ATD人材育成国際会議 2021 帰国報告会レポート|DX・定着・効果測定の最前線

ATD人材育成国際会議 2021 帰国報告会レポート|DX・定着・効果測定の最前線
2021年8月29日〜9月1日、世界最大の人材育成カンファレンス「ATD International Conference & Exposition 2021(ATD ICE 2021)」がアメリカ・ユタ州ソルトレイクシティで開催されました。コロナ禍を経て久しぶりの現地開催となった今回は、約200のセッションと300超のブース展示が行われ、15のトラックにわたって人材育成の最前線が共有されました。
アイディア・デベロップメントでは、このカンファレンスに参加したメンバーが帰国後に報告会を開催。2021年9月30日(木)にオンラインで実施した報告会には、ANAや日産自動車、テルモ、ブラザー工業など大手企業の人材育成担当者を中心に353名がご参加くださいました。
今回の報告会では「デジタル時代の育成戦略(OVERALL)」「研修設計・eラーニング・行動科学(INPUT)」「研修定着フォロー(OUTPUT)」「研修効果測定(RESULTS)」の4テーマ・15事例を取り上げました。本記事では各パートのエッセンスをお伝えします。
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ATD人材育成国際会議 2021
帰国報告会レポート(全55ページ)
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最初のパートでは、WalmartのLearning & Leadership部門 Vice President、Brandon Carson氏のセッション「L&D's Playbook for the Digital Age」を取り上げました。
Carson氏が提唱するのは、人材育成チームが「研修の実施者」から「事業戦略の実現者」へ役割を刷新するための10ステップのプレイブックです。DXへのシフト、AIによるリスキル需要、グローバルな人口移動という3つの大きな変化を背景に、これまでのバックオフィス的な発想では変化に追いつけないと述べました。
特に印象的だったのが「人材育成チームの4つの役割」です。従来の研修担当者という枠を超え、①課題解決コンサルタント、②データアナリスト、③ラーニングエンジニア、④ラーニングデザイナーという4つの専門性を持つチームへの転換が求められると語りました。また、育成チームのミッションを明確にし「やらないことを決める」ことが、限られたリソースで最大の成果を出す第一歩だと強調しました。参加者アンケートでも「まさに今自社で検討していることと重なった」という声が多数寄せられたテーマです。
INPUT①|SAPのアセスメント中心の人材育成
SAPのVice President of Sales Coaching、Mark Crofton氏は、アセスメントを起点にした営業人材育成の改革事例を紹介しました。受講者の自己評価と上司評価のギャップ分析から個別ラーニングプランを作成し、コーチングと組み合わせて運用した結果、案件創出+79%・受注件数+68%・受注率+46%・売り上げ+33%という驚異的な数字を達成しています。
「アセスメントを入れたからすぐ成果が出るわけではない。肝心なのは職場でのトラッキングと、スキルギャップを3つに絞って深めること」というメッセージは、多くの担当者が抱える「アセスメントをやったが定着しない」という悩みへの明確な答えでした。
INPUT②|Facebookの飽きさせないeラーニング設計
FacebookのHead of Learning(Latin America)、Agustin Couto氏は、社内のプレゼンテーション研修で受講者エンゲージメント95%を達成したeラーニングの設計術を紹介しました。
成功の鍵は4つです。①B2Cアプリに近いデザインセンスの高いUX、②講師の温かい映像による人間味の演出、③SNS機能を使った受講者同士の交流促進(コメント投稿率100%)、④ポイント制の修了条件によるゲーム性の付与。「自由度を与えると受講者は積極的になる」「Done is better than perfect—まず出してから改善する」という設計哲学は、社内のeラーニング開発に悩む多くの担当者に刺さるメッセージでした。
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eラーニングの設計・研修効果測定について詳しく知りたい方は、「研修効果測定の進め方ステップ完全ガイド」もあわせてご覧ください。
INPUT③|脳科学から見た信頼関係と心理的安全性
Envisia LearningのChief Research Officer、Kenneth Nowack氏は、信頼関係・心理的安全性・共感性を脳科学の観点から解説しました。1,095名を対象にした研究では、信頼関係の高い職場と低い職場で、従業員エンゲージメントに76%、生産性に50%、離職率に50%もの差があることが示されています。
さらに、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は意識的な思考の80〜100倍の速さで生じるという脳科学的知見も紹介。管理職としてできる実践(承認・フィードバック・チームへの自由度付与)から、組織として採用基準にEQを組み込む方法まで、具体的なアクションが示されたセッションでした。
INPUT④|グリット・EQ・世代別育成・リーダーシップ研修の落とし穴
INPUTパートの後半では、心理学・行動科学・世代論・リーダーシップ研究の各分野から刺激的な知見が続きました。Angela Duckworth氏(Character Lab)の「グリット」研究では、長期目標を達成するパッションと粘り強さは年齢とともに強くなるという事実が紹介され、中堅・ベテラン社員の育成に対する示唆を与えてくれました。
Accenture(Grzegorz Plezia氏・Marek Hyla氏)の世代別調査では、「団塊世代・X・Y・Z世代で研修への姿勢や動機に思ったほど大きな差はない」という意外な発見があり、「世代で分けて設計する必要性は低いが、フィードバック頻度の期待だけは世代差がある」という実務的な示唆が得られました。またZenger Folkman社のJack Zenger氏は、リーダーシップ研修が失敗する12の落とし穴を提示。「研修対象者の選定ミス」「期間が短すぎる」「定着フォローがない」という三大原因は、日本企業でも見覚えのある課題として会場の共感を集めました。
