IDEA DEVELOPMENT株式会社 アイディア社
企業向け社員研修会社 全国対応の人材育成企業
公式ブログ

若手の傾聴トレーニング|相手の真意をつかむ5つの行動と研修設計

「傾聴は導入研修で教えたはずなのに、配属後は指示の取り違えや聞き漏らしが減らない」。若手社員のコミュニケーション研修を担当する人事の方から、よく聞く悩みです。うなずきやあいづちは身についているのに、相手が本当に求めていることまでは受け取れていない。この差はどこから生まれるのでしょうか。

結論から言えば、若手の傾聴は「聞く姿勢」だけでは完成しません。アイディア社が若手社員の実力診断で使っている基準では、聞く力は相手の言葉の裏にある意図までつかむ「理解力」と、相手に安心して話してもらう「共感力」の2つに分かれます。そして、どちらも具体的な行動に分解できるため、練習することも、伸びを確かめることもできます。

この記事の要点

課題:若手の「聞けていない」は、1年目・2年目・3年目で相手と場面が変わる。

捉え方:傾聴は「理解力」と「共感力」の2層。姿勢だけ教えても真意はつかめない。

打ち手:5つの行動に分けて演習で練習し、診断と上司との対話で定着を確かめる。

本記事では、1〜3年目の若手社員を「聴き手」として育てる傾聴トレーニングの設計を、アイディア社の研修現場の素材をもとに解説します。なお、管理職が部下の話を聞く場面については管理職の問い方・聞き方の記事で扱っています。

若手の「聞けていない」は、年次によって姿が変わる

傾聴トレーニングを設計する前に、まず押さえておきたいことがあります。若手社員の「聞けていない」は、ひとつの問題ではありません。アイディア社が毎年開催している1-2-3年目社員育成フォーラムでは、年次ごとに「よくある問題」を整理しています。そのうち聞くことに関わる項目を抜き出すと、年次が上がるにつれて、聞く相手と場面が変わっていくことが分かります(全体像はフォーラム2023のレポートにまとめています)。

年次別に見た「聞けていない」の現れ方

出典:1-2-3年目社員育成フォーラム2023「年次別のよくある問題」より、聞くことに関わる項目を抜粋(アイディア社)

1年目

聞きに行けない|指示を受け取りきれない

職場で何をすればよいか分からないが、なんとなく聞けない。配属後に上司とのコミュニケーションが少ない。指示を受ける場面では、確認して正確に把握する力が問われます。

聞く相手:上司・メンター

2年目

受け身になる|周囲から情報を取りに行かない

周りとのコミュニケーションが少なく、受け身的。言われたことはやるが、プラスアルファの仕事にはつながらない。相手の期待を自分から聞き出す動きが不足しています。

聞く相手:上司・メンター + 職場の先輩・同僚

3年目

初対面や他部署に弱い|立場の違う相手の話をつかめない

ヒューマンスキルが弱く、特に接点のない人や違う組織とのやり取りでつまずく。チームワークにも改善の余地が残ります。

聞く相手:上司・メンター + 職場の先輩・同僚 + 他部署など接点の薄い相手

ポイント:年次が上がるほど、聞く相手は身近な上司から、関係の薄い相手へ広がる。同じ「傾聴」でも、求められる水準は年ごとに上がっていく。

この整理から、研修を企画する側が受け取れる示唆は2つあります。1つは、導入研修で一度教えただけでは足りないということです。1年目に身につけた聞き方は、関係のできた上司やメンターが相手なら通用します。しかし3年目に求められるのは、前提を共有していない相手の話を、その場で正確につかむ力です。相手が変われば難易度が変わるため、年次に合わせて練習の場面を変えていく必要があります。

もう1つは、3つの現れ方に共通する原因があるということです。聞きに行けない、受け身になる、他部署に弱い。一見ばらばらに見えますが、どれも「相手が何を求めているかを、自分から受け取りに行く動き」が足りていない状態です。うなずきやあいづちといった姿勢を整えるだけでは、この動きは生まれません。では、聞く力を何に分けて捉えれば、練習できる形になるのでしょうか。次の章で、その枠組みを見ていきます。

