研修は大人数に強い」と述べましたが、その理由を実装レベルで支えているのが3階層モデルです。150人の受講者を、講義時には全体で扱い、演習時にはブレイクアウトで5人ずつに分け、振り返りはサブルーム30人単位で行う。1つの研修の中で「大人数」と「少人数」を瞬時に切り替えられるのが、リモートならではの強みです。
3-LAYER MODEL
大人数リモート研修の3階層モデル
LAYER 01 / 全体
150人
受講者全員が同時参加
主な役割
インプット(解説)
プロフェッショナルセッティングで講師が分かりやすく解説。受講者はマイクオフ・カメラオン・チャットや投票で参加。集中して聞くモード
LAYER 02 / サブルーム
30人 × 5部屋
5つのサブグループに分解
主な役割
ディブリーフ(演習後の振り返りとフォロー)
演習結果を共有し、サブルーム講師がフォロー。指名されたら受講者がマイクオン。30人規模なので発表者の選定もスムーズ
LAYER 03 / ブレイクアウト
5人 × 30部屋
少人数の濃い議論
主な役割
アウトプット(積極的な演習)
5人での濃いディスカッションや共同作業。マイク・カメラとも全員オン。講師は1人で6部屋を回ってフォロー(5人講師×6部屋=30部屋全体をカバー)
3階層モデルが解決する課題:大人数の研修で起きがちな「演習で受講者が黙ってしまう」「個別フォローができない」という問題を、ブレイクアウトの5人単位で完全に解消できます。一方、講義は150人全員に同時配信できるため運営効率も最高水準。階層を行き来することで、研修の各局面に最適な人数規模を割り当てられるのです。これが、リモートが大人数に強い理由の核心です。
3階層モデルは150人規模の例を出しましたが、規模に応じて柔軟に変えられます。50人規模なら全体50人→サブ25人×2→ブレイクアウト5人×10、500人規模ならサブ100人×5→ブレイクアウト5人×100というように、3階層の比率を保ったまま拡大・縮小できます。「全体での共有」「中規模での振り返り」「少人数での濃い議論」の3層構造そのものが、大人数研修の本質的な解になります。
4形式の選び方:自社の状況に応じた判断軸
4つの形式(対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンド)の特性を理解した上で、最後の問いは「自社はどれを選ぶか」です。実は、選択を迷う多くのケースは、判断軸が曖昧なまま「対面とリモート、どちらが良いか」と二択で考えてしまうことに原因があります。下図の5つの判断軸を通すと、自社の状況にとって最適な形式が見えてきます。
DECISION MATRIX
5つの判断軸×4形式の適性
判断軸
対面
リモート
ハイブリッド
オンデマンド
受講者数
数十人 〜 数百人
◯
大人数も可
◎
大人数に最強
◯
柔軟対応
◎
無制限
地理的分散
受講者が全国・海外
×
移動コスト大
◎
場所を問わない
◯
サテライト型
◎
時差も問題なし
演習の重要性
対話・共同作業の濃さ
◎
対話が濃い
◯
ブレイクアウト
◯
対面参加なら可
×
受け身の視聴
予算の制約
会場費・移動費
×
最大コスト
◯
中コスト
△
中〜高コスト
◎
最低コスト
受講者の自律性
学習意欲の高さ
◯
場の力で促進
◯
講師が誘導
◯
中間
△
自律性が必須
マトリクスを見ると、「すべての軸で◎を取る形式は存在しない」ことが分かります。だからこそ「形式選び=自社の最重要軸を決めること」になります。例えば、受講者が全国に分散していて演習が重要なら、リモート×大人数が最強解。一方、特別感のある統合体験を作りたいなら、対面の優位は揺るがない。判断軸を明確にすることで、形式選びは「迷い」ではなく「設計」になります。
もう一つ重要なのは、これら4形式は「どれか1つを選ぶ」のではなく、組み合わせて使うことを前提に考えるべき点です。例えば事前学習はオンデマンドで実施し、メインの研修は対面で行い、フォローアップはリモートで継続する。「ブレンドラーニングジャーニー」の発想(BIG成果セクションで解説)と組み合わせれば、4形式の長所を統合的に活用できます。1つの形式の中で完結させないことが、現代の人材育成設計の新しいスタンダードです。
