人材育成ワールドトレンド報告会2021|ハイブリッドワーク・リスキル・リモート研修の最前線

2021年、人材育成の「当たり前」が変わった
パンデミックを経て、ワークスタイル・受講者ニーズ・研修の届け方――人材育成を取り巻く環境が根本から変わりました。IDEA DEVELOPMENT株式会社は、世界の最新トレンドを日本企業の人事担当者にお届けするため「人材育成ワールドトレンド報告会2021」をオンラインで開催。i4cp、DDI、Josh Bersin Academy、LinkedIn Learningなど海外の主要調査レポートから、ハイブリッドワーク・リスキル・リモート研修の最前線を353名の参加者にお伝えしました。
この記事では、報告会の内容を「NEWワークスタイル」「NEW受講者ニーズ」「NEW人材育成」の3つの切り口で詳しくレポートします。調査データとグローバル企業の事例を交えながら、人事担当者が自社の研修設計に活かせるヒントをまとめています。
ハイブリッドワーク時代の研修設計や、管理職育成の見直しについてお考えでしたら、お気軽にご相談ください。海外トレンドを踏まえた研修プログラムのご提案も可能です。
この記事のポイント
NEWワークスタイル ― ハイブリッドワークの成功法則
報告会の第1テーマは、パンデミックで一変したワークスタイルです。i4cp(Institute for Corporate Productivity)が1,200社以上のCHROを対象に行った大規模調査「From Cube to Cloud」の結果を中心に、ハイブリッドワークの実態と成功のカギを紐解きました。
フレックスワーク導入の実態 ― 1,200社のベンチマーキング
i4cpの調査によると、パンデミック後にフレックスワークを導入した企業が最も多い一方、35%の企業はパンデミック前から3年以上前にすでに導入していたことが分かりました。注目すべきは、フレックスワークの導入タイミングと企業の対応力に大きなばらつきがある点です。
i4cp調査:パンデミック下の企業変化(n=1,200社)
フレックスワーク対応は概ね成功。しかしエンゲージメントは二極化している
ワークスタイル変革の成功度
75%
「成功」「大成功」と回答
(まあ成功19% + 成功49% + 大成功26%)
エンゲージメントの変化
39%
上がった
27%
変わらず
21%
下がった
同業他社に比べた業績
60%
「良い」「とても良い」と回答
(平均31% + 良い43% + 非常に良い17%)
この3つの数字を合わせて読むと、フレックスワークへの移行は組織レベルでは概ね成功した一方、個人レベルのエンゲージメントは二極化していることが分かります。つまり、「制度としてのハイブリッド」は整ったが、「人としてのハイブリッド」にはまだ課題が残っている段階です。ここからは、その課題にどう向き合うかが問われるフェーズに入ります。
ハイブリッドのガイドラインを決める9つのポイント
調査では、53%の企業がハイブリッドワークのガイドラインを策定済みでした。ガイドラインを決める際に考慮されているポイントの上位を見ると、「仕事の内容」が91%で圧倒的に多く、次いで「チームワークの必要性」74%、「必要な設備」58%と続きます。
ハイブリッドのガイドラインを決めるポイント(複数回答)
「仕事の内容」が圧倒的1位。本人の希望より業務特性が優先されている
自社への示唆:ガイドラインの起点は「社員の希望」ではなく「仕事の性質」。まず業務を「対面が必要な仕事」「どこでもできる仕事」に仕分けし、その上で社員の希望を加味するアプローチが主流です。
パンデミック対応の4ステージ ― あなたの組織はどこにいるか
Josh Bersin Academyの研究チームは、複数企業の人事リーダーが共同でまとめた「Big Reset Playbook」の中で、パンデミック対応を4つのステージに整理しました。各ステージで人材育成に求められることが異なります。
パンデミック対応の4ステージと必要な育成テーマ
出典:Josh Bersin Academy「Big Reset Playbook: Returning to the Workplace」
STAGE 1
反応(REACT)
社員のニーズを確認しながら情報発信をする
必要な育成
緊急対応スキル、リモートワークの基礎、メンタルヘルス
STAGE 2
対応(RESPOND)
ニーズに対応するために必要なサポートをする
必要な育成
リモートマネジメント、1on1スキル、コーチング
STAGE 3
進行(RETURN)
危機後に社員に配慮しながらシフトの準備をする
必要な育成
マインドフルネス、ストレス管理、ハイブリッドスキル、目標設定
STAGE 4
挑戦(TRANSFORM)
新しいビジネススタイルで成功できるようにサポート
必要な育成
イノベーション、グロースマインドセット、顧客思考、ビジョン共有
2021年の報告会時点では、多くの日本企業がステージ2〜3の間にいると報告されていました。2020年代半ばを迎えた現在、多くの企業がステージ4「挑戦」のフェーズに入っています。ハイブリッドワークの制度設計は済んだものの、その環境で新しいビジネスモデルを生み出せる人材の育成が次の課題です。管理職には「ハイブリッド環境でのチェンジマネジメント」スキルが特に求められています。
ハイブリッドワーク成功の6原則 ― EXの視点で考える
Josh Bersin Academyの研究チームは、ハイブリッドワークを単なる「勤務場所の選択」ではなく、社員体験(Employee Experience=EX)全体のデザインとして捉えるべきだと提唱しました。その具体的な実行指針が「ハイブリッドワーク成功の6原則」です。
原則1:戦略を定義する
経営戦略・ミッション・ビジョンに合うハイブリッド戦略を考える。問い:「お客様が求めていることは何か」「ハイブリッドの中でどう文化を維持するか」
原則2:ゴール設定をする
ビジネス・タレントマネジメント・イノベーション・チームワークの4つの視点でKPIを設定する。問い:「何をもって成功とするか」
原則3:横断チームで運営する
人事だけでなく、IT・開発・生産・マーケティング・営業・コーポレートなど複数部門の視点を入れる。問い:「どの専門家を巻き込むべきか」
