生産性を高めるために日本企業が行うべき3つのシフト
アイディア社からの提言
生産性を高めるために日本企業が行うべき3つのシフト
目次
~働き方改革を推進するための具体策~
日本のホワイトカラーの生産性が著しく低いことが、社会問題にまでなってきました。政府は「働き方改革」という機を高く掲げています。
なぜ日本人のホワイトカラーの生産性は低いのでしょうか。どうすれば生産性を高めることができるのでしょうか。
そのヒントは、日本社会の特徴であるハイ・コンテキストなコミュニケーションにありました。欧米の企業に代表されるロー・コンテキストなコミュニケーション方法にシフトチェンジすればよいのです。
ポイントは3つあります。
1.伝え方シフト
2.聞き方シフト
3.動かし方シフト
ハイ・コンテキストなコミュニケーションスタイルは、「社員の才能」をフルに引き出すことの阻害要因になっていると言っても過言ではないでしょう。ロー・コンテキストなコミュニケーションスタイルを取り入れれば、才能を活かし、強みを活かす経営で会社も社員も幸せになれます。
1.背景
1.1.世の中の構造の変化
現代はVUCAで溢れています。VUCAとはVolatility-変動性、Uncertainty -不確実性、Complexity -複雑性、Ambiguity –-曖昧性、の頭文字をとった略語です。ひと言で言うと、先が見通しにくい社会になったということです。
ビジネスの競争がグローバル化し、市場が極めて速く変化していく中で、日本の古き良き時代の終身雇用制は崩れ去りました。また企業も、長期的、安定的に存続していくこと自体が困難になってきています。
ITに代表される革新的な技術が短期間のうちに一気に世界中に普及することで、ひとつのビジネスモデルで一時的に成功を収めても、それを上回る別のビジネスモデルがすぐに生まれ、ほとんどの分野で市場参入のハードルが低くなっているのが大きな理由です。このような先が見えないビジネス環境の中では、生産性の低い仕事のやり方をやっている会社や個人は、真っ先に淘汰されていってしまうでしょう。
1.2.日本の労働生産性
日本の労働生産性は、世界の先進国の中でほぼ最下位に位置しています。
労働生産性の国際比較 2016年版(日本生産性本部)
原因は明らかで、長時間労働しているからです。昨今、ブラック企業や残業時間の問題が大きくマスコミに取り上げられるようになり、政府も重い腰を上げようとしています。
しかし、単純に残業時間を少なくすれば、生産性が上がるとは思えません。働く人の意識、職場のコミュニケーションスタイル、仕事の中味を変えない限りは、どこかに歪みが出て根本的な解決にはならないでしょう。
1.3.ハイ・コンテキストとロー・コンテキスト
コンテキストとは一般的に「文脈」、「脈絡」、「状況」、「前後関係」、「背景」などと訳されますが、本編では「文化の共有度合い」として捉えます。1つの社会で共有していることがどれくらいあるのか。それが多いのか少ないのか。これが判断基準です。
皆が同じような言葉を話したり、皆が同じような宗教観を持っていたり、皆が同じような育ち方をしていたり、皆が同じような教育を受けて育ってきている社会、つまり文化の共有部分が多い社会はハイ・コンテキストです。
逆に、皆が話す言語がまちまちだったり、様々な宗教観をもった人達が混在していたり、受けてきた教育が学校の違いによってバラバラだったりする、文化の共有部分が少ない社会は、「コンテキストが少ない」という意味でロー・コンテキストといいます。
皆さんお分かりのように、日本は明らかなハイ・コンテキスト社会です。以心伝心、KY(空気を読め)などの非言語行動や、起承転結、背景説明などにこだわるコミュニケーションスタイルが得意です。
1990年以前は、ハイ・コンテキストなコミュニケーションスタイルの方が当時のビジネス環境の中では有利だったので、日本は大発展することができました。しかしビジネスのグローバル化が進むにしたがって、日本人の強みであったハイ・コンテキストなコミュニケーションスタイルが、労働生産性を下げていく原因になっていったのです。
2.生産性を上げる3つのシフト
2.1.ハイ・コンテキストの弊害
