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ATD(ASTD)2014 帰国報告会レポート|研修効果測定・定着・設計の3本柱

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研修効果測定、ラーニングトランスファー、70:20:10、イノベーション研修など、ASTD最後の年に発表された最新トレンドと企業事例をまとめたレポートです。

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2014年5月、米国ワシントンD.C.で開催されたASTD ICE 2014(現ATD国際会議)は、世界92カ国から約10,500名が集まり、約300のセッションと250以上の展示ブースで人材育成の最前線が共有されました。この年は特別な意味を持つ大会でもあります。1943年の設立以来「ASTD(American Society for Training & Development)」の名で知られてきた団体が、この国際会議の場で「ATD(Association for Talent Development)」への名称変更を発表したのです。

アイディア社では、現地ワシントンD.C.に赴き、12トラックのセッションから厳選した情報を収集。帰国後には御茶ノ水ソラシティにて報告会を2回開催し、計480名の人材育成担当者にお届けしました。本記事では、レポート(全59ページ)の内容から、研修担当者が自社の実務に活用できるポイントを中心にお伝えします。

ASTD ICE 2014の大きなテーマは「Great RESULTS(成果)」「Great FOLLOW(定着)」「Great TRAINING(研修設計)」の3本柱でした。研修を実施するだけでなく、その成果を測定し、職場での定着を支援し、変化する環境に適した設計をするという一貫した流れが、2014年の人材育成の中心的なメッセージです。

📋 この記事でわかること

ASTD ICE 2014 基本データ

10,500
名の参加者
92
カ国
300
セッション
12
トラック
480
名が報告会に参加

海外参加者の国別ランキングでは韓国256名がトップ、カナダ250名、中国197名に続き、日本は136名で第4位。前年(2013年・ダラス大会)の128名からさらに増加しており、日本の人材育成担当者の世界トレンドへの関心の高さがうかがえます。

Great RESULTS ― 研修の成果を測り、ビジネスインパクトを証明する

ASTD ICE 2014で最も力強いメッセージだったのは、「研修効果を測定し、ビジネス成果につなげる」ことの重要性でした。これは単なる理念ではなく、具体的な企業事例と実践的なフレームワークに裏打ちされたものです。

企業事例:Saudi Aramco ― たった一人が変えた巨大企業の人材育成

世界最大の石油会社であるSaudi Aramcoの事例は、ASTD ICE 2014で最もインパクトの大きいケーススタディの一つでした。イギリス・リバプール出身の人材育成マネージャーAnthony Arden氏がたった一人でサウジアラビアに乗り込み、わずか3年で巨大グローバル企業の人材育成の根本を変えた事例です。

Arden氏はJack J. Phillipsの5段階モデルを採用し、Level 1(受講者の反応)からLevel 4(ビジネス成果)まで、段階的に効果測定の仕組みを構築していきました。

L1

Level 1:参加者の反応

受講者アンケートの書式をグローバルで統一。キー質問は「他の同僚にこの研修を勧めたいか?」。2つのプログラムで満足度が劇的に改善。

L2

Level 2:学習結果

選択式ペーパーテストで理解度を計測。合格点を大きく下回っていた2プログラムに重点対策を実施し、劇的な改善を確認。

L3

Level 3:職場での行動変容

研修後のアクションプランを上司とすり合わせ → 実践 → 上司との振り返り → 人材育成部門へ報告、という流れを仕組み化。改善が見られないプログラムも即座に発見・対策。

L4

Level 4:ビジネス成果

受講者のMYプロジェクトがどのようなビジネス成果を生んだかを評価票で確認。自ら効果を証明する説明責任を制度化。「ビジネス成果があまりに大きいことに驚く」結果に。

この事例の最も重要なメッセージは、「完璧主義を捨てる」ということです。計測精度は二の次でよい。ざっくりとでも測る基準を決め、まず計測を始めることが最も重要です。また、フィードバックループを業務プロセスに組み込むことで、グローバル企業のような巨大組織でも現場が自律的に改善を続けられる仕組みをつくれることを証明しました。