原則4:社員と一緒につくる
ハイブリッドワークの「お客様」は社員自身。フィードバックをもらい、パイロット実験に参加してもらい、声をよく聞く。問い:「社員のペルソナとジャーニーは何か」
原則5:EX全体を考える
ハイブリッドワークは仕事・チームワーク・DEI・育成・リーダーシップ・文化すべてに影響する。社員にとって一貫性のある魅力的な全体ジャーニーを設計する。
原則6:走りながら改善する
ビジネス環境も戦略も頻繁に変わる。完璧を求めず、ベストを尽くして走りながら改善することが成功する近道。問い:「小さく試せる場所はどこか」
特に注目したいのは原則4「社員と一緒につくる」と原則6「走りながら改善する」です。ハイブリッドワークの制度を人事だけで完成させようとせず、社員をデザインプロセスに巻き込むことが鍵です。Josh Bersin Academyの調査に参加したDeutsche Telekomでは、600件のデザインプロジェクトに社員の声を反映させた結果、社員満足度・エンゲージメント・業績のすべてが向上したと報告されています。
ハイブリッドワーク環境での管理職育成にお悩みの方へ。目標設定・1on1・チームマネジメントの見直しなど、管理職研修の改善ポイントをまとめた記事もご覧ください。
NEW受講者ニーズ ― ハイテク・ハイタッチとヒューマンリーダーシップ
報告会の第2テーマは、パンデミックを経て変化した「受講者が本当に必要としているスキル」です。アイディア社の顧客アンケート(n=108)、LinkedIn Learning Workplace Learning Report 2021、DDI Global Leadership Forecast 2021、i4cpのウェルネス調査など、複数の調査データを横断的に分析しました。
ハイテク・ハイタッチ ― 人材育成の重点テーマはどこに向かっているか
アイディア社が顧客108社に行った自由回答アンケートでは、今年度・来年度の重点テーマとして「管理職研修」が14%で1位、「DX化」が11%で2位、「リモート研修」が10%で3位でした。一方、今後解決したい人材育成の課題では「受講者の主体性向上」が13%で1位。ヒューマンスキル関連(主体性、コミュニケーション、マネジメント力、キャリアデザイン等)が上位7項目を占め、全体の70%に達しています。
つまり、経営視点では「DX」「リモート」といったテクノロジー対応が目立つ一方、現場の人材育成課題の核心はヒューマンスキルにある。「ハイテク」と「ハイタッチ」の両方が求められているのが2021年の特徴でした。
この傾向はLinkedIn Learningのグローバル調査でも裏付けられています。200カ国・7億人のデータを分析した「Workplace Learning Report 2021」によると、世界のL&D担当者が選んだ「今年最も重要なスキル」の1位はレジリエンス(適応力)、2位がデジタルフルエンシー(デジタル活用力)でした。地域によって1位と2位の順番は入れ替わるものの、この2つが各国で必ずトップ2に入るという結果です。注目すべきは、10スキルのうち8つがヒューマンスキルであること。DXの重要性が叫ばれる中でも、研修の優先テーマはヒューマンスキルが圧倒的でした。
LinkedIn Learning:L&D担当者が選ぶ2021年の重要スキル TOP10
出典:Workplace Learning Report 2021(200カ国・7億人のデータ分析)。10スキル中8つがヒューマンスキル
自社への示唆:DX対応は必要ですが、それだけでは不十分です。デジタルスキルとヒューマンスキルの「両利き」の研修体系を設計することが、2021年以降のL&Dの方向性です。LinkedInのデータでも、ビジネス分野で最も急成長しているスキルの1位はCX(顧客体験)。テクノロジーに強いはずの営業職ですら、CRMやコンサルティングがトップ5に入っています。
リモートワークの定着に伴い、ニューノーマルのヒントも紹介されました。Vyondの調査「Norms for a New Normal」によると、リモートワークによりワークライフバランスが「良くなった」と答えた社員は40%(前年35%から改善)。ただし男女差は依然として大きく、ワークライフバランスが「完全にとれている」と答えた割合は男性49%に対して女性39%にとどまります。家事と育児のサポートがワーキングマザーの活躍を支える成功ポイントとして強調されました。
メンタルヘルスへの企業の取り組みも課題です。「自社は社員のメンタルヘルスを大切にしている」と感じている社員は56%で、残り44%は実感がありません。上司との1on1がメンタルヘルスのサポートにおいて最も有効な機会であること、また多様な背景を持つ社員ほど職場でのストレスを抱えやすく、メンタルヘルス対策が特に重要であることが報告されています。
ウェルネスと業績の関係 ― i4cpの衝撃データ
パンデミック対応の次のステージとして注目されたのが、社員のウェルネスです。i4cpの調査「Next Practices in Holistic Well-Being: The Performance Advantage」は、Facebook、Genentech、Nationwide、McKinstryなど複数の企業の人事リーダーが共同でまとめたレポートで、ウェルネス投資と企業業績の関係を明確に示しました。
i4cpの調査の特徴は、回答企業を「業績の優れた企業(High-performance)」と「そうでない企業(Low-performance)」に分類し、各項目のギャップを可視化している点です。ウェルネス投資の効果として11項目を比較した結果、すべての項目で高業績企業が低業績企業を上回り、特にイノベーションと業績への影響は衝撃的な差が出ました。
ウェルネス投資の効果:高業績企業 vs 低業績企業
「非常にそう思う」「そう思う」の割合。出典:i4cp Next Practices in Holistic Well-Being
自社への示唆:ウェルネス投資の効果は「社員の健康」にとどまりません。イノベーション(7倍差)や業績(3.5倍差)など、ビジネス成果に直結します。ウェルネスを福利厚生ではなく「経営戦略」として位置づけることが、高業績企業の共通点です。
