新入社員の電話応対・メールマナーをどう教えるか|リモートネイティブ世代向け

リモートネイティブ世代の新入社員に従来型マナー研修が機能しない理由
結論からお伝えします。固定電話の受け方や転送を中心に組んだ従来の電話応対研修、業務メールのテンプレートを暗記させるメールマナー研修は、2025年に入社した世代にはそのままでは機能しません。一方で「電話・メールはもう教えなくてよい」というわけでもありません。何を残し、何を捨て、何を新しく加えるか──その判断軸が、今の新入社員研修の見直しでは欠かせなくなっています。
本記事は、アイディア社代表のジェイソン・ダーキーが2025年4月に約2,000名の新入社員研修を講師として担当した現場経験をもとに、電話応対とメールマナーという2つのテーマに絞って、研修内容と研修形態の再設計の指針を整理したものです。新入社員研修全体の傾向は別記事「2025年新入社員の傾向と研修設計の見直し方|講師が約2,000名を見て分かった4つのポイント」で扱っていますので、合わせてご覧ください。
(4/7〜4/25)
(対面7/ハイブリッド3/リモート2)
(ハイブリッド研修クラス別)
この規模の研修現場で複数年にわたり新入社員と接していると、世代の変化が「印象論」ではなく具体的な研修内容の微調整・大幅変更として見えてきます。特に2025年は、それまでの数年と異なる傾向がはっきりと現れた年でした。
2025年新入社員に見られる3つの特徴
研修現場で観察された傾向のうち、電話とメールのマナー研修の再設計に直接関わるものは、次の3点です。
1. 単語ベースのコミュニケーションに慣れている。チャットやSNSでの短文・単語ベースのやりとりが中心の生活を送ってきたため、ロジカルに文章を組み立てる経験が相対的に少ない。メールのような「主語・述語・根拠・依頼内容を1つの文書として完結させる」フォーマットには戸惑いがあります。
2. 電話そのものへの抵抗感がある。家族との連絡もLINEや動画通話が中心で、声だけのリアルタイム会話──しかも相手の表情も背景も見えない「音声電話」──を業務でかける・受ける経験が圧倒的に少ない。固定電話の受け方を教える以前に「電話に出る重要性とふさわしい話し方」から教える必要があります。
3. 一方で、対面コミュニケーションへの抵抗はほぼない。2020年〜2022年入社の世代にあった「人前で話すのが苦手」「研修中に発言できない」といった傾向は2025年新入社員にはほとんど見られず、200名以上の研修でも眠そうにしている受講者は一人もいないほど積極的でした。マインド面では非常に良い状態でスタートできる世代です。
つまり「対面の積極性は十分にある、しかし電話とテキスト(メール)のスキルだけは構造的に経験不足」という状態。だからこそ、電話応対とメールマナーを過去のフォーマットのまま教えるのは効果が薄く、新入社員の実態に合わせて中身を組み替える必要があるのです。
電話応対:何を残し、何を捨て、何を加えるか
電話応対の研修を見直す際の判断軸は、「全部やる」でも「全部やめる」でもなく、捨てるもの・残すもの・新しく加えるものの3つに整理することです。リモートネイティブ世代の新入社員の実態と、配属先のビジネスの現状の双方を踏まえると、次のように整理できます。
この3軸で電話応対研修を組み替えると、研修時間の総量は減らさないまま、配属後にすぐ使えるスキルに集中できます。特に重要なのは、各カリキュラムの判断基準を「配属先で本当に使うか」に置くこと。新入社員研修の担当者が「昔から教えてきたから」「念のため入れておく」で項目を残すと、研修の密度が下がり、本当に必要なテーマに割く時間が削られます。
「電話に出ない世代」に教えるべき新しい基礎とは?