傾聴は「理解力」と「共感力」の2層で捉える

「傾聴」という言葉は便利ですが、そのままでは研修の目標になりません。何ができれば聞けたことになるのかが、人によって違うからです。そこで手がかりになるのが、アイディア社が若手社員の実力診断で使っている社会人基礎力の枠組みです。この診断は「考える」「伝える」「やる」の3領域で構成され、このうち「伝える」領域は、理解力・伝達力・共感力の3項目に分かれています。

注目したいのは、聞くことに関わる項目が1つではなく2つあることです。理解力は相手の話の内容をつかむ力、共感力は相手が安心して話せる状態をつくる力です。伝達力は自分の考えを分かりやすく伝える側の力なので、ロジカルコミュニケーションの記事に譲ります。聞く場面でこの2つの力がどう働くかを、対話の流れに沿って整理すると次のようになります。

若手の「聞く力」を構成する2つの力と、対話の中での役割

共感力

相手の気持ちをよく理解でき、相手の共感も得られる力。高いと、相手がコミュニケーションに安心感を持てる。

理解力

相手の話の内容を正確に把握し、整理する力。高いと、言葉だけでなく裏にある意図まで受け取れる。

▼ 対話の中では、この順番で働く
1

相手に話してもらう

共感力

前向きな姿勢で聞き、相手の話す機会を意図的につくる。ここが弱いと、相手は必要最低限しか話さず、つかむべき材料がそもそも出てこない。

診断での見方:聞く姿勢、話す機会の与え方、要約、相手への合わせ方など5つの評価ポイントで確認する(次章で解説)

▼
2

話の内容を正確に整理する

理解力

聞いた内容を漏れなく把握し、ロジカルに整理して要約できる。指示の取り違えや聞き漏らしは、この段階のつまずき。

診断での見方:映像を聞いて内容を整理する演習を行い、書いたメモで確認する

▼
3

言葉の裏にある意図までつかむ

理解力

後からメモを見て整理するのではなく、会話中にリアルタイムで把握する。相手が口にした言葉だけでなく、その裏にある意図も含めて受け取る。

診断での見方:内容の整理と要約ができる受講者に対して、次に目指す状態として示している水準

この図から読み取っていただきたいのは、姿勢を整える練習だけでは、2段目と3段目に届かないという点です。うなずきやあいづちは1段目の一部であり、相手に話してもらうための入口にすぎません。冒頭で触れた「傾聴は教えたのに、指示の取り違えが減らない」という状況は、1段目だけを教えて、内容を整理する力と意図をつかむ力を練習していないときに起こります。

逆の見方もできます。内容を整理する力が高くても、1段目が弱ければ相手は多くを語りません。材料が少なければ、裏にある意図を読み取ることもできません。つまり若手の傾聴は、共感力で相手の話を引き出し、理解力でその真意をつかむという、2つの力の掛け算で成り立っています。自社の研修がどちらか一方に偏っていないかを点検することが、見直しの出発点になります。

もう1つ大切なのは、2つの力がどちらも観察できる行動として定義されていることです。理解力は書いたメモで、共感力は聞いているときの振る舞いで確かめられます。観察できるものは、練習の課題にも、フィードバックの材料にもなります。次の章では、共感力を構成する5つの行動を、練習方法とあわせて具体的に見ていきます。

アイディア社のコミュニケーション研修は、「分かる」を「できる」に変える演習中心の設計です。聞く力・伝える力をどう組み合わせて鍛えるか、プログラムの全体像をご覧いただけます。

▶ コミュニケーション研修の詳細を見る

相手の真意をつかむための5つの行動

共感力は、性格や人柄の話ではありません。アイディア社の実力診断では、共感力を5つの評価ポイントに分け、それぞれに「目指す状態」と「練習のしかた」を定めています。受講者には診断結果とあわせてこの内容を返すため、本人が何を練習すればよいかがその場で分かります。5つの行動を、練習法とセットで見ていきます。

共感力を構成する5つの行動と練習法

出典:社会人基礎力の実力診断「共感力」の評価ポイント・目指す状態・アドバイス(アイディア社)