i4cpが提唱するウェルネスの4要素も紹介されました。PURPOSE(会社の理念とビジョン、自分のキャリアの意義)、HEALTH(メンタルも含めた全体的な健康状態)、BELONGING(仲間意識と良い人間関係)、SECURITY(心理的・金銭的・環境的な安心)の4つです。フィジカルヘルスだけを手当てするのではなく、この4つを統合的にケアする「ホリスティック・ウェルビーイング」が、高業績企業のベストプラクティスとして紹介されました。
特に注目されたのは「働きがいと意義のメカニズム」です。高業績企業の社員は「会社のミッションにどう貢献しているかが分かる」(94%、低業績企業は81%)、「仕事内容に魅力を感じる」(84%、低業績企業は55%で1.5倍差)と回答しています。社員がウェルネスを感じる最大のドライバーは、福利厚生の充実ではなく、自分の仕事に意義を感じられるかどうかだったのです。
ウェルネスのベストプラクティスとして、高業績企業と低業績企業の差が最も大きかった取り組みも報告されました。「社員が自分や周りのメンバーのメンタル不調に気づくための研修を受けている」では高業績企業9%に対し低業績企業2%で4.5倍の差。「社員が気軽にウェルネスに対する相談ができる」では22%対6%で4倍の差です。いずれも実施率自体はまだ低いものの、高業績企業が先行して取り組んでいるネクストプラクティスとして注目されました。
効果測定の面では、ウェルネス活動の効果測定をしている企業は40%以下にとどまっています。ただし高業績企業は低業績企業の1.5倍の頻度で測定しており、効果測定のヒントとして「社員の会社に対するメンバー意識」「エンゲージメント調査」「業績の変化」「各活動の振り返り評価」「社員からのクレームと相談の数」が挙げられました。
マネジメント・リーダーシップの最新トレンド ― DDIの大調査が示す危機
DDI(Development Dimensions International)の「Global Leadership Forecast 2021」は、業界で最も有名なリーダーシップ調査の一つです。2021年版では、経営者が抱える課題の上位が人事関連であることが明らかになりました。
CEOが選んだ「今年最大の課題」の1位は次世代リーダー育成(55%)、2位は景気後退(54%)、3位はリテンション(52%)、4位はイノベーション(50%)です。トップ4のうち3つが人材に関わるテーマであり、経営者の最大の悩みは「売上をどう伸ばすか」ではなく「人をどう育て、どう引き留めるか」に移っていることが分かります。
さらに深刻なのは、CHROが「今後10年で最も変わる」と予測しているテーマです。
CHROの調査:今後10年で大きく変わるリーダーシップテーマ
出典:DDI Global Leadership Forecast 2021
自社への示唆:リスキルが84%で圧倒的1位。「今いる社員を育て直す」ことが、今後10年の人事の最重要テーマです。採用で解決する時代から、育成で解決する時代への転換が鮮明に表れています。
変化の大きさは認識されていますが、肝心のリーダー育成は追いついていません。DDI調査は「リーダーに必要なスキル」を緊急度と現在のスキル不足度の2軸で整理し、4象限に分類しました。
リーダーに必要なスキル:緊急度 × スキル不足度の4象限
出典:DDI Global Leadership Forecast 2021
自社への示唆:管理職研修の予算配分を見直す基準になります。「緊急状態」の5スキルは今期の研修に組み込み、「気づかない課題」の4スキルは来期の計画に先行投資として盛り込むのが現実的です。
リーダーのエンゲージメントとリテンションを左右する7つの要因も報告されました。1位は「明確な成功目標」、2位は「キャリアパスが見える」こと、3位は「直上の上司との良い人間関係」、4位は「適切な育成プランがある」、5位は「効果的なコーチングを上司からもらう」、6位は「建設的なフィードバックをタイムリーにもらう」、7位は「必要な情報とリソースがある」です。リーダーを引き留めるために最も効果的なのは給与アップではなく、上司からの効果的なコーチングと明確なキャリアパスの提示だという結論です。
デジタルスキルに関しても厳しい現実が示されました。リーダーが最も自信がないスキルの1位がリモートリーダーシップ(自信がある経営者はわずか20%)、2位がデジタルスキル(同29%)です。DX変革プロジェクトをリードするために経営者に必要な能力として、1位はリモートリーダーシップ(23%)、2位はEQ・共感性(16%)、3位がデジタルスキル(16%)、4位がチェンジマネジメント(15%)という結果でした。DXを実現するために最も必要なのは、テクノロジーそのものよりも「人を動かす力」であることが明確に示されています。
リーダーが好む人材育成施策についても興味深いデータがあります。最も求められているのは「外部コーチング」と「チャレンジングな実務アサインメント」(いずれも48%)で、次いで「リーダーシップの強み診断」(42%)、「対面の集合研修」(39%)です。リーダーたちは社内の枠を超えた客観的な視点と、コア業務以外からの刺激を求めていることが分かります。一方で、既存の人材育成施策への評価は厳しく、「効果がないか低い」という回答が最も多かったのはメンター制度(55%)、コーチング(46%)、目標管理(33%)でした。
ビジネス中心 vs ヒューマン中心 ― リーダーシップの転換
Josh Bersin Academyの「Big Reset Playbook: Human-Centered Leadership」は、企業の人事リーダー、リーダーシップの専門家、心理学者が共同でまとめた研究レポートです。パンデミック後にどのようなリーダーシップが求められるかを体系的に整理し、従来のビジネス中心型リーダーシップから、ヒューマン中心型リーダーシップへの転換を提唱しました。
これは「業績を諦める」という話ではありません。「社員の力を最大限引き出すことで業績を上げる」というアプローチの転換です。ビジネス中心型は「業績を伸ばすためにイノベーション、マーケティング、研究開発、生産、品質、財務会計に重点を置く」のに対し、ヒューマン中心型は「お客様の満足度向上と社員の成長のために育成、コーチング、影響力、エンゲージメントに重点を置く」スタイルです。
