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ATD2015 帰国報告会レポート|GE・SAP・Pfizer等に学ぶ人材育成5つの柱

📘 ATD人材育成国際会議 2015 帰国報告会レポート(全80ページ)を無料でダウンロード

GE営業育成の「半分の時間で2倍の成果」、SAPグローバル・プロボノ、バイトサイズラーニング、NASAのイノベーションなど、ATD初年度に報告された最新トレンドと企業事例をまとめたレポートです。

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2015年5月、米国フロリダ州オーランドで開催されたATD ICE 2015(ATD人材育成国際会議 2015)は、前年にASTDからATDへ名称変更して初めての国際会議でした。約90カ国から10,000名以上が集まり、約300のセッションと250以上の展示ブースで、「Content, Community, Global Perspectives」をテーマに人材育成の最前線が共有されました。

アイディア社では現地オーランドに赴き、14トラックのセッションから厳選した情報を収集。帰国後、御茶ノ水ソラシティにて報告会を2回開催し、計359名の人材育成担当者にお届けしました。本記事では、レポート(全80ページ)の中から、日本企業の研修担当者が実務で活かせるポイントを中心にお伝えします。

ATD ICE 2015は「TRANSFER + RESULTS(定着と成果)」「LEADERSHIP + GLOBAL(リーダーシップとグローバル)」「LEARNING TECHNOLOGY(ラーニングテクノロジー)」「INNOVATION(イノベーション)」「MIND + CHANGE(マインドと変革)」の5本柱で構成されていました。名称変更後の初の大会にふさわしく、「Training(研修)」ではなく「Talent Development(人材の成長支援)」を軸にした幅広いセッションが展開されました。

📋 この記事でわかること

ATD ICE 2015 基本データ

10,000+
名の参加者
90
カ国
300
セッション
14
トラック
359
名が報告会に参加

TRANSFER + RESULTS ― 研修を「成果」に変える

企業事例:GE ― 営業初期育成を「半分の時間で2倍の成果」に

世界最大のコングロマリットであるGE(ゼネラル・エレクトリック)のMike Kunkle氏は、営業職の初期育成を抜本改革した事例を紹介しました。従来、新任営業職の64%が成果を上げるまでに半年以上かかっていた現実を、Chunk・Sequence・Layer(CSL)の3原則で解決したケースです。

GE Capital ― 営業初期育成の改革

BEFORE
64% が半年以上で立ち上がり

膨大な情報を一気に詰め込む教育。チェックポイントも定着の仕掛けもなし。

AFTER
400% の投資対効果

入社3カ月で21%が5年目社員の成果を上回る。利益11%UP、コンペ勝率16%UP。

成功の鍵:CSL(Chunk・Sequence・Layer)の魔法

Chunk:整理された「かたまり」にして教える Sequence:現場で必要となる「順番」で教える Layer:羅列ではなく「階層化」して教える

「吸収しやすい小分け作戦」― マイルストーン設定のイメージ

従来のやり方
📦

入社初日に
全部詰め込む

小分け作戦(CSLの魔法)
MS 1
初売上を上げる
必要最低限だけ学ぶ
MS 2
月間目標を初達成
次に必要なことだけ
MS 3
3カ月連続達成
ここで一人前

✓ 1つクリアするまで次に進まない ✓ 各MSで必要最低限だけを教える ✓ 営業実務の流れに沿って教える

GEの事例で最も実践的なのは「マイルストーンの設定」です。ゴールまでの道のりに2〜3個のマイルストーンを設定し、次のマイルストーンに到達するために必要最低限のことだけを教えて集中させる。1つクリアするまで次のステップに進まない。この「吸収しやすい小分け作戦」は、営業育成に限らず、あらゆる研修設計に応用できる普遍的な原則です。

企業事例:Minor Food Group ― タレントマネジメントで15%増収・35%増益

Minor Food Group(タイ) ― タレントマネジメントの事例

BEFORE

マネージャー層の離職率50%。全体離職率130%。必要な人材が確保できず、ポストが埋まらない。

AFTER

マネージャー層の離職率0%。全体離職率69%。売上15%UP、利益35%UP。受講者100%が研修内容を職場で活用。

成功の方程式

ATDタレントフレームワーク(全11ステップ)を採用 トップ100名から着手(影響力の大きい層に集中投資) Good Contents × Good Partner(外部の有効活用)

Minor Food Groupの事例は「人の行動が変われば、ビジネスの数字も変わる」という原則を、圧倒的な数字で証明したケースです。タレントマネジメントにゼロから取り組み、最初の強化対象をグループのトップ100名に絞り込むことで最大のインパクトを狙った戦略も、限られたリソースで成果を最大化するアプローチとして参考になります。

研修効果の最大化や営業育成の設計について、自社の課題を整理されたい方はお気軽にご相談ください

LEADERSHIP + GLOBAL ― グローバルリーダーを育てる

企業事例:SAP ― グローバル・プロボノで非日常体験からリーダーシップを磨く

ドイツに本社を置く欧州最大級のソフトウェア企業SAP(売上2.4兆円、世界130カ国に74,500人)は、「ソーシャル研究休暇」と呼ばれるグローバル・プロボノプログラムでリーダー育成を行っています。世界各国から集まった12名のチームが、新興国で19日間にわたり社会的課題の解決に取り組むというものです。