1

聞く姿勢を整える

目指す状態:相手が話したくなるように、前向きな姿勢で聞いている

練習法:自分が話し手のとき、安心して話し続けられた相手と話が続かなかった相手の聞き方を比べて分析する / 対話を録画し、自分の聞く姿勢と相手の反応を確認する

2

相手に話す機会を渡す

目指す状態:相手の話を聞くために、積極的に相手を巻き込んでいる

練習法:自分の話を90秒以内にまとめ、必ず相手に振る / 巻き込みが上手なインタビュアーをテレビやラジオで観察して真似る / 相手を巻き込む質問と表現のバリエーションを増やす

3

反応を見せて話を促す(アクティブリスニング)

目指す状態:相手の話を促すために、アクティブリスニングの技術をよく使っている

練習法:分かりやすく大きくうなずく / 相手が安心できる表情を見せる / 積極的に相づちを打つ

4

相手の話を確認し、要約する

目指す状態:相手を安心させ、周りの理解も深めるために、話を確認したり要約したりしている

練習法:自分の話を始める前に、相手の話を確認する習慣をつける / 相手の話を簡潔に要約してから次に進む

5

相手に合わせる(ペーシング)

目指す状態:やり取りを良くするために、相手に合わせたコミュニケーションをしている

練習法:相手のテンション、話すスピード、雰囲気、話し方のスタイルに合わせて話す

ポイント:うなずきや相づち(3番)は、5つのうちの1つ。残る4つを練習して初めて、相手は必要なことを話してくれるようになる。

この5つを自社の研修内容と見比べると、偏りに気づくはずです。傾聴のトレーニングというと、うなずき・表情・相づちの3番に時間を使いがちです。しかし若手が現場でつまずくのは、多くの場合2番と4番です。自分の説明に精一杯で相手に話を振れない。聞いた内容を確かめないまま作業に入り、後で取り違えに気づく。前の章で見た「内容を正確に整理する」「意図をつかむ」という理解力の段階に進むには、相手に十分話してもらい、聞いた内容をその場で確かめる動きが欠かせません。

2番の練習法にある「自分の話を90秒以内にまとめて、必ず相手に振る」は、研修にそのまま持ち込めるルールです。時間という数字で区切るため、本人も周囲も守れたかどうかを判断できます。「相手の話をよく聞きましょう」という呼びかけは行動に変わりにくいものですが、「90秒で区切って相手に渡す」であれば、ロールプレイの観察項目にも、配属後の振り返り項目にもなります。なお、相手に振るときの問いかけの種類については、広げる質問・深める質問の記事で詳しく扱っています。

もう1つ注目していただきたいのは、練習法の多くが一人でも、職場でも続けられる内容になっていることです。対話を録画して見返す、上手なインタビュアーを観察する、話し始める前に確認を挟む。どれも研修の場を離れてから取り組めます。裏を返せば、研修の時間内でやるべきことは、5つの行動を知識として説明することではありません。受講者が自分の聞き方を一度客観的に見て、どの行動が足りていないかに気づく体験をつくることです。次の章では、そのための演習の組み立て方を紹介します。

研修でどう鍛えるか|演習の組み立てと観察の視点

聞く力は、説明を聞いても身につきません。アイディア社では研修設計の基本を「講義3:演習7」に置いており、聞く力のようなスキル系のテーマでは特にこの比率が効きます。リモート研修の場合、一方通行の講義で受講者の集中が続くのは15分程度が限界です。5つの行動の説明は短く切り上げ、残りの時間を「やってみる」「見てもらう」「自分で見る」に使う組み立てをおすすめします。

聞く力を鍛える演習の流れ(半日〜1日の研修内で組む場合)