ビジネス中心 vs ヒューマン中心:マインドと行動の違い
出典:Josh Bersin Academy「Big Reset Playbook: Human-Centered Leadership」
ビジネス中心
ヒューマン中心
リーダーの特徴
自信、知識、判断力に基づく。個人の成長・昇進・財務成果がモチベーション
共感力、リスニング、グロースマインドセット。ミッション・パッションがモチベーション
考えるポイント
社内の問題解決、ソリューション、目標管理にフォーカス
社外(お客様のニーズ・市場の動き)を見て、課題の裏にある原因を探る
フォーカス
組織構造、効率、実現する力、部門ごとの目標達成
部署を越えた交流、モビリティ、可能性の発見、関係構築
リーダーの役割
真剣・真面目・あきらめない姿勢で社員の見本になる
ウェルネスとメンタルを大切にする姿勢で社員の見本になる
スキル
技術・機能・財務視点が強い。イノベーションは特別なプロジェクト。仕事の管理が得意で細かい。部下が多い(平均20〜30人)
ヒューマンスキルが強い。イノベーションは日頃の業務。部下に任せてメンバーを育てる。部下が少ない(プレイングマネージャーが多い)
関わり方
委員会、会議、1on1のようなフォーマルな接点。会議の準備がよくでき、効率良く進めて目標を達成する
雑談、チェックインのようなインフォーマルな接点。会議でメンバーの考えを聞いて、動機付けて、一緒に方向性を決める
チームの雰囲気
高い成果を出すためにメンバーが真剣に働く。競争的な環境で勝者と敗者がいる
レベルの高いチームワークを実現する雰囲気をつくる。メンバーが助け合い、高め合う環境
自社への示唆:どちらかに偏るのではなく、状況に応じて使い分けるのが理想です。ただし多くの管理職は「ビジネス中心」のスキルで昇進してきたため、「ヒューマン中心」のスキルは意識的に開発する必要があります。管理職研修でこの対比表を使い、自分のスタイルを振り返るセッションが有効です。
ヒューマン中心型リーダーシップの土台として、心理学者のMartin Seligman博士の研究も紹介されました。リーダーがチームのレジリエンスを高めるために必要な3つの要素は、安全な環境をつくること(心理的安全性)、ポジティブな将来像を示すこと(「破滅的思考」を防ぐ)、そして仕事の中に喜びの要素を取り入れること(ストレス耐性の向上)です。これらは米軍のレジリエンスプログラムでも採用されている実証済みのアプローチとして紹介されました。
管理職研修の設計でお悩みの方へ。よくある「落とし穴」と具体的な改善策をまとめた記事もあわせてご覧ください。
リスキルの爆発的加速 ― Udemyのデータが示す現実
Udemy Businessの「2021 Workplace Learning Trends Report」は、リスキルの急激な加速を数字で裏付けました。アップスキル(さらに高いスキルの獲得)とリスキル(違う分野の新しいスキルの獲得)の重要性は数年前から言われていましたが、パンデミックがその動きを一気に加速させました。
リスキル対象者の割合
14%
2019年
→
38%
2020年
1年で2.7倍に急増
研修の最大目標
62%
「スキルギャップを埋める」
が研修目標の1位
研修の最大障害
61%
「時間がない」
が研修障害の1位
自社への示唆:リスキルの「やらなければ」という意識は高まっているのに、最大の障害は「時間がない」こと。この矛盾を解決する鍵は、長時間の集合研修をマイクロラーニングやブレンドラーニングに再設計すること。DDI調査でもリーダーが最も求めているのは「学習時間の確保」でした。
研修への満足度も課題です。57%は「満足」と回答したものの、22%は「満足でも不満でもない」、21%は「不満」と答えており、約4割の社員が研修に十分な価値を感じていません。スキルの寿命そのものも短くなっています。以前は身につけたスキルが5年程度は使えると考えられていましたが、2021年時点ではその期間が2〜3年に短縮しているとLinkedIn Learningは報告しています。
急に求められているスキルの具体的なデータも紹介されました。Udemyが200カ国・7億人のメンバー、5,500万社、14万の求人広告、12万の研修ベンダーから1.7万講座のデータを分析し、3万6,000スキルにまとめた中から、2021年に入って受講数が急増したスキルをリストアップしています。
データリテラシーは20年前のPCスキル
ビジネスインテリジェンス講座の2020年の受講者数は前年比1,411%増と爆発的に伸びました。代表的なデータリテラシー講座の受講者数(前年比)は、Salesforce(664%)、SAP(428%)、Excel中級編(417%)、Qlik Sense(377%)、SQL(298%)、MS Power BI(295%)です。
注目すべきは難易度のレンジの広さです。初級編ではGoogle Sheets(858%)やExcel(227%)といった身近なツールから、上級編ではSalesforce(664%)、Qlik Sense(377%)、SAP(247%)、Tableau(247%)まで、あらゆるレベルのデータリテラシーが求められています。Udemy講師のJose Portilla氏は、データリテラシーが20年前のPCスキルと同じ位置づけになりつつあると指摘しています。つまり、「できる人が強い」のではなく、「できない人が困る」時代に入ったということです。
オートメーションスキルがデータ活用の第一歩
機械学習関連の講座も急成長しています。AutoML人気講座の受講者数(前年比)は、PyTorch(542%)、TensorFlow(458%)、OpenCV(300%)、Reinforcement Learning(274%)です。データオートメーションの講座も伸びており、Data Warehouse(1,488%)、Data Modeling(466%)、Informatica Power Center(466%)が上位に入りました。
