新入社員の部門紹介をインタビュー発表型に変える
各部門からの一方的な説明を聞く形式の部門紹介に新入社員が集中できず、内容を覚えていなかった。部門担当者の準備・発表負担も大きく、双方にとって非効率な時間になっていた。

研修テーマ
新入社員による部門インタビュー&発表型プログラムに転換。ヒアリングスキル・プレゼンテーションスキルの習得を兼ねた1日プログラムを設計。
「部門紹介の時間、新入社員が全然聞いていない」「各部門が用意した資料を一方的に説明するだけで、翌日には内容を忘れている」——新入社員研修の中で毎年繰り返されるこの課題は、部門紹介の「形式」に根本的な問題があります。解決策は、部門担当者が説明する形式を廃止し、新入社員自身が各部門にインタビューを行い、情報を整理して発表する「インタビュー発表型」に転換することです。本記事では、この形式への転換方法と、インタビュー・プレゼンの具体的な進め方を解説します。
従来型の部門紹介が機能しない構造的な理由
従来の部門紹介が「やっただけ」に終わる理由は、新入社員の問題ではなく、形式そのものの設計に問題があります。
第一に、人間は一方的に聞いた情報より、自分で調べて話した情報のほうが格段に記憶に定着します。これは学習科学で「生成効果(Generation Effect)」として知られている原則です。部門担当者が準備した内容を聞くだけの形式では、この原則に反した設計になっています。第二に、各部門がそれぞれ自部門のPRを行うため、どうしても説明が長くなり、新入社員は途中で集中力を失います。第三に、自分の配属先がまだ決まっていない段階では、他部門の情報は「他人事」として処理されてしまい、記憶にも意欲にもつながりません。
アイディア社では、こうした従来型の限界を踏まえ、「聞く側」だった新入社員を「調べて発表する側」に転換するインタビュー発表型を推奨しています。
導入研修全体の中での部門紹介の位置づけを知りたい方へ
部門紹介は導入研修の一部です。全体設計の考え方と定着のコツを別の研修事例で解説しています。
→ 新入社員の導入研修設計|2本柱と定着のコツ
インタビュー発表型がもたらす4つの複合効果
この形式の最大の強みは、「部門理解」だけでなく、新入社員に求められる複数のスキルが同時に鍛えられる点にあります。
効果①:主体性と理解度の飛躍的向上
自分でインタビューの質問を考え、先輩社員にアポイントを取り、直接話を聞いて情報をまとめる。このプロセスそのものが「能動的に情報を取りに行く」訓練になります。受け身で聞いた情報と、自分で集めた情報では、記憶の定着率に圧倒的な差が出ます。
効果②:ビジネスマナーの実践機会
先輩社員へのインタビューのアポイント取りは、それ自体がビジネスマナーの実践です。「○○部の△△さんに、○月○日の○時に30分お時間をいただけますか」——メールの書き方、敬語の使い方、時間調整の配慮など、導入研修で学んだマナーをリアルな場面で試す貴重な機会になります。
効果③:コミュニケーションスキルの実践
インタビューでは傾聴力が、発表ではロジカルに情報を伝える力が求められます。導入研修で学んだコミュニケーションスキルを、部門紹介という「本番に近い場面」で実践することで、スキルの定着が加速します。
コミュニケーション研修との連動設計を知りたい方へ
インタビュー発表型の部門紹介は、コミュニケーション研修で学んだスキルの実践機会として設計できます。
→ 新入社員コミュニケーション研修の見直し方
効果④:同期のチームワーク構築
チームでインタビュー内容をまとめ、発表準備をする過程で、同期同士の協力関係が自然に生まれます。入社間もない時期に「一緒に何かをやり遂げた」という共同体験は、その後の同期ネットワークの土台になります。
実施の3ステップ——ヒアリング・資料作成・発表
インタビュー発表型の部門紹介は、「ヒアリング→資料作成→発表」の3ステップで構成します。各ステップの前に短いスキルレクチャーを入れることで、新入社員は「やり方を学ぶ→すぐに実践する」というサイクルを1日の中で3回繰り返します。
ステップ①:部門ヒアリング
インタビューに入る前に、ヒアリングスキルの基本を15〜20分でレクチャーします。アイディア社では「Body・Question・Summary」の3要素で構造化しています。
Bodyは、インタビュー時の基本姿勢です。相手の目を見る、うなずきで傾聴を示す、メモを取りながらも相手への関心を切らさない——こうした非言語コミュニケーションの基本を確認します。Questionは、質問の組み立て方です。事前に部門紹介資料を読んで「分からないこと」をリストアップし、オープンクエスチョン(「この部門で一番やりがいを感じる場面は?」)とクローズドクエスチョン(「チームの人数は?」)を使い分けるスキルを身につけます。Summaryは、インタビュー内容のまとめ方です。聞いた内容を「この部門の役割」「仕事の流れ」「やりがいと課題」の3つの軸で整理する方法を教えます。
レクチャー後、新入社員は実際に各部門の先輩社員にインタビューを行います。事前にアポイントを取る段階からプログラムに含めることで、社内コミュニケーションの実践が始まります。
ステップ②:プレゼン資料作成
