ジャズピアノで講演を??
今日のデンバーは快晴。昨日の曇り模様とは一転して、清々しいです。
さて、ASTD 2012に参加して5日目。2つ目の基調講演が行われ、また個別Sessionが3つの時間帯で開催されました。そして夜は、Networking Nightと題した大規模なパーティーが開かれました。
基調講演のレポート
ジョン・カオからのメッセージ
「Mr. Creativity」と呼ばれているJohn Kaoの講演は、時折なんとジャズピアノを弾きながら行う不思議なスタイルで進められました。
例えば、クラシック音楽をピアノで弾く。その後で、子供のいたずらにしか聞こえないめちゃくちゃな音を弾いてみる。そして、クラシック音楽の構造が確立された世界(structure)と自由な世界(freedom)の間に、ジャズというイノベーションが生まれたと解説が入ります。その後には、プロ顔負けのジャズピアノを弾いてみるスタイル。
創造力を高めイノベーションを生み出すコツが、聴衆の右脳と左脳の両方に同時に入っていくような不思議な感覚を覚えました。
John Kao’s Keys to Innovation
- Use the CREATIVE TENSIONS* between two opposite ideas (ex. structure vs freedom). *以下のスライド写真を参照
- Modulate (change inside the pattern) to create something new.
- Take risks – must try many times and fail to succeed.
ref) NIKE CF www.youtube.com/watch?v=45mMioJ5szc - Have interaction/conversation, even if only with yourself – a conversation with yourself is like a piano solo.
- Work in a group (with balanced talent) and challenge each other.
- Do not approximate something; be simple, authentic and true.
- Have a beginner’s mind.
潜入したSessionのキモ
以下に3人のスパイが手分けして潜入したSessionの概要を、今日は次の4つのテーマに分けて紹介していきます。
- 1.GLOBAL
- 2.LEADERSHIP
- 3.LEARNING TECHNOLOGY
- 4.GREAT TRAINING
※文章中の「ヒント」とは?
各Sessionでスパイたちが収集した情報の中から、日本の人材育成担当者の方にとってヒントになりそうなことをエッセンスとして記しています。
1. GLOBAL
#005 David
TU115 Going Global:あなたの研修をタヒチ(あるいはテルアビブ)で実施する
Going Global: Taking Your Training to Tahiti (or Tel Aviv)
(Frank Felsburg)
内容:
Language and cultural considerations when translating learning solutions into other languages.
ヒント:
- Consider: Does what you want to teach fit into the culture of the target learners?
- Perform a culture audit on the content before translating.
- Follow the three P’s when choosing a translation agency: People who are native speakers of target language, certified translators and SMEs related to the content; Proven Process for effective translation; and Past Performance that is correct, accurate and culturally sensitive.
#004 Catherine
TU116 ブラジルVale社の事例:世界中で実施されている研修プログラムの構築方法
A Case Study: Building Vale’s Global Onboarding Program
(Desie Ribeiro, Marta Enes)
内容:
世界中に支社を展開しているブラジルのグローバル企業Vale社が、全支社共通で実施している新人オリエンテーションプログラムの企画デザイン過程と、そのノウハウを紹介する。
ヒント:
- すべての支社を、異文化コミュニケーション理論に基づいた4つのグループに分ける
- パイロットを各支社にテストさせてfeedbackをとり、内容を更新/改善する
- 世界共通コンテンツにするため、知識系クイズ、ゲーム、アニメーションなどエンターテイメント性の高いものを取り入れる
#005 David
TU217 戦略的HRDのためのサムソンの診断システム(SDS)
SAMSUNG Diagnosis System (SDS) for Strategic Human Resource Development
(Chan Lee, Yeonjeong Park)
内容:
Overview of Samsung Diagnosis System’s HRD diagnostic tool, the need for it and strategic HRD, and their process of developing it.
ヒント:
Make sure that you have the correct diagnosis so that you can select, design and implement the correct solution. Also, you should have a Strategic HRD orientation in order to provide workplace solutions on the organizational level (rather than classroom solutions on the personal level).
#005 David
TU317 多国籍受講者向けグローバル研修講師のトレーニング
Train the Trainers to Go Global with Intercultural Intelligence
(Jodi Wabiszewski, Paolo Nagari)
内容:
An introduction to Mr. Nagari’s Intercultural Intelligence Model and principles for cross-cultural interaction. This workshop included a lot of participant interaction that brought forth many good examples of cultural differences and similarities from the diverse audience.
ヒント:
- Focus on Similarities: this will allow you to find common ground to build relationships with people of other cultures, and help you to overcome culture shock.
- See things through the eyes of others: people have their own cultural references and reactions, so understanding these will help you to understand and work across cultures.
