IDEA DEVELOPMENT株式会社 アイディア社
企業向け社員研修会社 全国対応の人材育成企業
公式ブログ

研修効果測定の方法と指標|ISO/TS 30437から学ぶ実践アプローチ


「研修をやっているが、効果が出ているかどうかわからない」——この悩みは、人材育成担当者の間で長年解決されていない課題です。2023年にはISOが研修効果測定の国際指標を発表しました。本記事ではこの指標の内容を整理しながら、担当者が実務で使える効果測定のアプローチを解説します。

研修効果測定はなぜ進まないのか

研修効果測定の重要性は、人材育成に関わる人なら誰もが認識しています。しかし実態はどうでしょうか。1960年にカークパトリックが有名な研修効果測定の4段階モデルを発表して以来、この分野の実践はほとんど進歩していません。

1990年に発表された世界最大の人材育成団体ATD(当時ASTD)の調査では、「研修効果測定のベストプラクティスはほとんど使われていない」という結果が示されました。2007年のeLearningGuildの調査では、「研修効果測定が十分できている」と回答した人材育成担当者はわずか20%でした。そして最近発表された人材育成コンサルティングファームTier 1の調査でも、「自社の研修効果測定に満足している」と回答した担当者は5%しかいません。

60年以上にわたって課題であり続けているこの問題に対して、国際標準化機構(ISO)が2023年6月、ひとつの答えを提示しました。それが ISO/TS 30437「人的資源管理 学習と能力開発の指標」です。

ISO/TS 30437とは何か

この指標の4つの目的

ISO/TS 30437は、企業や団体が人材育成の効果を測定・報告・改善するための国際的な指標体系です。この指標が想定している活用目的は4つです。人材育成に関する疑問に答えてトレンドを把握する「知らせる(Inform)」、過去との比較で大きな変化を確認する「確認する(Monitor)」、人材育成の効率・効果・成果を評価する「評価する(Evaluate)」、そして人材育成の目標達成に向けて管理する「管理する(Manage)」です。

誰に向けて報告するかを定義している

研修効果は測定するだけでは意味がなく、適切な相手に報告してはじめて価値が生まれます。ISO/TS 30437が優れている点の一つは、報告対象として5つのユーザーを明確に定義していることです。経営層・部長層・人材育成責任者・人材育成担当者・受講者の5者それぞれで、求める情報の種類と粒度が異なります。「誰のために測るか」を先に定めてから、指標の内容を決めるという設計思想です。

3種類の指標の構造

ISO/TS 30437の指標は、大きく3種類に分類されています。

指標の種類測定する内容カークパトリックとの対応
実施効率(Efficiency)研修の効率的な提供(受講者数・実施回数・費用など)対応なし
研修効果(Effectiveness)受講者の習得度・成長・職場での活用レベル1〜3(反応・学習・行動)
ビジネス成果(Outcome)職場・組織への成果レベル4(結果)

この構造を見ると、カークパトリックの4段階モデルをベースにしながら、「実施効率」という管理系の指標を加えた形になっていることがわかります。

気になる点:効率指標が多く、効果・成果指標が少ない

ISO/TS 30437の指標一覧を詳しく見ると、実施効率に関する指標の数が多く、研修効果やビジネス成果に関する指標が相対的に少ないことが気になります。受講者数・費用・完了率といった「やった証拠」を記録する指標は充実している一方で、「何が変わったか」「現場でどう使われているか」を測る指標は限定的です。

この通りに実施しようとすると、測定の手間と負担が重くなる割に、研修の効果や今後の改善につながる情報が得にくいという課題があります。指標を参照する際にはこの点を念頭に置いておく必要があります。

担当者はこの指標をどう使えばよいか

使い方1:経営層に研修効果測定の重要性を訴える場面で活用する

ISO/TS 30437の最も実践的な活用法は、経営層への働きかけの材料にすることです。ISO という名称は経営層に対して一定の説得力を持ちます。「ISOが研修効果測定の国際指標を発表しています。自社の現状を一度確認しませんか」という問いかけをきっかけに、研修効果について経営層と議論する場を設けることができます。

この会話から、各研修で本当に求められていることは何か、研修目標を達成するために現在の育成施策は十分かどうか、研修後の定着フォローの強化が必要かどうか、成果をどのように測ればよいか、といったテーマを掘り下げるきっかけにできます。

使い方2:測定項目を整理するための参照資料にする

研修効果測定の重要性は理解していても、「具体的に何をどう測ればよいかわからない」という担当者には、ISO/TS 30437は整理のための参考資料として役立ちます。

実務での活用ポイントは2つです。まず、効率系の指標(受講者数・費用・完了率など)はLMS(学習管理システム)で自動集計できるものに絞り、手動集計の負担を最小化することです。次に、研修効果の指標はカークパトリックのレベル2(習得度)とレベル3(職場での活用)に重点を置くことです。研修効果の測定方法や指標設計についてはアイディア社にもご相談いただけます