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BIG人材育成フォーラム シリーズの過去開催レポート
BIG人材育成フォーラムは、毎年テーマを変えて開催している人材育成担当者向けのフラッグシップイベントです。過去の開催レポート(2022年・2023年)や関連セミナーの内容も記事として公開しています。研修設計・効果測定・グローバル人材育成などのテーマ別に閲覧可能です。
BIGスケールのセクションでは、大人数開催の利点と懸念点・3つの成功ポイント・4形式の使い分け・3階層モデル・形式選びの判断軸を見てきました。少人数の丁寧な研修と、大人数の効率的な研修——両極を使い分けられることが、現代の人材育成担当者の新しいスキルセットです。「人数が多いから質が落ちる」も「人数が少ないから効率が悪い」も、どちらも設計次第で乗り越えられる——これがBIGスケールセクションの最終メッセージです。
参加者の声
本フォーラムには、メーカー・IT・物流・サービス業など多様な業種から人材育成担当者の方々にご参加いただきました。終了後のアンケートでは、22名の方から本フォーラムに対する具体的な感想・気づき・今後の検討事項について率直なコメントをいただいています。本セクションでは、満足度の定量サマリーと、本記事の4つのテーマに沿って代表的なコメントをご紹介します。
SATISFACTION SUMMARY
本フォーラムへの満足度(22名回答)
59%
とても良かった(13名)
41%
まあ良かった(9名)
回答者22名の100%が「良かった」と回答し、「あまり良くなかった」「良くなかった」の回答は0件でした。「とても良かった」と評価された理由としては、研修設計の具体的なノウハウ、大人数開催への対応方法、リモート研修の効果的な活用法など、実務に直結する内容が挙げられています。
研修設計と効果について
「研修を実施していく中でどの場面でどの研修をするか、また目的など明確にし、研修もやり方次第ということに気づきました。研修後の定着フォロー(フィードバック)や現場とのギャップが課題です。今後はグループワークなどの実務を意識した研修を検討していきたいです」
— IT企業 / 全社の人材育成に直接携わる方
「研修実施の前後にすべきことが分かりました。あらゆるテーマの研修に共通している、取り組むべきこと、普遍的な目標・テーマを確認することができました。特に、対面研修とリモート研修の違いについて、効果的な研修とは実施形式によらないものであることが分かりました。自分たちのビジネスや研修の内容に応じて柔軟に組み替えることで、効率的に研修効果を高められることが分かりました」
— 製造業 / 自部門内の人材育成に直接携わる方
「具体的な研修の設計について、結局、設計する側がどう目的を設定するか、そこがきちんとしていないとどうしようもない、ということは再認識しました。大変参考になりました」
— 製造業 / 全社の人材育成に直接携わる方
「最新のトレンドから自社の研修設計の参考になるノウハウまで提供いただき勉強になりました。いつも勉強になる配信ありがとうございます!弊社の規模ですとできることは多くないかもしれませんが、少しでも時代についていけるように頑張ります」
— 株式会社サーラコーポレーション 伊藤大輔 様 / 全社の人材育成に直接携わる方
対面・リモート・大人数研修の使い分けについて
「オンライン研修でも、十分効果をあげられることを理解できました」
— IT企業 / 自社の人材育成に間接的に携わる方
「ラーニングジャーニーはなるべく実施するようにしているので、改めて実施することの意義を確認することができました。当社では、事前に上長が期待を伝える→研修後は上長にどんな研修だったか、研修で得たものは?今後の活用方法のレビューをしてもらいます。報告の有無と内容をアンケートで回答してもらっています。対面が良いと思っていましたが、ち密な運用方法によってはオンラインでも効果的に実施できることを知れました」
— IT企業 / 自部門内の人材育成に直接携わる方
