グローバル人材育成の最新動向|パンデミック後に変わった3つのこと、IT活用、企業事例を解説

グローバル人材育成の最新動向|パンデミック後に変わった3つのこと、IT活用、企業事例を解説
2023年7月25日、IDEA DEVELOPMENT株式会社は「グローバルフォーラム2023」をオンラインで開催しました。テーマは「パンデミック後の新しいグローバルビジネス環境と実態 — グローバル人材に求められるスキルと能力とは?」。日系企業の海外進出事例、VR・AR・AIを使った最新のグローバル研修手法、そしてグローバル実践力の測定データまで、約2時間にわたって幅広いトピックを取り上げました。
この記事では、フォーラムで紹介されたデータ・事例・ノウハウを、人事担当者が自社のグローバル人材育成施策に活かせる形で再構成してお届けします。
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パンデミック後のグローバルビジネス環境 — 3つの構造変化
フォーラムの冒頭では、JBIC(国際協力銀行)やATD State of the Industryなど複数の調査データをもとに、パンデミック後のグローバルビジネス環境の変化が整理されました。ポイントは、3つの変化が「海外市場が拡大する → 国内でも外国人との接点が増える → 人材育成投資が必要になる」という因果の流れでつながっていることです。
これらの数字がどうつながっているのか、3つの構造変化として見ていきます。
海外は「選択肢」から「前提」に
製造業全体の海外売上高比率は36.5%。電機・電子部品では46%、自動車部品は41%を超える。海外現地法人の従業員数は569万人で増加傾向。
「海外に行く人」だけの話ではない
在日外国籍労働者は180万人で過去最高。外国人取締役比率も上昇。国内で外国人と働く場面が急増し、全社員にグローバルスキルが必要に。
投資は増えているが、配分に課題
従業員1人あたり教育費は$1,280(人件費の5.0%)。リーダーシップ研修が20%でトップだが、グローバル研修は独立カテゴリがなく各社が独自に設計する必要がある。
注目すべきは、STEP 3の「投資は増えているが、グローバル研修には独立した枠がない」という点です。ATD State of the Industry 2022の研修内容別ランキングでは、マネジメント・リーダーシップ研修(20.0%)、ヒューマンスキル研修(12.3%)、コンプライアンス研修(10.1%)が上位を占めますが、グローバル研修という分類は存在しません。つまり、グローバル人材育成は「経営課題として認識されているのに、研修予算の標準カテゴリに入っていない」というギャップがあります。
このギャップを埋めるために、先進的な日系企業はどのようにグローバル戦略を進めているのか。次のセクションでは、フォーラムで紹介された3社の海外進出事例を見ていきます。
海外進出を成功させた日系企業3社のケーススタディ
海外売上比率36.5%という数字の裏には、各社それぞれの戦略があります。フォーラムでは、東京エレクトロン・ユニチャーム・キッコーマンの3社が取り上げられました。興味深いのは、3社とも海外で大きな成果を出しているにもかかわらず、市場との向き合い方がまったく異なるということです。
3つのグローバル戦略 — 追随型・先読み型・文化適応型
3社の事例を見る前に、まずそれぞれの戦略の違いを整理します。
共通点は「国内市場の限界を見据えて、早い段階で海外に踏み出した」こと。しかし、海外市場への入り方は三者三様です。それぞれの詳細を見ていきましょう。
CASE 1:東京エレクトロン — 半導体工場を追いかけて旧中計を2年前倒し達成
CASE 2:ユニチャーム — 人口動態を先読みして海外比率60%超
CASE 3:キッコーマン — 食文化を追いかけて海外がコロナ危機を救う
3社に共通するのは「グローバル展開の成功は、現地で成果を出せる人材がいるかどうかにかかっている」という点です。東京エレクトロンの機敏なオペレーション、ユニチャームの「共振の経営」、キッコーマンの文化適応提案——いずれも、グローバルスキルを持った人材なしには成り立ちません。では、そのスキルをどう育成するのか。次のセクションでは、VR・AR・AIなどITを活用した最新のグローバル研修手法を紹介します。
グローバル人材育成の全体設計やプログラム選定についてお悩みでしたら、アイディア社にご相談ください。海外赴任者から国内で外国人と働く社員まで、対象者に合わせた研修設計をサポートしています。
グローバル研修にITを活かす — オンデマンド・VR・AR・AI
3社の事例が示す通り、グローバル人材には語学力だけでなく、異文化理解・プレゼンテーション・交渉など複合的なスキルが求められます。フォーラムの第2パートでは、これらのスキルを効率的に育成するためのIT活用が紹介されました。