- Always value the importance of the local point of view: knowing the stories behind cultural characteristics will allow you to better appreciate another’s culture.
- R.O.I.: Realize that yours is not the only perspective and way; Overcome differences by focusing on similarities; and Interact by synergizing differences into strengths.
2. LEADERSHIP
#002 Kageyama
TU120 卓越したリード – AT&Tのリーダーシップ開発プラットフォーム
Leading with Distinction – AT&T’s Leadership Development Platform for Growth
(Greg Dardis, Joe Wheeler)
内容:
AT&T社における、マネージャー向けリーダーシップ開発研修の事例が紹介された。その注目すべき特徴は次の二つ。
- 部下の顧客対応力(customer experience)を強化することに研修目的を絞った
- お客様役と社員役の2種類に分かれて3種類のロールプレイをすることで、現場スタッフが本気になって仕事に取り組むことの大切さを体感できるプログラム
ヒント:
この二日間研修の目的を1つに絞り込むことで高い成果を上げることに成功した。たった一つの目的に向かって、様々な異なるアプローチをしていくプログラム構成が特徴的。総花的に研修目的を設定するのではなく、「これだけは絶対に実現したい」という研修目的をできるだけ絞り込むことが成功の鍵を握っている。
#002 Kageyama
TU202 強みを活かすリーダーシップ研修がより効果的である7つの理由
7 Reasons Why Strengths-Based Leadership Development Just Works Better
(John H. “Jack” Zender)
内容:
リーダーシップ開発は弱みを克服するアプローチではなく、個人の強みを伸ばすことが極めて有効であるとの調査結果を、Zender博士が紹介した。
ヒント:
強みを伸ばすアプローチはここ数年のASTD ICEでも強調されてきたことである。
- ダニエル・ピンク氏の「DRIVE」(2010年の基調講演)
- マーカス・バッキンガム氏の「Stand Out」(2011年の基調講演)
日本の企業においても、個人の強みを伸ばすアプローチを増やしていくことが有効であろう。
3. LEARNING TECHNOLOGY
#004 Catherine
TU221 マクドナルドのソーシャルラーニングとメンタリング
Planning, Implementing and Measuring Social Learning and Mentoring at McDonald’s
(Dennis Brennan, Randy Emelo)
内容:
McDonald’s社が2005年から始めたメンタリングプログラムに大幅な改良を加え、2011年1月から新たに実施している『3年計画メンタリングプログラム』を解説する。
ヒント:
- 部署や役職の壁を超えたメンター/メンティープログラム →組織全体のコミュニケーション向上を図る
- 学習や研修のサポートツールとしてのメンタリングではなく、タレントマネジメントを含めた「オープンメンタリング」を目指す
- 新プログラムでは、それまで行っていなかった中長期目標を定めたことでさらに成果が期待できる
#002 Kageyama
TU323 講師のためのソーシャルメディア
Social Media for Trainers
(Jane Bozarth)
内容:
研修講師がどのようにソーシャルメディアを活用すると効果的なのか、メディア別に紹介された。
- ブログ:フォーマルな考えを発表するメディア
- wiki:研修受講者達がコラボレートするプラットフォーム(ライブラリー制作など)
- facebook:万能で一番参加しやすい(研修コース毎にfacebookページをつくる)
- twitter:講師仲間との情報共有するメディア
ヒント:
研修に限らずアメリカと日本のソーシャルメディアの活用方法は大きくことなるが、人材育成においてソーシャルメディアの活用を検討する際は、必ずアメリカの事例を研究することをお勧めする。
4.GREAT TRAINING
#004 Catherine
TU316 『聞いて!もうこれ以上ひどいプレゼンはしないから!』
Read My Lips: No more Bad Presenters!
(Deniz Senelt)
内容:
世界中で講師として活躍するイスタンブール出身のスピーカーが、聞き手の注意を引きつけながら記憶に残るようなプレセンテーションをするための10のテクニックと、自己診断ツールを伝授する。
ヒント:
プロフェッショナルなプレゼンに必要な実践的テクニック
- 聞き手の気持ちや感情にコネクトする →名前を覚える、プレゼンの前に個人的な話題を共有する、スマイル
- マジックナンバー3を意識する →短期記憶の理論から1つの情報のナンバリングは3つまでとする(4つ以上では聞き手の記憶に残りにくい)
- イメージトレーニング →実際に自分がプレゼンをしている場面を最初から最後まで詳細にイメージすることで、脳が「よいプレゼンができる」と体に伝える
- とにかく練習する →構成やアプローチを変えながら何度も練習することで内容を長期記憶にする=自然にスムーズなプレゼンができるようになる
明日の予告:
明日でASTD ICE 2012がすべて終了です。明日も基調講演と9つの個別Sessionに参加して収集した情報をお届けします。