OUTPUT①|行動科学に基づくCLICS定着モデル
OUTPUTパートでは研修後の定着フォローを特集しました。Coca-Cola・Morningstar・Mind Gymの3社が共同提唱する「CLICS」フレームワークは、研修定着を阻む5つの要因(Capacity:受講者のキャパ/Layering:情報整理/Intrinsic enablers:動機付け/Coherence:整合性/Social connections:人間関係)を整理したモデルです。
「研修を受けた後、職場に戻って内容を活かそうとするとき、脳は『覚える・学ぶ・活かす』の3段階を経る。この流れを設計に組み込まないと行動変容は起きない」という言葉は、研修設計の本質を突いていました。
OUTPUT②|ナッジ・定着テンプレート・女性リーダー・チェンジマネジメント
Lead1ng AGのGuido Betz氏は、ノーベル経済学賞を受賞したカーネマン理論・セイラー理論をベースに「ナッジ(Nudge)」を研修定着に応用する手法を紹介。週1回・数秒で完了するリマインダーメールに簡単なアンケートを添えるだけで、受講者が研修内容を思い出し行動したくなる仕組みが作れるという内容は、コスト・工数の少なさと効果の高さから多くの担当者に関心を持たれました。
また弊社代表のDurkeeも登壇した「定着フォローのテンプレート」セッションでは、知識系・スキル系・マインド系の3種類の研修ごとに定着の課題と解決策が異なることを解説。女性リーダー育成のフォロー(DDI)やチェンジマネジメントの人的側面(American Management Association)も取り上げ、変化のある環境下で人材をどう育てるかという問いに多角的に答えるパートとなりました。
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研修定着フォローの具体的な手法については、「研修ニーズアセスメントとヒアリングの進め方」もあわせてご参考ください。
RESULTS|研修効果測定の現状と費用対効果(ROI)の算出方法
RESULTSパートでは、LearnUponのFrances Kleven氏とROI InstituteのJack Phillips博士・Patti Phillips博士による研修効果測定の現状と実践法が取り上げられました。
1,300人の人材育成担当者への調査では、自社の効果測定に「満足」と答えたのは67%(大変満足6%+満足61%)。一方で「不満」「大変不満」も合計33%に達しており、多くの企業が課題を感じていることが示されました。現状最も多く使われているのは研修後の修了アンケート(73%)で、フォローアンケートや上司ヒアリングまで実施できている企業は半数以下でした。
Phillipsらが提唱する5段階評価(レベル0〜5)では、すべての研修でレベル5(費用対効果)まで実施する必要はなく、「レベル1は90〜100%、レベル3は30〜40%、レベル5は5〜10%」という現実的な目標設定が示されました。「全部やらなくていい」というメッセージに、参加者から安堵と共感の声が多数寄せられたパートです。また、Nations Hotelのコーチング研修事例(ROI 208%)を通じて、効果を金額換算するための具体的なデータ収集・計算プロセスが紹介されました。
参加者の声
2021年9月30日開催の報告会アンケートより、掲載許可をいただいた方のコメントをご紹介します。
よくある質問
ATD人材育成国際会議とはどのようなイベントですか?
ATD(Association for Talent Development)は1943年に設立された世界最大の人材育成専門組織で、120カ国以上に4万名以上の会員を持ちます。毎年開催されるATD International Conference & Exposition(ATD ICE)は、世界中から人材育成・HRDの専門家が集まる国際会議で、基調講演・セッション・ワークショップ・展示会など数百のプログラムが行われます。ATD2021はユタ州ソルトレイクシティで現地開催され、約200セッション・300超のブース展示が行われました。
アイディア・デベロップメントの報告会レポートはどのように入手できますか?
本ページの「無料でダウンロードする」ボタンからメールアドレスをご登録いただくと、全55ページのフルカラーPDFレポートを無料でダウンロードいただけます。報告会で使用したスライドをそのまま収録しており、図解・データ・事例をビジュアル中心でまとめています。
CLICSフレームワークとはどのような研修定着モデルですか?
CLICSは、Coca-Cola・Morningstar・Mind Gymが共同提唱する行動科学に基づく研修定着モデルです。Capacity(受講者のキャパシティ)、Layering(情報の整理)、Intrinsic enablers(内発的動機)、Coherence(既存知識との整合性)、Social connections(人間関係・周囲への影響)の5要素で構成されており、研修設計時にこれらを考慮することで受講者の行動変容率が高まるとされています。詳細は帰国報告会レポートp.36〜でご確認いただけます。
研修効果測定の5段階評価(レベル0〜5)はすべて実施する必要がありますか?
フィリップス博士の推奨によれば、すべての研修でレベル5(費用対効果ROI)まで測定する必要はありません。目安として、レベル1(受講者の反応)は全研修の90〜100%、レベル3(職場での活用)は30〜40%、レベル5は5〜10%程度が現実的な目標とされています。重要なのは「何のために・どのレベルまで測るか」を研修設計時に決めておくことです。
ナッジを研修定着フォローに活用するにはどうすれば良いですか?
最もシンプルな活用方法は、研修後に週1回・数秒で完了するリマインダーメールを送ることです。2問程度の簡単なアンケートを添えるだけで、受講者が研修内容を思い出し行動しやすくなります。ATD2021レポートのp.37〜38には、企業理念研修でのナッジ活用事例と4週間のリマインダーサイクルのサンプルが掲載されています。
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