ATD2016 帰国報告会レポート|デンバーで見た人材育成の最前線

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ATD国際会議の帰国報告会レポートは、各年度のテキストを無料でダウンロードいただけます。2016年の知見と最新トレンドを比較しながらお読みください。
2016年5月、世界最大級の人材育成カンファレンス「ATD International Conference & Exposition 2016(ATD国際会議)」がアメリカ・コロラド州デンバーで開催されました。14のセッショントラック、約300のセッション、250以上のブース出展を擁するこの国際会議に、アイディア社のメンバーが参加。帰国後、御茶ノ水ソラシティにて2回にわたる帰国報告会を実施し、合計約380名の人材育成担当者にデンバーで得た最新トレンドと成功事例をお届けしました。
ATD2016のレポートは「BASE × BLEND = RESULTS」という独自のフレームワークで構成されています。BASEは人材育成の土台(事業戦略との連動、学習文化)、BLENDは研修手法の組み合わせ(ブレンドラーニング、マイクロラーニング、バーチャル研修、グローバル)、RESULTSは成果への接続(研修定着、効果測定、ROI)。Kuwait Oil Companyの「Do more with less」、Samsungのグローバルリーダー育成、そしてIBMが達成したROI 907%の営業研修まで、日本の人材育成担当者が自社に活かせる事例が詰まっています。
本記事では、レポート全体を3つのパートごとに詳しくご紹介します。
この記事でわかること
基本データ
14トラックの中ではリーダーシップ・ディベロップメント(45セッション)が最多で、ラーニング・テクノロジー(40)、ヒューマン・キャピタル(38)が続きました。帰国報告会は御茶ノ水ソラシティで2回開催され、第1回(2016年6月6日)に184名、第2回(2016年6月29日)に200名(予定)が参加しています。
ATD2016の構成 — BASE × BLEND = RESULTS
このレポートの読み方 — 3つのパートはこう繋がっている
事業戦略と学習文化が
すべての出発点
集合研修だけに頼らない
最適な手法ミックス
定着の仕組みと
ROIで経営層を納得させる
この3パートはバラバラのトピックではなく、「土台を整え(BASE)、手法を組み合わせ(BLEND)、成果を出す(RESULTS)」という一連の流れです。自社の研修が「どのパートが弱いか」を考えながら読むと、優先的に取り組むべき領域が見えてきます。
BASE — 人材育成の土台をつくる
BASEパートでは、厳しいビジネス環境の中で人材育成をどう位置づけ、どう土台を築くかがテーマです。Kuwait Oil Company、SCL Health、VW Academy Chinaの3つの企業事例に加え、人材育成部門の役割(Wilson Learning)と企業内学習風土の構築(Mind Gym)に関するキーワードセッションが紹介されました。
Kuwait Oil Company — 厳しい状況こそ人材育成の出番
KOCのアプローチは単純な予算カットではなく、「攻め」と「守り」の両輪戦略でした。攻めの姿勢として生産量維持と新技術への投資を継続しつつ、守りの姿勢として経費の最適化とキータレント(優秀人材)の保護に注力。研修プログラム数は15%減らしながらも、eラーニング・アクションラーニングへの移行と社内専門家の講師化によって、延べ受講者数は逆に12%増加しました。
KOC事例の最大の学びは2つ。第一に「ビジネス戦略→人材育成」の順序で考えること。事業戦略の実現に貢献できる育成にだけフォーカスし、他は大胆に削減する。第二に、25年かけて築いた学習文化(Learning Culture)が苦境でこそ力を発揮したという事実。学習文化は一朝一夕には作れないからこそ、平時から育むことの重要性が示されました。
SCL Health — やりっぱなし研修からビジネス成果への3年がかりの大変革
SCL Healthの変革で注目すべきは、急激な変化ではなく段階的に進めたことです。SWOT分析を丁寧に行い、3年間の戦略計画を策定。組織の成長を4つのステージ(場当たり→研修提供→個人強化→組織強化)で定義し、自社が今どのステージにいるかを把握した上で、次のステージに進むための具体策を打っていきました。結果として、社員のエンゲージメント向上、離職率低下、患者満足度の改善、リーダーシップパイプラインの強化を達成しています。
VW Academy China — ローカライゼーション90%の企業大学
フォルクスワーゲン(中国)のアカデミーは、設立6年という短い歴史ながら、急成長するビジネスに対応する人材育成を実現しました。最大の課題は3つ。プロフェッショナルスキルの不足、ドイツ本社プログラムのローカライゼーション、そしてデジタル化です。
つまり90%がローカライズされています。ドイツ本社の既存プログラムが中国のニーズに合わない理由は明確で、3年間の育成期間が長すぎる(US$100,000/人)、受講者の文化的背景に合わない(中国人はグループワーク+講師のプレゼンスを好む)という点でした。WeChatをソーシャルラーニングや理解度確認に活用するなど、現地のテクノロジー環境に合わせた工夫も光ります。成果として販売代理店の業務スピード向上、認知度アップ、顧客満足度の向上を達成しました。
