ASTD2014 サポートツール
この記事では、ASTD2014帰国報告会のうち「サポートツール」をお伝えします。
※「ASTD(ATD)人材育成国際会議 帰国報告会」は、世界最大の人材育成会議であるASTD(ATD) ICEで発表された内容を日本企業に役立つように紹介するセミナーで、アイディア社が毎年開催しているものです。
講演者:Charles Jennings、役職:Founder
会社名:70:20:10 Forum Pty Ltd
このセッションでは70:20:10の人たちのちょっとした考えを2つのセッションで分けて紹介したいと思います。
重点を「能力」から「成果」にシフトする
サポートツールの考え方は、根本的に研修や教育のそれとは異なる。
教育や研修の考え方は、受講者が必要な知識やスキルを習得すれば職場で必要な場合に使えるというもの。
サポートは知識やスキルがなくても、便利なツールを使ってとりあえず目標達成できれば良い。
上記の図、黄色い文字で日本語にましたが、この図を読むと、「全然分からない」とか、「こいつ日本語下手くそ」と思われるかと思います。
しかし、それは間違いです。英語がもっとひどいのです。
なので日本語と英語の表記を両方残しました。
ではこの図が何を表しているのかというと、
左側
育成というか、Learningの発想で、知識とスキルを与えれば、困った時に受講者はそれを使ってやりたいことが出来る。
右側
知識とかスキルがなくても、ツールで何とか出来るようにしよう。
ということです。
わかりづらいので例をあげてみます。
例えば、大昔の営業マンの一つの大切なポイントでいえば、東京の複雑な地下鉄と電車の乗り換えが全部
- ドコとドコが繋がっている
- だいたいどのくらい時間がかかるのか
- ドコをドコまで早く行けるのか
これを分かっていないと営業周りは出来なかったわけです。
もう一つ、接待が多い場合は、たくさんのいい店を知っているという営業マンは、かっこう良かった。
そういうイメージの左側の発想は、営業マンをトレーニングするときに全ての地下鉄と電車を覚えること、それからいい店を覚えてもらいましょうというイメージです。
右側はそんなことを全くしないで、Navitimeとぐるなびを紹介する、以上。
となると、場合によってはツールの方が良い時がありますよね?
でも例えば「英語を全く喋れなくて、グローバルビジネスは全て英和辞典をその場で叩けばいいか」というと、そうじゃない。
なので両方、良い面がある訳です。
左側の発想
従来の分かって出来るようにして、そしたら解決
右側の発想
分からない・できない人をどうやって誤魔化すか、ツール作ろう!とまさにNavitimeの世界
「講師が教える→受講者が見つける」のマインドシフト
従来の人材育成の代表的なイメージは集合研修。
講師が講義を通して受講者に大切なノウハウをいろいろ教えるシーン。
サポートツールは受講者主体で、講師が何かを教えるよりは受講者が勝手にほしい情報を見つけられるようにアレンジするイメージに近い。
黒いチェックリストPart2。
項目は少なくなりましたが、同じくらい分かりにくいです。
人材育成部門のメインの仕事は例えば、「大企業の何とかLearning」とか、「何とか人材育成」みたいなものを作りますよね?
