営業研修の成功ポイント(ASTD2014:イートレードファイナンスの事例)#1
この記事では、ASTD2014帰国報告会のうち「営業研修の成功ポイント(イートレードファイナンスの事例)~その1~」をお伝えします。
その2については以下をご参照ください。
※「ASTD(ATD)人材育成国際会議 帰国報告会」は、世界最大の人材育成会議であるASTD(ATD) ICEで発表された内容を日本企業に役立つように紹介するセミナーで、アイディア社が毎年開催しているものです。
講演者1:Thomas Sawyer、役職:Director, Retail Sales Learning & Development
講演者2:Jonathan Feig、役職:Senior Retail Learning Specialist
会社名:E*TRADE Financial(イートレードファイナンス)
営業研修の成功ポイントを紹介していきたいと思います。今回はアメリカの証券会社イートレードファイナンスの事例になります。
彼らは会社の業績が落ち込み始めたので何が原因かと考えた時に、「営業部門が抱えている組織風土が、今の世の中とあっていない」という仮説をもって、それを変えようという内容のプロジェクトです。
証券会社の営業マンですから、結構アグレッシブです。お客様が嫌そうにいっても、「そんなことありません、絶対にお任せください」と。
事例では「オーバーカム」という英語を使って表現していましたが、今までは「お客様を打ち負かして営業成果を上げる」、戦って勝って来るぞと。
しかし「お客さんと戦って本当に良いのか」ビジネス環境的にもそういう事を考えないといけない状況になってきたと。
そこでCEOが「我々の営業マンはそういう古いスタイルはもうダメです」と決断し、「お客様にとって真のパートナーになる」。それが「自分たちのミッションである」というカルチャーに、組織風土をガラッと変えることにしたそうです。
では、どう組織風土を改革していくかと考えた時に、
「腕利きの人財育成コンサルタントを外部から招いて社内のマネージャーにし、その彼を中心にプロジェクトを進めて行った結果プロジェクトがうまく行った」
という成功ストーリーを今からご紹介します。
企業風土変革の8ステップ
営業部門の風土改革に着手するにあたり、効果が実証されているフレームワークを活用するところから始めた。
自分たちの思いつきだけでプロジェクトを進めていくのではなく、実証済みのメソッドを出発点に置くことで、関係者の協力をスムーズに得ることができている。
営業の組織風土を変えていくというのは結構重い話です。そうは簡単じゃない。
そこでこの外部から招かれたコンサルタントは外から来た訳なので、適当に思い付きでやってもうまく行かないだろうと。
フレームワークに則ろうと、いう事で「コッターの8段階モデル」を選んだそうです。
John P. Kotter(ジョン・P. コッター)のモデルを採用
John P. Kotter(ジョン・P. コッター)は変革のマネジメントとリーダーシップについての世界的権威。
ハーバード・ビジネススクール名誉教授。『Leading Change』(1996年、邦題『企業変革力』日経BP 社)で示した『変革の8ステップ』は、世界中の経営者に活用されている。
同書はタイム誌により「企業経営に最も影響を与えた25冊」に選出された。
コッターは、企業変革の大家みたいな人で本もたくさん出しています。
日本でも『企業変革力』を始めとして書籍が出版されており、企業経営に最も影響を与えた25冊にもなっていたり、Thinkers 50にも選ばれている(世界の思想界、ビジネス総会をリードしていくなトップ50人)ような人です。
ということで、招いたコンサルタントは企業変革の初段階で使うフレームワークに「コッターの8段階モデル」を採用すると決定しました。
採用した4ステップ(自社なりにカスタマイズ)
コッターの『変革の8ステップ』を出発点として検討した結果、以下の4ステップにカスタマイズして実施することにした。
1.組織風土を理解する
2.ビジョンを構築する
3.プロセスを設計する
4.実行する
まず自分の会社、今この課題に合うように、コッターのモデルをカスタマイズして使っていきました。(鵜呑みではなく、自分でうまく現場に合うように変えました)
具体的に行ったのは以下の4ステップです。
1.組織風土を理解する
2.ビジョンを構築する
3.プロセスを設計する
4.実行する
クライアント(営業部門)の職場風土を理解する
Step 1:組織風土を理解する 営業部門内の各部署からヒアリングを行った結果、部署ごとに組織風土が大幅に異なっていることが分かった。
これは丁寧にヒアリングしない限り判明しなかったこと。
成果を上げるためには、現場の現実を押さえることがスタートラインであることは間違いない。
1つ目のステップは組織風土を理解することです。
そのあとビジョンを構築して、プロセスを設計、そして実行。
別に、普通の話ですよね?
でも、元々コッターの8段階を「自分たちにとって大切なことだけを抽出すると、4段階です」と言われると結構信憑性があったりします。
では、現場も経営層もこの4つを忠実にやって行きましょうという事で、プロジェクトをリードしていったそうです。
この場合、人事部門から見ればクライアントは営業部門です。
なので営業部門の職場風土を理解しようと、各マネージャーにインタビューをしていく中で分かったことは、同じ営業部門の中でも細かい部門によっては全くカルチャーが違うということでした。
そのような状況では
- 一律の処方箋
- 一律の研修
でうまく行くわけがないという事が十分理解出来たそうです。
「相手を理解すると、相手も理解してくれる」という人間関係の原則・基礎が、信頼関係を築くことにも、とにかくまず相手を理解しようとするところから始める必要があったということでした。
こういうアプローチをしっかり取らなかったら「とんでもない勘違いな手術みたいなことをして、患者を死なせてしまうのではないか」というような事を言ってました。
ビジョン構築から展開まで
Step 2:ビジョンを構築する その際のガイドラインは以下の3つ。
・クライアント(今回の場合は営業部門)との信頼関係をつくりあげていくことが最も重要
・提供する研修が適切である(時間を無駄に使わせてはならない)
・提供する研修は、最終的にクライアントがより良いビジネス成果を上げるために役立つものでなければならない
2つ目のステップはビジョンを構築するという事です。
ビジョンというのはその部門部門が結局どうなっていったら良いのか、という事をみんなで考えていこうという事で、「こうなったら良いね」という絵を作っていくことにより、ガイドラインを作成しました。
ガイドライン
- クライアント(今回の場合は営業部門)との信頼関係をつくりあげていくことが最も重要
- 提供する研修が適切である(時間を無駄に使わせてはならない)
- 提供する研修は、最終的にクライアントがより良いビジネス成果を上げるために役立つものでなければならない
人財育成部門としてかなり気を付けながら、ビジョンを作って行く必要がありますよという事でした。
1番目は、信頼関係がないと、何にも始まらないので、とにかくそこがすべての勝負なんだという事を忘れないようにしよう。
2番目は、意味のある研修をやっていく。
現場で本当に使える研修、役に立つ研修そういうものじゃないと、立派なことを教えたり、上から目線で「やれ」だけじゃ、うまく行かないよ、というのが2番目。
そして、3番目。
結局、良いことを学べたって、受講者が研修のさっきの4段階、5段階で、レベル1とかレベル2で喜んで良い評価を得たところで、でも、やっぱり実際レベル4の現場のビジネス上の成果が出ないと全く意味が無いんで、
自分達の仕事は、ビジネスの現場を良くすることなんだという事を、一瞬たりとも忘れないようにやっていこうというリーダーシップをかなり強く発揮して、彼らはビジョンを作って行きました。