Kirkpatrickの4段階モデルが進化 ― ROIからROEへ

研修効果測定の世界的権威であるKirkpatrick氏の息子、James Kirkpatrick氏は、1960年代に発表された4段階モデルの大幅なアップデートを紹介しました。従来の「階段状」のイメージから脱却し、特にLevel 3(行動変容)を中心に据えた新しいモデルへの進化です。

従来の4段階(〜2013年)

Level 1

Reaction(研修満足度)

Level 2

Learning(知識・スキルの習得度)

Level 3

Behavior(行動変容度)

Level 4

Results(ROI=費用対効果)

新しい4段階(2014年〜)

Level 1(変更)

Engagementを最上位に配置

Level 2(追加)

知識・スキルに加えAttitude(態度)・Confidence(自信)・Commitment(取り組み)を追加

Level 3(拡大)

最も目立つ位置に拡大。Reinforce(定着)・Monitor(管理)等を追加

Level 4(転換)

ROI → ROE(Return on Expectations)へ転換。期待される成果の達成度を重視

この進化で最も注目すべきは、Level 4がROI(費用対効果)からROE(Return on Expectations=期待される成果の達成度)にシフトした点です。「いくら投資して、いくら回収できたか」という財務的な計算ではなく、「ステークホルダーが期待した成果はどの程度達成されたか」を問うアプローチへの転換は、研修効果の評価をより実践的で意味のあるものに変えました。

企業事例:E*TRADE Financial ― 営業部門の風土改革で10億ドルの売上増

E*TRADE Financial ― 営業研修の風土改革

BEFORE

「お客様をやり込めて売る」営業風土。業績が落ち込み、回復が求められていた。

AFTER

「お客様の真のパートナー」への風土変革。最初の2年で10億ドル(約1,000億円)の売上増を実現。

Kotterの変革8ステップをカスタマイズした4ステップ

① 組織風土を理解する ② ビジョンを構築する ③ プロセスを設計する ④ 25拠点で実行する

この事例のポイントは、実証済みのフレームワーク(Kotterの変革8ステップ)を出発点にしながら、自社の状況に合わせて4ステップにカスタマイズしたことです。「自分たちの思いつきだけで走らない」というアプローチは、社内の合意形成にも有効でした。また、人材育成担当者向けのアクションプランシートを運用し、担当者自身が業務を通じて成長する仕組みをつくった点も特筆に値します。

研修効果の測定や営業研修の設計について、自社の課題を整理されたい方はお気軽にご相談ください

Great FOLLOW ― 研修の学びを職場で定着させる

2014年のASTD ICEで繰り返し強調されたのは、「研修の成果は、研修後のフォローで決まる」というメッセージでした。6Dsフレームワークの進化版、上司を巻き込むテクニック、そして「Can I? Will I?」という2つのシンプルな問いかけが紹介されました。

研修時間の最適配分 ― フォローに50%を

従来の時間配分

事前課題5%
研修実施90%
フォローアップ5%

推奨される時間配分

事前診断10%
事前準備15%
研修25%
フォロー50%

Wilson LearningのCarl Eidson氏が示したこのデータは衝撃的です。従来の研修は時間の90%を研修当日に費やし、フォローには5%しか割いていませんでした。しかし、研修効果を最大化するためには、フォローに50%の時間を割くべきだというのです。定着に影響する3つの要因は「上司の支援とサポート」「受講者同士のサポート」「受講者本人のモチベーション」であり、中でも上司の支援が最も効果が大きいことが研究で示されています。

「Can I?」「Will I?」― 定着を決定づける2つの問い

6Ds CompanyのJefferson氏とPollock氏は、研修の定着をシンプルに捉える方法として「Can I?(できる?)」「Will I?(やるの?)」という2つの問いかけを提唱しました。研修後に職場で新しいスキルを使うかどうか迷う瞬間に、受講者がこの2つの問いに「はい」と即答できなければ、研修効果はゼロになります。

Can I?(できる?)