STEP 1

短い解説

5つの行動と目指す状態を示す。講義は15分以内に収める

フィードバック:まだない

→
STEP 2

2人ペアで要約

相手の話を聞き、自分の言葉で90秒にまとめて返す。役割を交代して繰り返す

フィードバック:話した相手から

→
STEP 3

3人組で観察

話し手・聴き手・観察役に分かれる。観察役は評価項目に沿って聴き手を見る

フィードバック:第三者の観察役から

→
STEP 4

録画を見返す

対話を録画し、自分の聞く姿勢と相手の反応を確認する。講師が個別に助言する

フィードバック:映像の中の自分と講師から

ポイント:段が進むごとに、自分の聞き方を映す「鏡」が増えていく。最後に自分の目で見るから、足りない行動に納得できる。

この流れで大切なのは、順番を入れ替えないことです。いきなり録画を見せても、何を見ればよいかが分からず、受講者は自分の表情や声ばかりを気にしてしまいます。ペアで要約を返す経験と、観察役として他人の聞き方を評価する経験を先に積むことで、見るべき点が頭に入った状態で自分の映像に向き合えます。2人ペアの要約や3人組でのフィードバックは、アイディア社が新入社員研修で日常的に使っている演習の型で、対面でもリモートのブレイクアウトルームでも実施できます。

観察役に渡す評価項目を決めておく

3人組の演習がうまくいくかどうかは、観察役に何を見てもらうかで決まります。「良かった点を伝えてください」とだけ指示すると、感想の交換で終わってしまいます。参考になるのが、アイディア社が営業職向けのコミュニケーション研修で使った個別フィードバックの評価表です。この研修では、相手に働きかけながら聞く力を次の6項目に分け、項目ごとに5点満点の評価とコメントを返しました。

6項目は、話しかけるタイミング、言葉をかける頻度、相手を巻き込むバリエーション、自分が話しすぎないこと、相手の話の内容確認、相手の反応への適切な対応です。たとえば「相手の話の内容確認」の項目には、「重要なポイントでは確認ができていました。最後に内容を総括してまとめられるとより良いと思います」というコメントが添えられています。点数だけでなく、できていた点と次に試すことが一文ずつ返ってくるため、本人は次の演習で何を変えればよいかが分かります。

若手社員向けの研修でも、この考え方はそのまま使えます。前の章の5つの行動を観察項目にして、観察役用のシートを1枚用意してください。項目が決まっていれば、観察役は見る場所に迷いません。また、観察役を務めること自体が、他人の聞き方の良し悪しを見分ける訓練になります。

一度で終わらせず、反復と個別フィードバックを組み込む

先ほどの営業職向け研修は、1回の研修で完結させていません。リモート研修、1人20分の電話コーチング、2回目のリモート研修、課題提出、成果発表という流れを、半年ほどかけて回しています。背景にあったのは、高度なコミュニケーションスキルを身につけるには反復練習と個別フィードバックが欠かせない、という考え方です。全国に散らばる受講者が相手でも、研修と研修の間に短い個別の接点を挟むことで、練習を続けてもらう仕組みをつくりました。

若手の傾聴トレーニングでも同じことが言えます。研修当日に「自分は相手に話を振れていない」と気づいても、職場に戻って試す機会がなければ元に戻ります。研修の最後に、5つの行動のうち1つを選んで職場で試す課題を出し、数週間後に短い振り返りの場を設けるだけでも、定着の度合いは変わります。対話を複数の動作に分けて個別に練習し、最後に統合するという設計の考え方は、営業向けコミュニケーション研修の事例でも紹介しています。

聞く力を導入研修のどこに置き、配属前後でどう実地に使わせるか。新入社員研修での設計例を、事例としてまとめています。

▶ 導入研修の設計事例を見る|▶ 部門インタビュー型の研修事例を見る

1〜3年目のどこに組み込むか|学ぶ・使う・測るを分けて置く

聞く力のトレーニングは、いつ実施するのがよいのでしょうか。アイディア社が1-2-3年目社員育成フォーラムで示している若手社員の能力整理では、傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)を身につける最適な対象を新入社員としています。基本を学ぶのは1年目、という位置づけです。一方で、冒頭の章で見たとおり、聞く相手は年次とともに広がっていきます。そこでおすすめしたいのが、「学ぶ」機会は1年目に置き、「実地で使う」機会と「測る」機会を、その後の節目に分けて配置する考え方です。

聞く力を育てる機会の置き方(入社〜3年目)

