ATD人材育成国際会議2018 帰国報告会レポート|デジタルリーダーシップ・脳科学×学習定着・女性リーダー育成の最前線

2018年5月6日〜9日、アメリカ・サンディエゴで開催された世界最大の人材育成カンファレンス「ATD International Conference & Exposition 2018」。アイディア社のメンバーが現地に赴き、約300セッションと400ブース超の展示会から最前線の知見を収集してきました。
帰国後は2018年6月に帰国報告会を開催し、多数の人材育成担当者にご参加いただきました。本記事では報告会の内容をダイジェストでお届けします。ATD2018のテーマは大きく「テクノロジーと人材育成の交差点」「リーダーシップの深化」「学習定着の科学」の3つの潮流に集約されます。
DDI(Development Dimensions International)が発表した「Global Leadership Forecast 2018」の大規模調査データも本年のATDで大きな注目を集め、リーダーシップ開発投資が増え続ける一方でリーダーの準備度は6年間改善していないという衝撃的な事実が浮き彫りになりました。
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サンディエゴ現地取材レポート|フルカラーPDF約97ページ|テクノロジー進化・リーダーシップ・学習定着の最前線
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ATD2018の会場となったサンディエゴには、世界120か国以上から約1万人の人材育成専門家が集結しました。アイディア社のメンバーが厳選して報告した主要テーマは、以下の4つの潮流に整理されます。
テクノロジー
デジタルスキル構築 / AI・IoT・AR/VR時代の人材育成 / 学習テクノロジー選定フレームワーク
リーダーシップ
コンシャスリーダーシップ / エグゼクティブプレゼンス / 女性リーダー育成 / グローバルマインドセット
学習科学
脳科学×学習定着6原則 / インフォーマルラーニング13手法 / ラーニングカルチャー構築
データ×HR
リーダー育成のROI / データドリブン意思決定 / HRの新しい役割(Anticipator)
テクノロジー①:デジタル時代のリーダーシップ——準備できていない現実
DDIが発表した「Global Leadership Forecast 2018」は、ATD2018の中でも特に注目を集めたセッションでした。同調査の衝撃的な発見は「リーダー育成への投資額は10年間増え続けているにもかかわらず、リーダーの準備度は6年間ほぼ改善していない」という事実です。十分なベンチ強度(後継者候補の厚み)を持つ組織はわずか14%にとどまり、2011年の30%から半減以下になっています。
さらに深刻なのがデジタル対応の遅れです。ATD2018では「デジタル時代のリーダーシップ」が独立テーマとして設定されるほど、この課題の緊急性が共有されていました。DDIの調査によれば、デジタルコンピテンシーがすでに高業績リーダーと低業績リーダーを分ける差別化要因になっているにもかかわらず、多くの組織ではリーダーのデジタルスキル評価・育成が追いついていません。「デジタルをやっている」状態から「デジタルで考える」状態への転換が求められているのです。
ミレニアル世代のリーダー育成も重要テーマでした。デジタルリテラシーの高いミレニアル世代を「リバースメンタリング」に活用する——つまり若い世代が上の世代にデジタルスキルを教える仕組みを意図的に設計することが、世代を超えたデジタル人材育成の有効策として注目されました。
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テクノロジー②:学習テクノロジーの正しい選び方——6段階評価フレームワーク
数あるATD2018のセッションの中で、実務担当者から特に高い評価を受けたのが「Bottom-Line Performance」社による学習テクノロジー評価フレームワークでした。LMS・eラーニングツール・ビデオプラットフォームなど新しい学習テクノロジーが次々と登場する中、「どう選べばよいかわからない」という声は担当者の共通の悩みです。
このフレームワークでは、新しい学習テクノロジーを導入前に6つの視点で評価します。①機能性(Functionality)——何ができるか、②有用性(Usefulness)——組織に価値をもたらすか、③使いやすさ(Usability)——運用者・学習者にとって直感的か、④リスク(Risks)——ITセキュリティや未使用リスクはないか、⑤コスト(Costs)——真のコスト(隠れた工数も含む)は許容範囲か、⑥推奨(Recommendation)——小規模パイロットか全社展開か。各項目を1〜3点で採点し、合計点で意思決定の方向性を示します。スコアが5〜7点なら「現時点では不採用」、8〜10点なら「条件次第で採用候補」、11〜13点なら「採用が最適」、14〜15点なら「今すぐ採用すべき」という判断基準です。担当者が経営層に対してテクノロジー投資を正当化するための共通言語として使えるフレームワークです。
リーダーシップ①:コンシャスリーダーシップ——「自分を知る」ことが出発点
Healthy Companies InternationalのBob Rosen博士が提唱する「Grounded & Conscious Leadership」は、ATD2018で最も反響の大きかったリーダーシップセッションの一つでした。リーダーとしての効果性の基盤は「自分を深く知り、地に足のついた状態(Grounded)を保つこと」という考え方で、身体的・感情的・知的・職業的・社会的・精神的健康の6つの軸で自己を整えることが土台になります。
