2日間に渡ったCertificate Programに大満足
昨日に引き続き、今日はCertificate Program(ASTD公認の研修プログラム)の研修2日目。2日間の研修が先ほどすべて終わりました。
#002の影山が受けているProgramは、定刻より15分早く8:15からスタートしました。
この研修の講師は、Elaine Biech先生。人材育成業界で30年以上活躍されている女性で、ASTDにも数多くの貢献をされている方です。
丸二日間彼女の研修を受講しましたが、それはそれは大変素晴らしいものでした。今まで、ASTD世界大会に4回参加して、毎回Certificate Programを受講してきましたが、間違いなく今回がベストです。
その素晴らしさをまとめてみると・・・
- Elaine自らがこのプログラムの開発の中心人物なので、研修コンテンツに対する理解がとてつもなく深い
- 「リーダーシップ開発プログラムの設計法」という抽象的で知識詰め込み型になりそうなテーマを、バラエティーに富むチャーミングな演習を随所に織り交ぜているため、全く眠くなることなく深い理解へとつながっていく
- リーダーシップ開発のコンサルタントとして数多くの経験を積み重ねて来た年輪の重さを随所に感じさせてくれ、現場で役立つ実践的なノウハウもセットで教えてくれる
- そして何よりも、今回参加している30人のメンバーの成長に貢献したいという強い思いと熱い情熱が、ウィットに富んだトークと一緒に伝わって来る
という感じです。
Elaine Biech先生のプロフィールはこちら
#002以外の#004と#005も、いろいろな成果を持ち帰れました。そして無事、Certification(修了証)を3人とももらうことができました。
この二日間で、スパイ3人が参加した研修プログラムは以下の通りです。
- #002 影山:
Creating Leadership Development Programs (Certificate)
リーダーシップ開発プログラムの設計法 - #004 キャサリン:
Multimedia for Learning Professionals (Certificate)
研修設計者のためのマルチメディア作成 - #005 デイビッド:
Advanced Designing Learning (Certificate)
研修プログラムの設計法 上級編
これら3種類の研修に二日間参加して得られた成果を、簡潔にまとめて以下でお伝えします。
より深く詳細な情報については、6月7日に開催する「ASTDスパイ2012 帰国報告会」と題した無料セミナーでお伝えさせていただきます。
Creating Leadership Development Programs
リーダーシップ開発プログラムの設計法
スパイ:
#002 影山
メインアイディア:
自社に現実に即した、本当に成果の出せるリーダーシップ開発プログラムつくることは、人材育成部門の最重要課題の一つであろう。
そこで、本コースでは、自社固有の各種情報を活用して、自社に合ったリーダーシップ開発プログラムを設計し導入する手法を習得する。それを実現するために、便利なツール、フレームワーク、ジョブエイドなども入手することができる。
内容:
リーダーシップ開発プログラムの設計方法は、家やビルを建てる建築の手法と似ていると言える。正しい建て方をStep by Stepで実施していけば家が完成するように、リーダーシップ開発プログラムも適切なステップを踏むことで効果的なものを作り上げることができる。
そのステップとは、以下の5つ。その頭文字を並べると「LEADs」となり、Leadershipプログラム開発にふさわしいコンセプトとして記憶に残る。
step 1:ay the Foundation(基礎を固める)
- リーダー育成に関する自社の現状を把握する
- リーダーシップ開発に本格的に取り組む理由を明確にする(Driverを特定する)
- 自社のミッション、ビジョン、バリュー、中期経営計画などに合わせる
- 経営層を初期の段階から巻き込む
- Leadership Development Philosophyを明文化する
step 2:Envision the Future(未来を見据える)
- 現在のリーダー層から情報収集するために、想定問答を事前に準備する
- そのリーダー層達と個別に会って情報収集する
- 重要項目に関して現状と将来像を対比できるよう「From-To Chart」にまとめる
- 現状と将来像のギャップを特定する(Gap Analysis)
- 経営層の合意と協力を取り付け、ロールモデルとなる行動をしてもらう
step 3:Agree on and Articulate an Action Plan(実行計画を合意して明確に伝える)
- 重要項目毎にブレイクダウンして、目的とゴールを明確にする
- プログラムの設計方針を重要項目毎に吟味して決定する
- 開発プロジェクトを進める上での重要項目を決定する
- リーダーシップ開発の対象者を人選する基本方針をスコアシートの形でまとめる