入社直後|学ぶ

導入研修

傾聴力とロジカルに話す力を、両方セットで身につける

導入研修中|使う

部門インタビュー

ヒアリングスキルを学んだうえで、各部門の先輩へ実際に聞きに行く

配属直前|備える

配属直前研修

指示を受ける場面で、積極的に考え、確認して正確に把握する練習をする

2年目|続ける

上司との面談

研修の前・直後・数カ月後に、1回10分未満の対話を重ねる

3年目|測って広げる

実力診断と影響力研修

理解力・共感力を診断で確かめ、接点の薄い相手を巻き込む力へつなげる

この並びからお伝えしたいのは、傾聴のために新しい研修を1本増やす必要はないということです。5つの機会のうち、聞く力そのものを主題にしているのは最初の導入研修だけです。残りの4つは、多くの企業がすでに実施している部門紹介、配属前の研修、上司面談、3年目研修の中に、「聞く場面」を意図して組み込んだものです。年間の研修計画に余白がなくても、既存の節目の設計を少し変えることで、聞く力を使い続ける流れはつくれます。

1年目|部門紹介を「聞く力の実地演習」に変える

5つの機会の中で、最も取り入れやすく効果が見えやすいのが部門インタビューです。部門紹介は、各部門の担当者が順番に説明し、新入社員は座って聞くという形式が一般的です。しかしこの形式では、新入社員が集中できず、内容も覚えていないという状況が起こりがちです。そこでアイディア社では、各部門からの受け身の説明をやめ、新入社員が既存の部門紹介資料に目を通したうえで、不明点を各部門の先輩にインタビューし、自分たちで部門紹介を発表する形に変えました。

聞く力の観点で重要なのは、インタビューの直前にスキルを学ぶ時間を置いていることです。当日は午前中にヒアリングスキルの研修を行い、午後にインタビューの準備へ進みます。ヒアリングスキルの研修は、BODY・QUESTION・SUMMARYの3つのパートで構成しています。学んだ内容を、時間を空けずに各部門の先輩を相手に実際に使うわけです。ロールプレイの相手は同期ですが、インタビューの相手は仕事の中身を知る先輩社員です。資料に書かれていないことを引き出し、聞いた内容を整理して発表資料にまとめるところまでが求められるため、共感力と理解力の両方を一度に使う場になります。

運営面では、各部門の方に事前に時間を確保してもらい、アポイントは新入社員自身に取らせます。アポ取りそのものがビジネスマナーとコミュニケーションの練習になり、説明資料を準備していた部門側の負担も減ります。プログラムの組み立て方は、部門紹介をインタビュー発表型に変えた事例で詳しく紹介しています。

2〜3年目|聞く相手を広げ、現在地を測る

2年目になると、周りとのコミュニケーションが少なく受け身になるという課題が表に出てきます。アイディア社が2年目向けの研修で重視しているのは、研修をきっかけに上司と職場を巻き込むことです。研修の前、直後、数カ月後と接する回数を増やし、その代わり1回あたりは10分未満に抑えて上司の負担を減らします。若手の側から見れば、上司が自分に何を期待しているかを、短い時間で自分から聞き取る機会が年に何度も生まれることになります。

3年目では、接点のない人や違う組織とのやり取りに弱いという課題に対して、人を巻き込む力を強化する研修を置いています。相手を動かすには、まず相手の事情や関心を受け取る必要があり、ここで1年目から積み上げてきた聞く力が土台になります。あわせておすすめしたいのが、個別の実力診断です。近年は人によって能力の差が大きく、自分の長所と短所に気づいていない若手社員も増えています。理解力と共感力を診断で確かめ、結果に基づいて個別の学習プランをつくることで、3年間の取り組みを一度点検できます。年次ごとの育成設計の全体像は、若手社員育成の完全ガイドにまとめています。

効果をどう確かめるか|診断と上司との対話で見る

「聞く力が伸びたかどうかは、測りようがない」。そう考えて、傾聴の研修を修了アンケートだけで終えている企業は少なくありません。しかし、ここまで見てきたように、聞く力は観察できる行動に分解できます。行動に分解できるものは、確かめることもできます。アイディア社が使っている方法は2つあります。能力そのものを測る実力診断と、職場での実践を追う上司との対話シートです。