2025年新入社員に電話応対を教えるとき、もっとも盲点になるのが「電話に出る」という行為そのものの基礎です。固定電話を使ったことがある世代にとっては、「電話が鳴る→受話器を取る→相手の用件を聞く→メモする」の流れは説明不要の常識でした。しかしリモートネイティブ世代にとっては、これらは一つひとつが新しい体験です。
たとえば、こんな場面が研修現場で観察されています。社用スマートフォンに着信があったとき、新入社員は通話ボタンを押して耳に当てる。そして相手の名前・社名・用件を聞きながら、もう一方の手でメモをとろうとする。ところが、メモをとるためにスマートフォンを耳から離すと音声が聞こえない。スマホで通話しながら同じスマホでメモアプリを開くこともできない。結果として「すみません、もう一度お願いします」を繰り返し、相手を待たせてしまう──。
固定電話を使ってきた世代であれば、受話器を肩と耳で挟んで両手でメモをとる、あるいは机上のメモ用紙にペンですぐに書き始める動作は身体的に染み付いています。しかしスマホネイティブには、その動作経験そのものがありません。だからこそ、研修では「電話を受ける前にペンとメモ用紙を手元に用意しておく」「スピーカー機能を使う」といった、これまで誰も教えてこなかった物理的な準備の手順から伝える必要があります。
このような「電話に出る基礎」を含めて新入社員研修を組み立てる際は、コミュニケーション研修全体の中での位置づけが重要になります。電話応対は単独のマナー研修としてではなく、コミュニケーション研修の一部として設計するほうが、配属後の業務に直結します。
▶ 電話応対を含む新入社員のコミュニケーション研修の見直し事例は、コミュニケーション研修の見直し方をご覧ください。
メールマナー:単語ベース世代に必要な4つのライティング基本
メールマナーの研修も、電話応対と同じく中身の見直しが必要です。ただしメールの場合は、テンプレートや署名の形式を教えるよりも先に、「ロジカルに文章を組み立てる基本」から教えなければ機能しません。チャットやSNSで単語ベースの短文コミュニケーションに慣れてきた世代にとって、主語・述語・根拠・依頼内容が1つの文書として完結しているメールは、書き慣れない種類のアウトプットだからです。
アイディア社が2025年新入社員研修で採用しているのは、メールの細部に入る前に、ライティング全体に共通する4つの基本を押さえる構成です。この4基本は、メール・日報・ビジネス文章・議事録のいずれにも応用できる土台になります。
ライティングの4基本|単語ベース世代に教えるべき観点
簡潔に書く
必要な情報だけに絞り、不要な前置きや重複を削る。チャット文化との違い:チャットでは「お疲れさまです!ちょっと聞いてもいいですか?」のような遠慮の前置きが許容されるが、メールではむしろ用件が後ろにずれて読みにくくなる。
相手中心に書く
自分が伝えたい順番ではなく、相手が知りたい順番で構成する。チャット文化との違い:チャットでは送信側のペースで会話が進むのが普通だが、メールは1通で読み手が判断・行動できる必要がある。
解決思考で書く
問題の報告だけで終わらせず、自分の案・選択肢・確認したい点を添える。チャット文化との違い:チャットなら「これってどうですか?」と短く投げかけ、その後の往復で詰めていけるが、メールは1往復で完結することを目指して書く。
ロジカルな構成にする
要件・背景・依頼・期限を、読み手が誤読しない順序で配置する。チャット文化との違い:チャットは時系列に上から下へ流れるが、メールは件名→要約→詳細→依頼の構造を1通の中で組み立てる必要がある。
この4基本を押さえずに「ビジネスメールの定型」だけを教えると、新入社員は「お世話になっております」「何卒よろしくお願いいたします」といった形式句は書けるようになっても、本文の中身は単語の羅列のままになります。研修現場でよく見るのは、宛名と挨拶は完璧なのに、本文を読んでも結局「何をしてほしいのか」が分からないメールです。形式以前に、文章の組み立て方そのものを習慣として身につけさせる必要があります。
生成AIツールはメール研修にどう組み込むべきか?