SAPグローバル・プロボノの成果(参加者の上司による評価)

92% 異文化対応力が向上
91% SAPで働く動機が向上
88% ニーズヒアリング力が向上
93% 研修後エンゲージメント指数

SAPの事例は、IBMのCSCプログラム(2013年に紹介)と同様に「組織力が通じない環境でリーダーシップが鍛えられる」という原則を裏付けています。毎年120名が参加し、帰国後の振り返りセッションで非日常体験を今後の業務に活かす設計になっている点も重要です。チームの多様性を高めるために、異なる国籍・部門からの参加者を意図的にミックスしている点は、グローバルリーダー育成を検討する日本企業にとって大きなヒントです。

企業事例:Pfizer ― 85カ国に新手法を一気に展開する方法

世界175カ国で事業を展開する米国最大の製薬会社Pfizer(社員約8万人)は、新しいマーケティング手法を85カ国のマーケティング担当者に1年で一気に展開・浸透させるという壮大なプロジェクトに取り組みました。成功の鍵は「歌と歌い手を分ける」アプローチです。

優れたコンテンツ(歌)を作成した会社が研修を実施するのが最善とは限りません。コンテンツを受講者に落とし込む専門家(歌手)を活用することで効果を最大化できます。さらに、グローバル展開では「カスタマイズは禁止、チューニングはする」という方針のもと、異文化理解のフレームワーク(The Lewis Model)を活用して各国の文化に合わせた調整を施しました。たとえば、ダイレクトなコミュニケーションを好むドイツと、間接的な表現が適する日本では、同じ内容でも伝え方を変える必要があるのです。

グローバル研修の設計やリーダーシップ開発のプログラム構築について、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

LEARNING TECHNOLOGY ― テクノロジーで学び方を変える

バイトサイズラーニング ― 5〜10分の「一口教育」が主流に

Rapid Learning InstituteのStephen Meyer氏が提唱した「Bite Size Learning(一口教育)」は、従来の30〜120分のeラーニングを、5〜10分の短いモジュールに分割するアプローチです。

従来のeラーニング

30〜120分

内容の網羅性を重視

わかりやすい全体ストーリー

PC用

バイトサイズラーニング

5〜10分

1コース=1アイデアに絞る

教えるよりも刺激して考えさせる

モバイル用

バイトサイズラーニングの3つのコンセプトは「Rapid Learning(JIT・短時間・すき間時間で使用可能)」「Single-concept(1コース=1アイデア)」「Training < Coaching(教え込むよりも刺激によって自分で考えさせる)」です。2015年時点での提唱でしたが、これはまさに2020年代のマイクロラーニングの原型であり、現在のLXP(Learning Experience Platform)の設計思想そのものです。

研修のデジタル化やブレンドラーニングの設計について、最新のATD国際会議の動向も含めて知りたい方は無料レポート一覧からダウンロードいただけます。

INNOVATION ― イノベーションを組織に根づかせる

ATD ICE 2015では、NASA、W.L. Gore、即興劇(IMPROV)、BASIS法と、イノベーションを組織に根づかせるための多様なアプローチが紹介されました。共通するのは、イノベーションは一部の天才がもたらすものではなく、組織の仕組みと文化で育てられるものだということです。

NASA

Educate(情報発信)→ Promote(ベストプラクティス共有)→ Influence(重要性を強調)→ Engage(社員を巻き込むコンテスト等)の4段階でイノベーション文化を醸成。

W.L. Gore

ゴアテックスで知られる同社は「組織」がポイント。各チームに製造・開発・営業のメンバーを必ず入れ、議論を通じて新しいアイデアを生む仕組み。

IMPROV(即興劇)

① Yes, and...(相手を否定しない)② ベイビーステップから始める ③ 失敗からブレークスルー ④ メンバーの多様性を活用。心理的安全性の先駆的なアプローチ。

BASIS法

Brand(定義)→ Assess(現状比較)→ Spark(アイデア創出)→ Implement(選択・実行)→ Sustain(サイクルを回す)の5ステップ。ワークシート型で即実践可能。

4つのアプローチに共通するのは、「構造化されたプロセスでイノベーションを促す」という点です。NASAの4段階、IMPROVの「Yes, and...」ルール、BASIS法の5ステップワークシートなど、いずれも「仕組み」でイノベーションを引き出す方法です。2020年代に注目されるデザインシンキングやアジャイル手法と本質的に同じ発想であり、自社のイノベーション研修の設計に直接応用できます。

MIND + CHANGE ― 社員のマインドが組織を変える

企業事例:Samsung Cheil Industries ― 科学的アプローチで社員も顧客もHappyに

韓国サムスングループのCheil Industries(リゾート事業部門、売上380億円、社員1,100名)は、顧客サービスのストレスが社員のメンタルに悪影響を及ぼし、それがサービス品質の低下を招くという悪循環を抱えていました。この課題に対し、ソウル国立大学の心理学教授と共同で、EQ(心の知能指数)とポジティブ心理学に基づいたプログラム「ビタミンキャンプ」を開発しました。