実力診断で、理解力と共感力の現在地を示す

社会人基礎力の実力診断は、1日かけて行うシミュレーション形式のプログラムです。聞く力に関わる2項目は、どちらも映像を使って確かめます。理解力は、映像の内容を整理する演習を行い、受講者が書いたメモで確認します。共感力は、映像を見て解釈する演習を行い、受講者が書いた文章で確認します。本人の自己申告ではなく、実際に聞いて書いたものを材料にしているため、「聞けているつもり」と実際との差がはっきり表れます。

結果は当日のうちに個別にフィードバックし、個人レポートとしても本人に返します。レポートには、領域ごとのバランスが分かるレーダーチャートと、項目別の評価、コメント、アドバイスが載ります。たとえばサンプルの個人レポートでは、理解力が5段階の4で「内容を正確に把握して、漏れなくまとめることができる」、共感力が3で「相手の意図をある程度把握できる」と評価されています。この受講者の場合、内容の整理はできているので、次の課題は相手に話してもらう側の行動だと分かります。前の章までに紹介した5つの行動のうち、どれを練習するかを本人が選べる状態になるわけです。

人事担当者にとっての価値は、受講者全体の傾向が分かる全体レポートにあります。ある年次で理解力に比べて共感力の平均が低ければ、翌年の導入研修では相手に話してもらう練習の比重を上げる、といった判断ができます。診断は個人への通知で終わらせず、次の研修設計の根拠として使うことをおすすめします。

対話シートで、職場での実践を上司と一緒に追う

診断が測るのは、研修の場で発揮できる力です。職場で実際に使えているかどうかは、別の方法で確かめる必要があります。そこで役に立つのが、研修の前後に上司と3回面談する対話シートです。1枚のシートに、本人が記入する欄と、上司との面談の記録欄が、時期ごとに並んでいます。

対話シートで行う3回の面談

STEP 1

研修を受ける前

本人が書く:テーマに関する自分の強みと弱み、実務でどう活用したいか

上司と話す:受講日の前日までに共有し、助言を受ける

→
STEP 2

研修を受けた直後

本人が書く:研修で得た気づき、4週間以内に実践する課題、不安な点

上司と話す:受講当日か翌日に。面談は最低3分で済む

→
STEP 3

研修からおよそ4週間後

本人が書く:うまくできたこと、できなかったこと、課題への取り組み状況

上司と話す:一連の経験と得られた知恵を共有し、助言を受ける

ポイント:上司の負担は1回数分。回数を3回に増やすことで、研修が「受けて終わり」にならない。

傾聴トレーニングでこのシートを使う場合、2回目の「4週間以内に実践する課題」に、5つの行動のうち1つを書いてもらいます。「自分の話は90秒で区切って相手に振る」「話し始める前に相手の話を要約する」といった具体的な行動であれば、4週間後に上司が「できていたかどうか」を一言で返せます。上司の側も、何を見ればよいかが事前に分かっているため、面談が雑談で終わりません。

このシートには、聞く力の観点で見逃せない工夫がもう1つあります。上司のコメント欄を、上司ではなく受講者本人が記入することです。面談で受けたアドバイスやフィードバックを、本人が自分の言葉で書き留めます。つまり面談のたびに、上司の話を聞き、要点を整理して文章にまとめるという、理解力の実地練習が行われていることになります。書かれた内容を上司が見れば、自分の意図がどこまで伝わったかも確かめられます。聞く力を鍛える仕組みと、確かめる仕組みが、1枚のシートの中で同時に動いているわけです。

若手社員の聞く力をどう測り、どの年次に何を組み込むか。自社の研修体系に合わせた設計のご相談を承っています。

▶ お問い合わせはこちら|▶ 若手・次世代リーダー研修を見る

よくある質問

Q. 若手社員の傾聴トレーニングでは、何を鍛えるのですか?

A. 相手に安心して話してもらう「共感力」と、話の内容を正確に整理し、言葉の裏にある意図までつかむ「理解力」の2つです。うなずきや相づちといった聞く姿勢は共感力の一部にあたります。姿勢に加えて、相手に話す機会を渡す、聞いた内容を確認して要約する、といった行動まで練習することで、指示の取り違えや聞き漏らしを減らせます。