2025年新入社員のメール研修を設計するうえで避けられないのが、生成AIツールの位置づけです。新入社員自身がメール作成にChatGPTなどを使うことは、もはや前提として考えるべき状況になっています。「使わせない」という方針は現実的ではなく、「どう使えば、配属後の行動変容につながるか」を研修で示すほうが効果的です。
ここで重要なのは、AIに「メールを書いてもらう」だけのスキルを身につけても、配属後の業務には直結しないという点です。生成AIに依頼するときも、結局のところ「相手は誰か」「何の用件か」「いつまでに何をしてほしいのか」を自分で言語化する必要があります。つまり4基本(簡潔/相手中心/解決思考/ロジカル構成)の思考そのものを身につけていないと、AIに渡すプロンプト自体が曖昧になり、出てくる文章も使えないものになるのです。
そのため、AIツールを研修に組み込む順序としては、まずAIなしで4基本に基づいたメール作成を演習し、自分の頭で文章を組み立てる経験を積ませた後で、AIへの指示出し(プロンプト設計)と推敲スキルを教えるのが効果的です。AIは思考を肩代わりするものではなく、自分の思考を効率化するツールとして位置づけることが、行動変容につながります。
▶ 簡潔・相手中心・ロジカルに伝えるスキルを体系的に学ぶ研修プログラムは、ロジカルコミュニケーション研修をご覧ください。
ライティング編×スピーキング編:コミュニケーション研修の現代的再編
電話応対とメールマナーは、いずれも単独のマナー研修としてではなく、コミュニケーション研修の一部として再編すると効果的です。アイディア社が2025年新入社員研修で採用している整理は、コミュニケーション研修をライティング編とスピーキング編の2区分に分け、それぞれの中で配属後にすぐ使えるテーマを設定する形です。
コミュニケーション研修の2区分整理
ライティング編
ライティングルール
簡潔・相手中心・解決思考・ロジカル構成の4基本
日報の書き方
必要最低限の情報をロジカルに整理して伝える
メールの書き方
相手中心に、一往復で解決できるように書く
ビジネス文章
必要最低限のフォーマットとテクニックを身につける
議事録
複雑な内容を的確に把握してロジカルにまとめる
スピーキング編
電話応対
受け方・かけ方の流れ、ポイント、よくある問題
報告
相手にとって必要な情報に絞り、簡潔明瞭に伝える
相談
的確なアドバイスをすぐもらえるように相談する技術
この2区分の整理が機能する理由は、配属後の業務シーンとの対応関係が明確になるからです。日報やメールは「書く」シーン、電話応対や報告・相談は「話す」シーン。新入社員は自分が今どちらのスキルを使う場面にいるかを認識しやすくなり、研修で学んだ内容を業務に転用しやすくなります。
なぜ「ライティング編」「スピーキング編」の2区分が効果的なのか?
過去のコミュニケーション研修では、「報告・連絡・相談」「敬語・言葉遣い」「電話・メール・対面」のように、シーン別の項目を並列に並べる構成が主流でした。これは1日終日のマナー研修のなかで網羅的に扱うには合理的な並べ方でしたが、新入社員にとっては「研修で習ったあの内容、どの場面で使うんだったか」と思い出すときに混乱が起きやすい構成でもありました。
2区分整理に切り替えると、新入社員が業務中に「これから書こうとしている/話そうとしている」と認識した瞬間に、対応するスキル群が頭の中で引き出しやすくなります。また研修担当者にとっても、ライティング編とスピーキング編それぞれに共通する「ロジカルに組み立てる」「相手中心で構成する」といった基本原則を、編単位でまとめて教えやすくなります。同じ4基本(簡潔/相手中心/解決思考/ロジカル構成)が、メールでも電話でも報告でも繰り返し効いてくる構造を、研修内で繰り返し体験させることができます。
ライティング編とスピーキング編の両方の上位に「ロジカルに伝える」という共通の土台を置く設計が、配属後のスキル定着につながります。コミュニケーション研修を1つの大きな塊として教えるのではなく、目的別の2区分に整理して、編ごとに体系立てて学ばせる構成にシフトしているのが、2025年新入社員研修の現場で見えてきた指針です。
▶ アイディア社のコミュニケーション領域の研修プログラム一覧は、コミュニケーション研修をご覧ください。
ビジネスマナー研修の研修形態も組み替える:従来vs実践型
ここまで電話応対とメールマナーの研修内容の見直しを扱ってきましたが、もう一つ組み替えるべき要素があります。それは研修内容そのものではなく、研修形態です。新入社員の集中力・記憶定着・配属後のすぐ使えるスキル化のためには、「1日終日でビジネスマナーを一気に教える」従来型から、「短いインプット+演習中心の集合研修」を組み合わせる実践型への移行が効果的です。
この3観点の組み替えポイントは、いずれも新入社員の学習効率と配属後の即活用に直結しています。タイミングを2段階に分けるのは、入社直後の知識インプットと配属直前のスキル定着を分離するため。期間をeラーニング+半日集合に変えるのは、座学で受動的に長時間聞くより、自己学習で予習してから集合で演習に集中するほうが定着するため。スタイルを社内編/社外編の場面別演習に切り替えるのは、新入社員が配属後に直面する具体的なシーンと結びつけて記憶させるためです。
研修担当者の立場で考えると、研修形態を組み替える際の判断基準は「知識として知っているか」ではなく「配属直後に身体で動けるか」になります。1日終日でマナーを網羅的に説明しても、配属後にとっさの電話対応や来客応対で手が動くわけではありません。むしろインプットを軽く済ませて、演習に時間を割き、配属直前にもう一度リマインドの形で身体に染み込ませるほうが、配属後の行動につながります。
このようなビジネスマナー研修の見直しは、電話・メール・対面のすべてに影響します。コミュニケーション研修と合わせて全体設計を組み替えることで、新入社員研修全体の効果が大きく変わります。
▶ 実践型ビジネスマナー研修への切り替え事例は、ビジネスマナー研修の見直し方をご覧ください。
よくある質問
Q1. 固定電話の研修を完全に廃止してしまっていいのでしょうか?