1

共感する

会話を通じて自分と相手の感情を理解する(アイドルイメージ、ドラマ作成、雑談タイム)

2

発散する

感情を溜め込まずにストレスを発散する(植樹ヒーリング、オフィスヨガ、即興劇)

3

再認識する

心理学に基づいた感情コントロール手法をマスターする(マインドダイエット、感情表現ゲーム)

4

習慣化する

上記のステップを無意識に自然とできるようにする(ハッピー日記、心の数学、ハッピー単語帳)

この取り組みにより、感情コントロールとサービスによるストレス指数が低下し、社員のコミットメント指数が向上。「社員Happy → 顧客Happy → 組織Happy」という三方よしのメカニズムが実証されました。2020年代のウェルビーイング経営やEAP(従業員支援プログラム)の原型ともいえるアプローチです。

ATD ICE 2015が示す、2020年代への架け橋

ATDとして初の国際会議となった2015年大会は、「Training」から「Talent Development」へのシフトが具体的な事例と手法に落とし込まれた大会でした。ここで発表された知見の多くは、10年後の2020年代に花開いています。

2015年に語られたこと → 2020年代にこう使われている

2015年

「吸収しやすい小分け作戦」(GE・CSLの魔法)

2020年代

マイクロラーニングとスキルベースの学習設計が主流に。LXPが「小分け+順序+階層化」を自動で実現。

2015年

「バイトサイズラーニング」(5〜10分の一口教育)

2020年代

TikTok型の短尺動画研修、Duolingo型のゲーミフィケーション学習が企業研修にも浸透。

2015年

「社員Happy → 顧客Happy」(Samsung事例)

2020年代

ウェルビーイング経営が経営戦略の柱に。従業員体験(EX)と顧客体験(CX)の連動が常識に。

2015年

「Yes, and...で失敗を恐れない」(IMPROV)

2020年代

心理的安全性(Googleのアリストテレスプロジェクト)が組織開発のキーワードに。「Yes, and...」はその実践手法。

2015年

「歌と歌い手を分ける」(Pfizer 85カ国展開)

2020年代

コンテンツプロバイダーとファシリテーターの分離が一般化。外部コンテンツ+社内ファシリテーターモデルが普及。

よくある質問(Q&A)

Q1. GEの「CSLの魔法」を自社の研修に取り入れるにはどうすればいいですか?

まず「受講者が最初に達成すべきマイルストーンは何か」を明確にし、そこに到達するために必要最低限の知識・スキルだけを洗い出します。次に、それらを現場で必要となる順番(Sequence)に並べ、断片的な知識ではなく意味のある「かたまり」(Chunk)として体系化(Layer)します。「一度に全部教える」のではなく「1つクリアしたら次へ」という設計に変えるだけでも効果が出ます。

Q2. バイトサイズラーニングは専門性の高い研修にも適用できますか?

5〜10分の短尺コンテンツは、専門知識のインプットよりも「気づき」「リマインド」「判断のヒント」に適しています。専門性の高い研修では、集合研修やOJTで基礎を固めた上で、バイトサイズのフォローコンテンツで定着を支援する「ブレンド」が効果的です。GEの「CSL+マイルストーン」と組み合わせると、さらに威力を発揮します。

Q3. グローバル研修を「カスタマイズ禁止、チューニングはする」とはどういうことですか?

Pfizerの事例では、国別に別々の研修プログラムを作ること(カスタマイズ)は禁止し、1つのグローバルプログラムを各国の文化特性に合わせて「伝え方」を調整(チューニング)しました。具体的には、ダイレクトな表現を好む文化には簡潔な指示、間接的な表現を好む文化には丁寧な説明を追加するなど、The Lewis Modelのフレームワークに基づいて3パターンのチューニングリストを事前に用意しました。

Q4. イノベーション研修で「Yes, and...」をどう活用しますか?

即興劇(IMPROV)の基本ルール「Yes, and...」は、相手のアイデアを否定せず(Yes)、そこに自分のアイデアを上乗せする(and...)というものです。ブレインストーミングの冒頭で「最初の10分間はYes, and...ルールで進めます」と宣言するだけで、心理的安全性が高まりアイデアの量と質が向上します。失敗を恐れない文化づくりの第一歩として、管理職研修やチームビルディングに組み込むことをお勧めします。

Q5. 従業員のウェルビーイングと研修はどう関係しますか?

Samsungの事例が示したように、社員のストレスが高い状態では研修で学んだスキルを活かす余裕がなく、パフォーマンスも低下します。「社員Happy → 顧客Happy → 組織Happy」の順番が重要で、まず社員の心理的な健康を支援することが、研修効果の土台になります。ウェルビーイング施策と研修プログラムを別々に設計するのではなく、一体として設計することが2020年代の人材育成のトレンドです。

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