パンデミック前の研修に戻ってはいけない3つの理由|やりっぱなし・対面固定・完成度優先を見直す

「対面に戻ろう」という動きの何が問題なのか
コロナ禍が落ち着くにつれ、「来年度は対面研修に戻す」という声が人材育成担当者との会話の中で増えてきました。対面研修に戻ること自体は悪くありません。問題は、3年間で得た学びを活かすことなく、パンデミック前のやり方にそのまま回帰しようとしていることです。
研修定着と効果測定の第一人者であるコンラッド・ゴットフレッドソン博士は、研修効果が出にくい最大の理由は「研修が現場から離れていること」だと指摘しています。SCM(Success Case Method)で知られるブリンカホフ博士も、現場で成果の出た事例を分析し要因を展開することが研修成功の早道だと長年提唱しています。つまり、研修の成功とは現場でのビジネス成果であり、その出発点は最新のニーズを把握することにあるのです。
この記事では、パンデミック前の研修スタイルに戻ってはいけない3つの理由と、今後に向けた具体的なヒントをお伝えします。研修効果をビジネス成果につなげる視点については、研修ニーズのヒアリング方法|把握から設計につなげる3つのアプローチもあわせてご覧ください。
① やりっぱなしの単発研修にしない
パンデミック前、対面研修の7割以上が単発のやりっぱなしでした。長期的なシリーズ研修(新任管理職研修、次世代リーダー研修など)も一部ありましたが、圧倒的多数は1回限りで終わっていました。
やりっぱなしの最大の問題は、成果が出にくいことです。成果を出すには定着フォローが必要ですが、忙しい講師と受講者を複数回対面させることは困難でした。また、豪華な外部会場とカリスマ講師による非日常的な研修ほど、かえって成果が出にくいというパラドックスがあります。当日のインパクトが強く記憶には残りますが、多くの受講者はその特別な体験をいつもの職場でどう活かせばよいか分からないのです。
今後のヒント:単発研修から卒業するための3つのアプローチ
② 対面集合研修をデフォルトにしない
パンデミック前の2019年、当社が実施した研修の9割以上は対面集合研修でした。その後2020年春に一気にリモートへシフトしましたが、最近また対面回帰の流れが出てきています。対面研修には確かに長所があります。受講者の一体感を生み出せますし、ダイナミックな演習も可能です。しかし、運営と準備が大変なこと、移動時間と費用が必要なこと、受講者の期待値が高すぎて対応が難しいことも事実です。
特に現在の若手社員・新入社員は学生時代からリモートに慣れており、対面研修に非常に大きな期待を抱いています。だからこそ、対面を使う場面を慎重に選ぶ必要があります。
今後のヒント:研修形態の使い分け
特におすすめのスタイルが「事前オンデマンド+少人数の短時間リモートフォロー」という組み合わせです。受講者は事前に内容をインプットし、グループに分かれた短時間のリモートセッションでアウトプットとフォローを行います。例えば24人の研修を6人チーム×4グループに分け、各チームと1時間のリモート研修を2回行うと、講師の拘束時間は変わらず丁寧な個別フォローができます。
対面・リモート・オンデマンドを組み合わせるブレンドラーニングの設計方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
③ 研修内容の完成度を優先にしない
「良い研修を作るには最低10年かかる」という言葉がパンデミック以前の研修業界の常識でした。丁寧に作り込まれた研修プログラムには確かな価値があります。しかし現在、その考え方には2つの致命的な問題があります。
ひとつは、昔作った研修内容が今のビジネス環境のニーズと合わなくなっているということです。リモートワーク主体の時代に「歩き回ることによるマネジメント(MBWA)」を教えても意味がありません。もうひとつは、環境変化が速すぎて研修が完成したときにはニーズが変わってしまうという問題です。現在の事業戦略・目標・組織変更は四半期から1年未満で行われるため、研修の企画から完成まで1〜2年かけていては現場のニーズに追いつけません。
今求められるのは完璧主義を手放し、ニーズを聞いてから1ヶ月後に初回研修を実施し、3ヶ月以内に終了するくらいのスピード感です。まず既存の研修を見直し、現在のワークスタイル・経営方針・事業戦略に合わない内容をチューニング・入れ替え・削除することから始めましょう。
研修設計の見直しや、現在のニーズに合わせた研修のリニューアルについてご相談いただけます。
まとめ:3年間の学びを活かした2023年以降の研修設計を
パンデミックの3年間、多くの組織がリモート研修の設計・運営・定着という新しいスキルを身につけました。この経験は、単に緊急対応の産物ではありません。「研修の成果とは何か」「現場定着のために何が必要か」を考え直す貴重な機会でした。
来年度の研修企画を立てるとき、ぜひこの3つの問いを持ってください。「やりっぱなしになっていないか?」「対面である必然性があるか?」「研修内容は今のニーズに合っているか?」。この問いに答えながら設計された研修こそが、経営と現場の両方に響くものになります。
よくある質問
対面研修に戻すこと自体は問題ないですか?
対面研修自体は問題ありません。受講者同士の交流が重要な場面、体を動かす演習が必要な場合、特別なイベント性を持たせたい場合などは対面が最適です。問題なのは、対面研修に戻ることが目的化してしまい、やりっぱなし・単発・内容の陳腐化という旧来の問題をそのまま持ち込んでしまうことです。
研修後フォローを「自動化」するとはどういう意味ですか?
担当者が毎回手動で連絡する必要はありません。メール配信ツールやLMSの自動送信機能を使って、研修から1ヶ月後にリマインダー、1〜2ヶ月後に活用ヒント、2〜3ヶ月後にヒアリングアンケートを自動送信する仕組みを作ることを指します。1つのメールを設定するだけでも、やりっぱなし研修からの脱却に大きく貢献します。
研修スピードを上げると質が落ちませんか?
完璧を目指すより「最初のバージョンを早く出してフィードバックで改善する」サイクルの方が、現場ニーズとのズレを最小化できます。研修内容の8割は既存の素材を活用できることが多いため、まず現行の研修を棚卸しして使えるものを確認してから、不足する部分だけを新規開発するアプローチが現実的です。
研修設計の見直しをお考えの方へ
「やりっぱなし研修から脱却したい」「対面とリモートの使い分けを整理したい」「研修内容を今のニーズに合わせてリニューアルしたい」というご要望に、研修設計の段階からご支援します。