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アイディア社は、ATD国際会議の知見をもとにグローバル人材育成プログラムの設計を支援しています。ローカライゼーションの進め方やバーチャル研修の設計など、お気軽にご相談ください。
BLEND — 研修手法を効果的に組み合わせる
BLENDパートはATD2016レポートの中で最もボリュームのあるセクションです。ブレンドラーニング、マイクロラーニング、モバイル&ビデオ、ゲーミフィケーション、バーチャル研修、グローバルリーダー育成、リーダーシップ、イノベーション、ストーリーテリングなど11のテーマが取り上げられました。
Amdocs — ブレンドラーニングの5つの成功法則
Amdocsの特徴は、コンセプトと方針を先に固めてから具体策を展開するトップダウンのアプローチです。営業部門トップと人材育成部門が一体となり、3種類のラーニングニーズ(通常ビジネスのサポート、ビジネスイノベーションのサポート、リアルタイムのサポート)を定義。研修前の予習、研修中のシナリオ演習、研修後のマイクロラーニングによるフォローという3ステップを確立しました。反転授業で研修の効率を上げつつ経費を削減し、ゲーミフィケーションで受講者を飽きさせない仕掛けも組み込んでいます。
マイクロラーニング — 2016年のキーワード
これらの数字が示す通り、現代の受講者はデジタルコンテンツを5秒で判断し、4分以上のビデオは最後まで見ず、業務時間の1%しか自己研鑽に使えません。マイクロラーニングの成功ポイントは「1つに絞る」こと。コンセプトを1つ、求める行動を1つ、期待する成果も1つに絞ることで、忙しい受講者にも確実に届く学びを実現します。
また、マイクロラーニングの成功には上司の巻き込みが欠かせません。3週間〜1カ月の期間中に、コンテンツ提供(10日に1回のリマインド)と上司面談(週1回の簡単なチェック)を組み合わせるモデルが紹介されました。コンテンツ制作の3C(Curate=既存情報の編集、Create=オリジナル作成、Crowdsource=受講者が作る)も実用的なフレームワークです。
Samsung — グローバルリーダー育成の3ステップ
32万人の社員を84カ国で抱えるSamsung Electronicsは、10年間で社員数が9万人から32万人へと急拡大する中、グローバルリーダー育成に挑みました。
本社のグローバル化
韓国人リーダーが世界で通用するようにする。韓国リーダーシップ+グローバルビジネスのスキル強化
海外展開
選抜されたグローバル社員のリーダー育成。地域ごとにプログラムの質にバラつきが出る課題に対応
グローバルリーダー育成(現在地)
全社員対象のワングローバルリーダーシップ。各リージョンを巻き込んでグローバルスタンダードを共創
Samsungは5つの共通リーダーシップコンピテンシーを定め、これを評価全体の40%に組み込んでいます。各地域のタスクフォースメンバーを巻き込んでグローバルスタンダードのプログラムを4カ月で開発するスピード感も特徴です。従来の韓国型トップダウンからパートナーシップ型への転換が、グローバル展開成功の鍵でした。フィードバック文化を構築し、定期的なコミュニケーション機会を設けることで、「世界中のメンバーを巻き込む」という難題に挑んでいます。
Pitney Bowes × CCL — バーチャルでもリーダーシップは育つ
Pitney BowesとCCL(Center for Creative Leadership)の共同事例では、5カ国25名が参加した7週間のバーチャルリーダーシップ研修が紹介されました。WebExでのライブセッション3回、eラーニング3回、社内SNS(Yammer)でのディスカッション1回というブレンド設計です。受講者からは「5日間集中研修なら受けられなかった」「仕事をしながら受講できてよかった」と高い評価を得ました。この事例が示す通り、2016年時点でバーチャルとソフトスキル研修の両立はすでに実証されていました。
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RESULTS — 研修を成果につなげる
RESULTSパートでは、研修を実施した後にいかにして成果につなげるかが取り上げられました。6Dsモデルによる研修定着、Coca-Cola Amatilの実証実験、研修効果測定の最新手法、そしてIBMによるROI 907%の営業研修です。
Emerson × 6Ds — 「学び × 定着 = 成果」の仕組み化
フォーチュン120のEmerson Electric(61年間で社長3人という安定企業)は、6Ds Companyと組んでリーダー育成の定着を飛躍的に高めました。Emersonが特に重視したのは「学び × 定着 = 成果」という考え方です。
Define — 期待するビジネス成果を定義する(ゴールから逆算)
Design — 受講者の一連の体験を設計する(研修前→中→後のプロセス)