「Conscious Leader(意識的なリーダー)」への進化は4軸で測定されます。「Go Deep(浅い自己認識から深い内省へ)」「Think Big(偏狭な思考から好奇心ある適応的思考へ)」「Get Real(防衛的な反応から真摯で意図的な行動へ)」「Step Up(自己中心的な慎重さから大胆で責任感ある行動へ)」。このモデルが刺さるのは、多くのリーダーが「何をすべきか(Substance)」は知っているが「自分がどうあるべきか(Being)」を軽視しているという指摘からです。技術やスキルの習得よりも先に、自己認識と内的な安定が必要——これはATD2018全体のトーンにも通じる問題提起でした。
リーダーシップ②:エグゼクティブプレゼンス——「キャラクター」が86%を決める
Bates Communicationsが発表した「ExPI™(Executive Presence Inventory)」モデルも大きな注目を集めました。エグゼクティブプレゼンスを構成する要素として、スタイル(外見・声・態度)14%、サブスタンス(自信・共鳴・ビジョン・実践的知恵)31%、キャラクター(誠実さ・真摯さ・節度・謙虚さ・落ち着き)55%という比率が示されました。「プレゼンスに影響を与える要素の86%はサブスタンスとキャラクターにある」という発見は、多くの参加者に「外見やスピーチより内面が重要」というメッセージとして響きました。
特に「イノベーションを生み出すプレゼンス要素」の分析では、誠実さ・真摯さ・落ち着き・実践的知恵・ビジョンがイノベーション創出に強く関連することが示されました。また女性リーダーはこの7つの要素で男性より高いスコアを示すというデータも提示され、女性リーダーの潜在的な強みの活用という観点でも議論が活性化しました。
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リーダーシップ③:女性リーダー育成——「Power Moves」の4つのアクション
DDIのデータでは、Fortune 500企業のCEOに占める女性の割合は6%、C-Suiteで19%、VP層で27%と、階層が上がるほど女性比率が急減することが示されました。また「ハイポテンシャル人材プールの4人に1人しか女性がいない」という現状も報告されており、パイプライン問題が数字で明示されました。
このセッションで提唱された「Power Moves(4つのアクション)」は、女性リーダー本人と組織の双方に向けた実践的ガイドです。①「Declare Yourself(自分を表明する)」——防衛ではなく宣言として自分の立場と要求を伝える。②「Fail Forward(失敗から前進する)」——失敗を許可し、学びを行動に転換する勇気を持つ。③「Radiate Confidence(自信を発信する)」——ヘッジワード(「かもしれません」「間違っているかもしれませんが」)を排除し、言葉の力を高める。④「Super-Power Your Network(ネットワークを強化する)」——意図的・勇気ある人脈構築とメンター・スポンサーの活用。これらは女性本人の行動変容だけでなく、組織としてアンプリファイ(仲間の発言を増幅・支持する)文化を育てることも含みます。
学習科学:脳科学に基づく記憶定着の6原則
NetSpeed Learning SolutionsのCindi Mayorが登壇したセッションでは、脳科学の知見に基づく「Brain-based Retention(脳ベースの記憶定着)」の6原則が紹介されました。これはラーニングデザインに直接応用できる実践的フレームワークです。
6原則は「Chunk it Down(細切れにする)」「Mix it Up(バリエーションを持たせる)」「Sleep on It(睡眠を活用する)」「Test and Retest(テストと反復)」「Use it or Lose it(使わなければ忘れる)」「Prime the Pump(学習への準備状態を整える)」です。中でも特に議論を呼んだのが「睡眠」の役割です。覚醒時の脳は記憶を「エンコード(符号化)」し、睡眠時の脳は記憶を「コンソリデート(統合)」する——この観点から、研修設計において学習セッションを複数日にまたがって分散させることの重要性が示されました。「1日集中研修よりも、3日間に分散した研修の方が記憶定着率が高い」という示唆は、多くの担当者にとって研修プログラム設計の見直しポイントになりました。
また「Use it or Lose it(使わなければ忘れる)」の観点からは、研修の翌日から行動実践につなげるための介入設計の重要性が強調されました。学習定着率(ラーニングピラミッド)では、講義・読書・視聴が5〜20%にとどまるのに対し、実践・他者への指導・即時の職場応用が75〜90%に達するとされ、「やってみる」設計の優先度の高さが改めて示されました。
インフォーマルラーニング:13の手法で職場の学びを仕掛ける
ATD2018では「インフォーマルラーニング(非公式学習)」が独立したセッショントラックとして存在感を増していました。研修室での集合学習(フォーマルラーニング)だけでは、増え続ける学習ニーズに応えることも、業務との距離を縮めることも難しい——という現場の実感から、日常の業務の中に学びを埋め込む13の手法が紹介されました。