「大人数に対応する具体的な方法があったため、とても良かったです」
— 電機メーカー / 自部門内の人材育成に直接携わる方
上司の巻き込み・職場活用について
「研修効果に対して上司の与える影響の大きさとその必要性を吟味することが必要であることが分かりました。今後は年代別のキャリア研修を検討していきたいと思います」
— IT企業 / 全社の人材育成に直接携わる方
「忘れていた事を思い出しました…(研修前後の上司の巻き込みの重要性)。ここ数年、おろそかにしてきた研修全体デザインを学びなおしたく参加しました。定着に向けた工夫のヒントがいくつか持ち帰れました。これからの研修はオンライン・対面の良さを生かした更にレベルの高いものが求められる時代になる気がします」
— メーカー系 / 自社の人材育成に間接的に携わる方
「受講者を巻き込む研修とのことで実際にリモートツールを用いた実践があったこと。これまで自社で進めていた研修の不足なポイントが改めて浮き彫りにできる気付きになったと考えます。今後は階層別研修、2、3年目やリーダー層向けを検討しています」
— 人材サービス業 / 自部門内の人材育成に直接携わる方
これらの声に共通しているのは、「研修中の工夫」だけでなく「研修の前後・上司の巻き込み・実施形式の使い分け」という総合的な視点が新たな気づきとして持ち帰られている点です。本記事で繰り返し提示してきたメッセージ——研修を成果につなげる鍵は、研修中だけでなく前後を含めた統合設計にある——が、参加者の実感としても確認できる結果となりました。
よくある質問
本記事の内容について、人材育成担当者の方々からよくお寄せいただく質問とその回答をまとめました。実務に取り入れる際の参考にしてください。
ブレンドラーニングジャーニーは、結局何から始めればよいですか?
最初に、現在の研修を「研修前・研修中・研修後」の3局面で振り返ってください。多くの企業は研修中だけに資源が集中しているため、まずは研修前の上司巻き込みと研修後の職場実践フォローのいずれか1つを追加するところから始めるのが現実的です。完全な9週間プログラムを最初から目指す必要はなく、3局面に「最低1つずつ」の打ち手を入れることが第一歩です。
上司の巻き込みは、忙しい上司にどう協力してもらうのが現実的ですか?
「上司の時間を奪う」のではなく「上司にとってメリットがある」設計にすることが鍵です。具体的には、研修前に15分の事前ミーティング(部下の業務上の課題と研修目的をすり合わせる)、研修後に30分の振り返りミーティング(実践状況のフィードバック)の2回だけ確保してもらいます。これらは部下のパフォーマンス向上に直結するため、上司にとっても投資価値があると認識されやすくなります。「忙しいから巻き込めない」と諦めるのではなく、巻き込む側が上司のメリットを言語化することが第一歩です。
対面研修とリモート研修は、結局どう使い分ければよいですか?
「対面が常に優れている」「リモートが常に効率的」という単純な比較ではなく、研修の目的・受講者の地理的分散・予算・演習の重要性といった5つの判断軸で選ぶのが現実的です。例えば、組織全体の一体感や強烈な体験が必要なら対面、地理的に分散した大人数を効率的に育成するならリモート、と目的別に選びます。さらに重要なのは、両者を「どちらか1つ」ではなく組み合わせて使うこと。事前学習はオンデマンド、メイン研修は対面、フォローアップはリモートというように、ブレンド設計が最も効果的です。
大人数の研修で、講師が1人しか確保できない場合はどうすればよいですか?
「複数講師の連携」が理想ですが、現実的に1人しか確保できない場合は、受講者人数を絞り込む(例:30人以下にする)か、研修形式をリモートに切り替えてブレイクアウトを活用することを検討してください。リモートのブレイクアウト機能を使えば、5人単位の小グループに分けることで、1人の講師でも各部屋を巡回しながらフォローできます。また、社内で「演習サポート役」(業務内容を理解した管理職や先輩社員)を募ることで、講師代行を確保する選択肢もあります。
研修効果を測定するために、明日からできる最初の一歩は何ですか?