Q. 傾聴の研修は、何年目に実施するのが効果的ですか?

A. 基本を学ぶのは1年目の導入研修が適しています。アイディア社の若手社員の能力整理でも、傾聴力を身につける最適な対象は新入社員としています。ただし、聞く相手は年次とともに上司から周囲、他部署へと広がるため、1回で終わらせないことが大切です。1年目は部門インタビューで実地に使い、2年目は上司との面談を重ね、3年目は実力診断で現在地を確かめるというように、既存の節目に聞く場面を組み込むことをおすすめします。

Q. 傾聴トレーニングはリモート研修でも実施できますか?

A. 実施できます。2人ペアの要約や3人組での観察は、ブレイクアウトルームを使えばリモートでも行えますし、対話の録画もリモートのほうが手軽です。聞く力は、対面でもリモートでも使えるスキルとして設計することが重要です。一方で、講師からの細かいフィードバックが必要な内容は対面研修のほうが適しています。解説と基本の演習はリモートで行い、個別フィードバックに重点を置く回は対面にする、という組み合わせも有効です。

Q. 聞く力が伸びたかどうかは、どうやって確かめればよいですか?

A. 研修の中では、観察役が評価項目に沿って聴き手の行動を見て、点数とコメントで返します。能力そのものは、映像を使った演習で理解力と共感力を測る実力診断で確かめられます。職場での実践は、研修の前・直後・およそ4週間後に上司と面談する対話シートで追います。修了アンケートの満足度だけで判断せず、行動を観察する方法を1つ以上組み合わせてください。

Q. 管理職向けの傾聴研修とは、何が違いますか?

A. 聞く目的が違います。管理職の傾聴は、部下が安心して話せる場をつくり、考えを引き出すことが主な目的です。若手社員の傾聴は、上司の指示や周囲の期待、他部署の事情を正確に受け取り、自分の仕事に反映させることが目的になります。そのため若手向けでは、聞く姿勢に加えて、内容を整理する力と意図をつかむ力の練習に比重を置きます。管理職側の聞き方については、管理職の問い方・聞き方の記事をご覧ください。

まとめ|若手の傾聴は「行動に分けて、使う場を置く」

若手社員の傾聴トレーニングを見直すときの要点は、3つに整理できます。

1つ目は、傾聴を2つの力で捉えることです。相手に安心して話してもらう共感力と、内容を整理して意図までつかむ理解力。うなずきや相づちの練習だけでは、指示の取り違えは減りません。自社の研修がどちらかに偏っていないかを、まず点検してください。

2つ目は、観察できる行動に分けて練習することです。聞く姿勢、話す機会を渡す、反応を見せる、確認して要約する、相手に合わせる。この5つを観察項目にして、ペア、3人組、録画の順に自分の聞き方を見る機会を重ねると、受講者は自分に足りない行動に納得できます。

3つ目は、学ぶ場・使う場・測る場を分けて置くことです。導入研修で学び、部門インタビューで実地に使い、上司との面談で続け、実力診断で現在地を確かめる。新しい研修を増やさなくても、既存の節目に聞く場面を組み込むことで、1年目に学んだ聞き方は3年目まで育ち続けます。

聞く力は、伝える力に比べて成果が見えにくく、研修の中でも後回しにされがちです。しかし、相手の真意を受け取れなければ、どれだけ分かりやすく話せても仕事は噛み合いません。来年度の若手研修を検討される際に、本記事の枠組みを点検の手がかりとしてお使いください。

若手社員の「聞く力」を、練習できて確かめられる研修にしませんか

アイディア社は、演習中心の研修設計と個別フィードバックで、「分かる」を「できる」に変えるコミュニケーション研修を提供しています。導入研修への組み込みから、部門インタビュー、実力診断まで、貴社の研修体系に合わせてご提案します。

お問い合わせはこちら

関連コンテンツ

「わかった」で終わらない。「できる」ようになる。
研修内容を実践で活かし、徹底した定着フォローにより職場で成果を出す

演習中心の飽きさせないダイナミックな研修

人材育成、企業研修に関するお問い合わせはこちらからどうぞ

WEBサイトに掲載されていない研修も多数ございます。
最適なご提案をさせていただきます

03-5368-0890
メールフォームからのお問い合わせはこちら
メルマガ登録
無料レポートダウンロード
Copyright IDEA DEVELOPMENT INC.
All rights reserved.
TOPへ