ポイントは、4つのテクノロジーが「知識をインプットする → 体験で定着させる → 現場を支援する → 成果を評価する」という学習プロセスの各段階に対応しているということです。ツールを単独で導入するのではなく、学習プロセスのどの段階に使うかを設計することが効果を左右します。
4つのテクノロジーと学習プロセスの対応
知識をインプット
オンデマンド
体験で定着
VR
現場を支援
AR
成果を評価
AI
ここからは、それぞれのテクノロジーの特徴と、グローバル研修で使うときの実践的なポイントを解説します。
STEP 1:オンデマンドコンテンツ — 知識インプットの効率化
現在は数年前では考えられないほどオンデマンド教材があふれています。フォーラムでは、教材のスタイルを4つに分類し、それぞれの長所と懸念点が紹介されました。
オンデマンド教材を選ぶ際に最も重要なのは「受講者にとって興味のある、仕事と関連性の高いテーマ」を選ぶことです。教材の質が高くても、受講者の業務と結びつかなければ学習は定着しません。
STEP 2:VR — 講師なしでもビジネスシーンを体験
VRの最大の強みは「当事者感覚」です。eラーニングや映像教材では得られない360度の没入体験が、グローバルビジネスのリアルなシミュレーションを可能にします。フォーラムでは、VRをグローバル研修に効果的に組み込む流れが紹介されました。
講師がインプット
知識・スキルの基本を解説
講師とロールプレイ
実際の場面を対人で練習
VRで復習
360度の没入環境で繰り返し練習
録画を分析・改善
VRの録画を見て具体的に改善
VRの導入で注意すべき点は「向いているテーマと向いていないテーマ」があることです。VRの強みは360度に動ける没入感なので、工場・海外の街・展示会など特徴的な空間での体験に適しています。一方、教室や会議室の中での座学には不向きです。同様に、自由に動くことで学びが深まるテーマ(企業訪問、ツアー)には効果的ですが、座って聞くだけのミーティングにはオーバースペックになります。
STEP 3:AR — 現場で「カンニングペーパー」のように使う
ARは工場や技術関連の現場で特に効果を発揮します。グローバル教育において、ARの最大のメリットは「目の前に必要な用語や情報が表示される」こと。まさにカンニングペーパーのように使えます。
ARで英単語を確認
備品名・キーワード・背景情報が目の前に表示される
文字を見ながら説明
表示された用語をヒントに英語で説明する練習
文字を見ないで説明
補助なしで説明できるまで繰り返し、自力で話せる力を養成
ARの導入には事前のセッティングが重要です。スマートグラスやARヘッドセットの準備だけでなく、「見るポイントの設定」や「表示する情報の準備」に時間をかける必要があります。技術的な導入コストが高い一方、工場見学の案内や設備の英語説明など、繰り返し使う現場では投資対効果が高くなります。
STEP 4:AIフィードバック — 何度でも飽きずに練習相手になる
グローバルスキルを高めるにはフィードバックが不可欠です。AIの自動フィードバックは急速に進化しており、すでに実用レベルに達しています。講師よりも優れている点は「何度同じことを繰り返しても相手が飽きない」「フィードバックがデジタルで比較しやすい」ことです。
フォーラムでは、英語プレゼンテーションのAIフィードバック(Rehearsal)の具体例が紹介されました。数分間の英語プレゼンを録画するだけで、以下の項目が自動的に分析されます。
4つのテクノロジーはそれぞれ単独でも効果がありますが、学習プロセスの流れに沿って組み合わせることで「インプット→体験→現場支援→評価改善」の学習サイクルが回ります。重要なのは「どのツールを入れるか」ではなく「どの学習段階にどのツールを配置するか」という設計の視点です。
では、これらのITツールも活用しながら、実際のグローバルビジネスの準備をどう進めればよいのか。次のセクションでは、英語プレゼンテーション準備の6ステップを紹介します。
英語プレゼンテーション準備の6ステップ — ITツール活用の実践フロー
前のセクションでは研修に使えるIT技術を紹介しましたが、ITの活用は学習の場面だけにとどまりません。フォーラムでは「実際のグローバルビジネスの業務でITを使いこなすこと」自体が、グローバル人材の重要なスキルとして紹介されました。
語学力があるうえにツールを上手に使いこなせると、短時間で高い成果が出せます。ここでは、英語でプレゼンテーションをする場合の6ステップを、各ステップで使うツールとともに紹介します。