インタビュー終了後、チームで発表資料を作成します。ここでもプレゼンテーションスキルの基本を事前にレクチャーします。アイディア社では「Think・Make・Speak」の3フェーズで教えています。Thinkは「何を伝えたいか」を整理する段階、Makeはスライドに落とし込む段階、Speakは実際に話す段階です。
資料作成の時間は60〜90分に限定します。時間を制約することで、「何を残し、何を省くか」の判断力が鍛えられます。スライドの上限枚数(5〜7枚)を設けることも、情報の優先順位づけの実践になります。
ステップ③:プレゼン発表
各チームが部門紹介の発表を行います。発表に部門担当者にも参加してもらい、内容の誤りや補足事項をその場で修正・追加してもらうことで、情報の正確性が担保されます。発表後の質疑応答は、発表者のコミュニケーション力をさらに鍛える機会として機能します。成果発表のスキルは年度末にも活きますので、新入社員の成果発表設計もあわせてご覧ください。
1日プログラムのスケジュール例
インタビュー発表型の部門紹介は、1日で完結するプログラムとして設計できます。午前中にヒアリングスキルのレクチャーとインタビュー実施、午後にプレゼンスキルのレクチャーと資料作成・発表という流れが基本です。
このスケジュールのポイントは、「学ぶ→すぐ実践」のサイクルが1日の中で2回転することです。午前はヒアリングスキルを学んですぐインタビューに行き、午後はプレゼンスキルを学んですぐ資料作成・発表に取り組みます。インプットとアウトプットの間隔が短いほど、スキルの定着率は高まります。
運営上の工夫:成功させるための3つのポイント
①事前に部門担当者へ案内を出す
人事部門から各部門に「新入社員がインタビューに伺います。30分程度お時間をいただけますか」と事前に案内を出しておきます。これにより、部門担当者は「説明資料を準備する」負担がなくなり、新入社員との双方向の対話に集中できます。実際には、一方的に説明する従来型より、新入社員とのやり取りを楽しむ部門担当者のほうが多いです。
②インタビュー前に部門紹介資料を配布する
過去の部門紹介資料を事前に配布し、新入社員には「資料を読んだ上で、資料に書いていないことを聞く」よう指導します。これにより、基本的な情報は資料でカバーしつつ、インタビューでは「実際に働いてみてどう感じるか」「この部門の強みと課題は何か」といった、資料では得られない生の情報を引き出すことができます。
③制限時間を厳守する
インタビュー、資料作成、発表のすべてに厳格な制限時間を設けます。「完璧な資料を作ること」より「限られた時間内で最大限のアウトプットを出すこと」のほうが、ビジネスの実践に近い経験です。スライド枚数の上限(5〜7枚)も設定し、「何を残し、何を捨てるか」の判断力を同時に鍛えます。
よくある質問
各部門の担当者にインタビューをお願いするのは負担が大きくないですか?
事前に人事から案内を出しておけば、ほとんどの部門で快く協力が得られます。従来の「説明資料を作って30分話す」準備に比べると、「新入社員の質問に答える」だけのインタビュー形式のほうが部門担当者の負担は明らかに軽くなります。新入社員と直接対話する機会として歓迎する声のほうが多いです。
インタビュー形式だと全部門の情報を網羅できないのでは?
従来の発表形式でも、実際に「全部門の情報が定着する」ことはほとんどありません。インタビュー形式では、担当した部門については深い理解が得られ、他チームの発表を通じて残りの部門の概要もカバーできます。基本情報は事前配布資料で補完し、インタビューでは「資料に書いていない生の情報」を得ることに集中させることで、質の高い部門理解が実現します。
プレゼン資料の作成に時間がかかりすぎる場合はどう対処しますか?
制作時間の厳守とスライド枚数の上限設定が有効です。60〜90分の制作時間とスライド5〜7枚の制限を設けることで、「限られた時間で情報を整理してアウトプットする」というビジネスの基本スキルが同時に鍛えられます。完璧を目指すより「時間内にベストを出す」姿勢を求めましょう。
このプログラムはリモートでも実施可能ですか?
はい、リモートでも実施可能です。インタビューはビデオ通話で、資料作成はオンライン共同編集ツールで、発表はウェブ会議で行えます。ただし、対面で実施したほうがインタビュー時の非言語コミュニケーション(表情・姿勢・目線)の練習効果は高いため、可能であれば対面実施を推奨します。
インタビュー発表型は導入研修のどのタイミングで実施するのがベストですか?
導入研修の中盤(入社2〜3週目)が最適です。入社直後だとビジネスマナーや基本スキルが未習得のため、インタビューのクオリティが低くなります。導入研修でマインドセットとコミュニケーションの基礎を学んだ後に実施することで、学んだスキルの実践機会として機能し、スキルの定着も加速します。
新入社員の部門理解・主体性向上プログラムをお探しの方へ
アイディア・デベロップメント社では、インタビュー発表型の部門紹介プログラムをはじめ、導入研修全体の設計支援を行っています。ヒアリングスキル・プレゼンテーションスキルの講習も含めた1日プログラムの導入についてお気軽にご相談ください。