サクセスケース・メソッド(SCM)の発想を取り入れて、「成果を出した受講者を1〜2名特定し、簡単なヒアリングをする」ところから始めてください。質問は「どんな成果が出たか」「なぜ成果が出たか」の2つだけで十分です。これだけで「何が成果につながったか」の仮説が見えてきます。さらに余裕があれば、行動できなかった受講者にも「何が障害だったか」を聞くと、次回プログラムの改善点が明確になります。全員調査ではなく上下20%への深いヒアリングこそが、効果測定の効率と質を両立させる現実的な第一歩です。
まとめ:2024年の人材育成を成果につなげるために
本記事では、BIG人材育成フォーラム2024の内容を4つのテーマ——BIGチャンス・BIG成果・BIGインパクト・BIGスケール——に沿ってお届けしました。それぞれのセクションで扱った具体的な手法は多岐にわたりますが、底に流れるメッセージは一貫しています。
CORE MESSAGE
本記事の中核メッセージ
BIG チャンス
経営者の期待と社員の自発的ニーズが一致するいまこそ、人材育成への投資タイミング
マッキンゼー・DDI・WEFのデータが示す通り、2024年は人材育成の重要性が改めて確認された年。4つのビジネス目的(効率・売上・品質・組織力)すべてが人材育成と直結する
BIG 成果
研修中だけでなく前後を含めた統合設計が成果を生む
3局面(研修前・中・後)で5つのヒントを配置し、HPLJの4要素(コミット・インプット・定着・フォロー)で設計する。SCMで上下20%だけに注目する効果測定が次の改善につながる
BIG インパクト
「集まる理由」を設計で答えられる対面研修だけが成果を生む
3つの設計軸(内容・登場人物・会場)を組み合わせ、研修前・当日・帰った後の3局面すべてに価値を配置する。豪華な会場やカリスマ講師に頼らず、目的に最適な組み合わせを選ぶ
BIG スケール
少人数と大人数、対面とリモートを使い分けることが新しいスキルセット
大人数開催の3つの成功ポイント(分かりやすい内容・ダイナミックな設計・複数講師連携)と4つの実施形式(対面・リモート・ハイブリッド・オンデマンド)を、5つの判断軸で使い分ける
これら4つのテーマを貫く本質は、「研修中の工夫」だけでは成果は生まれないという事実です。研修前の動機づけ、研修後のフォロー、上司の巻き込み、適切な実施形式の選択——これらすべてを統合して設計することで、初めて研修投資が確実な成果につながります。
明日から始める3ステップ
本記事の内容を、自社の研修設計に取り入れる第一歩として、3つのアクションを推奨します。完璧を目指さず、まずは1つから始めてください。
STEP 01
現在の研修を3局面で振り返る
自社で実施している研修を1つ選び、研修前・研修中・研修後で何を行っているか書き出す。手薄な局面(多くの場合は研修前と研修後)を特定する
STEP 02
最も影響の大きい1つの打ち手を選ぶ
手薄な局面に「最低1つの打ち手」を追加する。最初は上司との15分の事前ミーティング、または研修後30分の振り返りミーティングなど、最小限から始める
STEP 03
成果を出した受講者を特定する
SCMの発想で、成果を出した受講者1〜2名にヒアリングを行う。「何が成果につながったか」を仮説化し、次回プログラムの改善材料にする
この3ステップは、特別な予算も大規模な準備も必要ありません。来月の研修1つから試せる小さな第一歩です。1つの研修で得た気づきを次に活かす。これを3〜4回繰り返すうちに、自社の研修設計が「研修中だけ」から「3局面統合」へと自然に進化していきます。
2024年は人材育成にとってBIGなチャンスです。経営者・社員・社会のすべての矢印が「人材育成への投資」に向かうこの瞬間を、ぜひ自社の研修設計を進化させる契機としてください。本記事が、その一助になれば幸いです。
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本記事で紹介した3局面設計・5つのヒント・4つの実施形式の使い分けを、自社の状況に合わせて具体化したい方には、アイディア社の研修設計コンサルティングをご活用いただけます。グローバル企業から中堅企業まで、20年以上にわたり人材育成のパートナーとして寄り添ってきた経験を、御社の研修設計にお役立てください。
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