研修で本当に「できる」ようになったか?

使う機会が近いうちにあるか?

やってみる自信はあるか?

困ったとき助けてくれる人がいるか?

対策:講義を減らして演習を増やす。サポートツールを提供する。

Will I?(やるの?)

使ってみるモチベーションはあるか?

やったところで何か利点はあるか?

使ってみたら誰が気づくか?

上司・同僚はどう思うか?

対策:受講者にとってのメリットを明確にする。上司を巻き込む仕掛けをつくる。

特に日本人の受講者は「Can I?」に対して謙虚に考え、自信がないまま職場に戻る傾向があると指摘されました。また「Will I?」については、周りに迷惑をかけたくないため新しいやり方を試さないケースがあるという分析も、日本の研修担当者にとって示唆に富んでいます。

70:20:10 ― 研修は人材育成の1割にすぎない

70:20:10 Forum創設者のCharles Jennings氏は、成果につながる人材育成モデルとして「70:20:10」フレームワークを解説しました。

成果につながる学習の内訳

70% 経験 ― 仕事しながら気づくこと
20% 対話 ― 周りと話しながら教えてもらうこと
10% 教育 ― 研修プログラムを通して習得すること

つまり:従来の人材育成(集合研修)は全体のわずか1割しかカバーしていなかった。残り9割の「経験」と「対話」を意識的に設計に組み込むことで、研修の学びが実務で定着しやすくなる。

この発想の転換は、人材育成部門の役割を根本的に変えます。単発研修の提供者から、継続的な学習支援の設計者へ。そのために求められるのは、従来の「研修の専門スキル」ではなく「現場の問題解決力」「情報整理とシステム化のスキル」「ビジネス感覚」だとJennings氏は強調しました。

研修の定着設計や70:20:10の導入について、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

Great TRAINING ― 変化する環境に適した研修設計

ENGAGEモデル ― 成果が出る研修設計の6つのポイント

Ken Blanchard CompaniesのVictoria Halsey氏は、成果につながるアウトプット重視の研修を設計するための「ENGAGE」モデルを紹介しました。受講者が「話す7割・聞く3割」、講師は「教え方7割・内容3割」という配分が効果的な研修の特徴です。

E

Energize ― 受講者を元気づける

N

Navigate ― 全体構成を親切に案内する

G

Generate meaning ― 理解しやすく解釈してあげる

A

Apply ― 職場で使う場面を明確にする

G

Gauge ― 理解を確認して、褒める

E

Extend ― 職場で生かせるようにする

ENGAGEモデルは、研修設計のチェックリストとして実務で即使えるフレームワークです。特に「受講者を積極的にしゃべらせる」「受講者に選択してもらう」「ストーリーを多く使う」という3つのヒントは、研修の質を高めるために今日からでも実践できるポイントです。

VUCA時代のリーダーシップとイノベーション

DDIのRichard Wellins氏は、今後のビジネス環境がVUCA(Volatility=変動、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)であることを前提に、リーダーに求められる6つの要素として「柔軟性」「戦略思考」「スピード」「データに対するセンス」「継続的な学習」「長期的な人材育成」を挙げました。

また、イノベーション研修のセッションでは、20世紀型のイノベーション(アイデアの量、完璧な開発、与えられた課題を解決)から21世紀型(コンセプトの質、スピード重視、課題を積極的に探す、ユーザー中心の発想)への転換が語られました。イノベーションに必要なコアスキルは「問題解決力」「強い好奇心」「明確なビジョン」「失敗を恐れない姿勢」の4つだとされています。