TensorFlowの人気は業界を問いません。IT業界所属の受講者のTensorFlow講座受講回数は前年比1,599%、自動車業界でも463%増です。データサイエンスチームだけでなく、あらゆる部門のメンバーがデータスキルを身につけることで、組織全体がデータを活用できる「データ・セルフサフィシエント」な状態に近づくことが目指されています。
TQ:職場のITリテラシーを一気に高める方法
Get Control! Universityが開発した「TQ(Tech Quotient)」は、IQやEQと同じようにテクニカルスキルを測定・育成するフレームワークです。グローバル1000企業の20%が採用しているこのアプローチの特徴は、ITスキルを2つの観点で測定する点にあります。
1つ目は「ITスキル」――テクノロジーを使いこなせる力。2つ目は「コーチングスキル」――人にITを教える力です。この2軸で社員を4タイプに分類します。
TQの4タイプ:ITスキル × コーチングスキル
出典:Get Control! University「TQ: The Future of Work?」
ITスキル高
オタク
スキルは高いが人に教えるのが苦手。
育成のコツ:コーチングスキルを身につければチームで大活躍。教える場をつくるだけで変わる。
達人
チームに最も役立つタイプ。常に学び、周囲にシェアする。
目標:このタイプの人数を増やすことがTQ向上の最終ゴール。
ITスキル低
初心者
ITもコーチングもこれから。心理的な壁が大きい。
育成のコツ:eラーニングより講師付き研修で安心感を。まず壁を下げることが先決。
ちょっと分かる先輩
教えるのは得意だがITスキルはまだ。
育成のコツ:ITスキルを上げればすぐにチームの支援役に。教える機会をどんどんつくる。
自社への示唆:ITスキル研修を「全員一律」で行うのではなく、まず4タイプのどこにいるかを診断し、タイプ別に施策を変えるのが効果的です。特に「オタク」のコーチングスキルを上げるだけで、チーム全体のIT活用力が大きく底上げされます。
報告会では実際の研修前後の変化データも共有されました。ある製薬会社のリーダーシップチームでTQアセスメントと研修を実施した結果、研修前は受講者の青い点(個人スコア)が左下(スキル低・コーチング低)に集中し、右上の「達人」は3人しかいませんでした。研修後はほぼ全員が右上の方向に移動し、平均点も右上に移動。「達人」の人数も大幅に増加しました。TQアセスメントの特徴は、スキルと頻度の両方を測定する点です。「Excelを使えますか?」ではなく「オートテキスト機能をどのくらいの頻度で使っていますか?」のように、具体的な生産性向上機能の活用度を測ることで、実践的な改善につなげています。
若手社員のスキルギャップや主体性向上にお悩みでしたら、2年目社員の育成課題と解決策をまとめた記事が参考になります。研修効果測定の具体的なやり方もあわせてご覧ください。
NEW人材育成 ― リモート研修とブレンドラーニングの最適解
報告会の第3テーマは、研修の「届け方」そのものの変革です。パンデミックにより集合研修からリモート研修への転換を余儀なくされた2020年を経て、2021年時点で研修の現場はどう変わり、何が変わらなかったのか。アイディア社の顧客アンケートとBrandon Hall Groupの調査データをもとに、現状と今後の方向性を整理しました。
人材育成の変わること、変わらないこと ― 日本企業の実態
アイディア社の顧客アンケートから、研修実施回数・リモート研修の割合・研修の対象者の3つの切り口で「変化」と「不変」を見ていきます。
研修実施回数:回復基調だが「戻る」のではなく「変わる」
昨年(2020年)は研修の延期とキャンセルが相次ぎ、実施回数が減った企業が多い状況でした。今年(2021年)は昨年に比べて増加傾向の企業が45%と最も多く、回復の兆しが見えます。一部で研修が減ったのは、昨年実施した安全・衛生・リモートワークといった緊急テーマの研修が一巡したためです。来年の見込みでは、55%の企業が「今年と同じレベル」で落ち着くと予測し、40%は増加傾向と答えています。
リモート研修の割合:急増から定着へ
リモート研修の割合は劇的に変化しました。昨年はリモート研修の割合が1割以下だった企業が一気に7割以上のリモート比率に急増。ただし、一部の企業は集合研修にこだわったかリモート対応ができなかったために、リモート比率が低いまま残りました。今年は98%の企業がリモート研修を半分以上の割合で実施しており、リモート対応は十分に定着しています。
リモート研修が「半分以上」を占める企業の割合
アイディア社 顧客アンケート。急増→定着→一部回帰のトレンド
読み取りのポイント:2020年に83%の企業がリモート研修比率50%以上に到達し、2021年には98%とほぼ全社に定着。来年は集合研修が一部戻るため90%にやや下がるものの、リモート研修が半分以下に戻る企業はほぼゼロ。リモート研修は「緊急対応」から「標準オプション」になりました。
研修の対象者:驚くほど変わらない
興味深いのは、研修の対象者がパンデミックの前後でほとんど変わっていないことです。昨年・今年・来年のいずれも、1位は新入社員(69〜71%)、2位は若手社員(59〜61%)、3位は中堅社員(42〜46%)、4位は管理職(44〜47%)という順位は不動です。パンデミックによって研修の「届け方」は劇的に変わりましたが、「誰に届けるか」という優先順位は変わっていません。
学習方法の大きな変化
Brandon Hall Groupの調査では、パンデミックによる学習方法の変化が明確に示されました。大幅に増加したのは、リモート研修(バーチャルクラスルーム)、ウェビナー、電話会議、eラーニング、ソーシャルラーニングツールです。逆に大幅に減少したのは集合研修(対面ILT)で、これは当然の結果です。
学習方法以外の変化として、報告会では以下のポイントが整理されました。プラスの変化として、リモート研修が急に増えて十分に活用できている、マイクロラーニングが普通になってきている、オンデマンドはいつでもどこでもできる、集合・リモート以外の学習法(コーチング、OJT等)が盛んになった、映像・AR・VR・ゲームの活用が増えてきている、アセスメントの使用も増えている、という点が挙げられました。課題としては、アップスキル・リスキルの必要性が目立ってきたものの対応が追いついていない点、そしてリモート疲れが深刻化している点が報告されています。