報告書のまとめ方としては、効率指標をデータとグラフで定量的に示しながら、効果指標の受講者コメントや行動変容の成功事例を定性的にまとめるという組み合わせが、経営層にも現場にも伝わりやすい形式です。

使い方3:優先順位を下げても問題ない

ISO/TS 30437の英語ドラフト版が発表されてから約2年が経過していますが、積極的に取り組んでいる企業の事例はほとんど聞かれません。ISO9001やISO14001が製造業を中心に広く普及したのとは異なり、人材育成分野のこの指標は業界全体での普及には至っていないのが現状です。

「誰かに聞かれたら説明できる程度に知っておく、でもすぐに全面導入はしない」というスタンスで問題ありません。研修効果測定の改善に今すぐ取り組みたい場合は、ISOの指標にとらわれず、カークパトリックモデルの実践から始める方が現実的で効果も高いです。

研修効果測定を実務で進めるための優先順位

ISO/TS 30437の内容を踏まえながら、実務での取り組み優先順位を整理すると次のようになります。まず取り組みやすいのは、受講後アンケート(レベル1:反応)と知識テスト(レベル2:学習)の整備です。どちらも比較的低コストで実施でき、研修ごとの基礎データを蓄積できます。次のステップとして、研修から1〜3か月後の行動変容の確認(レベル3:行動)を、上司へのヒアリングや受講者の自己評価シートで把握します。最後に余裕が出てきたら、部門業績や離職率との相関分析(レベル4:結果)に挑戦するという段階的なアプローチが現実的です。

測定の精度を高めることよりも、「継続して測定する仕組みをつくること」の方が長期的には価値があります。完璧な測定を目指すより、シンプルな指標を毎回記録し続ける方が、研修改善のためのデータとして役立ちます。

よくある質問

カークパトリックの4段階モデルとISO/TS 30437は何が違いますか?

カークパトリックモデルは研修効果を4つのレベル(反応・学習・行動・結果)で評価するフレームワークです。ISO/TS 30437はこの考え方を取り込みながら、「実施効率(コスト・受講者数など)」という管理系の指標も加えた、より包括的な指標体系です。また、報告対象(経営層・担当者・受講者など)ごとに報告する指標を変えるという視点を明示的に取り入れている点が特徴です。

研修効果測定を社内で始めるなら、まず何から手をつけるべきですか?

最初のステップは「受講後アンケート(レベル1)」と「理解度確認テスト(レベル2)」の整備です。これだけでも継続的に記録することで、研修ごとの基礎データが蓄積されます。次に余裕が出てきたら、研修から1〜3か月後の行動変容を上司へのヒアリングや受講者自身の振り返りシートで確認するレベル3の測定に進みます。完璧な体制を一度に整えようとせず、できる範囲から始めて継続することが重要です。

研修効果を経営層に報告する際、どのようにまとめると伝わりやすいですか?

効率指標(受講者数・費用・完了率)はデータとグラフで定量的に示し、効果指標(受講者の変化・行動変容の事例)は具体的なコメントや成功事例で定性的に補足する形が効果的です。経営層が知りたいのは「コストに見合った成果が出ているか」という点なので、費用対効果を意識した構成にすることがポイントです。

ISO/TS 30437は中小企業でも使えますか?

ISO/TS 30437は中小企業向けと大企業向けで推奨指標の数が異なります。中小企業向けは指標の数を絞っているため、大企業向けよりは取り組みやすい設計になっています。ただし、指標を全て実装しようとすると負担が大きいため、自社の課題に合った優先度の高い指標から部分的に参照する使い方が現実的です。

研修効果測定ができていないと、どんな問題が起きますか?

最も大きな問題は、「効果のない研修に予算とリソースをかけ続けるリスク」です。測定していなければ何が機能していて何が機能していないかがわからないため、研修の改善も優先順位の判断もできません。また、経営層からの「研修の費用対効果は?」という問いに答えられないことで、人材育成への投資が削減されやすくなるという副次的なリスクもあります。

研修効果測定の設計・見直しをお考えの方へ

アイディア・デベロップメントでは、研修効果測定の仕組みづくりや、カークパトリックモデルに基づいた測定設計の支援を行っています。「何を測ればよいかわからない」「経営層への報告の仕方を改善したい」といったご相談も歓迎です。まずはお気軽にお問い合わせください。

研修について相談する(無料)

「わかった」で終わらない。「できる」ようになる。
研修内容を実践で活かし、徹底した定着フォローにより職場で成果を出す

演習中心の飽きさせないダイナミックな研修

人材育成、企業研修に関するお問い合わせはこちらからどうぞ

WEBサイトに掲載されていない研修も多数ございます。
最適なご提案をさせていただきます

03-5368-0890
メールフォームからのお問い合わせはこちら
メルマガ登録
無料レポートダウンロード
Copyright IDEA DEVELOPMENT INC.
All rights reserved.
TOPへ