この6ステップのポイントは「英語力そのものを上げる」のではなく「今の英語力でも成果を出せるようにツールで補う」という発想です。ツールを使いこなせるかどうかで、同じ英語力でもプレゼンテーションのクオリティに大きな差が出ます。グローバル研修では「語学力を鍛える」と「ツール活用力を鍛える」を並行して進めることが重要です。
グローバル研修のプログラム設計やITツールの選定にお悩みでしたら、アイディア社にご相談ください。語学力と実践力のバランスを考慮した研修設計をご提案します。
ここまでで「環境変化」「企業事例」「IT活用」「実践フロー」を見てきました。次のセクションでは、グローバル人材の実践力をどう測定するかについて、2,608名の診断データをもとに解説します。
グローバル実践力を測る「グローバル人間ドック」とは
ここまで企業事例やIT活用を見てきましたが、そもそも「自社のグローバル人材は今どのレベルにいるのか」を客観的に把握できている企業は多くありません。フォーラムの後半では、グローバル人材の実力を可視化する「グローバル人間ドック」という診断プログラムと、2,608名の診断データが紹介されました。
語学力と実践力は別物
英語力を測るツール(TOEIC、GTEC、CASECなど)は多様で正確性がありますが、「実際のビジネスで英語を使って成果を出せるか」を測るツールはなかなか存在しません。フォーラムでは、語学力と実践力の違いが以下のように整理されました。
グローバル人間ドック — 4段階の実力診断
この「語学力≠実践力」という問題を解決するために、アイディア社が開発したのが「グローバル人間ドック」です。1日かけて4つのビジネスシーンをシミュレーションし、実践力を客観的に測定します。
ミーティング
ネイティブスピードの会話に入り込めるか。積極的な参加と意見表明が評価ポイント
プレゼンテーション
自分の考えを論理的にまとめてPowerPointに落とし込み、限られた時間で発表する
ネゴシエーション
プレゼン内容を相手に受け入れてもらうよう交渉。柔軟な対応とWin-Win提案が鍵
フィードバック
診断結果に基づき担当講師から個人フィードバック。モチベーションが高いうちにアドバイス
4つのステップは実際のグローバルビジネスの流れを再現しています。朝のミーティングで情報を収集し、準備してプレゼンテーションを行い、その内容について交渉する——この一連のプロセスを1日で体験することで、総合的な実践力が測定できます。
2,608名のデータが示す「語学力と実践力のギャップ」
グローバル人間ドックの累計受講者数は2,608名。このデータから見えてくるのは「語学力が高くても実践力が高いとは限らない」という事実です。散布図では、TOEIC 800点台でも実践力スコアが2.0(一場面で適用する)レベルにとどまるケースが確認されています。逆に、TOEIC 600点台でも実践力3.5(十分適用する)を超える人もいます。
特に注目すべきは研修の効果です。実践力強化研修を受けた1,145名のデータでは、研修前後のスコア伸び幅の平均が+0.86。さらに、41.7%の受講者が+1.0以上の大幅な成長を遂げています。研修後のスコア分布を見ると、3.00〜3.75のゾーン(「応用する」〜「十分適用する」)に受講者が集中しており、研修によって実践力が着実に底上げされていることが分かります。
実践力スコアの5段階と到達レベル
研修後の受講者は3.00〜3.75のゾーンに集中している
このデータが人事担当者に示唆するのは「TOEICスコアだけでグローバル人材のレベルを判定するのは危険」ということです。語学力のテストと実践力の診断を組み合わせることで、初めて「この人はどこが強くてどこが弱いのか」が見え、研修プログラムの設計精度が格段に上がります。
次のセクションでは、もうひとつの重要テーマである「外国籍社員と海外現地スタッフの育成」について、3つのアプローチを紹介します。
外国籍社員と海外現地スタッフの育成 — 3つのアプローチ
フォーラムの最終パートでは、グローバル人材育成のもうひとつの柱として「外国籍社員と海外現地スタッフをどう育成するか」が取り上げられました。先ほどのセクションで見た通り、在日外国籍労働者は180万人を突破し過去最高を更新しています。「日本人をグローバル人材に育てる」だけでなく、「外国籍社員が日本の職場で力を発揮できるようにする」ことも、同時に取り組むべき課題です。
フォーラムで紹介された3つのアプローチは、「個人のスキルを上げる → チームとしての連携を強化する → リーダーとして組織を牽引する」という段階的な育成パスを形成しています。
ビジネススキル向上
個人の能力を底上げ
グループシナジー強化
日本人×外国籍の協働力を高める
リーダーシップ力アップ
外国籍社員をリーダーに育てる
それぞれのアプローチの目的、ポイント、具体的な施策を詳しく見ていきます。