リモート研修の大々的デビューと現状 ― 870名の調査データ
リモート研修の専門家Cindy Huggettが870名以上のグローバル回答者を対象に行った「The State of Virtual Training 2020」は、リモート研修の実態を詳細に描き出しました。90%の企業がパンデミックを機にリモート研修を増やしており、リモート研修はもはや「代替手段」ではなく「主要な研修形態」に転換しています。
まず、リモート研修の定義について。調査では78%が「リモートで演習を交えたインタラクティブなオンライン教育」と回答し、15%が「一方通行のオンラインプレゼンテーションやウェビナー」と回答しています。つまり大多数にとってリモート研修とは双方向の学びの場であり、単なるウェビナーとは明確に区別されています。
リモート研修の現状:6つの主要指標
出典:Cindy Huggett「The State of Virtual Training 2020」(n=870+)
60分
最も多い研修時間
58%が90分以内
25人未満
77%の研修の受講者数
少人数が主流
45%
ブレンドラーニングの
一部として実施
83%
講師がカメラを使用
(受講者は55%)
49%
プロデューサーを
よく使う
9時間
研修1時間あたりの
準備時間
自社への示唆:「60分・25人未満・ブレンドの一部」が世界標準。長時間の集合研修をそのままリモートに置き換えるのではなく、短時間セッション×複数回のシリーズに再設計することが成功のカギです。
人気のプラットフォームは、Zoom(51%)、Microsoft Teams(28%)、WebEx Training Center(25%)、Adobe Connect(24%)、Webex Meeting Center(17%)、GoToTraining(13%)です。リモート研修の課題としては、テクニカルトラブル(43%)、受け身的な受講者(35%)、リソース不足・経営者の理解がない(18%)、リモートに不慣れな講師(16%)、ネットワークが弱い(11%)が挙げられました。
変わってほしい点として最も多かったのは「経営者の理解と支援」(45%)で、次いで「違うプラットフォームを使いたい」(25%)、「IT環境の改善」(12%)、「リモート研修のスキルアップ」(11%)です。リモート研修の成功には、ツールやスキルだけでなく、経営層のコミットメントが不可欠であることが浮き彫りになりました。
リモートプレゼンテーションの完全ガイド ― 4ステップで成功する
プレゼンテーションデザインの専門家Nolan Haims Creativeの「Presenting in a Remote World」では、リモートプレゼンテーションを成功させるための4つのステップが紹介されました。チャット(少人数の会話)から会議、プレゼン、大規模イベントまで、リモートコミュニケーションの全領域をカバーするフレームワークです。
リモートプレゼン成功の4ステップ
出典:Nolan Haims Creative「Presenting in a Remote World」
STEP 1
エンゲージメント
期待設定と雰囲気づくり:入ったらすぐ挨拶、カメラオン推奨
インタラクション:チャットとQ&Aを活用、モデレーターを配置
コラボレーション:共同作業、投票、ホワイトボード、ブレイクアウトルーム
STEP 2
デザイン
文字を減らす(3ワードチャレンジ)
見出しを強調する
箇条書きをイメージ化する
高解像度の写真を使う
STEP 3
身体の活用
声:トーンのバリエーション、メリハリ、語尾上がりを避ける
体:立つか前向きに座る、ジェスチャーを使う
Zoom疲れ対策:プレゼンは短く少なく
STEP 4
テクノロジー
セッティング:背景はシンプルに
ネットワーク:有線LANを使用
照明:複数ライト、逆光を避ける
カメラ:目を画面の2/3の高さに
マイク:有線、事前テスト必須
自社への示唆:リモートプレゼンの品質は「内容」よりも「環境」で決まることが多いです。特にSTEP 4のテクノロジー面は、一度整えれば効果が持続します。まず照明・マイク・カメラの3点を見直すことから始めましょう。
リモート研修の成功ポイント:プロデューサースキル
リモート研修の専門家Kassy Laborie Consultingが「The L&D Conference 2021」で発表した「3 Big Ideas for Producing Virtual Training」では、リモート研修を成功させるためのプロデューサーの重要性が語られました。集合研修では会場案内、教材の印刷・配布、設備テストといった運営業務を事務局が担いますが、リモート研修ではこれらが「プロデューサー」という役割に集約されます。
講師とプロデューサーの役割分担は明確です。講師は研修内容、進行、演習指示に集中し、プロデューサーはIT操作、運営、トラブル対応を担当します。一方通行の講義にならないためには演習が必要ですが、演習を円滑に運営するためにはプロデューサーの存在が不可欠です。先ほどの調査でも49%の企業がプロデューサーをよく使っている一方、23%はまったく使っていないという結果でした。
リモート研修の種類とプラットフォームの選び方
リモートで行うセッションには4つの種類があります。ミーティング(少人数、小グループなし)、研修(演習・作業・小グループあり)、ウェビナー(一方通行のプレゼン)、イベント(特別なプラットフォームを使う)です。ウェビナーと研修の違いは特に重要で、ウェビナーは「○○を知る」が目的で一方通行・大人数対象・1時間程度・休憩なし。リモート研修は「○○ができる」が目的で双方向・16人程度・2〜3時間・休憩ありです。
プラットフォームは2タイプ:勝負どころが違う
自社のプロデューサーの強みに合わせて選ぶ
自社への示唆:即興型は「当日うまく回せるプロデューサー」がいれば強い。プランニング型は「研修設計に時間をかけられる体制」があれば安定する。どちらが優れているではなく、自社の運営リソースに合わせて選ぶのがポイントです。
プロデューサーの3種類と必要なスキル