判断は配属先の業務実態によります。配属先で固定電話を業務で使っていない場合、固定電話機の受け方・転送・保留操作などの詳細手順は省略してかまいません。一方で、コールセンター業務・営業のインバウンド対応・受付業務など、固定電話が日常的に使われる職場に配属される新入社員には、従来通りの研修内容が必要です。新入社員研修を一括で運営している場合は、配属先別に研修パートを分けるか、配属直前にもう一度業務別に補講する形が現実的です。
Q2. 電話応対の研修は対面とリモートのどちらで実施すべきですか?
演習中心であれば対面、インプット中心であればリモートが効果的です。電話応対はロールプレイによる「身体で覚える」要素が大きく、講師が受講者の表情・声の調子・メモを取る手の動きまで観察してフィードバックする必要があります。そのため、ロールプレイ演習は対面で実施するほうが学習効果が高くなります。一方、電話応対の基本知識・敬語のルール・よくあるトラブル事例といったインプット部分は、eラーニングや短時間のリモート研修で十分です。インプットを事前に済ませ、集合研修では演習に時間を集中させる「ブレンド型」が、研修コストと効果のバランスとして推奨されます。
Q3. 生成AIをメール研修に組み込むときの注意点は何ですか?
順序を間違えないことです。最初から「AIにメールを書かせる」スキルを教えると、新入社員は自分の頭でメールを組み立てる経験を積まないまま配属に至り、AIに渡すプロンプト自体が曖昧で、出てくる文章も業務に使えないものになります。研修の順序としては、まずAIを使わずに簡潔・相手中心・解決思考・ロジカル構成の4基本でメールを書く演習を行い、自分の思考で文章を組み立てる経験を積ませることが先決です。そのうえで、AIへの指示出し(プロンプト設計)と推敲の手順を教えると、AIを思考の効率化ツールとして使いこなせるようになります。
Q4. ハイブリッドワーク前提の上司・先輩との関係構築は、新入社員にどう教えればよいですか?
「対面の機会が限られているからこそ、テキストと音声のコミュニケーション品質を上げる」と整理して伝えるのが効果的です。出社日にしか上司と顔を合わせない環境では、チャットや短い電話でいかに簡潔・相手中心に伝えるかが信頼構築の鍵になります。具体的には、報告は結論先出しで30秒で伝える、相談は自分の案を添えて持ち込む、議事録やチャット投稿は読み手が誤読しない構造で書く──といったスキルが、ハイブリッドワーク環境での関係構築に直結します。電話応対・メールマナーの研修は、単独のマナースキルではなく、ハイブリッドワークでの上司・先輩との関係構築のための土台として位置づけると、新入社員の納得感が高まります。
新入社員研修の見直しを検討されている方へ
2025年新入社員研修の全体傾向と、約2,000名を担当した現場からの今後の対策については、2025年新入社員の傾向と研修設計の見直し方|講師が約2,000名を見て分かった4つのポイントで詳しく解説しています。電話・メールマナーを含めた新入社員研修全体の設計について、貴社の現状に合わせたご相談を承ります。
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