- リーダーシップ開発プロジェクトを進めるためのコミュニケーション計画をまとめる
step 4:Design the Developmental Elements(開発項目を要素毎に設計する)
- 強化するスキルに合った手法を選択する
- 教育研修プログラムを実施する実行計画を立てる
- 人選方法を決めて管理する
step 5:Sustain Progress(リーダシップ開発を前進させ続ける)
- リーダーシッププログラムを展開するプロセスを管理する
- 既に走り始めたプロジェクトを計画どおり進められるようサポートする
- レビュー(振り返り)に関する年間計画を立てる
日本で参考になるポイント:
- 職人主義 vs. レシピ主義
能力開発プログラムの設計手法を学ぶCertificate Program(ASTD公認の研修プログラム)に参加したのは、今年で3回目。毎年似たようなことを感じて来たが、今初めてそれを言語化して伝えることができるようになった。「職人主義」と呼べる日本の現実と、「レシピ主義」と名付けたいASTDの発想(欧米の現実)には、大きな違いが存在している。リーダーシップ開発プログラムの設計というとても大きなテーマに関して、多くの日本企業はそれを担当する優秀な人材が持つその人固有の経験やスキルに基づき、人材育成プログラムを設計するケースが極めて多い。いわば「職人芸」を前提としているのである。このことを、オーナーシェフがとても美味しい100点満点に近い料理をつくることに例えてみたい。
もし、このアプローチで成功すれば、それはそれは美味しい料理をいただくことができる。しかし、シェフが腕を磨くには、厳しい修行や膨大な準備時間が必要になる。企業の人材育成で考えれば、人材育成方針を固めるのに社内調整などで膨大な時間が掛かり、準備に時間を掛けている内にトップや上司が変わったりすると、そのことだけでそのプロジェクトがストップしたりゼロからやり直すリスクがある。
100点を目指して、実際に100点に近い現実を作り出すには、極めて長い時間が必要で、またその計画が途中で頓挫するリスクが大きいということなのである。
一方、ASTDの発想(欧米の現実)は、プログラム開発を担当する個人の経験やスキルに依存する割合をできるだけ減らそうとするアプローチである。
リーダーシップ開発プログラムの設計というとても極めて大きく複雑なテーマに関してですら、それを進めるステップを細かく分けている。この発想は、一流シェフが教えてくれる「レシピ」の通り料理を作れば、誰でもじゅうぶんにおいしい家庭料理をつくることができることに似ている。
プロが教える「レシピ」の通り素人が家庭でつくっても、プロの味を100%再現することは不可能である。しかし、70点くらいの味は出せるのが現実である。
ここまでの話しのポイントをまとめてみると・・・
「職人主義」 膨大な時間とエネルギーを掛けて玄人になった上で、100点を取ることを目指すアプローチ
「レシピ主義」 上手くいくコツを今すぐ教えてもらって、素人でも素早く70点が取れることを目指すアプローチ
この二つに優劣をつけることは、基本的には不可能であろう。
しかし、国内だけではなくグローバルで活躍できるリーダー育成を目指すのであれば、今までの「職人主義」一本やりではなく、「レシピ主義」の長所を上手に取り入れてみることを検討する価値は十分あるように思える。
- リーダーシップ開発を中期経営計画を達成するために不可欠な取り組みとする
人材育成をリターンの大きな「投資」とするためには、経営戦略や中期経営戦略と連動することが必要不可欠となります。経営計画を達成するための最重要課題の一つとして、今すぐリーダーシップ開発に取り組み、大きなリターンを得ることが得策である。 - 経営層から強力な支援を得る方法
初期の段階から経営層をリーダーシップ開発プロジェクトに巻き込み、コミットメントを得ることが極めて重要である。そのための具体策として、以下の活動が参考になるであろう。- この取り組みなしには中期経営計画の実現が難しいことをアピールする
- 目指すべき将来像を丹念にヒアリングしてまとめあげる
- 現状に関してもヒアリング調査結果などを元にまとめる
- 現状と将来像のギャップを明確にして、今すぐ対策が必要なことをアピールする
- 経営層の意向やアイディアを存分に取り入れ、自分のプロジェクトとして認識してもらい協力を引き出す
- その他
- 内製化した研修プログラムのコアコンセプトをA4サイズ2枚でビジュアル化
- コミュニケーションプランの年間計画が有効
- 汎用的な質問リストをカスタマイズした上で活用
などの日本でも参考になるヒントを得ることができたが、その詳細は「ASTDスパイ2012 帰国報告会」の場などでお伝えすることにする。
Multimedia for Learning Professionals
研修設計者のためのマルチメディア作成
スパイ:
#004 キャサリン
メインアイディア:
1日目では、脳が情報を受け取った後、長期記憶として定着するまでの理論を意識してマルチメディアコンテンツを作成すること、また作成のために最低限必要な録音機材、ソフトウェア、準備などの基礎知識を学んだ。2日目では実際にプランニング、撮影、編集までをひととおり体験する。