プロデューサーには3つのタイプがあります。テクニカル型はプラットフォーム操作と演習の運営を行うもので、最も一般的です。テクニカル+サブ講師型は、一部の講義も担当します。テクニカルスタート型は、セッション立ち上げ時のみサポートするタイプです。内容とプラットフォームによってプロデューサーに求めることが変わるため、自社の研修スタイルに合ったタイプを選ぶことが大切です。
プロデューサーに必要な3領域:テクニカルスキル × パーソナル資質
出典:Kassy Laborie Consulting。各領域に「できること」と「あり方」の両面が求められる
自社への示唆:テクニカルスキルは研修で身につきますが、パーソナル資質は人選で決まります。既存の研修事務局メンバーやITに強い若手社員の中から、「落ち着きがある」「気配りができる」人をプロデューサー候補に選ぶのが近道です。
受講者から見たオンデマンドの現状
Intrepid Learningが四半期ごとに行っている受講者のパルスサーベイ(2021年夏、米国の企業社員800名対象)では、eラーニングを中心としたオンデマンド研修の評価が報告されました。
「今年受けた研修で、質問して回答をもらえたか」では「まあまあ」が25%、「数回」が65%、「ない」が10%。「演習や内容を練習する機会があったか(確認テスト以外に)」では「まあまあ」が30%、「数回」が52%、「ない」が18%。「他の受講者とコミュニケーションができたか」では「まあまあ」が25%、「数回」が65%、「ない」が10%。「仕事で役立つ内容だったか」では「まあまあ」が42%、「数回」が50%、「ない」が8%です。
全体的に改善傾向にあるものの、「質問への回答」「演習機会」「他の受講者との交流」のいずれも「まあまあ」以上は3割前後にとどまり、オンデマンド研修の双方向性にはまだ大きな改善余地があることが示されています。Intrepid Learningは、この課題を解決する方法として「コラボラティブ・オンラインラーニング」――つまりオンデマンドの中にグループワークやディスカッションを組み込むアプローチを推奨しています。
インタラクティブオンデマンド:VRの可能性
Serious Play Conference 2021で発表されたIkosader×Intelの事例は、VRを「プロセス習得」ではなく「行動変容」のために使うという新しいアプローチです。東京オリンピックのボランティア研修用にオリジナルVR育成ソリューションを開発しました。VRは医療・軍隊・工場で少しずつ使われていますが、共通するのは手順やプロセスをマスターするための活用です。それに対し、この事例は「イベントマネジメントの判断力」という行動変容を目的にしている点が画期的でした。
難易度が段階的に上がるHOP・STEP・JUMP
オリンピックのボランティア育成は8年間の長いジャーニーです。最初の7〜4年は戦略とデザイン、4年前から当日まではプランニングと運営。ほとんどの関係者はイベント業界の未経験者であり、短期間で判断力を育てるために3段階の設計が採用されました。
VR研修の3段階:HOP → STEP → JUMP
難易度を段階的に上げて、知識→判断力→実践力へ
知識習得
eラーニングとクイズで基礎知識を固める
難易度:低|方法:オンデマンド
判断力
VRシミュレーションで1分1回の判断を体験し、シナリオディスカッションで振り返る
難易度:中|方法:VR+対話
実践力
他の実際のイベントに参入して初めてのリアル体験を積む
難易度:高|方法:OJT
VRの松竹梅:3つの制作レベル
VR制作の3レベル:コストと柔軟性のトレードオフ
完成したソリューションは30分程度のVR体験で、1分に1回の判断を求められる設計です。アウトドアサイトとインドアサイトの各会場にオリジナルシナリオが用意され、32以上の判断ポイントが含まれています。
VRの最も優れたポイントとして報告されたのは、実体験そのものではなくデータです。すべての判断について様々な観点からデータが取れるため、体験直後に個人別の振り返りを行い、理解を深めることができます。特に興味深かったのは日本人の振り返りで、VR体験後に一緒に振り返りを行うと、普段より自由に話してくれて非常に効果的だったと報告されています。
プロジェクトからの学び
良かった点
現実的で良い体験だった。研修の「きっかけ」として最高。共通言語の認識ができる。多様性のあるメンバーがいる場合にベクトルを合わせるのに大活躍した。
課題
制作に時間がかかる。運営と準備そのものが大きな体験になる。
ハイブリッド研修 ― 3つの会場をつなぐ設計
報告会ではアイディア社自身の実践として、ハイブリッド研修(メイン会場+サブ会場+リモート参加を同時につなぐ研修)のセッティングと運営ノウハウが紹介されました。
ハイブリッド研修:3つの会場の設備と体制
アイディア社の実践事例。会場タイプごとに異なる準備が必要
ハイブリッド研修では、研修の場面ごとに各会場で異なる配慮が必要です。報告会では講義・ディスカッション・グループワークの3場面について、それぞれの運営ポイントが共有されました。
3つの場面 × 3つの会場:運営ポイント早見表
会場によって「同じ場面」でもやることが違う
自社への示唆:ハイブリッド研修の最大の落とし穴は「リモート参加者が置いてきぼりになる」こと。グループワークではリモート用の作業ファイルを事前に準備し、サブ講師がリモート参加者専任でフォローする体制を組むことが成功のカギです。
効果的なブレンドラーニング設計 ― 9週間モデル
報告会の最後に紹介されたのは、効果的なブレンドラーニングの設計モデルです。集合研修、自己学習、リモートセッション、職場実施、上司の巻き込みを9週間にわたって組み合わせる設計で、研修効果を最大化するフレームワークとして紹介されました。
ブレンドラーニング9週間モデル:6つの要素の配置
集合研修だけで終わらせない。職場実施と上司の巻き込みが効果を決める
集合研修
自己学習
リモートセッション
職場実施
上司の巻き込み
このモデルの各要素にはそれぞれ明確な役割があります。
6つの要素の役割と設計ポイント
キックオフセミナー(1週目)
全体のプログラムを理解してもらい、最後までやりたいモチベーションを持たせる。
設計のコツ:経営者からのスピーチで重要性を伝え、成果発表のゴールイメージを明確にする
自己学習(2・4・6・8週目)