厳しい競争の中で生き残らなければいけないビジネスの世界。特に現在のような先の見えない変化が続く環境の中では、日本人のハイ・コンテキスト・コミュニケーションは非常に不利です。まず言葉で意志を表しません。非言語行動と呼ばれるものです。
何を伝えたいのか、何をしてほしいのか空気を読んで行動しろ、というわけですから、分からない人には伝わらないし、間違ったとらえ方をされることも多々あります。
言葉で伝える際も、相手の地位と自分の地位を比べながら、敬語や丁寧語を使って間接的な表現で伝えます。また、ロジックが苦手です。背景説明から入るのが大好きで、下手をしたら背景だけで終わってしまいます。肝心の伝えたい目的や、やってほしい行動の部分が曖昧になります。
このようなコミュニケーションが、ムダな仕事を誘発し、ムダな会議を行わせ、難しい課題に自ら取り組くむことを断念させ、自分自身で意志決定しようとしない指示待ち社員を生み出しているのです。
ロー・コンテキストのコミュニケーションスタイルを応用した3つのシフトチェンジを行えば、ハイ・コンテキストの欠点をプラスに変え、生産性を劇的に向上させることができます。
2.2.伝え方シフト
結論を最初に伝えることを習慣づけましょう。
「これが目的だ。これをやってほしい」
大事なのは目的であり最終成果物、つまりアウトプットです。背景や裏付けを知りたかったら質問してください、というスタンスでよいのです。
伝えたいことはロジカルに伝える。ロジカルとはわかりやすいということです。
ロジカルな伝え方のパターンは以下の通りです。
- 最初に目的やテーマを話します。
- 次に大項目にあたるポイントを2つか3つに絞り、それぞれに名前をつけてラベリングして提示する。
- ラベリングした大項目の詳細を伝える。
- 最後にもう一度、大事な点を相手にしっかりと伝えるためにまとめを伝える。
これがロー・コンテキストのロジカルな伝え方です。
2.3.聞き方シフト
聞いている側も、相槌やツッコミなどを相手に伝えて、積極的にコミュニケーションしていきます。わからなかったら途中でもよいからどんどん質問します。
ハイ・コンテキストな社会では、話は最後まで聞いて内容を察しなさい、途中で話を遮ったりするのは失礼である、という考え方がありますが、話手の意図と違う内容を自分勝手に想像してしまうことの方がよっぽど失礼なわけで、これがよくある「ボタンの掛け違い」とか、「そんなハズではなかった」というような失敗につながっていくのです。
ロー・コンテキストの伝え手は、聞いている相手がついてきてくれているか不安です。だからツッコミや相槌、途中での質問は大歓迎なのです。ロー・コンテキスト・コミュニケーションの基本は双方向、ツーウェイです。
2.4.動かし方シフト
相手に動いてもらうには、5つポイントがあります。
1)「時間があるから」という理由で動いてもらう
2)「簡単だから」という理由で動いてもらう
3)「重要だから」という理由で動いてもらう
4)「やりたいから」という理由で動いてもらう
5)「あの人だから」という理由で動いてもらう
日本社会はハイ・コンテキスト社会ですが、権力格差が大きい社会でもあります。ここでいう権力格差とは、人間関係を上下で見る社会、相手の肩書きによってコミュニケーションスタイルを変える文化をもっているということです。
そうなると相手の肩書きやポジションによって、5つのポイントのどれを選択するかが重要になってきます。会社全体がロー・コンテキストなコミュニケーションを行えるようになれば、5つのポイントを直接的に伝えやすくなり、さらに生産性の高い仕事が行えるようになるでしょう。
3.まとめ-才能を活かす経営に向かって
日本のホワイトカラーの生産性を上げるには、ロー・コンテキストなコミュニケーションスタイルを取り入れる必要があります。そのためには、話し方、聞き方、動かし方の3つのコミュニケーション方法をシフトさせることがポイントです。
このシフトチェンジは、社員の才能を見つけ、活かし、伸ばす方法でもあります。皆が活き活きと働き、その相乗効果でよい人材がどんどん集まってくる会社になれば、あなたの人生もハッピーになっていきます。ぜひ実践していただきたいと思います。
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