- 研修生に対して
- マネージャーに対して
- 20くらい色があって
- 皆が「ぷぷぷ」とやって
- 1個ずつが半ページから1ページ
- 研修だよとかいろいろ書いてある
これがチェックリスト左側、人材育成の本来のミッション。左側はその研修のコースとラインアップ、研修体系だそうです。
右側はそうではなくて、ナレッジマネジメントみたいな感じで、研修ではなくて、困った時は簡単に調べられるようなデータベースを作ったり、皆Googleになりましょう、といった内容です。
- 何故そうなのか
- どうすればいいのか
- 根本的なスタンス
というのはそこまでにして、次の項目は違う切り口から行きたいと思います。
育成方法の比較と整理
講演者:Marc Rosenberg、役職:Principal
会社名:Marc Rosenberg and Associates
ここからは、Marc Rosenberg氏の発表内容を記載いたします。
彼は今までずっとeラーニングをやってきて、eラーニングの世界で2人いる偉大なメンバーの1人です。
このMarc Rosenbergの今回の面白いセッションがThe best Training is no Training
「一番いい研修は研修を止める」ということです。
この丸い訳の分からない絵はある程度イメージしやすいです。
本来普通に考えれば、集合研修がカタログにあるというのは例えるならばたまねぎの一番外枠です。
Classroom trainingという、集合研修の世界です。
1つ内側の部分これはeラーニング、要は時間と場所は固定されていないので、少し柔軟性があります。
さらに内側に進むと、さっき出たナレッジマネジメント、キュレーションみたいな、そういう世界です。
1番中心がNavitimeのようなツールです。
非常に日本語にしにくいのですが、英語で言うパフォーマンスサポート(我々はツールや単純にサポートツールと訳しています)のイメージはさっき言ったNavitime、道が分からなくても迷わないという誤魔化しツールです。
外から中に向かってこういう繋がりがあります。
プラスで左側に少し特徴が書いてあります。
外側がダメ、真ん中がちょうどいいって言うわけでもなく、ケースバイケースで必要に応じて、上手に使いましょうとMarc Rosenbergは主張しています。
さっきの70:20:10の言っていることを無理やりこの絵に当てはめると、だいたい受講者たちは割合的に
- 外側が全体の1割
- 中の2つが2割
- ど真ん中が7割
と、このようになります。
スキルレベルに合わせた最適な育成方法
今回のRosenbergの発表で非常にいいなと思ったのはこれです。
アメリカ人がサッカーの話をすること、それ自体はどうでもいいことなのですが、この図はレベルに応じてどういう教え方をすればいいかという賢い話です。
4つの育成方法
絵を見ると、どうやらサッカーの話のようです。
左から見て行きましょう。
- Noviceは幼い少年です。
もう蹴り方、ルールも分かんない。
- Competentは高校生くらいのイメージです。ルールは分かるし、練習も出来る、場合によっては非常にうまい人もますが全体レベルはそうとは限らないです。
- Experience
1級2級くらいの大学生でしょう。
- Master
これがプロ達です。
じゃあ、それぞれのステージでどういうトレーニングをすれば一番賢いかということを、かなり見にくいのですが、4色の棒グラフで表してみたのが上記の画像になります。
色の内訳
赤色(Training)
我々が考える、基礎スキルの研修です。
緑色(Tools)
先ほど記載したNavitimeのようなツール達を指します。
青紫色(Social media)
仲間と情報共有したり、他のメンバーと指摘されたり、話したり、みんなと一緒にやりながら築くこと。
黒色(Coach,Coaching,CoachMentor,Mentoring)
黒色はその監督というか、コーチというか選手たちのパフォーマンスやプレーを高めるために専門特化している人の役割です。
各色の棒グラフを線で繋いでいくと非常によく分かるのは、画像の赤い線これは研修の部分ですが、小学生はさすがにルールから全部教えなくてはいけないので、これは普通の先生が教えるというスタンスに非常に合っています。
そこが重要です。
そこから得ることが非常に多いのです。
ですが、だんだん大人になってくると、例えば、サッカーの蹴り方についての講義は聞きたくないわけです。
ということで、
- 研修の重要性
- 貢献できるポイント
が上のレベルになるほどなくなります。
ツール類は全く出来ない人には扱うことすら出来ないですが、少しできる人はツールを活用しながら少し覚えていくことが出来ます。
プロレベルになるといちいちそんなのことはやらないので、最初こそ使いますが徐々にフェードアウトします。
コーチはどちらかと言うと最初よりは後の方に出てきてレベルが上がるほど大切な存在です。
だから、ワールドカップで2敗くらいすると、すぐコーチが首になる。
あと分かりやすいのは、このSocial media(青紫色)
これは他のメンバーと戦いながらも、他の人と協力しながら築くということがどんどん高まっていく。
この70:20:10で言いたかったことは、
- 赤が10
- 青紫が20(周りのメンバーから得られること)
残りの70はどちらかと言ったら、働きながら気付くことです。