ATD ICE 2023レポート|AI活用・ブレンドラーニング・研修効果測定の最新トレンド

ATD ICE 2023:世界最大の人材育成国際大会から見えてきたもの
世界最大の人材育成団体ATD(Association for Talent Development)の年次国際大会ICEが2023年5月下旬、米国サンディエゴで開催されました。参加者は1万人、展示会の出展社は345社、並行して開催された勉強会は300以上と、パンデミック前の規模に戻ってきています。
今年のトレンドを一言で表すと「既存の問題を新しい工夫で解決すること」でした。AIやチャットGPTの使い方、最新のラーニングジャーニーITプラットフォームの活用など、従来の人材育成テーマに対する新しいアプローチが中心でした。この記事では「重要で実用的で日本にも合う」という原則で、3つの切り口からハイライトをお伝えします。
研修効果測定については別記事研修効果測定のやり方|実践できる3つのステップを解説でも詳しく解説しています。
① NEW ラーニングテクノロジー:AIとVRの実用化が進む
展示会で最も話題を集めたのはAI・チャットGPT・VRでした。セッションで聞こえた意見は「AIのせいで人材育成業界が消滅する」という消極的な声から、「コンテンツ作成が瞬間でできる。限られたリソースでも素晴らしい育成施策が提供できそう」という前向きな声まで様々でした。冷静な見方として「チャットGPTが普及すると真実を見抜く力・編集力・洗練する力が大切になる」という意見も印象的でした。
アバター動画作成ツールで知られるColossyan社のセッションでは、人材育成に関するAIの利点として「パーソナライズ(個別ニーズへの対応)」「プランニング(研修開発の効率化)」「コンテンツ作り(作成期間の大幅短縮)」の3点が紹介されました。ビデオコンテンツの作成・編集・翻訳に必要な時間を数週間から数分に短縮できるデモも行われました。
一方でビヨンド社(Vyond)のセッションでは、チャットGPTを使ったeラーニング作成時のよくある課題として、情報の最新性の問題・出力品質の不安定さ・ブランドポリシーとの整合・情報セキュリティの確保が挙げられ、生成されたコンテンツには十分なレビューとフォローが必要だと強調されていました。
VRについては、まだブレイクスルーには至っていませんが、ヒューマンスキル研修への応用が進んでいます。アクセンチュアのセッションでは、入社オリエンテーション・コミュニケーション・リーダーシップ・ダイバーシティ研修との相性が良いと報告されました。「やりたいときにすぐ受講できる」「高価な機器を必要としない」「うまくいかない時のリスクがない」という利点が実践的に活用できる強みです。
② GOOD 研修設計:ブレンドラーニングの本格事例
従来の集合研修の課題(リソースが必要・柔軟性がない)とeラーニングの課題(インプット中心・スキル定着が難しい)を両方解決するブレンドラーニングの好事例として、ServiceNow社の「マスターアーキテクト認定講座(6ヶ月・大規模リスキル)」が紹介されました。
ブレンドラーニング設計の考え方については、ブレンドラーニングとは|研修効果を高める設計の考え方と実践ポイントで詳しく解説しています。
③ MORE 研修効果測定:研修中の診断で軌道修正する
エミレーツ航空の事例として紹介された「High Impact Evaluation」は、研修効果測定を測定だけでなく研修効果向上に活用する一石二鳥のアプローチです。「目標設定(Measure)→予測(Predict)→診断(Diagnose)→強化(Maximize)」の4ステップで進めます。
特に注目すべきは診断ステップです。研修の3分の1が終わった時点で全受講者にアンケートを取り、研修内容の習得度・理解への自信・職場での活用課題・モチベーション・実行計画を3段階(緑/黄/赤)で評価します。この早期診断によって研修期間中に軌道修正が可能になります。紹介された事例では、診断結果が「緑中心」の研修でのROIが427%(大成功)、「赤・黄色中心」の研修のROIが−100%(大失敗)と、研修の途中でも最終的なROIを予測できることが示されました。
また、行動経済学の「nudge(ひじで小突く)」を行動変容促進に使う手法や、コーチングをチャットボットで行う取り組みも紹介されていました。受講者がコーチと接する頻度と時間はプロコーチよりチャットボットの方が多いという点が、個人的に最も印象に残ったポイントでした。
研修効果測定に今すぐ取り組みたい方は、お気軽にご相談ください。
まとめ:日本の現場でも取り入れられる工夫が多い
今年のATD ICEで学んだ最も重要なことは、テクノロジーが変わっても人材育成の本質的な課題は同じだということです。「いかに現場定着させるか」「経営にどう貢献を示すか」「個別ニーズにどう対応するか」という課題に対して、AIやプラットフォームという新しい道具を賢く使いながら、研修設計と効果測定の基本を丁寧に実践することが求められています。日本の人材育成現場でも比較的取り入れやすいアプローチが多く、ぜひ参考にしていただければと思います。
よくある質問
ChatGPTを研修コンテンツ作成に使う際の注意点は何ですか?
Vyond社が指摘した通り、生成されたコンテンツには必ず人間によるレビューとフォローが必要です。特に情報の最新性・ブランドポリシーとの整合・事実の正確性の3点を確認してください。また、生成AIが得意なのはドラフト作成であり、完成品そのものではないという認識が重要です。
VR研修は日本の中小企業でも導入できますか?
高価な機器が必要というのはかつての認識で、スマートフォンを使ったVR体験など低コストの選択肢も増えています。まずは「安全教育」「ハラスメント研修」「ダイバーシティ研修」など、VRの臨場感が効果的な特定テーマで小規模に試してみることをお勧めします。
研修の早期診断(研修中のアンケート)はどのタイミングで行えばよいですか?
エミレーツ航空の事例では「研修の3分の1が終わった時点」が推奨されていました。単発研修なら研修当日の前半終了後、シリーズ研修なら2〜3回目終了後が目安です。緑/黄/赤の3段階評価でシンプルに聞くことで、受講者の負担を最小限に抑えながら有効な情報が得られます。
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