リーダーシップ開発やイノベーション研修の設計について、最新のATD国際会議のトレンドも含めて知りたい方は無料レポート一覧からダウンロードいただけます。

ASTD ICE 2014が示す不変の原則

ASTDとしての最後の国際会議となった2014年大会。ATDへの名称変更は、「トレーニング」から「タレントデベロップメント」へ、つまり研修という手段から人材の成長という目的へのシフトを象徴しています。この年に発表された知見の多くは、10年以上経った2020年代でもそのまま有効です。

2014年に語られたこと → 2020年代にこう使われている

2014年

「まず測れ。精度は二の次」(Saudi Aramco事例)

2020年代

LMS・LXPのダッシュボードで研修効果をリアルタイム可視化。「まず測る」が前提として定着。

2014年

「フォローに50%の時間を割け」「上司の巻き込みが最大要因」

2020年代

ナッジ配信・Slackリマインド・1on1連動など、テクノロジーで「フォロー50%」を自動化する企業が増加。

2014年

「ROI → ROE(期待成果の達成度)」(Kirkpatrick新モデル)

2020年代

経営層とのROE合意が研修企画のスタンダードに。金額換算が難しいDEI・リーダーシップ研修でも評価が可能に。

2014年

「研修は人材育成の1割 ― 70:20:10」

2020年代

ラーニングエコシステム(LXP+メンタリング+プロジェクト学習)が70:20:10の具体的な実装として普及。

2014年

「たった一人からでも変革は始められる」(Saudi Aramco)

2020年代

人事1名がノーコードツールで社内学習プラットフォームを構築する事例が続出。技術の民主化がこの原則を加速。

これらの原則は、テクノロジーの進化やビジネス環境の変化に関わらず、人材育成の核心に位置し続けています。ASTD ICE 2014のレポートは、最新トレンドの記録としてだけでなく、普遍的な実践知の集積として今も参照する価値があります。

よくある質問(Q&A)

Q1. ASTDからATDへの名称変更は何を意味しますか?

2014年6月のASTD ICE 2014の場で、「ASTD(American Society for Training & Development)」から「ATD(Association for Talent Development)」への名称変更が発表されました。「American」を外すことで国際組織としての性格を明確にし、「Training」から「Talent Development」にすることで、研修という手段から人材の総合的な成長支援へと活動の軸足を移す方針が示されました。

Q2. 研修効果の測定を始めるにはまず何をすべきですか?

Saudi Aramcoの事例が示すとおり、最も重要なのは「完璧主義を捨てて、まず測り始めること」です。最初のステップとして、受講者アンケートの書式を統一し、「この研修を同僚に勧めたいか?」という1問を加えるだけでも有効です。精度は後から改善できますが、測定しなければ改善のヒントすら得られません。

Q3. 70:20:10モデルは実際にどう活用できますか?

70:20:10は厳密な数値目標ではなく、「研修(10)だけに頼らず、対話(20)や経験(70)も含めた包括的な学習環境を設計する」という考え方のフレームワークです。具体的には、研修後のOJTやプロジェクトアサイン(70)、上司や同僚とのフィードバック機会(20)を意識的に設計に組み込むことで、研修の学びが実務で定着しやすくなります。

Q4. 「Can I? Will I?」を自社の研修に取り入れるには?

研修の最後に、受講者自身にこの2つの問いを投げかけてもらうことから始められます。「Can I?」に対して「自信がない」という声が多い場合は、演習時間を増やしサポートツールを整備します。「Will I?」に対して「やるメリットがわからない」という声が多い場合は、研修内容と受講者の業務成果の関連を明確にし、上司を巻き込む仕組みを設計します。

Q5. Kirkpatrickの新モデルのROEとは何ですか?

ROE(Return on Expectations)は、従来のROI(費用対効果の金額換算)に代わるLevel 4の評価指標です。「ステークホルダーが研修に期待した成果がどの程度達成されたか」を問います。具体的には、研修の企画段階で経営層や現場管理者と「この研修で何を達成したいか」を合意しておき、研修後にその達成度を評価します。金額換算が難しいリーダーシップ開発やマインドセット変革などの研修評価にも適用しやすい点が強みです。

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