必要な知識をインプットする場。
設計のコツ:インプット・アウトプット・フィードバックのサイクルを回す。受講者のニーズに合わせて内容を調整
リモートセッション(3・5・7週目)
職場実施を踏まえたフォローの場。一般的な内容だけでなく、実践結果を共有し合う。
問いかけ例:「仕事上でどんな実施をした?」「うまくいったことは?」「課題は何?次のステップは?」
職場実施(3〜8週目の通し)
研修効果を高める最大のポイント。職場実施をしなければシリーズの良さが出ず、シリーズにする意味もない。
狙い:研修に対する考えを「良いことを学んだ」から「職場で活かして成果を出せた」にシフトさせる
上司の巻き込み(1・4・7・9週目)
職場実施の成否を左右する最大の要因。上司の関与がなければ受講者の行動変容は定着しない。
設計のコツ:上司に「研修の内容」と「部下にやってほしいこと」を事前に共有し、実践の機会をつくってもらう
成果発表(9週目)
受講者の上司と経営者に向けて、研修期間中に得られた成果を発表する場。
設計のコツ:研修の「締め」であると同時に、研修の価値を組織に示す重要な機会。具体的な数字と行動変化を発表させる
職場実施を阻む3つの壁と突破策
研修効果を高める最大のポイントは職場実施ですが、受講者が研修内容を職場で活かさないケースは多くあります。その理由と解決策が3つ整理されました。
職場実施を阻む3つの壁と突破策
壁 1
使う機会がない
すぐ使える内容に絞る
受講対象者を見直す
壁 2
何をすべきか不明
「どう使うか」を研修中に教える
アクションプランを持ち帰らせる
壁 3
優先順位が低い
仕事に直結するテーマを選ぶ
上司から優先度を伝えてもらう
↓ ↓ ↓
3つの壁すべてに共通する解決策
上司の巻き込みをプログラムに組み込む
ブレンドラーニングの設計や、研修効果を高める仕組みづくりにご関心がありましたら、以下の記事もあわせてご覧ください。
2021年のトレンドから今に活きるポイント
2021年に語られたトレンドの多くは、2020年代半ばの現在、すでに「当たり前」になっています。しかし当時の議論を振り返ると、予測どおりに進化したものと、予想以上に加速したものがあります。人材育成担当者にとって重要なのは、2021年時点の「提言」が現在どう実現しているかを確認し、自社の取り組みの現在地を測ることです。
2021年に語られたこと → 2020年代にこう進化した
当時の「先進的な提言」は、今の「標準的な実践」になっている
2021年の提言
2020年代の現実
ワークスタイル
ハイブリッドワークの制度設計が急務
制度は定着。課題はEX全体の設計と文化維持に移行
リーダーシップ
ビジネス中心からヒューマン中心への転換を提唱
心理的安全性・1on1・コーチング型マネジメントが主流に
リスキル
アップスキル対象が14%→38%に急増。スキル寿命が短縮
AI活用スキルが加わり、リスキルは「全社員・常時」の時代へ
ウェルネス
ホリスティック・ウェルビーイングの4要素が提唱
人的資本経営の文脈でウェルネスが経営指標に組み込まれた
研修の届け方
リモート研修が「緊急対応」として急拡大
ブレンドラーニングが標準設計に。集合研修は「あえて対面でやる価値」で選ぶ時代
自社への示唆:この5つの領域で「2020年代の現実」に追いついていない項目があれば、そこが自社の研修設計の改善ポイントです。特にリスキルとブレンドラーニングは、多くの日本企業でまだ本格的な取り組みが始まっていない領域です。
Q&A:人材育成ワールドトレンド報告会2021に関するよくある質問
Q1. 人材育成ワールドトレンド報告会とは何ですか?
IDEA DEVELOPMENT株式会社が主催する報告会で、世界の人材育成に関する最新トレンドや成功事例を、海外の主要調査レポート(i4cp、DDI、LinkedIn Learning、Josh Bersin Academy等)をもとに日本の人事担当者向けにセミナー形式で紹介するイベントです。2021年はオンラインで開催され、353名が参加しました。
Q2. 2021年の報告会で取り上げられた主なテーマは何ですか?
大きく3つのテーマで構成されています。第1テーマ「NEWワークスタイル」ではハイブリッドワークの実態と成功法則、第2テーマ「NEW受講者ニーズ」ではリーダーシップ、ウェルネス、リスキルの最新動向、第3テーマ「NEW人材育成」ではリモート研修、ハイブリッド研修、ブレンドラーニング設計の最適解を紹介しました。
Q3. ハイブリッドワーク環境で管理職に必要なスキルは何ですか?
DDI Global Leadership Forecast 2021によると、最も緊急度が高くスキル不足な領域は、部下育成、チェンジマネジメント、デジタルスキル、戦略思考、影響力の5つです。また、Josh Bersin Academyの研究では、従来のビジネス中心型リーダーシップからヒューマン中心型リーダーシップへの転換が求められており、共感力、リスニング、グロースマインドセットが重要な資質とされています。
Q4. リモート研修を成功させるためのポイントは何ですか?
870名の調査データによると、成功のカギは「60分・25人未満・ブレンドの一部として設計」の3つです。長時間の集合研修をそのままリモートに置き換えるのではなく、短時間セッションを複数回のシリーズにすることが効果的です。また、講師とは別にプロデューサー(IT操作・運営担当)を配置することで、双方向の演習を円滑に運営できます。
Q5. ブレンドラーニングを設計する際に最も重要なことは何ですか?
報告会で紹介された9週間モデルでは、研修効果を高める最大のポイントは「職場実施」と「上司の巻き込み」です。受講者が研修内容を職場で活かさない主な理由は、使う機会がない、何をすべきか分からない、優先順位が低いの3つで、いずれも上司の関与をプログラムに組み込むことで解決できます。集合研修だけで完結させず、自己学習・リモートフォロー・職場実施のサイクルを設計することが重要です。
研修設計のご相談はお気軽にどうぞ
ハイブリッドワーク時代の管理職育成、ブレンドラーニングの設計、リモート研修の品質向上など、本記事で紹介した海外トレンドを踏まえた研修プログラムのご提案が可能です。まずはお気軽にご相談ください。