内容:
コース2日目のポイント
- メディア向け台本(原稿)4つの基本
- 会話体で書く
→かしこまった堅苦しい表現を避ける。1対1で話しているかのように、目の前にその人がいることを想像して書くとよい - 短いセンテンスで
→長過ぎるとShort Term Memory(短期記憶)のステージにたどりつけない=人の記憶に残りにくい - 短い単語で
→(例)「Finish」「Conclude」よりも「End」を使う - 直接引用をしてはいけない
→誰かの言葉でも1部を変更する、パラフレーズする
- 会話体で書く
- 演習:
- Learning Objective(学習テーマ)をひとつ決める
- プランニング→スクリプト→ストーリーボード→必要な映像素材決定→撮影
- 編集ソフトを使って映像編集→ナレーション録音→音声編集→音楽をつける
- 学習用WEBに適した文章と構成
ネットリーダーは、ウェブの文章を「集中して読まない」「読むのを面倒と感じる」「スクロールをしてまで読まない」「ざっと目をとおすだけ」という調査結果がある。そのため、ウェブ上のテキスト書体やレイアウトは、リーダーに読んでもらえるようなテクニックを使う必要がある。- 重要な情報の80%をFOLD LINE(スクロールをしなくてもスクリーン上に見える範囲)までに収まるように入れる
- 段落をつくる/段落幅を統一する
- 見出しを使う
- 情報をリスト化する
- 短いセンテンスと単語を使う
日本で参考になるポイント:
- 成人学習の特徴を理解してコンテンツを作成する
- 成人は自ら学習する意欲がある
- 学習する目的、目標を持っている
- それまでの経験を活かして学習する
- 講師から一方的に教えられるのではなく、双方向コミュニケーションをしながら学ぶ
- 学習用マルチメディアコンテンツを作成する時の重要ポイント
- 短くシンプルに
- 十分なリソースを用意
- 綿密なプランと準備
- ターゲット(学習者)にフォーカスする
- ストーリーと音楽を大切に
- 複雑で詳細を求めるテーマにはマルチメディアは向かない
Advanced Designing Learning (Certificate)
研修プログラムの設計法 上級編
スパイ:
#005 デイビッド
メインアイディア:
Use stories – such as role plays, case studies, debates and actual stories – to deliver or enhance a learning goal. These activities are more interactive, fun and interesting and better transfer deep learning than traditional lecture based training.
内容:
Today’s three main points were:
- Whatever the activity is, it should be set up for success. Careful preparation and set-up will lead to excellent learning; lack of these will lead to disaster.
- All activities (except quick, fun activities to return energy and focus) should be connected to the learning objective and this connection should be clear.
- When design activities, include opportunities for learners to use and share their experience and (if appropriate) to give each other feedback and advice.
日本で参考になるポイント:
- An instructional designer should get and make note of ideas for training – stories, activity enhancements, job aids – whenever and wherever possible to be used later.
明日の予告:
昨日から参加したCertificate Programの2日間研修は今日で終了です。
明日からは、個別Session(75〜90分セミナー)が数多く開催されます。人材育成業界で仕事をしている世界の大物達が、その講師を担当してくれます。
同じ時間帯に30種類近いセミナーが同時並行で開催されます。明日の個別Sessionが行われるのは3つの時間帯。事前に詳しく調査をして厳選したセミナーに、3人のスパイが手分けして諜報活動を行います。
明日は合計9つの個別Sessionの情報をお伝えする予定です。