13手法を整理すると「①バディアップ(非公式コーチング・メンタリング)」「②オンデマンド動画・記事ライブラリ」「③自発的なコミュニティ・オブ・プラクティス(CoP)」「④オンデマンドジョブエイド」「⑤ソーシャルシェアリング(マイクロブログ・Wiki等)」「⑥ゲーム」「⑦インフォーマルラーニングのための公式Fun Day」「⑧実験機会の提供(失敗・成功の両方から学ぶ文化)」「⑨好奇心を刺激するOJT機会」「⑩観察とパターン認識(シャドーイング)」「⑪ジョブローテーション」「⑫自己省察(日誌・振り返り)」「⑬学習データの民主化(全員が教え、全員が学ぶ)」です。注目すべきは、多くの手法がITシステムに依存しないものだという点です。「まず文化から」というアプローチは、大企業だけでなく中小規模の組織にも取り入れやすいものでした。
グローバル研修設計:文化を越えるための5つの調整ポイント
グローバル化する企業向けに、World Master Trainersが登壇したセッションでは「グローバルマインドセットを育てる5つの行動」が提示されました。①自ら学ぶ(文化・ビジネス慣行の継続学習)、②経験を積む(異文化体験・駐在・国際プロジェクト)、③メンターを見つける、④真にグローバルな企業文化を提唱する、⑤文化的バイアスと価値観を自己診断する、の5つです。
また、既存の日本語研修コンテンツをグローバル展開する際の落とし穴として「慣用句・スラング」「スポーツや文化的文脈を前提にした写真・図解」「タイムゾーンと祝日の違い」「コーポレートアクロニム(社内略語)」「ボディランゲージの文化差(うなずき・アイコンタクト・手のサインなど)」が挙げられ、具体的な対処法が示されました。「日本の研修が正しい答えとは限らない」という視点を持ち、ローカル専門家と協働してコンテンツを適応させることが強調されました。
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よくある質問
ATD2018はどこで開催されましたか?
ATD2018(ATD International Conference & Exposition 2018)は、2018年5月6日〜9日にアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴのコンベンションセンターで開催されました。世界120か国以上から約1万人の人材育成専門家が集まり、約300セッション・400ブース超の展示会が行われました。アイディア社のメンバーが現地に参加し、帰国後に日本語の報告会レポートにまとめています。
ATD2018で最も注目されたテーマは何ですか?
DDIの「Global Leadership Forecast 2018」が特に大きな反響を呼びました。同調査は「リーダー育成への投資は増えているが、リーダーの準備度は6年間改善していない」「デジタル時代のリーダーシップ能力がすでに業績差を生み出している」という事実を大規模データで示しました。また、コンシャスリーダーシップ(Grounded & Conscious Leader)、エグゼクティブプレゼンス(Bates ExPI Model)、脳科学に基づく学習定着(Brain-based Retention)も多くの参加者から高い評価を得ました。
DDI「Global Leadership Forecast 2018」とはどのような調査ですか?
Development Dimensions International(DDI)が定期的に実施するグローバルなリーダーシップ実態調査です。2018年版は25,000人以上のリーダーと2,500人以上のHR専門家を対象とした大規模調査で、リーダーの準備状況・組織のベンチ強度・デジタルリーダーシップ・女性リーダー・HRの役割変化など多岐にわたるテーマを網羅しています。「6年間リーダー準備度が改善していない」「十分なベンチ強度を持つ企業はわずか14%」などの発見が議論を呼びました。
「脳ベースの学習定着」で最も参考になるポイントは何ですか?
研修設計に最も直結する知見は「Chunk it Down(学習単位の細分化)」と「Sleep on It(学習の分散配置)」です。長時間の集合研修を1回で終わらせるより、短い学習セッションを数日〜数週間に分けて配置する「分散学習」の方が記憶定着率が高いことが脳科学の知見から支持されています。また「Use it or Lose it(使わなければ忘れる)」から、研修直後に職場実践する機会を設計することが学習効果を大きく左右します。1回の研修で終わらせず、フォロー設計を含めたプログラム全体設計が重要です。
ATD2018のレポートは現在でも参考になりますか?
はい。デジタルリーダーシップ・コンシャスリーダーシップ・インフォーマルラーニング・グローバル研修設計・学習定着の科学といったテーマは、2018年から現在にかけてさらに重要性が増しています。特にDDIの「Global Leadership Forecast」は毎年更新されており、2018年版と最新版を比べることでリーダーシップ課題の変遷を把握できます。ATD2019以降のレポートと合わせてご覧いただくと、トレンドの流れをより立体的に理解できます。
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サンディエゴ現地取材|デジタルリーダーシップ・脳科学×学習定着・女性リーダー育成など全テーマ収録|フルカラーPDF約97ページ
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