STEP 1:ビジネススキル向上 — 個人の能力を効率よく底上げする
STEP 2:グループシナジー強化 — 日本人と外国籍スタッフの共同研修
STEP 3:外国籍社員のリーダーシップ力アップ — 日本で対面研修を行う
もうひとつの課題 — 外国籍社員の異文化対応と日本人上司の受け入れ
3つのアプローチに加えて、フォーラムではもうひとつ重要なテーマが紹介されました。外国籍社員が日本の職場環境にスムーズに適応するための異文化研修と、受け入れ側の日本人上司への教育です。
アイディア社が開発した「Working with Japanese Partners」というeラーニングでは、外国籍の新入社員が入社後に直面する10の場面(導入研修、OJT、配属直後、1年目後半の評価まで)について、文化的な背景と実践的なアドバイスを映像で学べるようになっています。
外国籍社員の育成で最も避けたいのは「せっかく採用した優秀な外国籍社員が1年もしないうちに退職する」という事態です。異文化研修は「完璧な日本人になること」を目指すのではなく、「外国人として許されるレベル」を目標に、文化的な背景(Why)と実践的なアドバイス(What・How)をバランスよく伝えることが効果的です。
外国籍社員の受け入れ研修や、海外現地スタッフとの共同研修の設計について、アイディア社がサポートします。異文化対応力診断からプログラム設計まで一貫してご相談いただけます。
参加者の声
グローバルフォーラム2023の参加者アンケートから、掲載許可をいただいたコメントを紹介します。
よくある質問(Q&A)
Q1. グローバル人材育成で最初に取り組むべきことは何ですか?
まずは自社のグローバル人材の現状を可視化することです。TOEICなどの語学力テストだけでなく、ミーティング・プレゼンテーション・交渉といった実践力を診断することで、「どのスキルが不足しているのか」が明確になり、研修プログラムの設計精度が格段に上がります。アイディア社の「グローバル人間ドック」のような実践力診断を活用するのも有効です。
Q2. 語学力(TOEIC)と実践力の違いは何ですか?
語学力は英語の文法・語彙・リスニングなどの基礎力を測るものです。一方、実践力はその英語力を使って「ビジネスで成果を出せるか」を測るものです。2,608名のグローバル人間ドックのデータでは、TOEIC 800点台でもビジネスの場面では十分に力を発揮できないケースが確認されています。語学力と実践力は別の軸で測定し、別のアプローチで鍛える必要があります。
Q3. VRやAIなどのITツールをグローバル研修に導入するメリットは?
最大のメリットは「繰り返し練習できる」ことです。VRでは講師なしでもグローバルビジネスのシーンを360度の没入感で体験でき、AIフィードバックでは何度練習しても相手が飽きることなく、スピード・表情・滑舌などを客観的に分析してくれます。ただし、ツールの導入が目的にならないよう「学習プロセスのどの段階にどのツールを配置するか」を設計することが重要です。
Q4. 外国籍社員の受け入れで最も気をつけるべきことは?
最も避けたいのは「採用した優秀な外国籍社員が1年もしないうちに退職する」ことです。これを防ぐには、外国籍社員への異文化研修と、受け入れ側の日本人上司への教育を同時に行うことが効果的です。外国籍社員だけに適応を求めるのではなく、双方向のアプローチで相互理解を深めることが定着率の向上につながります。
Q5. グローバルフォーラムはどのような企業が参加していますか?
グローバルフォーラムは、グローバル人材の育成に熱心に取り組む企業の人事担当者・人材育成担当者を対象としています。2023年の参加者は製造業(自動車・電子部品・機械)、食品、航空、ITサービスなど多様な業種の大手企業が中心でした。2006年から毎年夏に開催しており、累計参加者は約17,000名を超えています。
まとめ
グローバルフォーラム2023では、パンデミック後のグローバルビジネス環境の変化から、日系企業3社の海外進出事例、VR・AR・AIを活用した最新の研修手法、グローバル実践力の測定データ、そして外国籍社員の育成まで、グローバル人材育成の全体像が紹介されました。
共通するメッセージは「グローバル人材育成は、一部のエリート向け施策から全社的な経営課題に変わっている」ということ。海外売上比率が30%を超え、国内でも180万人の外国籍労働者と協働する時代には、語学力だけでなく実践力を鍛え、ITツールを活用し、異文化対応力を双方向で高めるアプローチが求められています。
グローバル人材育成のご相談はアイディア社へ
グローバル実践力の診断、IT活用の研修設計、外国籍社員の受け入れ支援まで、グローバル人材育成を一貫してサポートしています。まずはお気軽にお問い合わせください。