Deliver — 職場実践につながる研修を伝達する(研修の2/3は演習)
Drive — ラーニングトランスファーを促進する(CFO動画+1週間以内の上司面談)
Deploy — サポートツールを展開する(QRコード付きビデオ+16種類のジョブエイド)
Document — 成果を書類化する(12週後のCapstone Callで全員が結果報告)
Emersonの計算式は明快です。どれほど素晴らしい研修(10点満点)でも、定着フォローがゼロなら成果もゼロ(10×0=0)。普通の研修(5点)でも適切な定着フォロー(5点)があれば成果は25(5×5=25)。この式は、研修の質だけでなくフォロー体制の設計がいかに重要かを端的に表しています。具体施策として、CFO自らの「使え」メッセージ動画、研修終了1週間以内の上司面談義務化、QRコードから研修サマリービデオへのアクセス、16種類のジョブエイドが紹介されました。
Coca-Cola Amatil — コントロールグループで証明した定着の力
Coca-Cola Amatilの実験は、研修効果の定着に悩むすべての人材育成担当者にとって朗報です。高額な外部コーチングの導入を待たなくても、「研修前にアクションプランを書かせる」「研修後に上司が3回面談する」という2つの施策だけで72%のスキル成長が得られるのです。この「まず小さく始める」アプローチは、予算や体制の制約がある企業にこそ有効な方法です。さらに踏み込みたい場合は外部コーチングの追加で103%まで伸ばせることもデータで証明されています。自社の研修定着の仕組みづくりについて相談したい方はお気軽にお問い合わせください。
IBM — ROI 907%の営業研修
2016年に語られたこと → 2020年代にこう使われている
2016年に語られた原則の多くは、テクノロジーの進歩によって実現手段は変わりつつも、その本質は2020年代にそのまま引き継がれています。特に「Do more with less」「上司の巻き込み」「学びと定着のかけ算」は、あらゆる時代の研修設計に通底する普遍的な知見です。
よくある質問(Q&A)
Q1. ATD2016のメインテーマは何でしたか?
ATD2016は「BASE × BLEND = RESULTS」というフレームワークで整理されています。BASEは人材育成の土台づくり(事業戦略との連動、学習文化の構築)、BLENDは手法の組み合わせ(ブレンドラーニング、マイクロラーニング、バーチャル研修、グローバル対応)、RESULTSはビジネス成果への接続(研修定着、効果測定、ROI)を指します。14のセッショントラックの中ではリーダーシップ・ディベロップメント(45セッション)が最多で、ラーニング・テクノロジー(40)、ヒューマン・キャピタル(38)が続きました。
Q2. ATD2016帰国報告会の開催概要を教えてください。
御茶ノ水ソラシティにて2回開催されました。第1回は2016年6月6日(月)で184名が参加、第2回は6月29日(水)で200名(予定)が参加し、合計約380名の人材育成担当者にデンバーでの最新情報をお届けしました。レポートは全111ページのフルカラー構成で、14のキーワードと6つの企業事例を収録しています。
Q3. ATD2016の知見は2020年代でも活用できますか?
多くの原則はむしろ2020年代の方が重要性が増しています。マイクロラーニングの「1つに絞る」設計原則、バーチャル研修のブレンド設計、「学び×定着=成果」の考え方、上司を巻き込んだコーチングによるフォローアップなどは、リモートワークが広がった現在の研修設計にそのまま適用できます。KOCの「Do more with less」はコロナ禍で全企業が直面した課題であり、2016年のKOC事例が先見的であったことが証明されました。
Q4. IBMがROI 907%を達成した要因は何ですか?
3つの要因があります。第一に、製品機能ではなく顧客のビジネス価値で語れるスキルへの転換。第二に、実際の担当顧客の案件を研修素材にした実務直結型の設計。第三に、研修後の上司コーチングの徹底です。特に上司コーチングは、スキル活用度とビジネス成果に明確な正の相関がデータで示されています。$2.8Mの投資で$163Mの売上・パイプラインを生み出したこの事例は、人材育成を「コストセンター」から「プロフィットセンター」へ転換した好例です。
Q5. ATD帰国報告会レポートはどこで入手できますか?
ATD国際会議の帰国報告会レポートは、アイディア社の無料レポートダウンロードページから入手できます。複数年度のレポートを無料で配布しており、フォーム入力でダウンロードいただけます。研修プログラムの設計や効果測定に関する個別のご相談はお問い合わせページからお気軽にどうぞ。
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本記事で紹介したKuwait Oil Company、SCL Health、Amdocs、Samsung、Emerson、Coca-Cola Amatil、IBMの事例とスライドを収録した111ページのフルカラーレポートを無料で配布しています。
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